効果的なSEAと事例分析(平成15年6月)

環境省
三菱総合研究所
平成15年6月

まえがき


 
本報告書は、環境省の委託調査により実施したものである。本報告書の第1章及び第2章は三菱総合研究所の林希一郎主任研究員が草案を作成したのち、国連環境計画(UNEP)の環境影響評価ア ドバイザーのバリー・サドラー氏が監修した。その際、3人の国際専門家からの多大な協力を得て作成された。国際専門家は、オランダ環境影響評価委員会の事務局長補のロブ・フェルヒィーム氏、中東欧地域環境センターのプロジェクトマネジャーのイァリー・デューシック氏及び交通研究所(TRL)の環境アセスメント・政策長(英国)のポール・トムリンソン氏である。第3章は、各国際専門家により作成された。
   本報告書は、「Effective SEA System and Case Studies」の日本語訳である。

はじめに

   過去10年間、SEAの進展と導入は目覚しい勢いで進んだ。例えば、欧州や北米などの多数の国々でSEAの公式な制度としての導入が進んだ。SEAに関するEU指令の導入による国際標準化の動きが見られるにもかかわらず、SEAの仕組みや手続きは非常に多岐に渡る。これらの地域以外では、世界銀行の融資プログラムにおいて、セクター別又は地域別の環境アセスメントの実施が、多くの債務国に求められつつあるが、SEAの活用は限定的である。しかし、SEAの要素は、発展途上国で適用されつつあり、当該分野における情報やトレーニングの必要性が増している。

   現在、国際法政策の発展により、SEAの新しい発展段階の節目に来ているといえる。これらには、SEAに関するEU指令をEU加盟15カ国及び加盟申請10カ国で国内制度として整備すること;越境EIAに関するUNECE条約のSEA議定書の最終案策定;持続可能な開発に関する世界サミットで合意された実施計画(意思決定に対する統合的・部門横断的なアプローチの必要性を強調)、などが含まれる。

   日本では、環境影響評価法の導入時においてSEA導入の必要性が議論されてきた。また、1995年に作成された日本の環境基本計画は、政策・プラン・プログラムの策定プロセスに環境配慮を盛り込む手法の検討を政府が行うことを位置づけている。環境省では、過去数年間にわたりSEAに関する調査研究を実施してきており、日本においてSEAを実施するための適切な方法を検討してきた。加えて、東京都、埼玉県等の地方自治体、国土交通省などでは、既にSEAの考え方を環境と関連の深いプランやプログラムに適用してきた。現在、日本はSEA適用の大きな流れの中にある。
本報告書の目的は、SEAの本質、SEAの利点、SEAの要素について、欧州や北米での関連情報を踏まえるともに、過去の優良な教訓を読者に提供することである。また、読者がSEAを理解し、個々の状況でSEAを実施することが出来るようにするものでもある。

   本報告書の第1章では、効果的かつ効率的なSEAシステムの一般的な考え方に関する情報を提供しており、「SEAシステムの導入」、「SEAと計画プロセス」、「効果的なSEAに関する情報」について解説した。第2章では、SEAを実施する手法に焦点を当てている。具体的には、「情報収集と調査」、「環境目的」、「複数案の立案」、「スコーピング」、「環境面の予測及び影響の分析」、「緩和措置」、「複数案の比較評価」、「意思決定への反映」、「モニタリング」、「第三者の関与」である。第3章は、各事例分析の結果を示した。

目次

はじめに
第1章  効果的で効率的なSEAシステム
   1.1 SEAシステムの導入
   1.2 SEAと計画プロセス
   1.3 効果的なSEAに関する情報
   1.4 参考文献 
第2章   SEAの技術手法
   2.1 情報収集と調査
   2.2 環境目的
   2.3 複数案の立案
   2.4 スコーピング
   2.5 環境面の予測及び影響の分析
   2.6 緩和措置
   2.7 比較評価・報告 
   2.8 意思決定への反映
   2.9 モニタリング 
   2.10 第三者の関与
   2.11 参考文献 
第3章  事例研究
   3.1. 事例研究: オランダ西部国家土地利用計画
      3.1.1. はじめに 
      3.1.2. 背景:前後関係及び論点
      3.1.3. アプローチと活用された手法
      3.1.4. 結果と教訓 
   3.2. 事例研究: オランダ第2次国家鉱物資源採取計画 
      3.2.1. はじめに
      3.2.2. 背景:前後関係及び論点
      3.2.3. アプローチと活用された手法
      3.2.4. 結果と教訓 
   3.3. 事例研究: 北オランダ南部地域土地利用戦略計画のSEA
      3.3.1. はじめに
      3.3.2. 背景:前後関係及び論点
      3.3.3. アプローチと活用された手法 
      3.3.4. 結果と教訓
   3.4. 事例研究: オランダ国家廃棄物処理計画2002
      3.4.1. はじめに
      3.4.2. 背景:前後関係及び論点
      3.4.3. アプローチと活用された手法
      3.4.4. 結果と教訓
   3.5. 事例研究: オランダ飲料・工業用水計画に対するSEA 
      3.5.1. はじめに
      3.5.2. 背景:前後関係及び論点
      3.5.3 アプローチと活用された手法
      3.5.4. 結果と教訓
   3.6. 事例研究: オランダ国家電力計画に対するSEA
      3.6.1. はじめに
      3.6.2. 背景:前後関係及び論点
      3.6.3. アプローチと活用された手法
      3.6.4. 結果と教訓
   3.7. 事例研究: チェコ共和国のエネルギー政策(EP-CR)
      3.7.1. はじめに
      3.7.2. 背景:前後関係及び論点
      3.7.3. アプローチと活用された手法
      3.7.4. 結果と教訓
   3.8. 事例研究: スロバキアのエネルギー政策(EP-1997とEP-2002)
      3.8.1. はじめに 
      3.8.2. 背景:前後関係及び論点
      3.8.3. アプローチと活用された手法
      3.8.4. 結果と教訓
   3.9. 事例研究: ナッサー島の総合計画(エストニア)
      3.9.1. はじめに
      3.9.2. 背景: 前後関係及び論点
      3.9.3. アプローチと活用された手法 
      3.9.4. 結果と教訓
   3.10. 事例研究: ピセク・ストラコニス地域の土地利用計画(チェコ)
      3.10.1. はじめに
      3.10.2. 背景:前後関係及び論点
      3.10.3. アプローチと活用された手法
      3.10.4. 結果と教訓
   3.11. 事例研究: チェコ共和国の廃棄物処理計画 (WMP-CR)
      3.11.1. はじめに
      3.11.2. 背景:前後関係及び論点
      3.11.3. 採用されたアプローチ及び手法
      3.11.4. 結果及び教訓
   3.12. 事例研究: チェコ共和国プルゼニ地域廃棄物処理計画(WMP-PL)
      3.12.1. はじめに 
      3.12.2. 背景:前後関係及び論点
      3.12.3. アプローチと活用された手法 
      3.12.4. 結果と教訓
   3.13. 事例研究: 英国のM4南ウェールズ政策評価フレームワーク(M4 CAF)
      3.13.1 はじめに
      3.13.2 背景:前後関係及び論点
      3.13.3 アプローチと活用された手法
      3.13.4 結果と教訓
   3.14. 事例研究: A69 ホールトウィッスル(HALTWHISTLE)バイパス(英国) 
      3.14.1 はじめに
      3.14.2 背景:前後関係及び論点
      3.14.3 アプローチと活用された手法
      3.14.4 結果と教訓
   3.15. 事例研究:M6 ジャンクション拡張プロジェクト(英国) 
      3.15.1 はじめに
      3.15.2 背景:前後関係及び論点
      3.15.3 アプローチと活用された手法
      3.15.4 結果と教訓
   3.16. 事例研究: 南西部地域マルチモーダル研究(SWARMMS:英国) 
      3.16.1 はじめに
      3.16.2 背景:前後関係及び論点
      3.16.3 アプローチと活用された手法
      3.16.4 結果と教訓
      3.16.5 参考文献
表 1 SEAの概念の定義と解釈
表 2 SEAの法制度的発展
表 3 SEAの制度的フレームワークの例
表 4 SEAの制度的アレンジの特徴
表 5 異なる種類のSEAの手続き比較
表 6 プロジェクトEIAとSEAの特徴の比較
表 7 良い品質のSEAプロセスとは
表 8 意思決定への環境配慮の統合に関する重要な要素
表 9 欧州のSEA事例の利益、コスト、時間
表 10 複数案の活用
表 11 SEAにおいて活用可能なEIAの影響評価手法の例
表 12 環境報告書の構造
表 13 価値のある景観に対する影響
表 14 都市地域へのアクセス
表 15 (航空機、列車、自動車及び工場からの)生活公害問題の影響を受けやすい地域における住宅開発
表 16 スコアの例
表 17 重み付け毎のスコアの外観
表 18 重み付け毎のランキングの結果
表 19 重み付けのオプション
表 20 LCA項目当たりの影響スコア(x10-12 ) 
表 21 重み付けした全体の影響スコア (10-12)
表 22 廃棄物1トン当たりの処理コストの推計
表 23 生産方法に関する複数案
表 24 提案された分析の指標
表 25 SEA要素の評価概要 
表 26 附則1:EP-2000の最終版の中へのSEAの重要な要求事項、コメント、勧告の盛り込み状況に関する評価
表 27 計画策定及び環境影響評価プロセスの段階 
表 28 提案された複数案
表 29 本事例におけるSEA要素に関する専門家の評価
表 30 M4 CAF 目的と指標
表 31 M4 CAF 環境評価表の部門
表 32 M4南ウェールズ共通評価枠組要約表
表 33 第2段階デザイン代行協議
表 34 景観重要度基準
表 35 自然景観への影響:合流点11-12の地形図
表 36 異なる措置による複合戦略への貢献
図 1 モデル1
図 2 モデル2
図 3 モデル4
図 4 モデル2の図
図 5 LCAスコアの合計に関する棒グラフ
図 6 EP-1997及びEP-2000のSEAプロセス(詳細情報は別添2参照)
図 7 南側あるいは北側の拡張のどちらが望ましいかの度合い
図 8 SWARMMS計画対象地域の位置(出典:SWARMMSニュースレター)
図 9 SWARMMS 評価及び意思決定過程(出典:SWARMMSニュースレター)
図 10 SWARMMS複合戦略(出典:SWARMMSニュースレター)