効果的なSEAと事例分析(平成15年6月)

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第3章 事例研究

3.1. 事例研究: オランダ西部国家土地利用計画

3.1.1. はじめに

3.1.1.1. 計画の性質

新しい土地利用計画の目的は、ロンドン、パリ及びフランクフルトに匹敵するような国際競争力の高い都市ネットワークをオランダ西部に発展させることであった。この目的を達成するために、当該地域の4つの主要都市を高速公共交通機関で結ぶことにより、新たな単一の「スーパーシティ」として発展させ、更なる経済発展の機会を提供することを意図している。この新都市は、住宅及び工業用に新しい土地を供給し、また自然の側面からもより良い状況を実現する必要がある。全体として、本計画は次の4つの要素を統合する必要がある。

   1. ビジネス環境の改善
   2. 主要都市間を新たな高速鉄道でつなぐ、すなわち高速電車かモノレールのいずれかの選択
   3. 新しい都市化政策、すなわち新住宅及び工業地域の最適な配置
   4. オランダ西部の水系を活用した自然地域及びレクリエーション地域のネットワーク化の促進(洪水防止も含む)

3.1.1.2. SEAの役割

   SEAは、上記の4つの目的を最も適切に達成する計画を決定するために必要な環境面、社会面及び一部経済面からの情報を提供することを意図していた(なお、SEAと並行して費用便益分析も実施された)。本検討の考察を行う当たり、当該計画は、ある程度の数の複数案を立案する必要があり、選択可能な極端な複数案も含める必要があった。すなわち複数案は、実施可能な現実的な選択肢を提示するというより、むしろ可能な選択肢とそのもたらされる結果を提供するものである。

3.1.1.3. 事例研究の焦点

   本事例研究は、SEAの中で適用された手法に着目しており、費用便益分析に用いられた方法論については言及していない。

3.1.2. 背景:前後関係及び論点

3.1.2.1. 社会面及び環境面での状況

   同計画の中で立案された主な選択肢は、高速電車かモノレールかという車両の種類の選択に関するもの、新たな社会資本の立地、新たな住宅及び工業用地の配置、新たな自然エリアの配置及び貯水池の配置であった。最後の貯水池は、河川の水位が高まった際に洪水を防止するための水資源管理政策の一環である。

   これらの問題は全て相互関係がある。例えば、新モノレールの建設により、当該地域の周辺に住宅及び工業が進出し、住宅及び工業用地の開発を創出することが考えられる。一方で、新住宅地及び工業用地の開発建設は、自然開発又は保護の側面から、又は貯水池の設置の面から見ると障害となるかもしれない。最後に、計画策定の側面からの重要事項として、地方自治体の中には適切な住宅及び工業用地の配置に関して政府とは異なる見解を持っている場合がある。例えば、政府は住宅地域を限られた地域に集中させたいと考えているが、地方自治体は新住宅地を全ての地方自治体に均等に配分することを望んでいる場合などがある。従って、計画は議論を呼んだ。

3.1.2.2. SEAと意思決定プロセス

   オランダの法規制の下では、本計画は立地及び技術に関して正式な決定を下すものではないため、当時、本計画に対するSEAの適用は義務ではなかった。SEAの主な目的は、選択肢を厳選し、望ましい「政策の方向性」を設定することである。公式な決定は、本計画の下位レベル計画やプロジェクトで行われ、それらの決定に対しては、SEA及びEIAは義務となる。

   この全国レベルの計画について、計画策定プロセスへSEAを自主的に統合することが決定された。本SEAは、「時間が許す限り」オランダの正式なSEAプロセスに従う必要があるとされた。実際、以下の2つの例外を除いて、正式なSEAプロセスに従って実施された。

意志決定/SEAのプロセスは以下の通りであった。

3.1.3. アプローチと活用された手法

3.1.3.1. 情報収集

   複数案の利点と欠点は、2つの分析で評価された。すなわち、環境面及び社会面への影響評価並びに経済的な費用便益分析である。これらの2つの分析は、統合型影響評価へと統合された。重要なことは、環境面の評価と経済面の評価を同じコンサルティング会社に委託することであった。全体として、環境及び社会面の評価に関しては環境省が、経済面の評価に関しては運輸省が責任を負った。

   SEAは既存の情報に基づいて実施された。

3.1.3.2. 複数案の立案

   複数案については、異なる選択肢を組み合わせた5つのモデルが開発された。

   以下に、モデル1、2及び4の概要を示した。濃い青色の線が新たな公共交通機関の想定ルートであり、オレンジ色及び紫色の地域が、それぞれ新規住宅及び工業地域であり、中央に2箇所に存在する灰色の地域は保護されている景観の優れた地域である。

図 1 モデル1

図 2 モデル2

図 3 モデル4

   立案された複数案は、そのまま実施されるという趣旨のものではなく、複数案立案の主な目的は可能性を概観することであった。各モデルの利点及び欠点に関する知見が得られた後、内閣は実際に実施すべきモデルを決定する。例えば、最終的な実施モデルは、多くのモデルの要素を組み合わせたものになる可能性がある。

   全てのモデルは3つのステップを踏んで立案された。まずは、「緑と青の基盤」が特定された。これは、新住宅及び工業地域、並びに社会資本が配置される内側に自然と水の地域のネットワークを位置づけるものである。同時に、考古学的・歴史的な要素も考慮された。次の段階として、既存及び新規の社会資本が「緑と青の基盤」の上に示された。そして最後のステップとして「占有要素」が「緑と青の基盤」及び「社会資本」ネットワークの中に示された。これは住宅及び業務地域のように人間による土地及び水資源の利用から生じる要素を示す。

3.1.3.3. 課題と指標の選定

   SEA実施に当たっての問題の1つは、同時に4つの異なる政策が実施され、そこから広範囲の課題及び影響が想定される場合に、どの課題及び影響に着目するべきか、ということであった。アセスメントに適用可能な期間は4ヶ月間しかなかったため、スコーピングが重要であった。このため交通と住宅問題が優先され、自然と水の課題は優先順位を低くすることが決定された。但し、どのモデルも自然及び洪水防止に関して、既存計画に影響を及ぼさないという仮定に基づくものであった。

   スコーピングの出発点は、オランダの第4次国土利用計画において導入された「空間の質」という概念であった。この概念は7つの要素から構成され、具体的には、空間の多様性、経済・社会的効率性、文化的多様性、社会正義、持続可能性、魅力と人間スケール及び柔軟性・健全性である。これらの7つの要素に「費用」及び「交通の側面」が追加されて総合評価が行われた。
これらの要素の各々について、指標が設定されたが、大部分は国の政策文書から抽出された。また、公衆参加においてNGOから示唆された指標が追加された。社会正義及び魅力・人間スケール(の一部)に対する指標は見つけられなかった。これらは専門家の判断に基づいて評価された。指標の中には複数の要素に対して使用することができるものが存在するため、ダブルカウントへの配慮が払われ、指標は一回のみ活用された。また、環境面と経済面の両方の評価において、同じ指標が使用可能であったため注意が払われた。環境面と経済面の研究を統合する際の重要な点は、両研究チームが週一回の頻度で会合を持ったことが挙げられる。評価はコンサルタント全員が出席した会合から開始され、そこで研究間の関連性が明らかにされた。

   SEAにおける複数案の比較においては、以下の指標が評価された。

テーマ: 空間の多様性 

テーマ: 文化的多様性 

テーマ: 社会正義 

テーマ: 持続可能性

テーマ: 魅力及び人間スケール 

テーマ: 柔軟性 

3.1.3.4. 影響分析

   都市化政策の環境影響に関する分析の大部分は、複数の宅地開発案の想定に基づく各ゾーンに対するGIS分析に拠るものであった。主要な基準は住宅、工業地域、及び社会資本の建設のために失われる地域の面積であった。

   影響評価において注目すべき点は、当該ゾーンが実際に必要とする地域よりも広く選択されているということである。これは、地域内の正確な立地の決定は地方自治体の役割であるためである。これは、以下のように影響評価において考慮された。例えば、「価値ある景観面積の喪失」という指標について、仮に当該地域の40%が価値ある景観を有していたとして、喪失した面積が200haであるとした場合、結局価値ある景観面積の喪失分を40%×200ha=80haと求める。

   財政面及び交通面への効果の分析に当たっては、その他の影響項目よりも詳細な複数案の分析が必要であり、そうでなければ影響は評価困難であった可能性がある。またこれを行うに当たり、例えば、より広いゾーンの中から特定の立地やルートの選定が行われた。
社会面への影響評価は、主として交通モデルに基づいたものであった。就業環境の改善及び相対的に貧しい人々へのサービスの改善が、社会影響に関する主な指標として用いられた。

3.1.3.5. 複数案の比較

   意思決定者及び公衆に十分な情報を与えるために、モデルは様々な方法で比較、議論された。これに関して、3種類の文書が作成された。第1の文書では各モデルを以下の3つの異なる方法で指標毎に比較を行った。

この中では、スコアの重み付けは行われていない。

   例えば、「価値のある景観に対する影響」という指標については、まず喪失する地域が地図上で推測され、その面積がha単位で記述された。これにより、以下のような定量的結果が導かれた。モデル1は1170ha、モデル2は1420ha等である。また、ランク付けの結果は以下の通りであった。モデル1は1位、モデル2は5位、モデル3は2位等である。これらの結果に対して議論の結果、以下の様な補足が行われた。例えば、「全モデルにおいて価値ある景観は主として住宅建設プロジェクトのために失われる。工業地域のために失われる地域は、全モデルにおいてほぼ同じで、喪失面積の約40%を占める。社会資本建設のために失われたエリアは、どのモデルにおいても極めて限定的である。」
例として、以下に「価値のある景観に対する影響」、「都市地域へのアクセス」及び「生活公害の影響を受けやすい地域における新住宅開発」の3つの指標に対する定量的評価及び順位付けをの結果を示した。

表 13 価値のある景観に対する影響

モデル 1モデル 2モデル 3モデル 4モデル 5
喪失した価値ある景観 (ha) 11701420132014101400

順位

15243

表 14 都市地域へのアクセス

モデル 1モデル 2モデル 3モデル 4モデル 5

都市中心部まで30分圏内の居住人口(千人)

44514553421442545764

都市中心部まで30分圏内に位置する業務地域(単位1,000)

21752360204920692934

合計(単位1,000)

66266913626363238698

順位

32541

表 15 (航空機、列車、自動車及び工場からの)生活公害問題の影響を受けやすい地域における住宅開発

モデル 1モデル 2モデル 3モデル 4モデル 5

深刻な問題が予期される地域面積 (ha)

15702470211020502210

深刻な問題が予期される地域内に新たに建設される住宅地数

22222

順位

15324

   その後、第2の文書では、第1の文書に基づき、各モデルについて、オランダ西部開発の国家的目的及び目標への寄与度に照らして、定性的な議論が行われた。また、1ページの総括的なマトリックスにより、指標毎に「最善」及び「最悪」のモデルが示された。

   第3の文書では、経済的側面からの費用便益分析が行われ、可能な限り貨幣化した議論が行われた。

   モデルは、「ゼロ案」との比較ではなく、モデル相互に比較された。これは、モデルが現実的な複数案ではなく、単なる例に過ぎないということが主な理由である。従って、複数案の絶対的な影響の数は、この段階の意思決定とは関連しないものであった。

3.1.3.6. 公衆参加及び品質レビュー

   公衆とNGOは、検討対象のモデル及びその影響に関して初歩的な見解を述べた文書に基づき、プロセスの初期段階から関与した。専門家はプロセス中の2つの段階において、セミナー形式で関与した。初期段階においては、専門家へのインタビュー、それを基にした評価の中で使用する手法についての議論が行われた。また後の段階ではシンポジウムを開催して、アセスメントの結果を評価した。

   独立EIA委員会及び州経済政策分析局は、初期のスコーピング段階、及び後期の評価の質のチェックの両方の段階について、アドバイスを求められた。州経済政策分析局は、また経済学的な費用便益分析についてのアドバイスも求められた。

3.1.3.7. モニタリング及びフォローアップ

   SEAはモニタリングとフォローアップの計画を含んでいなかった。

3.1.3.8. 概観:何が良かったのか、またその理由

   独立EIA委員会は、本SEAの品質のレビューにおいて、6か月以内に非常に複雑なSEAを実施した極めて重要な業績であると結論付けた。 また、同委員会は、本SEAはモノレールか高速電車の決定に当たり、十分な情報を提供している、と結論した。 更に、住宅地をリングの内側に設置すべきか、リング沿線又は外側に立地すべきか、について環境への影響を比較する上で、十分な情報が提供されているとした。 

   しかし、2つの適切な複数案が検討されていなかった。 自然と水の課題を最適化する案、又は大都市間の公共交通機関の改善ではなく、西オランダの地域的な公共交通機関の改善案、である。 

   経済、社会的アセスメントについては、EIA委員会は、重大な欠点が含まれていることを指摘したが、これは本案の規模における経済、社会面の環境アセスメントとしては、現在の技術では極めて合理的な結果であるとの結論を下した。

3.1.4. 結果と教訓

3.1.4.1. SEAがどのように意思決定に貢献するか

   統合的な評価は、モデル1(高速電車、住宅や工業地域はリング上の各市に立地)が環境上の視点からは優れているが、柔軟性に欠け、費用が高いと結論した。コストは、主としてリング外部の新住宅地とリングを接続するための新しい社会資本の整備に関係したものであった。
モデル2(モノレール、住宅と工業は、都市間のリング内に立地)は環境の視点から不適切で、また費用が高い。重要な点は、都市間の重要な景観への影響であった。

   モデル4(高速電車、住宅及び工業地域は、モデル1に比べてよりリングに近い場所に設置)は、全体的に最良のモデルであった。 しかし、モデル4を含む全てのモデルは費用便益分析で否定的な結果となった。

3.1.4.2. 何が起こったか

   内閣はモデル4を選ぶことを決定した。しかし、モデルがすべて大きな経済的な負担となるため、経済的により合理的な新交通モデルが選択された。 この新モデルは3つの公共交通システムを組み合わせたものであり、主要都市間の高速電車網、中規模都市間の地下鉄網、そして小都市間の軽軌道又はバスである。

3.1.4.3. SEAの優良実践の結論とは

   本影響評価では、短時間に大量の関連情報が収集され、意思決定者と公衆に提示されたという点で成功した事例であった。しかし、類似計画に対する新しい影響評価の視点からは、いくつかの部分は異なる方法で行われることになると考えられる。 第一に、いくつかの観点において複数モデル案間の違いは明白で、定量的に検討される必要はなく、常識に基づく質的な評価で十分であった。 他方で、いくつかの主要な論点についてはより詳細に比較する必要があった。

   第二に、SEAで活用された「空間の質」という概念は、影響評価の出発点としてはあまり適切ではなかった。第1の理由は、7つの要素全ての指標を特定しようとすると非常に多くの指標が必要となることである。第2の理由は、7つの要素に関連する指標間に重複が多く生じることがある。

   第三に、影響評価の開始が遅かった点である。 意志決定は既に相当に進んでいた。 SEAを初期段階の「簡単な調査」として適用することで、後段の詳細な影響評価として使用するよりも効果的に活用することが可能となる。更に、初期段階の影響評価は、単一の段階での参加ではなく、プロセスを通じて多数の段階で意思決定者やNGOと対話の可能性が高まった。
最後に、得られた教訓は、既存の経験の活用が非常に有効であるということである。本影響評価は、既に類似のプロセスが第4次全国土地開発計画で実施されていたこと、またオランダのEIAプロセスの活用という、類似プロセスの15年間の経験の蓄積が活用可能であったことが、本SEAの成功を導いた要因である。

3.2. 事例研究: オランダ第2次国家鉱物資源採取計画

3.2.1. はじめに

3.2.1.1. 計画の性質

   オランダ第2次国家鉱物資源採取計画は、オランダにおいて採取可能な鉱物資源の持続可能な利用及び採取のための目標及び方策を定めるものである。すなわち同計画は、鉱物資源の持続可能な利用、需要に見合った効果的な供給及び採取に伴う土地利用面での影響に関する政策を決定するものである。更に、同計画は鉱物採取許可地域及び地域内の詳細地区、及びその区域内で2000-2025年の間に採取許可鉱物量を具体的に定める 。すなわち、各地区とそこで採取する小石、粗砂、細かい砂及びシェルの量を決定する。なお、オランダにおいてその他の鉱物の採取は環境等の問題には影響を及ぼさない。

3.2.1.2. SEAの役割

   SEAは、同鉱物資源採取計画において戦略的な意思決定を行うために必要な環境情報を提起することを意図していた。

3.2.1.3. 本事例研究の焦点

   本事例研究では、希少鉱物の利用及び砂採取の場所・深さに関する複数案の影響評価に用いられた方法論に焦点を当てている。

3.2.2. 背景:前後関係及び論点

3.2.2.1. 社会面及び環境面での状況

   砂、小石及び粘土のような鉱物資源は、オランダにおける家屋やその他建築物、堤防やその他利水施設、鉄道や高速道路等の多くの建設計画にとって必要不可欠である。しかし、オランダのような人口密度の高い国においては、その採取により様々な土地利用面・環境面での問題が顕在化する。この問題には、価値ある自然地域、景観及び歴史的要素の喪失が含まれる。また、利用可能な鉱物資源量にも限度がある。その一方で、例えば、採取が終了した採取場に自然又はレクリエーション地域としての新しい機能を持たせることにより、プラスの影響をもたらすことが期待できる可能性がある。しかし、そのためには適正な場所で採取が行われる必要がある。

3.2.2.2. SEAと意思決定プロセス

   本計画については、SEAの実施は義務ではなかった。実験的なアプローチとして、計画策定の初期段階、すなわち計画案の策定以前の段階から自主的なSEAを適用することが決定された。(正式なSEAプロセスのようにSEAの結果が計画案とは別文書としてまとめられるのではなく)本SEAの結果は計画案自体に統合された。2000年4月、独立EIA委員会は、アセスメントの準備段階で、その内容に関するスコーピングへのアドバイスを求められ、また計画案が公表された後の品質レビューの実施を求められた。計画案策定時に、非公式な公衆参加が実施され、また2001年7月の計画案公表後には公式な公衆参加が実施された。


6.国家レベルでは、採取が行われる具体的な場所の特定は効果的でないと決定された。採取場所の選定は 地方政府が行うべきである。 各州内での線引きや、北海において採取許可がなされるようにすることがより効果的である。 

3.2.3. アプローチと活用された手法

3.2.3.1. 情報収集

   アセスメントは既存情報に基づいて実施された。不足情報について、将来の新しい計画において、十分な情報の利用を可能とするために調査プログラムが策定された。

3.2.3.2. 複数案の立案

   EIA委員会は、特に以下の点で複数案の環境パフォーマンスを比較するよう助言した。

   これらの諸点について、EIA委員会は各種アプローチと方法論を提案した。

   この段階で、SEAの中では多くの情報が利用可能ではないとされたが、EIA委員会の助言の内、最初の2つには従った。当該情報について、広範囲な調査プログラムが計画に統合され、計画の実行を通じて行われた。粗砂の採取に関する地理的分布に関しては、現状の採掘条件(例えば、自然地域や環境保護地域における採取は禁止)のもとでは、全ての複数案が環境影響の点ではほとんど同じであろうと予測されたため、複数案は作成しないことが決定された(下記参照)。

稀少資源の利用を最小化する複数案 
   複数案に関しては、大半の鉱物の有効利用によって需要を抑制する可能性について検討された。更に、当該鉱物の代替資源に関するインベントリが作成され、またそれらの代替資源が今後どの程度利用可能かに関する推計も行われた。小石および粗砂はオランダにおいて最も希少な鉱物であるため 、当該2つの資源に関する具体的な代替資源について環境影響の視点から比較が行われた。

・小石の使用
オランダにおける小石の採取に係る負の環境影響を防いだり、最小化するために複数案が検討された。負の環境影響とは、エネルギー使用、土地の喪失、採取時の各種排出及び採取時の生活公害である。以下のような複数案が比較された。
  • オランダ国内における採取
  • ドイツからの輸入
  • 英国(英国領の北海)からの輸入
  • スコットランドからの花崗岩の輸入
  • 建設廃棄物の再使用
  • 浚渫土から造る人工小石
粗砂の使用
近年、陸上における大規模な粗砂の採取に対する反対の声が高まっているが、これは主に土地の喪失、とりわけ価値ある生態系への影響及び生活地域への(悪臭、騒音等の)影響に起因している。このため、廃棄物を原料とする砂の使用という複数案が検討された。しかし、同案は負の環境影響をもたらすものである。具体的には同材料の洗浄の必要性(汚れを洗い流す)に起因する。すなわち、洗浄には、エネルギーと水を消費し、廃棄物の残留物を発生させる。SEAでは複数案の正負両面の影響の比較が行われた。

  7 シェルも不足している資源であるが、シェルの採鉱計画に関するSEAは別に行われた。 

砂採取の場所及び深さに関する複数案 
   小石及び粗砂の採取に関して、オランダでは陸上採取に対する反対が大きくなってきている。湖あるいは北海等の水底から採取する複数案が有りえる。しかし、これらの場所の多くは自然保護地域である。陸上採取と水底採取の負の環境影響の比較を行う必要がある。また、非常に深い水底から採取することで水底表面部の採取面積を最小化し、負の環境影響を緩和することが可能かどうかについて検討する必要がある。しかし、深い水底からの採取は狭い範囲に、より深刻な影響をより長い期間に渡って与えつづける可能性がある。結局、以下の6つの選択肢が検討された。

3.2.3.3. 課題と指標の選定

下記の影響分析を参照のこと。

3.2.3.4. 影響分析

希少鉱物資源の代替物
   全鉱物に関して、小石、砂及びシェルの代替物を見つけための文献調査から開始された。例えば、再利用困難な鉱物資源について、持続可能な代替物に関する既存研究である。こうした研究では、特に持続可能な森林から生産された建築用材の活用は良い選択肢であるとしている。更に、全ての鉱物について、例えば廃棄物の再使用などを通じて、鉱物採取の代替としての資材がどの程度の量、今後利用可能となるかに関する推計が行われた。

   小石および粗砂については、複数案の環境影響が以下の手法を用いて、特に比較された。

小石
   6つの複数案は、簡易なLCA分析を用いて比較された。すなわち、通常の10の環境項目の代わりに、4項目についてのみ複数案が比較された。具体的には、エネルギー使用、土地利用、排出及び生活公害の4つである。

  1. Z=建築資材の汚染状況(0=汚染されていない、4=極度に汚染されている。)
  2. A=有機汚染の分解性(0=完全に分解、4=分解なし)
  3. B=物理的隔離又は化学的固定化による浸出量の削減(0=自然材程度まで減少、4=削減なし)
  4. C=人間の影響により浸出の増大可能性(0=可能性なし、4=可能性大)

   これらに加えて、建設廃棄物または浚渫泥が小石の代替物として使用されなかった場合に、それらが他の目的で使用される(建設資材の場合)か、又は堆積(浚渫泥の場合)されると仮定され、この環境影響もLCAにおいて考慮された。

粗砂 
   複数案は、材料のライフサイクルを通じて発生する環境影響を用いて比較される。環境影響には、エネルギー使用、水質汚濁、土壌汚染、資源使用及び廃棄物の発生が含まれる。SEAの中で述べられたように、方法論はLCAと似ているが、全く同じではない。主な理由は、実際のLCAを行うのに必要な情報が、特に「土地利用」項目に関して入手できないためである。この項目は、採取の場合には特に重要であるため、適切なLCAとならないことになる。同じことが、廃棄物の堆積(からの有害物質の浸出)の影響にも当てはまる。

   「LCA的」研究で出されたスコアは、2つの異なる方法で標準化された。これは、第1にスコアを貨幣換算するもので、第2に「目標到達距離法」、すなわち政策文書に記載されている目的に対する貢献の度合を測るものである。特に、貨幣換算の手法が非常に適切な方法である。貨幣換算では、特に土地利用は、複数案の最終スコアに大きな影響を及ぼすようである。

   立地及び砂採取の最大深度の選定
影響は定性的に評価された。各指標の複数案の影響を各々「限定的」又は「大きい」、また「局地的」又は「広範囲」、更に生態系が「短期間(10年未満)で回復する」、「長期間(10年以上)要する」及び「回復しない(不可逆)」のいずれに該当するかについての議論が行われた。これらの分類に以下の値が割り当てられた。

    「エネルギー」項目についてのみ、既存の知識(すなわち鉱物1トンを採取し、最寄りの港へ輸送するためのエネルギー量)に基づいて容易に評価可能であったため、定量的評価が行われた。その後、スコアは標準化されて、最高スコアが6ポイントに換算された。

   評価は、膨大な既存研究を基礎とする専門家の判断に基づいてなされた。ただし評価を可能にするために、多くの仮定が置かれた。これらの仮定は評価書で明示的にリストされており、例えば「陸上での採取は田園地域のみで実施」、「陸上で深い所からの採取の場合、最終的に自然又はレクリエーション機能を有する湖として残す」等であった。

   評価は、次の項目及び副項目において実施された。

・非生物的項目
  • 地質学
  • 地形学的特徴:海岸と海
  • 海底の質
  • 地下水:水量及び水質
  • 地表水:水質、透明性、層化の状況及び水質
・生物的項目
  • 植物相:植物性プランクトン、藻類、海草、水生植物
  • 動物相:海底動物、魚、鳥、哺乳動物
  • 生態系
視覚的・歴史的項目
  • 景観
  • 文化と歴史
  • 考古学
・環境的項目
  • 騒音
  • 大気への排出
  • エネルギー及び水の使用
  • 土地利用

影響評価は、項目毎(多数の副項目がある場合には、平均スコアを活用)及び各複数案にスコアを与え、マトリックス上で表示した。これらのスコアは、後段の多基準分析に活用された。多基準分析では、4セットの重み付けが用いられたが、各々以下の優先順位を反映させて作成された。

  • 優先順位無し:各スコアを等しく扱う。

  • 人間優先:人間に直接影響を及ぼす項目、又は人間が容易に認識する項目を最重要として扱う。
  • 自然優先:動植物に影響を及ぼす項目を最重要として扱う。
  • 保全優先:資源及び既存価値を可能な限りの保全を優先。最重要項目は、例えば地質学、地底環境、景観及びエネルギーである。
  •    各複数案のスコアは、重みを付け後、合計され、順位付けがなされた。

       例えば、3基準(「地表水」、「植物相」及び「景観」)に関するスコア、総合スコア及び重み付け後の順位を下表に示した。

    表 16 スコアの例

    表 17 重み付け毎のスコアの外観

    表 18 重み付け毎のランキングの結果

    砂採取の土地利用分布
       政治的に、配置に当たっては以下の前提条件が適用されることが決定された。第1に、採取される砂の量は可能な限り平等に全ての地域で行われる。第2に、各地域は可能な限り自給する。第3に、特定地域の相対的努力の余地は考慮に入れる。すなわち、地形学的理由又は別の理由により、他地域と比較してある地域では砂が容易に採取可能な場合、当該地域はより多くの砂を供給する必要がある。第4番目に、例えば自然保護あるいは考古学的理由などにより保護すべき地域及び都市地域は、事前に採取対象地域から除外する。 

       原則的に採取が許可される地域を決定する手法は、まず採取が許可されない地域、例えば自然保護地域、考古学的地域及び自然育成地域をマッピングすることである。その後、残りの地域が対象地域とされる。

       環境アセスメントは、地域の採取可能な砂の量を決定する方法の一部ではないかった。これに関しては、次のような論争があった。第1に、環境影響が懸念されるのは都市地域又は保護地域において採取を行う場合であるが、当該地域は前もって除外されており、環境影響は起こり得ない。第2に、その他の主な環境影響は砂の輸送に関わる影響になるが、前提条件の1つは、各地域が可能な限り均等に生産すべきということであり、結果的に、輸送量が最小化されることを意味する。 このように、環境影響が最小化され、環境問題が大きくないと見なされたため、環境の視点からより良いスコアを有する複数案を考慮する試みはなされなかった。 

    3.2.3.5. 複数案の比較

    小石の生産に関する複数案は、以下の3種類の方法で比較された。

       粗砂のための複数案は、それらの貨幣換算スコア及び相対的な目標到達距離法によるスコアを基に比較された。スコアは独立文書にまとめられた。SEAの中では、最も重要な項目の1つである土地利用についてのスコアだけが示され、2つの複数案の最終結果に対する定性的な議論が行われた。

       深さおよび採取地に関する複数案はマトリックスの中で比較された。


      8.  海及び湖内の保護地域は例外となる。当該地域での採取は厳格な条件下で許可される。例外の設定に関する主な環境上の理由は、水中での採取は人間への影響を生じないが、地上の場合はそうでは無いことによる。また、水中採取は当該地域の機能に変化をもたらすものではないが、地上での採取はそうではない(例えば、採取により地上が水中に没することもある)。

    3.2.3.6. 公衆参加及び品質レビュー

       公衆参加は、計画策定プロセスの義務として実施されたが、プロセスの後段において実施されたのみであった。初期の段階では、NGO及び地方当局は、(SEAではなく)新計画の内容に関して協議の機会が設けられた。具体的には、政府、産業界、環境NGO及び大学から15人程度が参加した会合が5回開催された。同様な初期段階において、一般からの書面による意見募集の受け付けが行われた。

    3.2.3.7. モニタリング及びフォローアップ

       計画案では、最終計画を実行するためには、新しい知識を広範囲に積み重ねる必要があると結論付けた。計画では、必要な研究計画及び当該研究の最先端技術に関する状況が概観された。5つのタイプの知識開発が特に取り上げられ、これらの分野の下で実施される多数、約100の具体的な研究及びモニタリング計画について述べられた。

    3.2.3.8. 概観:何が良かったのか、またその理由

    SEAの品質レビューにおいて、独立EIA委員会は以下の結論を導いた。

    3.2.4. 結果と教訓

    3.2.4.1. SEAがどのように意思決定に貢献するか

    小石 
    SEAでは、オランダにおける採取と比較して、各複数案のスコアは以下の通りであった。

    粗砂 
       廃棄物からの砂の再利用は、環境上の観点から、新規採取を行うよりもずっと良いと思われた。再利用に関する最大の負の影響は、清潔な砂を得るために、廃棄物の洗浄に伴い汚染物質が蓄積することである。これは、多くの細かな砂を含む廃棄物は相対的に使用しにくいことを意味する。多くの場合、この種の砂が汚染されている。

    砂採取の場所及び深さ 
       評価においては、全ての場合の砂採取が重大な環境影響を及ぼすと結論づけられた。正確な影響が何かについては、特定の局所的状況に依存するので、戦略レベルでは判断できない。しかし、一般には、次の結論が導かれる。

       結果には大きな不確実性が含まれているという警告がなされた。正確な採取場所が特定されれば、より適切な結論が引き出されるであろう。しかし、既存の政策はこれまで判明した結論と整合しており、政策を変更する必要はないように思われる。確かに、結果を見れば、陸上での採取から水底での採取へ一層移行することを正当化しているように考えられる。

    3.2.4.2. 何が起こったか

       SEAは計画案の策定にかなりの影響を及ぼした。しかし、SEAを実施しなかったら計画案がどうなっていたかは分からない。影響評価は、計画案に完全に統合された。

    3.2.4.3. SEAの優良実践の結論とは

       本計画の中で下された全ての決定事項についてSEAを実施するのは効率的でないと結論された。SEAの重要な役割は、SEAが最も付加価値を有する決定事項について判断を下すことであった。これについては、次の3つの基準が用いられた。

    3.3.1.1. 計画の性質

       本戦略計画は、北オランダ州(アムステルダムが中央に位置する州)の南部の土地利用計画策定のための第一歩である。計画の主な目的は「経済の駆動力」としての当該地域の機能を維持・強化するとともに、良い居住環境やアクセス性の向上及び水管理に対する要望に対応することである。

    3.3.1.2. SEAの役割

       SEAは当該計画において、オランダの当地域にとって最も望ましい開発に対する意思決定を支援するものである。

    3.3.2. 背景:前後関係及び論点

    3.3.2.1. 社会面及び環境面での状況

       当地域には、200万人が生活し、また2020年までには更に18万人の増加が見込まれている(結果として、10-15万戸の新築住宅の需要が発生する見込み)。当地域は、いわゆる「デルタ首都圏」の一部である。すなわち、オランダの経済の中心地であり、オランダの主要空港(スキポール)が位置する地域である。新規住宅用地及び工業用地に対する需要に加えて、当該地域は交通の渋滞問題に直面している。

    3.3.2.2. SEA/意思決定システム

        オランダのSEA制度の下では、戦略計画については、SEAの実施は義務ではない。本事例では、法律上の全ての要件に従った自主的なSEAを実施することが決定されたのである。これは以下のプロセスで行われた。

    3.3.3. アプローチと活用された手法

    3.3.3.1 情報収集 

       計画自体が経済、社会文化及び環境面での目的を目指した統合的計画であり、SEAも統合的影響評価であるべきであることが決定された。当SEAは既存情報を基に実施された。

    3.3.3.2. 複数案の立案

       SEAでは、いわゆる 「開発モデル」として5つの複数案が検討された。各モデルは、水管理 (水質及び治水)、社会資本開発及び新規住宅用地に関する選択の組み合わせから成り立っている。これは5つの住宅用地開発の複数案に関する土地利用の基礎となっている。

       5つの各モデルにおいて、社会資本設備は新規住宅地域に適応するようにデザインされるものとする。


      9. 5つの複数案について、水管理の選択は同じであった。 基本となる複数案シナリオが開発された。第1のシナリオでは、水質及び安全性は、水位及び水量(給水と排水等)を適正に管理することにより確保される。 第2のシナリオでは、水に関連する視点(例えば、氾濫懸念地に住宅が無いこと、多量の排水が必要な地域で農業を行わないこと、災害時に多量の水を確保するスペース)等を考慮して、地域を再構成するというもの。全事例において、第2のシナリオが第1番目よりもはるかに効果的であることが判明した。それ故に、全モデルは第2のシナリオをもとにしている。

     図 4 モデル2の図




    上図右側の凡例は各々上から以下の意味である。

       オランダのEIA法の下では、「環境上の最良案」を作成することが必須である。このSEAでは、5つのモデルのうち「生活公害(騒音と悪臭)」、「景観」及び「生態学」の面で最高のスコアを獲得するモデルを決定することによって環境上の最良モデルを作成した。次の段階としては、残りの影響が追加的な対策によって緩和可能かどうか調査された。

    3.3.3.3. 課題と指標の選定

       既存の北オランダ州南部土地利用政策では、優先順位の高い4つの課題に言及している。すなわち、水(水質及び洪水防止の両面)、生活の質(都市の質、自然及び景観)、アクセス可能性(交通・運輸)及び経済面である。これらの課題の各々について、限られた数の適当な指標が使用された(後述の「影響分析」を参照)。独立EIA委員会の助言に従い、4つの課題に「健全性」が追加された。すなわち予期できない将来の出来事に対する土地利用モデルの順応性のことである。

    3.3.3.4. 影響分析(用いられた手法及び手段)

    複数案は、以下の環境指標に基づいて比較された([]は、指標毎にスコア決定する方法論を記述した。運輸に関する影響は、交通モデルを用いて定量的に求められた)。

    3.3.3.5. 複数案の比較

       複数案のモデルは、2つの方法で比較される。

    1. 定量的及び定性的なスコアに基づいて、全ての影響は専門家の判断によって、7ポイントのスケールに転換された(非常にプラス+++から非常にマイナス―――)。 マトリックスにおいて、全モデルの全影響評価項目について、これらのスコアが定められた。スコアの重み付けは行われなかった。 

    2. 影響評価された各観点について、モデル間の相違は定性的に議論される。 

       モデル5(政府の望ましいモデル)と環境上の最良案(追加的な緩和措置を伴うモデル1)との比較に関しては、特別な注意が払われる。

       これらの環境影響に加えて、全てのモデルは、7つの重要な政治的課題への対応状況について比較されランク付けが行われた。 
            1. 住宅マーケットの需要をどのように満たすか ?
            2. どのように経済を最良に発展させるか? 
            3. 新しい都市及び生活の質をどのように求めればよいのか? 
            4. 既存の景観の独自性を強化するか、または新しい独自性を発展させるか? 
            5. 既存の生物多様性の保護と新しい生物多様性の発展? 
            6. 交通需要を抑制するために、どのように職住近接を実現するか? 
            7. 将来の不確実性に備えて、どのように健全な発展を実現するか?

    3.3.3.6. 公衆参加

       開始記録の公表の後、SEAと計画の内容に対して第1回目の公衆参加が行われた。 この段階では、オランダ中の誰でも、書面でコメントを提出する権利がある。また、公聴会も開催された。 

       SEA報告書及び第1回目の計画案の公表後、新たな公衆の参加が行われた。これは、SEAの品質及び計画案の内容に関するものである。 同様に、全ての市民、NGO、政府当局は書面でのコメントの提出、又は公聴会での発言権がある。 

    3.3.3.7. 不確実性分析 

       SEAには、影響評価に伴う不確実性が分析され、掲載される。これらは、3つの知識ギャップと一連の不確実性(水、自然、交通、居住環境、景観及びコスト)に関係する。一般的な不確実性及び自然への影響の予測に関する不確実性について、以下に列挙する。 

    一般的な不確実性は以下のとおりである。 

    自然に対する影響の不確実性は以下のとおりである。

    3.3.3.8. モニタリング及びフォローアップ

    SEAにおいて、モニタリングと評価計画の内容が記載されている。

       SEAでは、これらの一般的な項目に基づいて、具体的なパラメーター及び締切日を示した評価プログラムを準備する必要がある。更に、評価プログラムは、土地開発、自然、交通移動性、環境及び水に関する既存モニタリング計画に関連付けられなければならない。 

    3.3.3.9. 概観:何が良かったのか、またその理由

       品質レビューにおいて、独立EIA委員会は、SEAについて、全般的な肯定的判断を下した。しかし、最も重要な批判点として、開発された5つのモデルの根本的論拠が明確ではないとした。 初期段階においては、EIA委員会は実際の政治的ジレンマ又は課題を軸として、複数案を作成するよう助言している。しかし、この助言は従われず、複数案の比較のための手法の中で考慮された(上記参照)。別の批判点は、全ての案で重要な要素である水管理が具体的な土地利用の需要に適切に関連付けられていない点である。これは、水管理の土地利用需要への要求は非常に高く、従ってモデルに著しく影響を及ぼすためである。

    3.3.4. 結果と教訓

    3.3.4.1. SEAがどのように意思決定に貢献するか

       SEAの全体プロセスには約1年を要した。SEAでは、環境上の最良モデルは追加的緩和措置を導入した上でのモデル1であると結論づけられた。 しかし、全体として最も得点が高かったのは、モデル5である。同モデルは、4つのモデルの組み合わせである。環境上の最良モデルとの比較では、モデル5が、水供給、都市の質、居住環境の質、経済発展及び健全性について、スコアが高い一方、自然、交通移動性及び景観のスコアが低い結果となった。

       モデル5の上記3指標のスコアが低い理由は、田園地帯に新住宅地域を配置したことによると考えられる。従って、モデル5の環境パフォーマンスを最適化するためには、住宅地の開発の場所について、環境影響が最小の地域を選定し、また出来るだけ田園地域を避けるようにすることである。

       戦略的な意思決定に対するSEAの影響は不確実である。SEAの準備に時間がかかりすぎた。最終的な意思決定にSEAの結果を活用するには十分な時間が無かった。他方、政府は、環境課題は意思決定における大きな論争の的にはならなかったと結論した。良い品質のSEAは、これに貢献したものと考えられている。結局、地方政府は、SEAは有用であると判断し、州北部を対象とした戦略計画に対する自主的なSEAが開始された。

    3.3.4.2. 何が起こったか

       SEAの結果に基づき、州政府はモデル5(コンビネーション・モデル)を選択し、以下の条件を付けた。

    3.3.4.3. SEAの優良実践の結論とは

       州政府は、公衆への協議を除いて、SEAを有用なものと判断した。なぜなら、公衆参加の手続きが何度も設けられたにもかかわらず、ほとんど注目を集めず、公衆からの意見もほとんど集まらなかった。類似計画に対する新しいSEAの実施に当たっては、公衆への協議は、主要なNGOに限られるであろう。

       複数案の作成と比較において、実際上の政治的ジレンマが適切な土台を提供した。複数案の中に、このジレンマから抜け出す方法を示すことが出来れば、SEAによって、政治家は複数案及びその影響に関しての知識を得ることが出来る。

        政府は、定量的な評価を多くの側面で実施しすぎたと結論した。このため、SEAに多大な時間を要した。また、戦略レベルの複数案であるために最終結果も不確実性を伴うということは明らかであり、定量的数値が間違った印象を与えかねないためである。

       得られた教訓は、タイミングがSEAの本質であるということである。そもそも、SEAの意図は、SEA及び戦略計画を策定することで、土地利用計画策定の基礎とすることであった。SEAの実施に長期間を要したために、戦略計画はある時点で土地利用計画に追い越された。この原因の一部は、SEAの開始が遅過ぎたことであり、SEAで多くの定量的な評価を実施したことでもある。SEAはより早期段階から開始すべきであり、またより定性的なものであるべきであった。

    3.4. 事例研究: オランダ国家廃棄物処理計画2002

    3.4.1. はじめに

    3.4.1.1. 計画の性質

       本計画の目的の1つは多数の廃棄物処理の流れに対し、いわゆる「最低基準」を設けることである。 同基準は廃棄物の処理技術の最低環境パフォーマンスを特定するものである。本計画の下ではパフォーマンスが悪い技術には許可が降りない。 例えば、焼却エネルギーの回収などのように、最低基準が非常に広く定義されることもある。 しかし、多く廃棄物処理の流れについては当該基準は、具体的技術として定義される。

       同計画の2番目の部分は、オランダにおける望ましい廃棄物焼却能力を計画することである。

    3.4.1.2. SEAの役割

       SEAは具体的な技術として定義されるそれらの基準に対して行われた。SEAでは、代替技術の環境パフォーマンスが比較された。更に、SEAは焼却能力計画について、環境上の根拠を与えるものである。

    3.4.2. 背景:前後関係及び論点

    3.4.2.1. 社会面及び環境面での状況

       「最低基準」を設定するというアプローチは、オランダ国内に、出来るだけ自由度の高い民間廃棄物処理マーケットを創造するために行われた。廃棄物処理会社は、この最低基準を満たす限り、どんな技術でも自由に活用することができる。当廃棄物処理計画が民間業者から非常に注目を集めたのは明らかである。 

       廃棄物焼却容量に関する計画については、この容量はあまり小さくするべきではない。なぜなら、焼却能力が小さいと多くの廃棄物が埋立処分されることになり、これは環境の視点から良くない。一方で処理能力はあまり大きくても良くない。廃棄物発生の抑制や再使用に対するインセンティブが無くなってしまうためである。更に、計画策定の目的は廃棄物焼却時のエネルギーを出来るだけ再利用することである。経済的観点から、オランダの既存の焼却容量を最適に活用することでもある。

    3.4.2.2. SEAと意思決定プロセス

        廃棄物処理計画は環境大臣の権限で策定される。4年毎に、廃棄物処理政策が策定され4年毎に更新される。 廃棄物処理計画についてのSEAの実施は義務である。オランダのSEA制度によればSEAのプロセスは以下のとおりである。

    ステップ1: 1999年8月、新計画の策定目的が説明された開始声明の公表。
    ステップ2: 公衆参加;オランダ国内の 誰でもSEA又は当該計画の内容についてコメントを提出することができる。この義務的な要求事項に加えて、集中的な非公式の公衆参加プロセスが実施された(「公衆参加」を参照)。 
    ステップ3: SEA又は当該計画の内容について環境自然庁及び独立EIA委員会からのアドバイス。 
    ステップ4: SEAと計画の準備;アセスメント報告書の義務的な内容は法に基づく。要求事項の1つは、環境上の最良案を立案することである。 
    ステップ5: SEA及び計画案の公表
    ステップ6:公衆参加;オランダ国内の誰でもSEA及び計画の品質についてコメントを提出することができる。 
    ステップ7:環境自然庁はSEA及び計画に対して、また独立EIA委員会は計画の質についてアドバイスを行う。
    ステップ8:内閣や議会での修正の後、環境大臣による計画の採択。 

    3.4.3. アプローチと活用された手法

    3.4.3.1 情報収集

        SEAは既存情報に基づいて実行された。情報は以下のものから活用された。 

    3.4.3.2 複数案の立案

    最低基準 
       26の廃棄物処理の流れについて、対象技術が具体的に示される必要がある。これらは石綿、バッテリー、写真の廃棄物、有機性廃棄物、水銀含有廃棄物、溶剤、建設取壊廃棄物、廃油などである。各廃棄物の流れについて代替技術が記述され、環境パフォーマンスの観点から比較された。例えば廃油については、回転ドラム焼却炉、セメント炉の補助燃料として投入、発電所の補助燃料として投入、ナトリウム処理蒸留装置などの技術が比較された。水銀廃棄物では、減圧蒸留、熱分解/溶解、など。 水銀含有物廃棄物については、SEAの一部は環境の視点から最良と考えられる技術を特定することであった。 

    焼却容量の計画 
    SEAは、2012年における家庭、工業及び建設活動からの廃棄物の焼却及びその他のプロセスに関する4つの計画策定シナリオについての環境影響を比較した(これら廃棄物は焼却された廃棄物量の合計約80%を占める)。当該 シナリオは「極端な」オプションを示すよう設定された。全てのシナリオにおいて、廃棄物焼却を基礎的要件としている。複数シナリオは廃棄物の焼却に加えて活用された処理技術に応じて異なる。商業ベースで使用可能な技術又は近い将来に使用可能になる技術のみが検討された。熱分解又はガス化のように実験段階の技術、又は非常に高価な技術は考慮されていない。全ての事例において、廃棄物焼却炉において発電し、金属、不活性材料(例えばガラスと石)及び水は出来るだけ取り出すように考慮された。


      11. RDF: 最適に燃料可能な廃棄物の塊。 ONF:水分含有量の高い有機物。 PPF: 紙とプラスチック。 

    3.4.3.3 課題と指標の選定

    「インパクト分析」の項を参照。

    3.4.3.4 影響分析

    最低基準 
        各廃棄物の流れについて、代替技術が「ライフ・サイクル分析」(LCA)を活用して比較された。本方法は廃棄物の生産からその処分までのライフサイクル全体について、廃棄物の処理に関する環境影響を特定する手法である。通常、物質の再利用の環境効果(通常、肯定的)などを含む。例えば、原料、補助材料、燃料などである(LCA手法の詳細は付録を参照)。

    LCAは多くの環境項目の影響を表示する。 

    これらの項目の中では、いわゆる「LCA項目」の標準的リストの影響評価が行われた。 

       LCAの結果を政治的な意思決定により役立つようにするために、分析は異なる政治的な観点から行なわれた。例えば、地球温暖化問題や環境への有害物質の拡散が特に重要とされた。この目的のために、異なった重み付けが、特定の影響に与えられた。また、目標達成分析は、既存の政策に定められた政策目標への貢献の程度に関して比較が行なわれた。全ての事例において、環境に対する全体の負荷が求められた。

    以下の重み付けが行われた。 

    表 19 重み付けのオプション

       オランダにおける環境問題全般に対する廃棄物処理の影響を相対的に把握するために、オランダ経済の及ぼす年間の環境影響全般について、各LCA項目の影響をベースラインとして推計した。更に、オランダ経済の全体的な影響についても以下の項目について推計された。

    各廃棄物の流れについても、これらの4つの側面についてスコアが与えられた。

    LCAを行うため、各廃棄物処理の流れごとにSEAが以下の情報を与えた。 

    処理容量計画 

       4つの代替シナリオは、簡単化されたLCA分析により環境影響が比較された。すなわち、最も妥当な環境側面のみが考慮された。 

       これらの限られた観点から、4項目(土地利用、廃棄物埋立処分量、エネルギー使用量、水使用量)を含む標準的LCAの全環境項目はLCAにおいてスコア付けが行われた(上記「最低基準」参照)。

       通常、LCAは、処理技術の環境効果だけでなく、埋立されるべき廃棄物に関する影響、廃棄物処理過程に伴う化学薬品の使用、廃棄物の再利用や廃棄物処理に伴う電力と熱の生成により、一次資源や燃料の需要削減に関するプラスの効果などを見るものである。更に、輸送に伴う影響や一次資源についても考慮される。この場合、最も大きな影響がある道路輸送のみが考慮された。

       感度分析は、「最低基準」で述べたものと同じ重み付けセットを活用して実行された。更に、全ての場合に、最終結果の中で不確実性の分析が行われた。この分析では各シナリオに基づく異なる処理プロセスで処理される廃棄物量に関する不確実性がこれらの技術の環境影響の不確実性として考慮に入れられた。

    3.4.3.5 複数案の比較

    最低基準 
    代替技術の各々について、スコアが以下のフォーマットで与えらた。 

    加えて、技術は(定量的スコアに基づき)定性的に議論され、最終的な結論が導かれた。 

    以下に、廃油の処理に関するスコアの例を示した。

    表 20 LCA項目当たりの影響スコア(x10-12 )

    (スコアが高いほど負の影響;負のスコア=正の影響)

    表 21 重み付けした全体の影響スコア (10-12)

    (スコアが高いほど負の影響;負のスコア=正の影響)

    図 5 LCAスコアの合計に関する棒グラフ

    表 22 廃棄物1トン当たりの処理コストの推計

    処理容量計画 
       処理容量計画に関する異なるシナリオは、最低基準に基づき上述と同様な方法で比較された。

    3.4.3.6 公衆参加

       主なNGOは全てSEAプロセスの開始以前に連絡を受け、複数案とインパクトに関する2つのラウンドテーブルに参画するよう要請された。選定されたNGOは、計画策定プロセスの全体にわたって関与するサウンディングボードに参加するよう依頼された。 
        公衆の参加に関しては、「組織化された公衆」、例えば地域のNGO、地域の政党などと、「組織化されていない公衆」、すなわち個々の市民に区別された。 組織化された公衆は、SEAのスコーピング段階及びレビュー段階において、コメントの送付を積極的に依頼された。市民個人は、より受動的な立場でこれらの2段階においてコメントの提出を求められた。 

    公衆参加については下記方法が使用された。 

       採用されたアプローチは、NGOから高い反応が得られた。大半の意見は、分析対象の複数案に対するものであった。環境NGOの大半は廃棄物を発生抑制や再利用に関するオプションの検討に注目した。 

       また、組織化された公衆からも非常に高い反応があったが、これらは地域的課題に着目したものであり、廃棄物計画の戦略的意思決定に対しては、特に有用ではなかった。個々の市民からの反応はほとんどなかった。

       公衆参加による具体的な一つの結果は、計画策定プロセスへの新しい複数案の導入であった。すなわち、焼却前の廃棄物分別に関するオプションである。最終計画に、この案を取り入れることはできなかったが、それは次回以降の計画策定において重要な役割を果たすと考えられる。 

    3.4.3.7 不確実性分析

    SEAでは、多くの不確実性が議論された。

    最低基準の設定: 

    処理容量計画:

    3.4.3.8 モニタリング及びフォローアップ

    廃棄物処理計画のSEA自体、前回の廃棄物計画の結果に対するモニタリング及び評価報告書としての機能がある。現在の廃棄物処理計画のモニタリングは、2006年の廃棄物処理計画において行われる予定である。このため、具体的なモニタリング及び評価計画を立案することは有用ではないと判断された。SEAにおいては計画のモニタリング及び評価について以下のように記述されている。 

    3.4.3.9 概観:何が良く機能し、その理由は

    独立EIA委員会は、品質レビューにおいて、大量の有用な情報が作成されたと評価した。更に、最低基準を定めるのに十分な情報が活用可能であったとした。 LCAの最終結果が多くの理由により非常に不確実性が高かったという事実にも関わらず、SEAの結果は最低基準を定めるのに十分であった。 同じ結論が処理容量計画の基礎となる情報においても下された。

    3.4.4. 結果と教訓

    3.4.4.1 SEAがどのように意思決定に貢献するか

    最低基準

       大半の最低基準は、最低基準が何かに関する結論を導くことが可能であった。環境の視点からどの技術が最適なのかを結論するのは困難なことが判明した。多くの場合、適用する「重み」に関連するものであった。 

       全ての場合、LCAの最終スコアは以下に関する影響を最も受けた。非生物資源の使用、温暖化及び陸域システムの生態への毒性である。また、酸性化及び陸系の富栄養化は小さいながら影響を及ぼした。廃棄物処理は、その他の項目に対して本質的な影響を及ぼすものではなかった。 

    処理容量計画

       LCAでは、実際、全てのシナリオが肯定的な環境効果を有することが明らかとなった 。全ての場合において、廃棄物の燃焼や処理に伴う負の影響以上に、エネルギー生成や廃棄物再利用による正の影響には大きいものであった。当然、一部の影響の組み合わせのみが考慮に入れられたことには留意すべきである。 

       シナリオ1及び2は全体としてほぼ同等の評価であった。 シナリオ1は、オゾン層、光化学スモッグ、生態への毒性、人間への毒性、埋立されるべき廃棄物及び水の使用に対する影響に関して高いスコアで評価された。シナリオ2は水系の富栄養化、土地利用及びエネルギー使用において高いスコアであった。3番目のランキングはシナリオ3であったが、本シナリオは生物多様性とライフサポートシステムの観点で最高のスコアを獲得した。現状維持シナリオは、全般的に正の影響が最も少ない結果となった。全ての場合、石炭火力発電所での焼却はセメント・オーブン中での焼却より高い環境面でののスコアとなった。

       感度分析によると、シナリオ4では全ての面で最悪であり、シナリオ3は全ての面でシナリオ4より良い結果となったが、シナリオ1及び2には劣る結果となった。 目標到達度合による重み付けを用いると、シナリオ1が最良の案であり、その他の3つの重み付けでは、シナリオ2が最良の案となった。

       全てのシナリオの中で、エネルギー生成の正の影響により、最終結果のスコアが大きく影響を受けたため、追加的な感度分析が、廃棄物焼却炉のエネルギー生成に関する効率に関して行われた


    10.重み付け2を活用する場合。すなわち全ての影響は同じ重みを有している。 

    行われた。廃棄物焼却炉のエネルギー効率が30%の場合、シナリオ3はシナリオ1及び2と同程度に良いとの結果となった。 

       驚くべき結果は、(例えば発電所又はセメント・オーブン)などの他目的のために設計された装置の中での廃棄物焼却の環境パフォーマンスが、廃棄物焼却炉の結果とほぼ同程度であったことである。 

       最終的な結論としては、シナリオ1及び2は環境問題に関して最高のスコアであったが、両案とも既存焼却炉の容量を最適に活用するという目的を達成しないということであった。 主な要因は、これらの2つのシナリオでは新技術を活用した新型焼却炉の設置が必要であったことによる。

    3.4.4.2 何が起こったか

    最低基準 

       環境影響に加えて、国家廃棄物処理計画においてはコスト、公衆衛生、信頼性、実現可能性、実用性及び輸入/輸出へのインパクトなどのその他の観点についても記述が行われた。これらの観点及び環境影響に基づき最低基準が設定された。 

    処理容量計画

       シナリオ1も2も欧州の廃棄物マーケットの構造の急速な変化の影響により、シナリオ1及び2は選択されなかった。新しい欧州の規則の下で、高カロリー廃棄物に対する自由市場が存在し、それは1ヶ国内において焼却容量の計画を一国内でまかなうことを困難にするものであった。 

    3.4.4.3 SEAの優良実践の結論とは

       LCAの活用は有用であった。 しかし、全ての場合において、このような包括的な方法が必要では無い。多くの最低基準はより単純な方法で設定することが可能であった。

       公衆参加に関して、戦略計画の策定過程の一部として行われた広範な公衆参加は、計画者にとって有用なものと考えられた。これは、第1に、NGOが彼らの特定の関心事に焦点を当てるというよりも、廃棄物処理への統合的アプローチに関心を持たせることができたことである。第2に、最終的に採用された計画は広く受け入れられたことである。 

       別の教訓は、技術専門家が参加したことによる。トップレベルの管理に関する代表者は本件に十分に深く関与しなかった。将来の新計画においては、技術専門家に加えて別個の高レベルの助言委員会が、サウンディングボードの一部として必要となる。 

       公衆参加に関する教訓の2番目は、環境NGOは技術的課題にあまり注目せず、他のNGOに比べてサウンディングボードの中で非常に弱い立場であったことである。 新計画の策定においては、環境NGOに対して、双方的なアプローチにより、明示的に技術課題に関する彼らの意見を求めるようにするように努める必要がある。

       最後に、重要な教訓は、SEAを含む戦略計画では明らかに多くの仮定及び前提条件を含んでいるということである。これらの形成過程において公衆参加を行うことが極めて重要である。これが、最終結果及び最終計画の信頼性を増加させる重要な要因である。また、信頼性を向上させるために、最後に最終計画の正当性を確保するために計画策定プロセスで行われた選択を全て記録に残すことが重要である。 

    附則:ライフサイクル分析s (LCA)

    LCAのステップ
    ステップ1 

    定義-LCAの具体的なゴールを定義する。 
    - 影響評価のための「測定単位」を定義する; 
    例えば、オランダの国家廃棄物処理計画のSEAでは単位は 廃棄物の1トンの最終処理であった。 

    ステップ2  ライフサイクルの分析 

    フェーズ1: 境界の設定: 何を考慮しなければならないのか。 
    例えば、オランダの国家廃棄物処理計画のSEAではライフサイクルは以下の通りである。 
    - 廃棄物収集 
    - 廃棄物焼却 
    - 排ガスの浄化 
    - 熱及び電力の生産(+) 
    - 金属の再利用 (+)
    - 他の残さの再利用 (+)
    - 化学廃棄物の保管 

    フェース2:ライフサイクルの各部分に関し、以下のインパクトが特定される。 
    - 土地利用 
    - 資源の使用 
    - 排出 
    各サイクルの個別部分のインパクトの積み上げによる全インパクトの合計の決定。 

    ステップ3 分類: 10の標準項目のスコアと「分類要因」により、環境影響の全体を推計する。 

    - 人間の毒性 -水性の毒性 
    - 土壌の毒性 -温室効果 
    - オゾン   -酸性化 
    - 富栄養化 -匂い 
    - 土地利用   -天然資源の使用 

    分類要因は現在開発中であり、特に以下が考慮される。 
    * 輸送ルート及び輸送プロセス 
    * 周辺環境の感度 
    * 資源の不足 

    ステップ4 評価 

    フェーズ1:正規化: 全てのスコアを同じ単位にする。 
    様々な正規化の方法が存在する。例えば 
    * 既存の汚染のパーセント 
    * 環境目的への貢献 

    フェーズ2: - 課題の「相対的重要度」を決定する。 
    - 政治的及び科学的価値を反映する「重み付け」を適用する。 
    - スコアに重み付けを掛ける。

    フェーズ3: -全てのスコアを合計し、一つの数値を導く。 いわゆる政策、プラン又はプログラムの「環境プロファイル」 

    フェーズ4: - 様々な仮定や重み付け要因、不確実性を考慮して感度分析を行う。 

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