s
3.14.1.1 計画の性質
A69ホールトウィッスルバイパスは、距離3.3kmの幅広な片側一車線自動車道であり、1975年に幹線道路準備の共同出資が開始され1997年5月に開通した。
3.14.1.2 SEAの役割
代替道路の建設計画は、英国では環境影響評価レベルと見なされている。これは、道路建設という解決策が事前に下されているためである。英国においてSEAは、道路またはその他の手段による解決の妥当性を決める段階で適用される。本事例の影響評価は日本におけるSEAの一部と見なされるものと考えられるため取り上げられている。
本事例の影響評価は、「環境影響評価第11巻-道路及び橋のためのデザイン・マニュアル」に従い、「第二段階」の環境影響評価と呼ばれ、相対的に基準に沿ったアプローチが採用される。しかし、本提案が行われた時期を考慮すると、当時の手引きは環境審査のためのマニュアルであり、作成が予定されていた主要な報告書は「技術審査報告書」と称したものであった。その後、公表され、適切なルートに関して運輸大臣に報告が行われた。
3.14.1.3 事例研究の焦点
本事例研究の焦点は、英国において高速道路の経路選定に関する諸課題がどのように評価されるかを示すことにある。
3.14.2.1 社会面及び環境面での状況
ホールトウィッスルの集落はイングランドの東海岸沿いのニューカッスルから西海岸沿いのカーライルに延びる幹線道路上にあり、北部イングランドでは数少ない山野を横断する経路の一つである。町の通過道路は約5.5m幅で、重積載車両(以下HGVと呼ぶ。)の通過が極めて困難である。歩道は非常に狭く、所有地が植え込みなしに直に隣接している。交通量は一日当たり平均交通量(以下AADTと呼ぶ。)が約10,000台、そのうちHGVが2,200台である。
ホールトウィッスルは南ティン谷の北側に位置する。町の西方には、氷河に覆われた広い谷があり、そこを流れる小川は、氾濫原を流れる南ティン川に合流する。鉄道跡地の土手とアルストンアーチ型高架道が、ホールトウィッスルのところで南ティン谷を隔てている。東側は、氾濫原が戦後の戦後に発展した工業地域がある一方、西方は昔から田舎の風情が広がり、分散した住居の中には歴史的建物や保護地区も存在する。たびたび氾濫する川は漁場でもあり、氾濫原の経験が、歴史的な鉛の採鉱もあって鉱業への集中を促した。
3.14.2.2 SEAと意思決定プロセス
歴史的には環境問題は、工学中心のプロセスにおいてはあまり重要な役割を果たしてこなかったが、環境審査マニュアル基づき、1990年の研究では環境情報のインプットがより多く行われた。その結果、影響評価と交通計画のプロセスの間の関係は非常に密接であることが判明した。影響評価、交通計画、工業デザインについて同一のコンサルタント会社が請け負うのみならず、マニュアルは技術者や環境問題の担当者との間での情報交換も求めていた。
環境管理者は通常、内部の管理会合に出席し、頻繁に外部の機関や顧客とも会合を持っていた。
3.14.2.3 論点
1975年ノースアンバーランド州議会によって作成された技術審査報告書(TAR)に従い、1978年4月に公衆関与が行われた。
1982年2月、南側の外側ルート(グリーン・ルート)がより望ましい選択肢であると大臣が報告した。しかし、計画の「費用対効果が乏しい」ことに鑑みてそれ以上の検討は行われないことを大臣は表明した。
1978年に、1977年のTARを見直し、改訂した調査結果が公開され、交通省によって確認された別のルート(オレンジ)が、唯一経済的な計画と見なされた。1988年の公衆関与では鉄道隣接地を用いる案が提示されたが、一般市民から多数の支持を得たのは却下されたグリーン・ルートであった。
オレンジ・ルートの地誌的な調査及び土壌調査により、技術的困難性が認識され、新たなTARが1989年2月に公表された。1989年に改訂された国道交通予測に続いて、これら3つのルートが再検討され、1990年初頭の更なる公衆関与の後に、TARは見直及び再公開が行われた。新たなTARではホールトウィッスル南部のグリーン・ルートが望ましいことを述べており、これは再び一般市民の支持を得た。経済的利益よりは交通を緩和する上での環境面でのメリットを考慮してグリーン・ルートが採用された。
1992年、計画デザインと環境影響評価が、1993年3月発刊の「環境報告書」に取り上げられることになった。その後、提案について縦覧が行われ、高速道路法に基づき1994年10月に公衆への調査が実施された。計画は1995年に承認され、1996年4月に建設が開始された。
計画に関連する主な事項は次の通り
a) 南ティン谷またはその住民の環境の質を損なうことなく、ホールトウィッスルの住民に環境改善をもたらす。
b) 洪水のリスクの増加を避ける。
c) 景観の破壊は最小限にとどめる。
d) 汚染土壌地域に対処する。
一つの制約は、土地の一部がナショナル・トラストの不可譲地に指定されており、この計画のために通常の方法で取得することが不可能な点である。ナショナル・トラストは反対し、代案道路(ブラウン・ルート)を提案しているが、これは公衆への調査で却下されたものである。
3.14.3.1 情報収集
この段階では詳細なフィールド調査は行われず、既に利用可能なデータが集められ、現地踏査が実施された。交通データを用いて、騒音、大気質、公共施設関連の初歩的な影響評価が行われた。この間、緩和措置には大きな考慮が払われなかった。最も、改善のための機会も含めて、緩和措置については、より良いルートの選択段階でも考慮されなかった。
3.14.3.2 複数案の立案
1977年から1989年に渡り、7つの異なる代替ルートが作成された。これらは技術的な側面から作成された。公衆の考えが取り入られ、環境影響評価が開始されると、同ルートの別の選択肢が検討された。橋梁が洪水のリスクを高め、また河川生態系に影響を及ぼすことに対処するために、別の技術的代案も作成された。
これらの試みを通じて作成された代替案は、環境上の配慮がなく、高速道路技術者によって作成されたものであった。これは、この段階では驚くことではなかった。また、このような技術者主導で作成された代替案に対する一般市民の反対も驚くことではなかった。本計画に関する環境影響評価の実施において、一般市民の選択に従ったのであるが、環境チームは視覚的なインパクトを軽減し、ネットでの環境への影響を軽減するために計画を少し長期化させることを提案した。これは計画のコストを引き下げるという利点を有し、安価な橋梁が建設された。それでも公衆からの意見募集において、自らの利益の擁護を図る反対論者から更なる代替案が提示されたが、それは技術的、経済的、また環境的に鑑みて受け入れ難いことは明白であった。
3.14.3.3 影響分析
環境影響評価は、当時適用可能であった環境評価についての交通マニュアルに従って実施された。以下の項目が設定されている。
a) 方法の枠組み
b) 交通審査
c) 景観への影響
d) 水生環境
e) 騒音
f) 大気質
g) 自然保護
h) 農業への影響
i) 文化遺産
j) 娯楽及び公共施設
k) 汚染土壌及び廃棄物
l) 相互及び累積作用
いくつかの影響評価項目は同様な方法で広く検討される一方、現在の道路及び橋のためのマニュアル・デザイン第11巻は、異なる評価手法及びそのデータのニーズに合わせ、より能率的な構造をしている。
環境影響評価は、以前の鉄道土手をある一定の角度で横切ることで景観を損ねることを避け、また河川段丘を活用するために、道路の再調整を行うに至った。これによって、計画は多少長引くことになるが、しかし、川に対する2つの橋の鋭角度合いが緩やかになったため、低費用に抑えられることになった。文化遺産、洪水のリスク、景観の破壊、騒音等に対処するための様々な緩和措置もまた、計画に組み込まれた。
代替案の検討は、利用可能な環境情報に基づいて行われた。これには、関心が向けられた重要と考えられる地域も含まれる。現地踏査が行われた。表 33は、高速道路に関連して、この段階で収集されたデータをまとめた。
註:* WRA-環境庁
** 河川局-環境庁
*** WRA-水調整局-環境庁
****1997年DMRB第11巻による
環境影響評価において、生態系、騒音、景観に関する環境面での広範な調査が実施された。騒音及び大気質の予測のために交通データが使用された。これは、環境影響評価報告書が準備されたステージ3に関連する。「広範な」の言葉の意味は、広い範囲の調査が行われたことを意味し、考古学的研究や詳細な土壌調査、植生調査が含まれる。
3.14.3.4 複数案の比較
ブラウン・ルートの主要な影響をまとめるため、評価の枠組みが作成された。影響評価の段階で、ガイダンスでは報告書は以下の項目に沿って作成される必要があるとした。
第1グループ:旅行者:時間の節約、乗り物利用のコスト、アクシデントの対応、ドライバーのストレス、維持費用、歩行者の快適さ、分断、安全
第2グループ:地域住民及びその共同社会:居住用または商業用の建築物、農場、快適な空間、廃墟、騒音、視覚的インパクト、分断、建設騒音
第3グループ:文化及び自然環境:文化遺産、自然の保護
第4グループ:設備利用者:小売店、観光者、スポーツ、娯楽
第5グループ:方法及び計画:国家、地方自治体、地域レベル
第6グループ:財政:計画のコスト及び利益
代替案の影響評価は高速道路局のガイダンスに定められた仕組みで実施された。
個々の代替案を表示した表を全て記載するわけにはいかないが、環境影響評価に続いて、公衆の関与に資するために同表が作成された。表は政府の手引きに従って定められたものであり、当時、作成されたものであった。
この分析により、ブラウン・ルートの場合、騒音、大気質、景観などが人々に及ぼす影響と、文化遺産に配慮した場合の重要な利点とのトレードオフが明らかとなった。これにより、ブラウン・ルートにより影響を受ける60の民家と、防音措置への潜在的要請との間に、微妙なバランスの関係があるものと考えられた。
主要なトレードオフは、住居に近い案の場合、ホールトウィッスルの住民への騒音、大気の質、景観への影響といったリスクを増大させるルートと、住居からは遠いが川谷を浸害することで景観や遺産、洪水のリスクや大気汚染に関連する影響を及ぼすルートとの間の問題であった。騒音を軽減するような計画は一般市民の強い支持を得ることができ、その他の影響もある程度緩和することが可能であったため、そのようなトレードオフの提示に何ら問題は存在しなかった。例外は、より望ましいルートには国家所有の土地やナショナル・トラストにより保持されている土地の収用が必要なことである。この問題が、環境影響報告書に続いて実施された公衆関与の主な理由である。
3.14.3.5 公衆参加
広範囲な市民社会との関係は、4つに分けられた公衆への公開と代替道路に関する公衆関与が行われた。
3.14.3.6 不確実性と累積効果のモニタリング
モニター調査、不確実性、累積効果はこの段階では取り扱われず、環境影響評価報告書及び道路配置の詳細が検討される高速道路計画過程のステージ3の段階において実施された。環境影響評価報告書がそうした情報を提供した一方で、当時、実施に関する課題は一般には考慮されなかった。累積的影響は、環境に関する項目や多様な環境上の影響を受けた場所といった基盤を通じて考察された。不確実性は明らかに、予期された効果が生じる可能性を説明する残余の影響を示す表を用いることによって考慮された。
3.14.4.1 意思決定へのSEAの貢献
英国の制度上、本事例はSEAではないが、本環境影響評価は、ルート選択に関して、公開討論を行う上で、重要な情報を提供した。この点で情報の核となる項目は、騒音、大気の質、景観の影響評価であった。
3.14.4.2 何が起こったか
数年にわたる代替案に関する集中的な検討が行われたが、本環境影響評価は、代替案のルート選定に当たり、速やかな審査を求める公衆の要望を妨げるものではなかった。一般市民の意見と環境の情報は、最終的な計画を実施するのに引き続き重要であり、そして当初の提案よりも環境に鑑みてより受け入れ可能な案の採用に最終的に資するものであった。
3.14.4.3 SEAの優良実践の結論とは
本事例研究によって、以下の主要項目が、計画開始以来それを実施するのに22年間を要した原因であることが明らかとなった。
a. 計画の経済的側面と一般市民の要望との対立
b. 繰り返された一般市民参加の実行
c. 技術的制約の調査の実施が遅れたこと
d. 計画の経済的側面に影響を及ぼす交通予測の変化
最終的にこの計画が成功した要素は、技術デザイングループの中に環境グループを巻き込んだこと、そして地域社会が節約効果の高い現道の改良よりもバイパスを望んだことを認識したことである。
3.15. 事例研究:M6 ジャンクション拡張プロジェクト(英国)
3.15.1.1 計画の性質
この事例研究はバーミンガムとマンチェスターの間の都市及び田園地帯を抜ける52kmの区間について、現存する3レーンの高速道路を4または5レーンに拡張する方法を決定するために採用したアプローチを提示するものである。SEAは交通に関する研究の統合的なアプローチの一部として行われた。
3.15.1.2 SEAの役割
英国において、本影響評価は「戦略的環境影響評価」とは見なされておらず、「第2段階の環境影響評価」であり、政策の場において、運輸大臣が詳細な計画や正式なEIAに沿った上で、高速道路建設に関する最適な選択肢の決定を行うための支援として実施されるものである。
3.15.1.3 事例研究の焦点
本事例研究の焦点は、高速道路の拡幅に際しての最適戦略を決定するにあたり、環境影響評価がいかに有用であるかを示すことである。
3.15.2.1 社会面及び環境面での状況
ジャンクション11~16の間の高速道路M6は、1960年代初頭から半ばにかけて建設された戦略的な高速道路であり、スコットランドとイングランドを繋ぐように英国西部を走り、そして北西部から中央部、更にロンドン及び南東部までを繋ぐものである。現在、この高速道路は1日に90,000~100,000台の車両が通行している。その内約28%の車両が重積載車両であり、過半数の車両がジャンクション11~16間を通過する長距離走行車両である。スタッフォードシャー警察署は、M6において過積載車両を年間6,000~7,000台検知しており、その20%を取り締まっている。ピーク時には、過密な交通のため遅滞が発生し、事故の危険性も増加する。
M6が通過する土地の大部分は改良農地であって、生態学的価値は低い。郡として重要であると認識している生態学的地点の内、80箇所がM6から500m以内に立地するが、そのうち10m以内のものは29箇所だけである。また、その内の過半数がそれぞれ離れた5つの地域に立地している。約19kmに及ぶ3区間には、上記の生態学的に重要であると認識された地点は存在しない。鹿の群れ等、いくつかの保護種とされる動植物がM6付近に棲息あるいは群生している。考古学的価値、文化遺産的価値、共同体的価値及び優れた景観を有する地域は、高速道路のルートに沿って全て認識された。
3.15.2.2 SEAと意思決定プロセス
通常であれば、技術評価報告書(Technical Appraisal report:TAR)が作成され、その中で複数の異なる高速道路ルート案が評価される。しかし、この評価の実施に当たっては、1つ1つの高速道路ルート案の中での前提条件による差異こそが、焦点を絞るべき評価対象である。拡幅に関する複数の選択について、それらの環境上の差異を明らかにするために必要なメッシュの程度は、数百メートルではなく数十メートルの程度である。このため、必然的に環境影響評価の作業が更に複雑になっている。
影響評価は、「道路及び橋梁のための設計手引書第11巻」に示された修正アプローチに基づき、同じルート中において必然的に生じる異なる選択肢の相対的なパフォーマンスを決定するために実施された。結果として通常の「第2段階の環境影響評価」よりも詳細な影響評価が実施された。
環境影響評価は統合的な意思決定過程の一部分をなすものである。なぜなら、特に交通経済学および建設コストだけでは、高速道路をどちら側へ拡幅するべきかという選択において、必要十分な情報を提供し切れないためである。それゆえ、高速道路の拡幅に関する決定においては、環境要因が非常に重要である。
3.15.3.1 情報収集
この影響評価を実施するために、高速道路のいずれかの側が500m渡って選定された。そして、地方自治体及び法的に認められた環境団体との協議を通じて、選定された地域における環境面での制約に関する情報が特定された。また、詳細な調査は実施されなかったが、初歩調査が実施されてM6地帯の環境状況が認識された。
3.15.3.2 複数案の立案
高速道路を拡幅する方法の数は限られている。それゆえ評価を実施するに当たっては、それぞれの方法について土地の収用が必要となるかどうか、以下の通り仮定が設けられた。
1. 狭いレーン:土地収用不要
2. 左右対称(の道路):土地収用不要
3. 左右対称(の道路):両側10-15mまでの土地収用
4. 非対称(の道路):いずれかの片側に20mまでの土地収用
5. 平行(な道路):50mまでの土地収用
6. 合流/分岐:両側50mまでの土地収用、ただし大幅に柔軟性を獲得する
7. オフライン:高速道路と平行の場合、100mの距離を伴った土地収用
様々な選択肢の示唆を検討するため、以下の仮定が設けられた。
1. 狭いレーンのオプションは余分な土地を必要としないため、構造や土工事、接合、植栽に及ぼす影響はほとんどない。余分な土地は景観の扱いや作業の限定、契約に基づく敷地外植栽に活用できると考えられる。結果として統合された計画による解決の完全なメリットは達成されないであろう。
2. 土地収用を行わない左右対称オプションは、土地収用を必要としないが、現存の高速道路の両脇で遮蔽となっている草木を除去するという不都合がある。この選択肢は構造維持の結果に落ち着くか、法外に緩い勾配のスロープとなるであろう。
3. 土地収用を必要とする左右対称オプションは、現存の遮蔽となっている草木を除去するという不都合があるが、余分な土地収用は効果を改善する可能性を提供しうる。
4. 非対称あるいは平行な道路のオプションとして、高速道路のいずれかの片側の土地収用を含む拡張の選択肢は、環境上の特性を維持し、重要な景観要素や高い景観価値を有する地域、近接した居住地の保護の機会を提供する。高速道路の拡張された側は、景観の扱いを広げ、防音としての遮蔽の好機となる。さらにこれらを選択することによって生じる余剰の土地は、景観のため、また防音の改善のための好機となり、適切な建設的保護措置の導入の機会をも提供し得る。しかし、いくつかの場所においては土地収用の増加は、関連する土工事のスケールが拡大することにより、不都合となり得る。
5. 合流/分岐オプションは高速道路の両側に影響を及ぼしうる。そして現存する遮蔽としての植栽を維持したり、環境上の制約を避けたりすることは行わない。
6. 既存高速道路から切り離すオプションは、新たな地域に影響を及ぼし、そこでは天然の鮮やかな環境が破壊される影響が生じる可能性がある。注意深く計画することによりこれらの影響は最小限にとどめることができるが、高い質を有する景観への影響は望ましいものではない。既存高速道路に沿って、近接して設置されるルートは、土地の一部を孤立化させ、コミュニティーを分断するという不都合があり得る。
拡張の方法に関する決定に加え、既存の高速道路のどちら側を拡張するかに関する決定がなされ、平行あるいは非対称のオプションが提案された。
3.15.3.3 課題と指標の選定
技術評価報告書の準備段階で検討された環境面の特徴は、拡張のオプションの選定に重要と見なされた側面のみを反映していることである。これら及びその他の問題のより広く、より詳細な検討が環境報告書の準備中に求められた。
異なる拡張のオプションが環境に及ぼす影響を評価する際、その目的は、それぞれの項目が二重に勘定されるのを防ぐため、独立に取り扱われるよう確保することにあった。個別項目の重要性はまた、M6地帯の場所によって変化した。
高速道路局ガイダンスに従って検討された項目は以下の通りである。
計画及び開発政策の枠組み
居住地及び居住用財産からの土地収用
共同体及び娯楽施設
産業及び商業財産
景観
交通騒音
自然保護
文化遺産
農業及び林業
鉱物資源及び汚染土壌
水産資源
環境向上の機会
3.15.3.4 影響分析
影響評価方法は、一連の情報収集プロセスを通じて、課題のチェックリスト方式が採用された。この一連の情報収集プロセスは、高速道路の片側500mの地域の両側について実施された。最初のうちは保護地域の詳細、例えば特別な科学上の関心の高い地域(以下、SSSIと呼ぶ。)が特定され、拡張オプションに関する弟1次案が準備された。専門家との議論を通じ、地域にとって重要な立地に関する更なる情報、戦略的開発と環境の状況に関する理解が得られた。現地調査も実施された。
定義された一連の重要性の基準を活用し、個別の立地及び課題についての拡張オプションがもたらす結果について、それぞれ適当なレベルの重要性が割り当てられた。例えば、SSSIの喪失ないし部分的喪失は、大きな影響、すなわち拡張オプションの実現性を脅かすものと見なされた。境界線について曖昧性がある場合には、例えば考古学的資源の場合が該当し、緩衝地域が設定された。詳細な計画プロセスや環境報告書の準備を支援するために、更なる立地調査が進行中である。
景観の考慮に関して、拡張に係わる相対的な制約を評価するために用いられる重要性の基準は、様々な拡張オプションに基づく物理的及び視覚的特徴の変化の測定に基づくものであった。これらの基準は、表 34に示されている。
それぞれの拡張のオプションについて、潜在的な影響が記述され、環境面及び高速道路の性質から必然的に決定される地帯の道路区分にはそれぞれに応じた重要度が割り当てられた。表 35は様々な影響が報告された手法を提示している。
3.15.3.5 複数案の比較
様々な環境問題の検討に続き、より望ましい拡張のオプションが、オプションの相対的なパフォーマンスに基づき、項目ごとに特定された。しかし、ある場合ではオプションの中には選定すべきものがないこともあった。この作業を通じ、競合する環境目標を特定することが可能となった。このような競合する目標間の相対的トレードオフが検討された。
ある特定の場所において、望ましい拡張オプションの種類を提示することに加え、どちら側の拡張が望ましいかを図示した地図も環境面での結果に含まれている。図 7は、それぞれの項目について、南側または北側のどちらの拡張オプションが望ましいかの程度を示している。本図から異なる環境項目間のトレードオフが必要なことが明白である。
影響を受け危険に晒されていた環境面の重要な特徴が特定され、その影響・危険性の重大さが一連の重要性基準に照らして判断されたため、オプションの評価が2段階に渡り実施された。第1段階として、考察対象の53kmの高速道路を、環境上の見地に照らして広く均一の一連の道路に分割する。高速道路の合流点(ジャンクション)も、高速道路を分離させる起点となる。その上でそれぞれの道路の環境項目について、それぞれの代替案が環境パフォーマンス順にランク付けされる。これは本質的に、図7に示された地図の基本となっている。この地図はその後、環境専門家及び高速道路の技術専門家らにより行われる議論の基礎として利用された。その他の専門家らは、特に見解が分かれる場合について、個々のトピックの特定の項目に関する適切性を検討した。この検討のプロセスを通じ、より重視すべき点についての検討が可能となり、当該地点に関する拡張オプションの決定が下された。
本プロセスを通じ、各道路について、環境問題間のバランスをとることができたが、いくつかの近接した道路間では、別のバランスの考慮が必要であった。これは、技術者にとっては、コスト及び道路の安全面の問題から、拡張戦略を頻繁に変更することは受け入れ難いことであったためである。このようなバランスを取るに際して、これらの個別項目に責任を負う環境専門家らは、しばしば難しい選択を行わねばならなかった。例えば、ある道路では、ある特性の保護に関する選択を行わねばならず、別の道路については別の特性を保護するための選択を行わねばならない、という具合である。困難な状況の中、これらは環境局との議論に基づき決定された。
3.15.3.6 公衆参加
M6の拡張に関連する環境問題についての情報収集には、法定の専門家らとの広範な協議が含まれた。ひとたび評価の技術的プロセスが完結すると、該当地域の現場における公開展示会が行われた。そこで、一般市民が質疑を行うことができ、拡張の種類に関する好みを表明することができた。
3.15.3.7 不確実性と累積効果のモニタリング
どの拡張オプションがEIAを伴い選定されるべきか、そしてプロジェクト設計に沿って遂行されるべきかについて、運輸大臣が決定することになっていたため、モニタリングは実施されなかった。
不確実性は、様々な土地収用の仮定を設定することにより、また考古学の場合のような緩衝地域の設置により、取り組まれた。
全般的な影響を最も少なくするにはどちらの側を選択すべきかの検討の際の参考として、高速道路の区分に沿った資源への累積的影響が検討された。より重要性の高い価値を有する別のものを保護するために、量的にはより多数のものに影響を及ぼさざるを得ないこともあった。評価のこの段階において、いくつかの特徴、とりわけ計画の長期化に従って影響を受ける生態学的及び遺跡に関する特徴に関して累積的影響が見受けられた。この分析はEIAの期間中、より望ましい代替案を作成するためかなり延長して実施された。
3.15.4.1 意思決定へのSEAの貢献
意思決定過程において全体的に望ましい拡張オプションの選定に貢献するためには、環境影響評価が必要不可欠であった(もっとも、交通渋滞にかかる費用が主要な要因ではあったが)。しかし、環境影響評価は、平行な拡張が行われるべきでない地域を特定する際に、また拡張が北側から南側あるいはその逆にわたって実施される場所を特定する際に、必須となった。また評価結果も公表され、拡張のために提案されているアプローチを支持するのに役立った。
3.15.4.2 何が起こったか
高速道をどのように拡張するかを考察するにあたり、技術的及び環境上の制約から、詳細な評価が実施された。拡張の代替手法は、次に計画基準、環境への影響、建設期間中の交通の混乱及び費用に鑑みて比較された。
1993年8月、国務大臣が平行な拡張により、高速道路を4レーンへと拡大する決定を通知した。広範な調査に続き、平行な拡張が選定され、現存の高速道路に沿った新しい別の自動車道を建設することにより、往復分離の4レーンからなる高速道路が設置されることになった。現存の自動車道の一つは、改修工事の後新しい第2の自動車道となる。現存のすべての高架道は取り壊され、再建され、アンダーパスは拡張、強化、あるいは再建される。混乱及び関連する交通への影響は最小限に抑えられる。追加的な土地が、高速道路の片側のみについて広く必要とされ、拡張される側の選択は、重要な技術的及び環境上の特徴を考慮に入れて行われる。同時に、大規模な景観に関する措置及び騒音の遮蔽が実施される。
平行な拡張に伴う主な利点は、新しい4レーンの自動車道が、広大な居住地域及び要注意の立地から隔離され、新しい土手、騒音遮蔽、近隣地域を保護するために景観上の植栽のスペースを生み出している点にある。また、交通の混乱を最小限の状態に留めた上での建設が可能であり、高速道路利用者及び建設作業員の双方にとっても非常に安全性が高い。もっとも、他の選択肢に比べ、より多くの土地を必要とするが、平行な拡張は、現存の高速道路の一部を修繕または緊急車両のためのサービス道路として維持することを可能とする。
3.15.4.3 SEAの優良実践の結論とは
本事例研究から得られた主要な結論は、詳細な計画の情報が利用不可能であるものの、環境に関する考察を十分に行い、究極的には一般住民の質問に耐えうるものとすることの必要性である。明確な仮説を立て、考古学のように不確実性が高い場合には緩衝地域を設定することもまた、重要な結論である。
3.16. 事例研究: 南西部地域マルチモーダル研究(SWARMMS:英国)
3.16.1.1 計画の性質
交通の将来像についてより効果的な計画を策定するため、政府はイングランド全土に渡る交通に関する一連の主要な研究を委託した。この研究は現在の交通関連の諸問題を明らかにし、将来それがどのように変化し得るか、またそれらの問題に対してはどのような解決策が最適であるのを研究するものである。これらの諸研究のうち、最も規模の大きなものとして南西部地域マルチモーダル研究(SWARMMS)が知られている。図 8は計画対象地域の位置を示している。なお、本研究は2000年4月に開始し、2002年5月に終了した。SEAは計画を実行に移す際に、統合的に実施された。
図 8 SWARMMS計画対象地域の位置(出典:SWARMMSニュースレター)
3.16.1.2 SEAの役割
政府ガイダンス(以下、GOMMMSと呼ぶ。)に基づくSEAの手順が、本研究全般を通じて用いられ、以下の観点からの評価が行われた。
o 4つの代替可能な戦略の作成
o 新たな戦略及び最終的な望ましい戦略の選定
o 戦略を実行するための詳細な方策の立案
SEAは統合的なテーマに沿って交通量、経済性及び安全性といった要素を検討する統合的手法の一部であり、交通モードの変更がどれほど進んでいるかや、当該地域あるいは国としての他の目標がどの程度達成されているのかを精査するものである。
SEAは、代替案やその具体的な実施方策を精緻化することで、選択された戦略が問題の解決において、地域目標との整合において、環境負荷の軽減において、そして持続可能な方法で同地域における経済的機会を最大化することにおいて、最適な戦略であることを保証するために用いられた。
3.16.1.3 事例研究の焦点
本事例研究の焦点は、交通に関する戦略的な研究が、規模が大きく環境面においても複雑な対象地域において、どのように実施され得るのかを示すことにある。とりわけ、本事例研究では交通問題の解決策やその評価の定式化に当たってのトップダウンのアプローチを強調する。なお、他の事例研究ではボトムアップのアプローチを採用した。
3.16.2.1 社会面及び環境面での状況
研究は、対象地域において直面している交通関連の諸問題を評価することから開始する。明らかである非常に重要な問題は、例えば以下の通りである。
地域社会を横断する、あるいは近傍を通過する道路によって引き起こされる地域内の断絶、騒音及び健康に悪影響のある大気質
環境面での価値が高く、しかし脆弱な広大な指定地域
ルート全体の中で、事故率が高い一車線道路
幹線道路網における渋滞、特にピーク時のM25につながるグレーター・ブリストルの周辺地域、トーントン、エクセター、レディング
南西部地域とロンドンの間を結ぶ主な交通ルート地帯における特定時期の渋滞
デーヴォン及びコーンウォールの周辺
道路及び鉄道網の双方ともにおける、移動時間の不確かさ
複数の交通モードを柔軟に接続する貨物運送設備の不足
公共交通サービスの供給の少なさ(ただし、ブリストル-ロンドン間を除く)
とりわけ地方における、主要な公共交通ネットワークへのアクセスの困難
歩行者、自転車及び身体障害者にとって、主要な交通地帯へのアクセスのための設備の貧弱さ
異なる移動手段間の、とりわけバス/鉄道間の接続性の悪さ
異なる移動手段間の「継ぎ目のない」移動を達成するための情報の不足及びその困難
このような土地利用の形態が自動車への依存を倍増させる
地理的に南西部は英国の地域の中では最も広く、面積にしておよそ24,000k㎡、イングランドの面積のおよそ15%を占める。同地域には天然の風景と並んで人的活動により影響を受けたものを含む多様な景観が見受けられ、それらの中には国中でも最も美しく、特有な風景が含まれる。これらは湿原、ヒースの生えた荒野や牧草地帯から、樹木の茂った峡谷、石灰岩の丘、深い渓谷、ごつごつした海岸線まで様々である。同地域には以下が含まれる。
ダートムーア及びエクスムアの二つの国立公園で、1,647k㎡(同地域の7%)に及ぶ。ニューフォレストは、その一部が同地域にまで広がっているが、こちらも現在国立公園の指定の手続き中である。
特に自然の美しいの12地域及び他の2地域の一部を併せると7,121k㎡に及ぶ(同地域の30%)。
指定された638kmに及ぶ自然保護海岸、これは英国の全自然保護海岸の61.3%を占める。
4つの緑地帯は1,056k㎡に及ぶ(南西部の4%を占める)。
同時に南西部には、歴史的建造物、古代遺跡、境界となる地勢、そしてストーンヘンジ及びエイヴバリーという2つの世界遺産でもある居留地、さらに歴史的な温泉町であるバースが存在する。
3.16.2.2 SEAと意思決定プロセス
この研究はGOMMMSに含まれるガイダンスに従った。SEAの総合的な意思決定過程は図 9のようにまとめられる。
図 9 SWARMMS 評価及び意思決定過程(出典:SWARMMSニュースレター)
3.16.2.3 論点
なし。
3.16.3.1 情報収集
SWARMMSのコンサルタントは、研究対象地域の大きさを反映するためにいくつかの変更は加えたものの、概ねGOMMMSの中で運輸局によって示されたガイダンスに従った。データは基本的に国及び地方政府当局が保持する既存データと統合された。しかし、交通に関してはドライバー及びインフラ供給者から計画中の将来の事業に関する詳細情報を入手する必要があった。加えて、マルチモーダル交通モデルを構築するのに必要なデータを更新するべく、追加調査が実施された。
環境に関するデータは、地域開発計画から収集された。同計画は環境保護地域及び将来の土地利用形態の変更が特定された地域について詳述している。環境保護の目的で、国によって指定された地域に関する情報は、政府の環境局から入手されたが、それらの多くはインターネットのWebサイトからも入手可能である。例えば、食糧危機に関する地図は環境局のWebサイトで見ることができる。
3.16.3.2 複数案の立案
コンサルタントは4つの複合戦略を開発することを決定し、これらの各戦略は新しい戦略を開発するために評価された。結果として複合戦略は一つ一つが十分に異なるものであり、そのため対象地域の諸問題を取り扱う代替手段の相対的な利点の検討が可能となった。それぞれの複合戦略は、諸問題を扱うに際して、合理的かつ総合的な試みである必要があったため、様々な要素に基づくものではあったが、それぞれの戦略は手法においてマルチモーダルを採用していた。
異なる戦略については図9に示した。また、表 36はそれぞれの戦略の様々な措置による貢献をまとめて相対的に示した。
研究ではゼロ代替案は考慮されなかった。なぜなら、検討された代替案は出資者との協議の結果、作成されたものだからである。出資者は、問題の解決に貢献すると彼らが考える交通手段の種類を特定した。作業は、これらを多様な戦略にグループ分けすることであった。コンサルタントは図10に示された課題を選択したが、一方でコンサルタントがコストや、あるいは経済発展や観光開発といった特定の目的を達成することを基準にして戦略を特徴付けることも可能であった。
図 10 SWARMMS複合戦略(出典:SWARMMSニュースレター)
コメントに続いてより望ましい戦略が構築され、そのような戦略を実施するのに必要となる一連の詳細な措置が特定された。この段階は計画段階と呼ばれ、複合戦略の評価において用いられた初期の仮説の定義、実現可能性及び優先順位の明確化、そして奨励される措置及び政策の明確化が含まれる。
***戦略の主な構成要素
** 戦略を有意味に支援する構成要素
* 戦略の副次的な構成要素
より良い戦略には、以下の課題に基づいて、交通政策の構造及び内容に対するコンサルタントの提言が示されている。
移動の必要性の削減
公共交通のより優れた統合
主要な都市へ/からの公共交通利用の促進
主要な都市地域内における交通制限
新しい道路及び鉄道インフラ
鉄道により移動する機会の増大
長距離バス及び高速バスのネットワーク及び設備の改善
地方における需要対応型の公共交通
現存の道路のより有効な利用
地方の道路の安全性及びその他の措置
航空及び海運ネットワークの拡大
観光業支援のための特定措置
3.16.3.3 課題と指標の選定
評価に用いられた課題及び指標は主にGOMMMSに示された手引きから引用されたものであるが、研究対象地域の特徴を反映するにあたり、似通っている指標や方法のいくつかについて、コンサルタントによる変更が加えられている。評価が実施された課題は以下の通りである。
a) 騒音
b) 当該地域の大気質
c) 温室効果ガス
d) 自然景観
e) 都市景観
f) 歴史的遺産
g) 生物多様性
h) 水環境
i) 健康
j) 移動環境(快適さ)
そもそも本研究が、既存のまた出現しつつある交通関連の諸問題に取り組むに当たって望ましいとされる戦略を特定するために計画されていたことから、何もしない案及びBaU(現状継続)案は、打開策としては認められなかった。それ故、これら2つの代替案はSEAを特徴付けてはいない。
3.16.3.4 影響分析
いくつかの影響については定量的な手法により予測され、その他については詳細な説明や専門家の判断に基づいている。例えば、騒音、大気質及び温室効果ガスは、交通流に関して事前に予想された変化を用いることで、数量的に予測することが可能である。自然景観、歴史的遺産、都市景観などはより主観的であるため、適切な専門家の支援を受けて、また法定の環境団体との協議を受けて、定性的に詳述するという手法により予測されている。
影響評価を実施するにあたり、特定の計画及び措置(新しい鉄道駅の立地及び関連する鉄道サービスなど)について一連の仮説が立てられた。これは、技術プロセスが同化する複合戦略の説明として、モデル化ツール及び評価方法に取り込むために必要であった。「複合戦略評価技術ノート(Composite Strategies Appraisal Technological Note)」は、コンサルタントによって採用された評価技術の詳細を一般に公開するものである。これは環境影響評価方法の概略を提示するのみならず、経費節減、安全性、経済効果、利便性及び統合的な評価についても提示している。
3.16.3.5 複数案の比較
複合戦略の相対的なパフォーマンスの評価に続いて、交通関連の政府目標に対して、それぞれの戦略の相対的なパフォーマンスが技術的見地から評価され、一般市民及び意思決定者に報告されてレビューされた。
結果報告はGOMMMSに提示された手引きに従って行われたが、それは以下の4つの要素からなる。
影響評価一覧表(以下、ASTと呼ぶ。)-これは、中心的な5つの交通関連の政府目標(環境、安全、経済、アクセスの良さ及び統合)がどの程度達成されたかを分析するものである。
地方及び地域的目標がどの程度達成されたかの影響評価
特定された諸問題がどの程度改善されたかの影響評価
配分と公正さ、手ごろ感と財政的持続可能性、実用性と一般市民の容認度合いに関する支援的分析
付録1は、より望ましい戦略のために完了されたASTを示している。
それぞれの項目に提示された手法は、いずれも一連の段階を踏まえたものである。たとえば、騒音については、それぞれの交通が多様なモデルと関連しているため、平均的な騒音発生の違いは交通機関の特徴を元に、単純化された計算手法が用いられる。これらの変化量は、次に影響を受けると想定される人口と関連付けられ、それゆえ影響を被ることになる人口は、鉄道及び道路交通の双方について計算された。しかし、そのような影響を軽減するために緩和手段がどの程度適用されるのかということについての調査は、全く行われなかった。
SEAにおける影響評価の目的は代替戦略間の比較にあり、そのため関心の焦点は、外的要素に対する絶対的なパフォーマンスではなく、むしろ相対的なパフォーマンスにあることは認識するべきである。これによって予測の作業や影響評価は、かなりやり易いものになるのである。
重み付け:一般的に、重み付けはコンサルタントよりも、むしろ選出された政治家の領域であり、それゆえ結果は重み付けなしに提示される。しかし、コンサルタントは感度分析を内々の分析として行い、仮に異なる重みが割り振られていたなら結果は違っていたであろうかを見極めようとする。このようにして政策決定者に、決定にあたりどの要素が重要視される傾向にあるのかを示すことが可能となる。SWARMMS報告書の中で、どの要素に重み付けされたという証拠は公には存在しない。
重要な事実:GOMMMSでは、影響の重要性を反映するため、影響の大きさを7または8ポイントスケールで表示することを求めている。目的は、異なる項目間にわたる影響評価の一貫性のみならず、マルチモーダルの研究間においても一貫性を確保することにある。重要度に関する基準の詳細は、運輸局のWebサイト(www.dft.gov.uk)で閲覧可能なガイダンス・マニュアルに示されている。
3.16.3.6 公衆参加
先の図9に示されるように、研究は一般市民を巻き込む広範にわたる機会を伴うものであった。4つのニュースレターが作成されたのみならず、一般市民へのアンケート及び展示会が研究対象地域で広く実施され、すべてが研究Webサイトにより支援された。さらに、地域当局との、テーマに基づく一連の会合や討論も実施された。諸問題の段階と関連付けられた、協議過程の詳細を伝える報告書は、採用されたアプローチを図解している。
3.16.3.7 不確実性と累積効果のモニタリング
SEAで行われた予測について、環境をモニタリングするための提案は行われなかった。
様々な大臣及び地方議会により行われる主要な決定に関わる諸問題に取り組むため、「起こりうる事態」について一連の分析が実施された。しかし、不確実性を取り扱うための明確なアプローチは取られなかった。上述したように、感度分析を交通モデル及びその他の定量的な要素に適用することが期待された。しかし、これは公開で実施されのではなく、内々の技術的試行として行われる場合が多かった。従って、SWARMMSにおける感度分析の詳細は利用できるものではない。
より望ましい戦略における場合と同様、各複合戦略における措置の全体的影響を反映する重大な評点の配分がなされることで、累積的影響は主観的方法によって考察された。同じ場所で起きた、あるいは特定の社会グループに及ぼされた様々な影響の累積的影響を評価することが可能なガイダンスは無かった。累積的影響の明示的な考察は、コンサルタントによって実施された評価報告書には明記されていない。しかし、実際に幅広い影響を生じさせる個別の交通施策について、各項目に対して単一の影響評価スコアを負付与する必要性を考慮すれば、少なくとも個別の交通施策が環境に及ぼす作用全般についての暗黙の見解は存在していた。また、複合的な交通施策の影響の総体でもあるそれぞれの戦略の影響を報告することも必要であった。この点はSEAの特に不透明な部分の一つであり、ガイダンスの改善が必要である。
3.16.4.1 意思決定へのSEAの貢献
SEAは研究のプロセス全般を通じて役立った。代替戦略を評価するのに用いられ、また最終戦略及び提案を評価するのにも用いられた。そして最終戦略において、環境上の重要事項が認識された。それらには以下が含まれる。
移動の必要性の削減
公共交通機関の統合
公共交通機関利用の促進
鉄道による移動の増加、駅、サービス、所有車両の改善等
貨物交通設備の増加―主要道路におけるHGV交通量の削減、他方でバス発着場付近におけるHGV交通量の集中
長距離バス設備の改善―これにより自動車交通量をいくらか削減することが可能
地方の地域における需要対応型の公共交通手段―これにより地方社会へ非常に有益な影響をもたらしうる
地方の地域における需要対応型の公共交通手段―これにより地方社会へ非常に有益な影響をもたらしうる
3.16.4.2 何が起こったか
SWARMMSは、自然の美しさにおいて顕著な地域であるブラックダウン・ヒルを通るA303の往復分離道路化の提案にとどまらず、ある非常に微妙な交通/環境問題を扱うものであった。環境団体との間には、頻繁にまた非常に連携した協議機会があったにもかかわらず、そして彼らがA303問題の代替案に取り組む別の研究を提案したにもかかわらず、彼らの見解がコンサルタントによって取り入れられた形跡はほとんどない、という共通認識がある。
微妙な環境上の条件のため、環境団体はSWARMMS報告書の見直しをコンサルタントに委任し、これらは追加的な証拠として南西部議会が利用できるようにした。環境団体が提示した主な主張は以下の通りである。
交通手段間及びその他の戦略及び政策、とりわけ土地利用に関わるものとの関連性の欠如。
選択肢が十分に調査されず、あるものは根拠を伴わずに排除されている。
問題ある仮説及び影響評価の結果をもとにした、環境上の影響に関する不適切な評価。
現存の問題及び提案された措置によって引き起こされる影響を解決するための緩和措置能力に関する考察の欠如。
実際の環境資源と潜在的経済利益との交換条件が探究されていない状況での、道路の改善が経済的利益の増大をもたらすとする見解を根拠づける証拠の欠如。
国家レベルで重要な環境資源に与えられるべき重大性の欠如。
これらの論評及びA303問題への代替案の存在にもかかわらず、南西部議会はコンサルタントの提案を受け入れないことを決定した。代わりに彼らは政府に対し、環境面で大きな制約を伴う2つの高速道路計画の往復分離道路化を推奨した。政府による決定が待たれるところである。
3.16.4.3 SEAの優良実践の結論とは
SWARMMSにより用いられるGOMMMSプロセスの主な建設的なポイントは以下の通りである。
戦略によって取り組まれる諸問題が明確に特定されるということ。評価担当者はその上で、提案された戦略がこれら諸問題をいかに解決するかにつき、報告を行わなければならない。
地方の目的が、諸問題及びその他の計画や組織の目的についても考慮に入れること。
代替案の評価が実施され、そのことが個別措置の選択の指針となること。
作業計画書が透明性を高めること。
ASTが諸問題の提示を促進すること。
一般市民及び環境団体を巻き込む機会が用意されており、それにより研究を様々な視点から捉えることができること。
しかし、プロセスのいくつかの要素には、補強されるべきものもある。
諸問題及び地方の目的が代替戦略とどのように関連しているのか、また、代替戦略がどのように発展していくのかに関して不透明であった。
諸問題のいくつかは、非常に一般的なやり方で提示され、いくつかの問題を強調するための具体的証拠がほとんど提示されなかった。
テーマ内での評点の配分と集成が不明瞭である。SWARMMS報告書の発行以来、この問題に関する政府の手引きが改善されている。(DTLR,2002)
3.16.5 参考文献
DETR(2000年3月):多用な研究のための方法に関する手引き
http://www.dft.gov.uk/itwp/mms/index.htm
DTLR(2002年):GOMMMS別冊―蓄積される環境上の影響
http://www.roads.dft.gov.uk/roadnetwork/heta/aeimpact/index.htm
SWARMMSのすべての文書は以下のインターネットページで閲覧可能である。
公的諮問の枠組み:望ましいルート(PREFERRED ROUTE)及び傍観(DO-NOTHING)
*ホルトホィッスル地域においては制定法上の地方的計画は存在せず。ティンデール地方委員会(Tynedale District Council)
は広範な区域の現在地方的計画を準備中。1994年春に公的諮問にかける予定。