環境アセスメントは情報交流のルール化によって、よりよい環境保全とそれに向けての合意形成をはかるものです。
ここではアセスメントの本来の姿を、江戸時代の裏長屋を舞台とした物語をとおして紹介します。
「そんなことで長屋の皆も心配しているから、ここはひとつあんたの方から長屋の皆に相談してみてはくれまいか」
「他ならぬご隠居さんのおっしゃることだし、私も長屋の衆にご迷惑はかけたくない。二つ返事ではい分かりましたと言いたいところですが、実は私のところも蔵がなくて不自由していたところへ今まで使わしていただいていた越後屋さんの蔵が先だっての火事で焼けちまって、もういよいよ蔵を建てるしかないんですよ」
「それは当然ご事情があるのは承知ですよ、何も蔵を建てるのがいけないとか、長屋の皆がいいといわなけりゃ建てるなとかいっている訳じゃない。ただいきなり長屋の鼻先に大きな蔵を建てられたら皆の衆だってこんちくしょうってことになる。あなただって町内で商売するのに人にうらまれては為になりますまい。それに蔵の建て方だっていろいろあるんじゃありませんかね。上州屋さんのご都合がつく範囲で長屋の皆も納得するうまいやり方もみつかるかもしれませんよ」
「おっしゃることは分からないでもないですが、先程おっしゃった長屋への影響を調べて皆の衆に説明するっていうのはどんなもんでしょうかね。そりゃああそこへ蔵を建てれば良い影響があるわけはない。影響はないといえば嘘になるし、影響はありますといってそれでも蔵はつくりますといえばあたしは大変な悪役で、あいつは悪いと知っててそれでも蔵をたてたってことになり、余計皆を怒らせることになりますまいか」
「そりゃあ影響がないなんてことはありませんよ。ただ長屋の皆が騒いでいるような大変な影響かどうかはわからないじゃないですか。それにそういうこともよく考えて、その上で上州屋さんとして出来るだけのことはするというお考えを示していただければ長屋の衆だって無茶はいいますまい」
「そうですかねえ、まあいずれ長屋の衆に断りなしではすまないだろうとは思っていましたから、ここは一つその環境アセスメントなるものをやってみましょうかね」
「そういっていただけるとありがたい。環境アセスメントってのはなじみがないでしょうが、話し合いの手順がきちっと決まってますから、むやみやたらに言い合いするよりきっとうまくいきますよ」
ということになり、上州屋さんは奉行所から環境アセスメントの技術指針などをもらってきて環境アセスメントをやることになりました。