大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(I)<スコーピングの進め方>(平成12年8月)

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技術シート 登録番号:地下水-2

環境項目 地下水 技術等の種類 調査
技術等の名称 地下水流動:トレーサ法
技術等の概要  トレーサ法による地下水流動調査は、電解質(食塩・塩化アンモニウム)、染料(フロレッセン)、同位体(222Rn、3H、14C、2H、18O等)の人工の指標物質をトレーサとして地下水中に投入して周囲に設置した観測孔などでその濃度を検出し、地下水の流向や流速を把握する手法である。
調査・予測の
必要条件
トレーサとして用いる物質のバックグラウンド濃度の把握が必要。
使用するトレーサの条件としては、以下の事項が挙げられる。
[1] 地下水と同一挙動をとり、移動過程での吸着、沈殿が少ない。
[2] 極低濃度までの検出が可能。
[3] 毒性がない。
[4] 天然の存在量が少ない。
[5] トレーサの入手、測定が簡易なこと。
適用範囲
調査対象地の地下水質や土地利用状況、地形・地質条件等を考慮して、適正なトレーサを選択する必要がある。
対象とする帯水層の深さ、層厚、連続性などの基本的性状を十分に把握した上で実施しないと、意味のない調査になる危険がある。
課題  トレーサとして、染料を使用する場合にはその検出限界に限界が、電解質を使用する場合にはバックグラウンド濃度が高い場合があり、追跡範囲に限界が生じるケースがある。また、染料、電解質をトレーサとして用いる場合、以下の原因により過大にでる傾向があるので繰り返し調査を実施するなど注意が必要である。

[1] 投入物質の比重が水より大きく沈殿するため、流動より拡散の影響が大きい。
[2] 投入物質の量が多いため、口径の小さいボーリング孔では孔内水位の異常上昇や、地下水面の攪乱が生じる。
[3] 採水時の地下水面の低下による影響を受けやすい。
調査範囲が広くなると時間がかかり、不正確になる。
観測データの取り扱いに経験を要する。
水質等に係る関係法令の尊守。
参考とした
文献・資料

基準・指針・ハンドブック等

(社)日本河川協会編(1997)改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説・調査編.山海堂、東京、pp591.
地下水ハンドブック編集委員会(1998)改訂地下水ハンドブック.(株)建設産業調査会、東京、pp1504.
建設省河川局(1993)地下水調査および観測指針(案).山海堂、東京、pp330.
土質調査法改訂編集委員会(1995)地盤調査法.地盤工学会、東京、pp648.

単行本

山本荘毅(1983)地下水調査法.古今書院、東京、pp490.
水収支研究グループ(1993)地下水資源・環境論-その理論と実践-.共立出版、東京、pp350.

備考  広域の地下水流動系の把握には、同位体、主要溶存成分や地下水温を指標とする方法がある。特に、地下水温を指標として方法は、比較的容易に測定でき、あらゆる地域で適用が可能なことから、近年着目されている手法である。

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