事後調査によって当該事業に伴う環境影響を十分に把握し、適切な再評価を実施するためには、事業者は、現況調査及び予測・評価の段階から事後調査・再評価を念頭において計画を策定し、実施することが望ましい。 |
事業に伴う環境影響を把握するためには、自然変動による環境の変化が正確に捉えられる必要がある。現況調査において、事業実施区域と周辺地域の別に事前のバックグラウンドの状況等を十分に把握する必要がある。 |
【考え方等】
a. 一般的に現況調査は1年から数年程度になると考えられる。事前から事後にかけて調査を継続することが困難な場合を想定すると、時間的に連続したデータの解析から影響の有無を検出するのではなく、事後の影響想定区域と非影響区域の比較から影響を解析することが考えられる。これに対処するためには、両区域におけるバックグラウンドの状況に元々どのような差があるのかを事前に把握しておくことが必要である。
b. 事後調査においては(本来は事前調査から)、可能な限り時間的に連続したデータを得ることが望ましい。これにより、当該事業の影響以外の要因によるバックグラウンドの変化や、影響が徐々に拡大していく状況等が把握できる可能性があり、再評価に際して判断基準のひとつになることが考えられる。
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【考え方等】
a. 環境影響評価を行う場合には、想定される様々な悪影響の原因、不確実な要素を抽出し、全てを安全側にとって実施(最悪条件で予測・評価)する必要がある。
b. 事業に伴う影響予測と、将来の周辺環境の変化に伴うバックグラウンドの変化の予測が区分して行われることが適切と考えられる。将来のバックグラウンドを事業者単独で予測することは困難であることから、行政機関等とバックグラウンドの予測に係る情報の交換を十分に行う必要がある。
c. 情報の不足・不透明さにより将来の状況を正確に見積もることが困難な場合には、予想されるバックグラウンドの変化の定性的な傾向、及び不確実な事項を整理しておく必要がある。将来の環境の状況がほとんど変化しないことが明らかな場合には、現況調査時のバックグラウンドを適用することができる。
d. 予測条件、予測の前提となっている事項(例えば下水道整備やバイパス整備)、環境保全措置の内容について、事後調査により確認可能な形式で整理しておくこと。
e. 予測及び評価に係る不確実な事項とその程度について整理しておくこと。
f. 事業が長期におよぶ場合には、予測対象年次の途中においても事後調査を実施する必要がある。この調査結果と比較対照するため、適切な途中年次についても予測・評価を行う必要がある。
g. 予測結果は、事後調査結果と対比可能な定量的表現によって示す必要がある。定量的な予測・評価が困難な場合でも、影響の方向性(現状維持か、増加するのか、減少するのか)を示すべきである(例えば、生息環境の改変により、干潟生物の生息数・生息種数が減少の方向に向かう等)。