事後調査・再評価(レビュー)マニュアル(平成11年3月 環境庁)
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2.4.事後調査手法の考え方
事業に伴う環境影響を適切に把握するためには、以下に整理した事後調査計画の策定及びその実施に係る考え方を参考にして事後調査を実施することが望まれる。
2.4.1.事後調査計画の策定や手法の選定にあたっての考え方
2.4.1.1.実施主体の考え方
(1) |
事後調査の実施主体は当該事業の事業者であることを基本とする。
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(2) |
譲渡等によって主体が変更される場合においても、事後調査が引き続き遺漏なく実施されるために、譲渡契約等により事業を引き継ぐ者に対して事後調査を義務づける必要がある。
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【考え方等】
a. 事後調査は「汚染者負担の原則」に基づき事業者の責務により実施すべきものであり、事業者自らが環境影響評価書に公表した内容にしたがって計画し、実施することが原則となる。
b. 基本的事項において、「当該対象事業に係る施設等が他の主体に引き継がれることが明らかである場合等においては、他の主体との協力又は他の主体への要請等の方法及び内容について明らかにできるようにすること」としており、譲渡等により実施主体が変わることが想定される場合には、その扱いを環境影響評価書で明らかにしなければならない。基本的にはこれにしたがって事後調査が継続して実施される。しかしながら、影響評価時点では予想していない主体の変更が行われる場合があることを想定すると、主体変更に際しても遺漏なく事後調査が実施されるよう関係者間で合意する必要がある。
c. なお、当該事業と時期を同じくして近隣区域で別の事業が実施される場合には、調査の効率化の観点から関係する事業者が連携した調査を実施することについても考慮することが望ましい(例えば、近隣区域で埋立事業がほぼ同時期に実施される場合等)。
2.4.1.2.計画策定等における基本的考え方
(1) |
調査計画は事業者が策定することを基本とする。
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(2) |
ただし、事後調査の適正さ・客観性を確保するためには、地方公共団体環境部局及び第三者機関等の助言・指導のもとで計画・実施することが望ましい。また、地方公共団体が実施している環境モニタリング結果を活用する観点からも、事業者は担当部局と綿密に協議を行い調査計画を策定することが適切である。
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(3) |
調査計画は、調査の内容、調査方法、調査データの解析方法、調査結果の反映方法等を具体的に示すこと。
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【考え方等】
a. 「事後調査の項目及び手法の内容」は環境影響評価書に示すこととなるが、事業者は詳細な実施計画を別途作成する必要がある。一般に、工事の段階から事後調査を実施することから、着工以前に実施計画を作成することとなる。
b. 事後調査を適正か客観的に実施するためには、地方公共団体環境部局及び第三者機関等の関与が必要と考えられる。
c. より専門的な調査(例えば生態系調査)が必要な場合には、専門家等がより深く関与すること(例えば、専門家が事業者と共同して調査を実施すること)も想定される。
2.4.1.3.調査項目選定の考え方
(1) |
調査及び予測の技術的限界、予測の前提とした条件の推移の不透明さ、環境保全措置の効果に係る知見の不十分さなど、調査・予測・評価・対策措置に伴う不確実性の大きい項目を対象とし、環境影響評価手続で述べられた意見等を配慮して選定すること。
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(2) |
なお、環境保全措置等の実施により環境影響が少ないと予測・評価された項目についても、当該措置の実施状況及びその効果等を確認する必要がある。
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(3) |
気象、水象等の予測条件とした事項も同時に調査すること。事業者は、事後調査の実施に際して、これらの事項が予測条件と大きく変わっていないことを確認する必要がある。
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【考え方等】
a. 事後調査の定義でも示したように、選定項目に係る予測の不確実性が大きい場合、効果に係る知見が不十分な環境保全措置を講ずる場合等において、環境への影響の重大性に応じて、調査項目を選定する必要がある。
b. 逆に言えば、選定項目について環境影響が確実に予測でき、しかも環境保全措置により確実に影響を抑制・低減できることが明らかな場合には、事後調査を実施する必要がないと判断することも想定される。ただし、環境保全措置が予測の前提条件どおりに機能しているか(例えば下水道整備が計画どおりに進んでいるか)、予期しえない事態は発生していないか(例えば高度処理まで導入する必要があると判断される)といった事項が懸念される場合には、必要に応じて一定の事後調査の実施を考慮する必要があると考えるべきである。
c. 予測等の不確実性は、以下のような事由により生じているものと考えられる。
1)対象項目に起因する不確実性
- 対象項目に係る科学的知見が必ずしも十分でない場合
- 対象項目に関する調査データが不足している場合
- 対象項目自体が本質的に不確実な事象である場合
2)予測手法等に起因する不確実性
- 予測手法自体が学術的に十分な確実性をもって確立されていない場合,大きく変化する場合
- 予測条件、予測の前提等に不確実な事項が含まれる場合
・水象、気象等、予測のための自然条件が十分に把握できていない場合
・予測の前提としている周辺状況(例えば下水道整備やバイパス整備)が予定通りに推移していない場合
3)選定した環境保全措置の効果等に起因する不確実性
- 他の事業では適用例も多く技術的にも成熟しているが、当該事業では使用事例が少ない場合
- 実用可能と判断される段階に至った先進的保全措置を採用する場合
- 技術的特性から、必ずしも定量的に効果を予測・評価しがたい保全措置を採用する場合。例えば、これまでにも人工干潟の造成、藻場造成等が実施されてきたが、代償措置として適切なものとなっていることが判断できる事例はほとんどない。
d. 通常、環境影響が最大(最悪)となる条件で予測・評価されていることが多い。事後調査結果と予測・評価内容を適切に比較検討するためには、予測の前提とした気象、水象等の条件が想定した範囲内にあることを確認しなければならない。したがって、予測条件とした事項についても事後調査と並行して調査する必要がある。
e. 事後調査結果等から著しい環境影響がみられた場合には、適切な措置を講じるとともに、当該影響をより的確に把握するために関連する調査項目を追加する等の対応をとることが望ましい。このような事態に柔軟に対応するために、評価書において事前に「事後調査結果等の状況に応じて、調査項目の追加等の対応を検討する」方針を明記することが考えられる。
2.4.1.4.調査手法選定の考え方
事後調査の結果は、現況調査結果及び予測評価内容と比較対照が可能なことが第一条件であることから、一般的には、事後調査の手法は現況調査の手法に合わせることが適切である。ただし、技術の進展により、評価時点での不確実性が低減できるような調査手法が使用可能となった場合には、より効果的な手法の採用を検討することが望ましい。
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【考え方等】
a. 事後調査の調査手法の選定に関しては、現況調査時点の手法を継続使用する場合からより効果的な手法を選定する場合までが想定される。
b. そこで、調査手法選定にあたっての考え方を整理すると次のようになる。
1)現況調査時の手法を踏襲する場合:事後調査の結果を現況調査、予測評価内容と比較対照する観点からは適している。不確実性を減少させる観点からは必ずしも適切ではないと考えられる。
2)実用可能な最善手法を採用する場合:評価時点の不確実性が低減できるような調査手法の使用が可能となった場合においては、その採用を検討することが望ましい。ただし、現況調査手法による調査結果との整合を図るために、一部両法併用等により調査結果の比較検討を行うことが必要となる。
- 個別事業で新たに採用した調査手法等に関する有用情報が公開されることにより、事後調査だけでなく、現況調査においても新たな手法が採用されやすくなる。一方で、技術情報の収集・整理・解析、及び技術手法の普及に関して、国・地方公共団体における取り組みが望まれる。
- 例えば、生態系全般に関しては、選定される生物種の局所個体群、生態系の持続性(最小存続可能個体数が維持されているか、あるいはその生息環境の状態が良好に保たれているか等)の観点から調査を設計することが考えられる。
3)技術的な問題等により影響を科学的に把握する手法が十分に確立されていない場合には、事前に事業者が一定額の調査費用を計上しておき、その予算の枠内で技術開発の進展に応じた対応(調査、措置等)を図ることも考えられる。
c. 対象項目毎の調査手法選定の考え方
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持 |
大気環境 |
大気質 |
- 工事中の事後調査は、工事の進行に合わせて行われるものであることから、速やかに調査結果を整理・検討し、環境影響が認められる場合は、環境保全措置の強化について迅速に対応する必要がある。
- 供用後の事後調査では、環境の調査に加え、環境影響の程度を明らかにするために、1. 予測の評価時間を踏まえ整理した事業地周辺の事業実施前の環境濃度の状況、2. 環境調査の予測で用いた気象要素の状況、3. 排出源、排ガス処理施設等の稼働状況等、4. 事業地周辺の当該事業以外の事業活動に関する情報などが必要であり、これらのデータの収集・解析方法について予め検討しておく必要がある。
- 道路交通公害等に関して、行政目標の途中年度に事後調査を実施する場合には、比較対照する予測・評価のためのバックグラウンドを適切に把握するための方法を検討する必要がある。
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騒音 |
- 人の感覚に及ぼす影響が大きいことから、苦情の内容を十分把握し、その内容に応じた監視体制・対策等を再検討する等、苦情への対応を十分に行う必要がある。
- 騒音の測定にあたっては、予測精度を上げるために、予測の条件とした事項(例えば、交通量、車種、速度、発生源の種類、発生源のパワーレベル、周波数特性等)も併せて調査を行う必要がある。予測の前提条件が成立していない場合には、施設の稼働状況と環境の状態との関係を明らかにする必要がある。
- 騒音防止のための措置を講じた場合には、事後調査結果から措置の効果を確認するとともに、必要に応じて措置の強化等を検討する。
- 屋内騒音についても必要に応じて調査する必要がある。
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振動 |
- 人の感覚に及ぼす影響が大きいことから、苦情の内容を十分把握し、その内容に応じて監視体制・対策等を再検討する等の苦情の対応を十分に行う必要がある。
- 振動防止のための措置を講じた場合には、事後調査結果から振動防止措置の効果を確認するとともに、必要に応じて措置の強化等を検討する。
- 屋内振動についても必要に応じて調査する必要がある。
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悪臭 |
- 複合臭等による影響を適切に把握するために、人の嗅覚を用いて測定する臭気濃度及び臭気指数の把握についても併せて検討する必要がある。
- 人の感覚に及ぼす影響が大きいことから、苦情への対応体制等を十分に整備する必要がある。
- 悪臭調査にあたっては、周辺の主要な悪臭発生源の状況や気象条件等に係る情報を入手するための方法を検討しておく必要がある。
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水環境 |
水質 |
- 降水時の河川流入等の自然要因、工程変更等の事業要因が水質に直接的、間接的に影響を与えるため、これらの事項も併せて把握する必要がある。
- 可能であれば事後調査により得られたデータをパラメータとして再度シミュレーションを行い、水質汚濁の機構を明確にする。
- 事業地周辺に藻場・干潟等が存在する場合には、事業による影響を把握するとともに、藻場・干潟の浄化機能を適切に把握するための方法を検討する必要がある。
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その他 |
- 水象への影響について、降雨等の自然的要因、工程変更等の事業要因により水象に予期しない事態が生じていないかを確認するために、河川流量、地下水位、湧水量、潮流等についても適切に把握する必要がある。また、観測密度を上げるために簡易な観測手法の導入についても検討する必要がある。
- 地下水への影響については、広域での影響を把握するための手法の検討、情報の蓄積を図る等の方法を検討する必要がある。
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土壌環境・その他の環境 |
地形・地質 |
- 予測・評価段階で対象事業地域の周辺で学術上・環境保全上(例えば、地域固有性が高い等)重要な地形・地質等がみられた場合には、当該地域でも同種の地形・地質が工事に際して判明することを想定して、対策や事後調査の進め方等を検討しておく必要がある。
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地盤 |
- 地下水位、地盤変動の調査を行うとともに、対象事業の調査として、揚水量、工事工程、事業の進捗状況、環境保全措置の実施状況等を適切に把握する必要がある。
- 事業地周辺地域の建築物等への影響の有無についても適切に把握する必要がある。
- 広域影響を把握するための手法の開発、情報のデータベース化等の取り組みを今後検討することが望ましい。
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土壌 |
- 土壌汚染の直接的・間接的な要因となる大気汚染、水質汚濁、廃棄物等の管理状況や排出状況等、及びこれらの影響を防止するための措置が適切に実施されているかを確認しておく必要がある。
- 生態系、水環境の保全と密接に関係する事項として、土壌の健全性を把握するための方策を検討することが望ましい。
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その他 |
- 構造物の建造に伴う影響として、当該建物の存在による圧迫感についても適切に把握する必要がある。
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生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全 |
植物 |
- 上位性・典型性・特殊性の視点から選定された複数の生物種に関して、種ごとの生息状況と生活史(ライフサイクル)特性(分布、個体数、成長、年齢構成、世代更新等)、および対象種と関係の深い主な生物種間の関係(捕食-被食関係、競合関係、共生関係等)を把握するための方法を選定することが望ましい。同時に対象種の生息・生育環境を適切に把握するための方法を選定することが望ましい。
- 生態系に関しては、調査手法が十分に確立されておらず、対象種ごとに調査手法を十分吟味する必要があることから、地域の専門家等の助言・指導のもとで調査を計画・実施する必要がある。
- 生態系に関する指標として選択した種への影響を評価、把握するだけでは不十分であり、これらの指標種を用いて生態系全体への影響を評価するための方策を検討することが望ましい。
- 動植物、生態系を保全する観点からは、保全生態学的な視点での調査を行うことが今後求められる。保全上重要な生物種のみならず、生態系システム全体としての持続性を評価するための調査を検討することが望ましい。
- 特定の生物種の生息・生育状況だけを把握するだけではなく、※景観生態学的な観点からの調査を検討することが望ましい。
(※景観生態学;生態系を地形、植生、土地利用、物質循環等の様々な空間的な要素で構成されるランドスケープと生物との関係を総合的に分析し、生態系の保全や新たな環境を作り出す取り組み(研究))
- 事業に伴う自然環境の状態を把握する方法の一つとして、住民参加型の調査やモニタリング等の実施についても考慮することが望ましい。
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動物 |
生態系 |
人と自然との豊かな触れあい |
景観 |
- 事業計画地周辺の景観について、審美性、固有性、親近性、歴史・文化性、視認性等の観点から特に配慮すべき景観資源、眺望点への影響の把握及びその保全のための取り組みを行う必要がある。
- 周辺の身近な風景への影響の把握及びその保全のための取り組みについても検討する必要がある。
- 景観を構成する要素の変化のみならず、これらの要素から人間が享受するものの状態の変化についても、人間の意識・認識(価値判断等)に関する手法(計量心理学や社会工学的な手法)を用いて把握する必要がある。
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触れあい活動の場 |
- 「野外レクリエーション地」として知られるものだけでなく、身近な自然的環境(雑木林、水田や畑、並木、鎮守の森、小川、緑地等)についても、触れ合い活動の場としての役割等に配慮した調査方法を検討する必要がある。調査対象については、周辺住民等にアンケート調査を実施する等社会工学的な手法を用いる。
- 利用が顕在化している場のみに限定せず、既存知見等から地形情報や植生等の資源性を考察し、将来の利用可能性を有する場についても調査対象として扱う必要がある。
- 住民等の野外活動、触れ合い活動等に関して、対象となる施設及び場所の状態、影響の程度、利用環境の変化、自然との関係の変化等を把握するために、住民への聞き取りや住民参加型の調査等を実施することが考えられる。
- 当該事業が「触れ合い活動の場」へのアクセスに及ぼす影響の範囲を把握し、影響を極力少なくするための方法・措置等を検討する必要がある。
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環境への負荷 |
廃棄物等 |
- 廃棄物・温室効果ガスの低減に関しては、排出量の抑制・再資源化(有効利用技術の開発)・減量化・適正処理等の推進状況についても定期的に整理し、負荷低減のための措置等に反映する必要がある。
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温室効果ガス等 |
2.4.1.5.調査範囲・測点設定の考え方
(1) |
事後調査の調査範囲、測点配置は、現況調査範囲と測点、及び予測評価範囲を基本として設定する。
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(2) |
影響把握及び不確実性削減の観点から、必要に応じて、調査範囲を拡大(あるいは集中)したり、測点を適切に配置しなおすことにより、影響が広域におよぶことや一部地域に集中的にみられることが想定される場合には、より効果的に影響を把握する方策を採用すること。
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【考え方等】
a. 事後調査の目的は、予測・評価が適切であったかどうかを実証的に検証し、必要に応じて追加的な措置を講じることにある。したがって、事後調査における調査範囲・測点は、現況調査にこだわらず、不確実性を少なくしてより効果的に影響を把握する観点から、データの時空間的不足等を補うように設定することが適切である。
b. 調査範囲の選定、測点配置に関して想定しうるパターン(代表例)を整理すると、次のようになる。調査範囲・測点配置を現況調査と変更する場合にも、予測・評価との比較対照が可能なように設計すること、非影響域にも適切な測点が設置され、事前・事後を通じたバックグラウンドの変化を把握できるようにすること等に配慮する必要がある。
調査範囲 |
調査測点 |
パターン例 |
理由(現況調査等から・・) |
現況調査と同じ |
現況調査と同じ |
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変更 |
補完測点を設けて充実 |
空間的不均質性が大 |
現況調査結果に基づき削減 |
空間的不均質性が小 |
空間的には減、時間密度は増 |
時間的不均質性が大 |
狭く変更 |
変更 |
影響想定範囲に絞り込む |
影響範囲が限定的であることが合理的に予測されている |
広く変更 |
変更 |
より広域の調査を盛り込む |
影響想定範囲外での変化を把握しないと評価困難;例えば渡り鳥等 |
※この他に空間的にも時間的にも測点を充実させる等の様々なパターンが想定される。
c. 一方、環境影響が予測範囲内の一部に限定されることが明らかな場合には、より効率的に調査を行うために、影響範囲に時空間的密度を集約した調査範囲・測点配置を検討することも考えられる。
d. 対象項目毎の調査範囲・測点設定の考え方
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持 |
大気環境 |
大気質 |
- 調査範囲については、対象事業毎の予測結果を踏まえ最大着地濃度が出現する地点を中心に、影響を及ぼすことが予想される地域、影響の主たる受け手がいる地域の中から測点を設定する必要がある。
- 事業地周辺の既存の環境データの活用方法を検討した上で、環境影響の判断に必要な測点を設定するのが適切である。測点の設定にあたっては、1. 対象事業以外の特定発生源の直接的な影響を受けにくいこと、2. 周辺建物等構造物による局地的な気象の影響を受けないこと、3. 事業計画、周辺建物特性等を踏まえた高さ方向、4. 風配の状況等について考慮し、適切な測点を設定する必要がある。
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騒音 |
- 周辺の建物の配置・道路交通量・道路の構造等を勘案して、特に問題となりうる区域を中心として測点を設定する必要がある。
- 当該事業の周辺地域において他の建設事業等が実施されている場合には、これらの作業の進捗状況についても適切に把握する必要がある。
- 事業の工程・進捗等に応じて、騒音・振動の発生源が時間的・空間的に著しく変化する場合には、必要に応じて、発生源の位置に合わせて測点を移動させることについても検討すること。
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振動 |
悪臭 |
- 悪臭の影響が広範囲におよぶ場合において、その影響を広域的に把握し、対応するために、自治体によるモニター結果等を参考にするとともに、苦情の対応を影響が及ぶ範囲に拡大する等の検討が必要となる。
|
その他 |
- |
水環境 |
水質 |
- 事業実施区域において、流入河川の影響や赤潮の発生等が懸念される場合には、これらの影響がおよぶ区域にも適切に測点を配置することが望ましい。また、流入状況を把握するために河口付近に対照する測点を設置すること。
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底質 |
地下水 |
- 地下水汚染予測結果から、汚染が著しいと予測される区域に調査地点を重点配置する必要がある。
|
その他 |
- |
土壌環境・その他の環境 |
地形・地質 |
- 学術的価値が高いもの、天然記念物に指定されているものだけでなく、環境保全上重要と思われる地形・地質が当該事業の周辺に存在する場合には、これらに影響がおよぶ範囲を考慮して調査範囲、測点等を設定する必要がある。
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地盤 |
- 地盤沈下による影響が予想される区域、特に、住居地や保全すべき建造物が存在する区域、軟弱地盤が存在する区域等を中心として、調査範囲、測点配置等を設定する必要がある。
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土壌 |
- 現況調査、予測・評価の範囲を対象として調査を行うことを基本とするが、特に土壌汚染が懸念される区域、土壌汚染の原因となる作業が行われる区域において重点配置する等の配慮が必要である。
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その他 |
- |
生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全 |
植物 |
- 現況調査において設定した調査測点は、土地の改変等で連続した観測が困難になる場合もあるので、現況調査結果及び予測・評価内容と整合するように、事後調査の調査範囲・測点等を設定する必要がある。
- 選定された生物種の生息・生育範囲・行動範囲等を考慮して調査範囲を設定する。広域での調査が必要な場合は、住民・隣接事業者等に協力を呼びかける等の取り組みが望ましい。
- 景観生態学的な調査を実施する場合には、事業地周辺の地形、植生、土地利用等の様々な要素を勘案して、調査範囲、測点配置等を設定することが望ましい。
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動物 |
生態系 |
人と自然との豊かな触れあい |
景観 |
- 景観に係る基礎情報(地形、水辺、生物的要素等)から、景観的価値の高いと判断される景観資源、眺望点への影響が適切に把握できる調査範囲、調査地点を設定する必要がある。
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触れあい活動の場 |
- 対象事業地域、あるいはその周辺に存在するレクリエーション地の位置、規模、環境資源としての特性・利用状況、アクセスの状況、自然と人間との関係等を十分に把握した上で、調査範囲を設定する必要がある。
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環境への負荷 |
廃棄物等 |
- |
温室効果ガス等 |
- |
2.4.1.6.実施時期・調査期間の設定の考え方
(1) |
予測対象年次を決めて予測・評価を行った項目については、対象年次に相当する時点で事後調査を実施することが必要となる。予測年次に至る期間が長期間におよぶ場合においては、途中年次であっても必要に応じて事後調査を実施すること。 |
(2) |
短期間あるいは単年度の調査では対象項目に係る環境の状態が十分に把握できない場合には、複数年にわたる調査を検討する必要がある。動植物・生態系については、年変動も大きいことから、その実態の把握が可能となる調査期間を検討する必要がある。
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(3) |
供用後の事業活動が計画どおりに実施され、かつ、環境の状態が予測の範囲内にあることが確認できた項目については、調査を完了することができる。
|
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【考え方等】
a. 予測・評価の妥当性等を検証するため、予測年次における事後調査結果を用いて再評価を行うことが最低限必要である。また、予測年次までの期間が長期の場合には、事業の実施過程において一時的に環境が悪化することも予想されることから、途中年次であっても適切な調査を行う必要がある。
b. 予測項目によっては、単年度の集中的な調査で十分な場合もあると考えられる。ただし、そのような場合においても、予測条件が成立していること(例えば施設の稼働率、周辺道路の整備状況など)を確認することが適切と考えられる。一方、短期間あるいは単年度の調査では対象項目に係る環境の状態が把握できない場合には、調査期間を複数年あるいは長期間に設定する等の検討が必要となる。
c. 動植物・生態系に関しては、対象種のライフサイクルを考慮する必要がある(Spellerberg,1991)。例えば、漁業資源動態の評価のために15年、魚類の行動及びエビ類の資源評価のために10年間の調査を実施した例もあり(Hendersonら,1984;他)、インパクトに対する生物相や生態系の反応は一般的に次世代以降に生じる可能性があることを示唆している。これらを勘案し、対象となる生物種あるいは生態系への影響の有無が十分に把握できる期間を設定する必要がある。
d. 環境保全の観点からは供用後も継続して事後調査を実施することが望ましい。しかしながら、事業が計画どおりに実施され、環境の変動の幅が問題とならないレベルであることが確認できた項目については、事業者の判断により、調査を完了できるものと考えるのが妥当である。ただし、調査完了の判断にあたって、事業者は地方自治体環境部局や第三者機関等と協議する必要がある。
e. 対象項目毎の実施時期・調査期間の考え方
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持 |
大気環境 |
大気質 |
- 工事中・施設の供用中において可能な限り連続した大気汚染物質、騒音・振動等の測定を行うことが望ましいが、特に環境負荷や環境影響が最大になる時点に調査頻度を高くする必要がある。
- 大気汚染・騒音・振動等については、時間、曜日、季節等により状況の変化が見られることから、当該地域の特性、予測評価時間等を勘案して、調査時期、期間等を設定する必要がある。
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騒音 |
振動 |
悪臭 |
- 悪臭が発生する工事の実施期間、施設の稼働中は可能な限り連続した悪臭物質・臭気濃度の測定を行うことが望ましいが、特に環境負荷や環境影響が最大になる時点に調査頻度を高くする必要がある。
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その他 |
- |
水環境 |
水質 |
- 水質汚濁を生じる工事の実施期間、施設の稼働中は可能な限り連続した測定を行う必要があるが、特に環境負荷や環境影響が最大となる時点に調査頻度を高くする必要がある。
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底質 |
地下水 |
- 工事中については、地下水質への影響が懸念される作業期間中、影響が最大となる時点に調査を行う必要がある。
- 供用後については、事業活動が定常な状態に達した時期において、環境に及ぼす影響が最大になる時点に調査を行う必要がある。
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その他 |
- |
土壌環境・その他の環境 |
地形・地質 |
- 竣工後も長期間にわたって影響を及ぼすような事象(例えば埋立等による周辺海岸の地形変化)については、長期間の調査を行って、当該事象の終結点を確認する必要がある。
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地盤 |
- 地下水の揚水による地盤沈下が最大になる時期に地下水位等の調査を実施するとともに、その途中段階においても必要に応じて調査を行うことが望ましい。
- 学術上重要な地形・地質等が工事に際して発見された場合には、追加的な調査・措置等を実施する必要がある。
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土壌 |
- 土壌への影響が最大になると予想される時期に実施する必要がある。
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その他 |
- |
生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全 |
植物 |
- 工事による影響が最大となる時期、改変された環境がある程度回復したと考えられる時期に、一定期間の調査を実施する必要がある。
- 植物への影響を把握するためには、世代の継承が確実に行われていること(例えば3世代程度)を確認するための調査を行うことが望ましい。
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動物 |
- 動物の生息基盤である植生の復元(回復)や動物への影響が発現するのには長期間を要する場合があるので、これらを勘案し、調査時期・期間等を設定する必要がある。
- 動物への影響を把握するためには、世代の継承が確実に行われていること(例えば3世代程度)を確認するための調査を行うことが望ましい。
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生態系 |
- 動物・植物の調査期間等を勘案し、生態系調査のための期間を設定するのが望ましい。
- 生態系への影響を把握するためには、改変された生態系が安定状態にあることの見極めができる時期まで調査することが望ましい。
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人と自然との豊かな触れあい |
景観 |
- 工事の実施途上及び工事完了後改変された自然環境等が回復し、安定状態に達した時点に実施する必要がある。
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触れあい活動の場 |
- 工事の実施途上及び改変された触れ合い活動の場等がある程度回復した時点に実施することが望ましい。
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環境への負荷 |
廃棄物等 |
- 環境への負荷低減に関しては、定期的に排出量を把握し、技術の進捗に応じて削減計画を見直す必要がある。
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温室効果ガス等 |
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