平成13年度 第1回総合小委員会

Ⅰ 評 価

・スコーピング段階で収集された情報に基づき設定した保全方針を踏まえ、当初計画を立案することによって、眺望景観の価値のうち「普遍価値(調和性・利用性)」、「固有価値(固有性・減少性)」、囲繞景観の価値のうち、「普遍価値(快適性)」、「固有価値(歴史性・郷土性)」に対する影響は、概ね回避(表Ⅴ-1に掲げた価値認識と相関が高い物理指標の変化を回避)できると判断した。

・しかし、当初計画に対する予測の結果、眺望景観の「普遍価値(自然性)」と「固有価値(郷土性)」及び囲繞景観の「普遍価値(自然性)」については、価値の低下が認められたことから、環境保全措置を講じた各種修正案を検討した。

・当初計画(または妥当性の検証の結果不採用とした修正案)および各修正案の価値の認識項目の変化は表Ⅰ-1のとおりである。

・修正Ⅱ案では、構造物の規模・構造の変更による△△山周辺のスカイラインの切断は概ね回避されたことから、保全方針は概ね達成されると判断した。

・また、デザイン・修景の変更によって、囲繞景観の普遍価値(自然性)の変化についても低減されたことから、「自然性が高い景観区の保全」に対する効果が認められると判断した。

・一方、「触れ合い活動の場」における環境保全措置を優先したために、立地・配置の変更による影響の回避または低減が不十分なものとなった囲繞景観の普遍価値(自然性)についても、代償措置による影響の緩和が認められる。

・このため、事業の実施による景観への影響は、スコーピング段階での影響の回避および生じることが予測された影響に対して講じた環境保全措置により、事業者の実行可能な範囲内で概ね回避実行可能な範囲内で概ね回避または低減が図られるものと評価した。

 

表Ⅰ-1 「景観」に関する評価(総括)

  当初計画または不採用とした修正案 修正案
回避または低減措置


 
立地・配置




 
  • 「中部混交林区」「集落混交林区」「○○川中流区」を中心とする一帯の景観区の樹高に関する合計得点は960点。
  • 修正Ⅰ案の合計得点は1,001点であったが、「触れ合い活動の場」の環境保全措置を優先したため、不採用。
  • 「触れ合い活動の場」の環境保全措置を優先し、修正Ⅱ案を採用、影響の回避または低減が不十分であったため、代償措置を検討。なお、以降の環境保全措置は修正Ⅱ案を対象に検討。
規模・構造


 
  • 構造物により、△△山周辺のスカイラインの一部が分断。
  • △△山を中心とする60°視野内の人工物占有率は2.6%。
  • 構造物による△△山周辺のスカイラインの分断は生じない。
  • △△山を中心とする60°視野内の人工物占有率は2.2%。
デザイン・修景、設備
  • 評価実験において4人が支持。
  • 評価実験において26人が支持。 
代償措置

 


 
  • 集落混交林区の囲繞景観の普遍価値(自然性)を表す指標である樹高に関する得点は185点から311点に上昇。

Ⅱ 事後調査

4.事後調査実施案

表Ⅱ-2 事後調査の実施案

調査項目

 
構造物の規模・構造変更による保全措置の効果の確認 構造物の色彩変更による保全措置の効果の確認 修景植栽の実施による保全措置効果の確認 残置樹林への植栽(代償措置)による保全措置効果の確認
調査範囲 ○○ヶ丘からの眺望 ○○川中流区内(○○台)の眺望 集落混交林区内
実施時期・期間 供用開始1年後
 
供用開始1年後
 
供用開始から5ヶ年間程度
 
調査頻度 1回/季 1回/季 1回/季 1回/年
調査方法



 
○○ヶ丘から撮影した眺望写真と予測画像の比較による効果の検証に用いた指標値の状態を検証 ○○台から撮影した写真を用いた被験者による視知覚心理学的評価実験により効果の程度を検証 植栽の活着・生育状況の確認、○○台から撮影した写真と予測画像との比較により効果の程度を検証 植栽の活着・生育状況の確認


 
調査結果の取扱い インターネットによる調査結果の公表
 
不測の影響への対処 修景植栽の追加による構造物視認量の軽減 構造物の壁面補修に合わせた色彩の再変更 施肥、土壌改良、補植(樹種の見直し含む) 植生管理(除間伐、施肥等)、補植
実施体制 事業者 事業者 事業者 事業者

5.事後調査報告

表Ⅱ-3 事後調査報告(供用開始後1年目)の例

調査項目

 
構造物の規模・構造変更による保全措置の効果の確認 構造物の色彩変更による環境保全措置の効果の確認 修景植栽の実施による環境保全措置効果の確認
 
残置樹林への植栽(代償措置)による保全措置効果の確認
効果の確認













 
○○ヶ丘から撮影した眺望写真と予測画像を比較した結果、残置森林の効果により、予測画像よりも構造物の視認量が低下することが確認された。





 
○○台から撮影した写真を用いた被験者による視知覚心理学的評価実験の結果、色彩変更による効果は期待通り得られたものの、窓枠の金属素材の反射光を原因とする評価の低下が見られた。



 
修景植栽は良好な活着状況にあり、実生の生育も確認された箇所が多いものの、切土法面を中心に土壌の排水不良による根腐れを原因とする枯死が確認された。
なお、○○台からの眺望における修景植栽の効果はまだ十分に得られていないが、植栽の良好な活着・生育状況から判断すれば、将来的には期待通りの効果が得られると推測される。
植栽の活着・生育状況を確認した結果、概ね良好な生育状況にあることが確認された。










 
追加措置

 
(特になし)

 
窓枠への反射防止テープ貼付の実施
(事業者)
枯死箇所に対する土壌改良(客土、盲排水管敷設)及び補植 (特になし)

 
今後の対応











 
(特になし)











 
(特になし)











 
1年後を目途に追加措置の効果の確認を行う。
なお、追加措置の効果が確認された場合、今後の植栽管理は不要になると判断した。






 
当該植栽は「触れ合い活動の場」の項目での野鳥観察の場への影響に対する環境保全措置を優先したために実施した代償措置であるため、当面は基本的に事業者による管理を継続するが、その間に野鳥観察団体を中心とする市民団体等との共同管理体制を確立し、5年目以降を目途に同団体への管理移管を目指す。
今後の事後調査計画

 



 



 
植栽の効果確認のため、供用開始後5ヶ年間にわたり継続して実施する。
 
植栽の活着・生育状況確認のため、供用開始後5ヶ年間にわたり継続して実施する。

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