平成13年度 第1回総合小委員会

Ⅳ 予 測

Ⅳ-1 眺望景観の変化予測

1.眺望景観の変化予測

[1] 視点名称 ○○ヶ丘
差し替え  
<景観の現況> ○○ヶ丘は、事業実施区域近傍の高台に位置する住宅地である。視点からの眺望は、地域のランドマークとなる○○山~△△山一帯の緑豊かな丘陵地が中~遠景域にパノラマ的に望まれ、そこから派生する稜線がスカイラインを形成している。また、眼下には△△川沿いに形成された水田景観が展開する。事業実施区域は主眺望対象となる△△山とほぼ同一方向に位置するが、視認性解析結果によれば、大半は手前の地形に遮蔽され、視認することはできない。
<変化の予測> 事業実施に伴う景観構成要素の変化は以下に示したとおりであり、△△山を中心とする眺望視野(60°円錐視野内)のほぼ中央の中景域に構造物が出現し、その一部は△△山付近のスカイラインにかかることとなる。事業実施による人工物の増加は1.1%程度であり、一部でスカイラインの連続性を分断する。また、背景となる△△山の山体の高さに対する構造物の高さ比は約25%であり、構造物が山体の比較的上部に視認される。事業実施により以上のような眺めの変化が生ずる(次頁C.G.参照)。
 

60°円錐視野内の景観構成要素区分の割合変化

  
凡例   景観構成

要素区分
現況

(%)

実施後

(%)

割合の変化要素

(%)
 

 

空域

42.0

42.0

構造物(-0.0)

 

水域

0.0

0.0

 

 

樹林域

13.3

12.2

構造物(-1.1)

 

人工緑地

16.6

16.6

 

 

農地

18.1

18.1

 

 

人工物

10.0

11.1

構造物(+1.1)

合 計
 

100.0
 

100.0
 


 
 

図Ⅳ-1 眺望景観の変化予測結果

2.眺望景観の価値の変化予測

・眺望の変化に伴う価値の認識項目の変化の程度は、以下の図Ⅳ-2の通りである。



[1]

視点名称

○○ヶ丘

認識項目

指   標

現 況

事業実施後

普遍価値

 

自然性
 

人工物以外の視野占有率(眺望方向を中心とする
60°円錐内の全視野-当該視野内の人工物(%))

90.0%
 

88.9%
 
調和性 山体に存在する建造物の高さ/背景となる山体の高さ 0.00 0.25
利用性 居住者人口+日最大来訪者数 1,031人 1,031人
固有価値   固有性
 

特徴的な視覚的要素の数
 

水田、○○山、△△山(計3)

水田、○○山、△△山(計3)

郷土性

 

地域のシンボルとして認識されている△△山の視認性
 

山頂付近の視認性

視認できる

視認できる
スカイラインの連続性
 
連続性あり
 
一部で連続性がとぎれる

減少性
 

近~中景域における斜面緑地の緑視率
(眺望方向を中心とする60°円錐内)

46%
 

45%
 

【価値の変化予測例】

図Ⅳ-2 眺望景観の価値の変化予測結果

Ⅳ-2 囲繞景観の変化予測

1.囲繞景観の変化予測

・事業の実施に伴う直接改変により変化が生じる景観区は以下の図Ⅳ-3及び表Ⅳ-1のとおり である。

   
 
  事業実施区域
 
  直接改変域
 
  囲繞景観の状態が
  変化する景観区

表Ⅳ-1 景観区に占める改変面積・率

景観区名称及び№ 現況面積(ha) 直接改変面積(ha) 改変面積率
尾根区







 
1 北部稜線コナラ林区 17.31 0.00 0.00%
2 中部稜線植林区 13.21 0.00 0.00%
3 ××川上流区 18.84 0.00 0.00%
4 中部斜面混交林区 12.77 1.38 10.78%
5 集落南部植林区 9.84 0.19 1.98%
6 集落北部混交林区 20.30 14.27 70.32%
7 砂礫層アカマツ林区 18.57 0.01 0.05%
8 造成跡草地区 4.24 0.00 0.00%
9 上流植林区 11.19 0.00 0.00%
10 中流コナラ林区 18.32 0.00 0.00%
11 下流マツ・コナラ林区 28.70 0.00 0.00%
谷区















 
12 □□川下流区 8.15 0.00 0.00%
13 □□川下流支沢区 3.45 0.00 0.00%
14 ○○川合流区 2.01 0.79 39.44%
15 □□川中流区 4.56 2.63 57.72%
16 □□川中上流支沢区 6.03 0.00 0.00%
17 □□川中流集落口区 3.43 0.19 5.54%
18 林道○×線植林区 17.40 0.20 1.13%
19 ○○集落地区 17.14 8.68 50.64%
20 ××方面歩道区 10.95 1.12 10.21%
21 ○○川下流区 6.03 0.96 15.92%
22 ○○池区 4.87 0.14 2.81%
23 ○○川中流区 11.49 4.62 40.17%
24 ○○川上流区 8.55 0.00 0.00%
25 ○○川上流支沢区 4.60 0.00 0.00%
26 ○○川最上流区 10.00 0.58 5.81%
27 ○○川谷頭斜面区 6.99 0.00 0.00%
28 ××川中流植林区 3.38 0.00 0.00%
29 ××川上流区 4.62 0.00 0.00%
平  均 10.58 1.23 11.65%

 注:直接改変に係る景観区に「網掛け」をしている。

2.囲繞景観の価値の変化予測

・直接改変を受ける景観区における価値の認識項目の変化の程度は、以下の図Ⅳ-4~5の通りである。

図Ⅳ-4 景観区ごとの「状態の変化」と「価値の変化」予測結果(その1)


景観区№

23

名称

○○川中流区

状態の変化

価値の変化

■直接改変の程度
・事業実施後は、南側に隣接するNo.6景観区とともに約40%のエリアが直接改変を受け、新たに出現する研究施設地区に変化し、現在の谷地形は南側の支谷をほぼ失う不自然な形状となる。このため、約60%残される現景観区の囲繞景観の価値は相当程度変化すると予測される。
  ・景観区の約40%にあたる4.62haが直接改変をうける。


■囲繞景観の認識項目に関する指標の変化
<普遍価値(自然性)>

・事業実施に伴う直接改変により、当該景観区の自然性の高さを規定していると考えられる平均樹高20m以上(ランク5)の植生の構成比は33%から13%、樹高10m(ランク3)以上の合計では89%から50%と大きく減少するとともに、新たに法面緑化、道路等の人工物が出現することから、当該景観区の自然性は、大きく低下するものと予測される。






 

<植生単位の平均樹高>
  • 当該景観区内の植生の樹高に関する得点は373点であり、全景観区内でも平均的なものであるといえる。ただし、現況でランク5(樹高20m以上)が1/3、ランク3以上の合計は89%近くを占めており、自然性の高さを規定する重要な要素となっていると推定される。しかし、下表のとおり直接改変によりランク3以上の植生が大幅に減少し、ランク1へと転じると予測される。
植生単位の平▼均樹高ランク 現況 事業実施後
構成比 得点(*) 構成比 得点(*)
5(20m~ ) 33.3% 166.5 12.9% 64.5
4(15~19m) 24.0% 96.0 18.9% 75.6
3(10~14m) 31.7% 95.1 17.7% 53.1
2( 5~ 9m) 4.6% 9.2 3.9% 7.8
1( 0~ 4m) 6.4% 6.4 46.6% 46.6
合計 100.0% 373.2 100.0% 247.6

 

<植生単位の林床植生の粗密度>
  • 当該景観区内の林床植生は、現況でランク3が過半を占め、またランク5も存在しないことから、合計得点でも平均の297.4をやや下回っている。しかし、次頁表の通り直接改変によりランク1(造成裸地、人工草地)が現況の4%から45%へと増加すると予測される。
<普遍価値(快適性)>

・直接改変により当該景観区の植生構成は大きく変化し、ランク1のエリアが大幅に増加する。しかし、当該景観区は、現況で快適性の高いランク5の植生域は存在せず、また、ランク4も8%から7%とわずかに減少するにとどまることから、新たに出現する造成裸地・人工草地の緑化等の保全措置により快適性の低下を緩和しうる可能性もあると予測される。

図Ⅳ-5 景観区ごとの「状態の変化」と「価値の変化」予測結果(その2)


景観区№

23

名称

○○川中流区

状態の変化

価値の変化
 
植生単位の林床植生の見通しランク 現況 事業実施後
構成比 得点(*) 構成比 得点(*)
0.0% 0.0 0.0% 0.0
7.6% 30.4 6.9% 27.6
57.2% 171.6 31.3% 93.9
30.9% 61.8 17.3% 34.6
4.3% 4.3 44.5% 44.5
合計 100.0% 268.1 100.0% 200.6

<備考>全景観区の現況の平均得点は297.4
   *:ランク×構成比

<固有価値(歴史性)>

・歴史性を指標する資源に対する直接的改変は回避されていることから当該景観区における歴史性の変化は小さいと予測される。

<固有価値(郷土性)>

・郷土性を示す景観要素の一方が消失し、かつ事業実施区域内でも数少ない渓谷景観であることから、当該景観区における郷土性は大きく低下するものと予測される。
 

<史跡分布数>

・ 当該景観区には、「窯跡」が2箇所分布するが、この窯跡及びその周辺はいずれも直接改変域には含まれないと予測された。

<ヒアリング調査で抽出された景観要素数>

・当該景観区には、「○○川上流部の渓谷景観」、「集落跡」のふたつの郷土性を表す景観要素が分布するが、このうち、事業実施区域内でも数少ない渓谷である「○○川上流部の渓谷景観」が直接改変域に含まれ、渓谷としての河川景観が消失すると予測された。

  ・事業の実施による「○○台」からの眺めの変化予測を行ったCG画像を用いて、被験者30名により視知覚心理学的手法による
評価実験を行った結果、30名中25名から
明らかにⅠ案よりⅡ案の方が、「自然性」及び「快適性」に係る価値の低下が緩和されるとの評価結果が得られた。






 
■眺めの状態の変化













 
・事業による直接改変域及び構造物の出現により、当該景観区内の眺めに変化が生じると予測されたことから、当該景観区の囲繞景観の主題をなして
いる「○○台」からの眺めの変化について、以下のとおり予測した。
 
<現況>人工地視認量0.5%










 

<改変後-Ⅰ案>人工地視認量3.4%

<改変後-Ⅱ案>人工地視認量3.0%

          

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