3 予測手法
3.1 眺望景観の変化予測
1) 眺望景観の変化予測
眺望の変化を予測する方法としては、コンピュータ・グラフィックス(CG)、フォトモンタージュ、模型、透視図等を用いた予測画像を作成し、調査によって把握された現況における視覚的資料(映像情報)と比較することにより、視覚的な変化状況を推定する方法が一般的である。
2) 眺望景観の価値の変化予測
眺望の変化による価値の変化については、調査段階で設定した各価値軸ごとの認識項目に着目し、調査及び眺望の変化予測において作成した視覚的資料(現況における映像と予測画像)を用いて、視知覚心理学的な手法の適用により眺望変化に伴う価値の変化を推定するのが一般的である。
従来の環境影響評価においては、眺望の変化予測の結果はある程度示されていたものの、眺望変化に伴う価値の変化については曖昧なあるいは一方的な説明にとどまっている場合が多く、評価の段階において第三者の理解が得難い原因の一つとなっていた。しかし、価値の変化についての予測結果を示すことは、次の段階での保全措置の検討方針を明確にするとともに、評価の段階の客観的判断根拠を得るという点においても重要である。
視覚資料を用いた視知覚心理学的手法の適用は、環境影響評価の分野において十分な経験の蓄積がなされてきたとは言い難いが、景観に関する学術的研究の分野においては、既に多くの研究成果が得られている。
したがって、今後はそれらの既存知見を活用しながら、個々の案件ごとに調査段階で把握した代表的指標の物理的変化量の測定を行うことにより推定したり、あるいは直接、価値の変化に関する認識把握や感覚量測定を行う必要がある。
3.2 囲繞景観の変化予測
1)囲繞景観の状態の変化予測
囲繞景観の状態の変化予測は、直接改変とそれに伴って生じる様々な影響要因による景観要素の状態の変化を景観区ごとに予測することによって行う。予測方法としては、調査によって把握された景観区の区分と事業計画における直接改変区域を同精度の地形図上でオーバーレイすることにより、直接改変により囲繞景観の状態が変化する景観区を抽出した上で、その変化状況を推定するのが一般的である。
直接改変による囲繞景観の変化は、景観区内での改変面積の図上計測等の結果を用いて、景観区に占める改変面積率等を示すことにより推定する。
その他の影響要因による囲繞景観の変化は、他の環境項目の予測結果や類似事例の引用、計量計画的手法、シミュレーション画像の作成等の手法を用いて、直接改変を受ける景観区及びその周囲に存在する景観区の場の状態、利用の状態、眺めの状態がどのように変化するかを示すことにより推定する。
囲繞景観における眺めの状態変化に当たっては、眺望景観の時のように特定の眺望点からの眺望景観を特定することができないことから、シーン景観に対する従来の予測手法では十分対応できないため、CG技術の適用によるアニメーションやバーチャル・リアリティー(VR)手法の導入や模型の活用等による新たな予測技術の導入についても検討すべきである。
2)囲繞景観の価値の変化予測
囲繞景観の状態変化による価値の変化については、調査段階で設定した各価値軸ごとの認識項目に着目し、調査及び囲繞景観の状態変化の予測結果を用いて、類似事例等の引用による仮説的推定、価値の変化に関する認識把握による推定、視知覚心理学的な手法の適用による推定等を行う必要がある。
従来の環境影響評価においては、囲繞景観に関する調査・予測・評価が明確に位置づけられていなかったため、環境影響評価における経験の蓄積は現段階では十分とはいえないが、場の有する景観的な価値をめぐる住民と事業者との対立といった問題に対処していくためには、今後の個別案件ごとの試行的な取組の積み重ねが必要である。
類似事例等の引用による仮説的推定は、類似の囲繞景観を有する地域の開発事例を資料調査により検索し、価値認識の変化に関わる問題が生じた事例、あるいは生じなかった事例との比較によって仮説的に推定する。
価値の変化に関する認識把握による推定は、先に行った囲繞景観の状態変化の予測結果を用いて、ヒアリングやアンケート等を行うことにより、囲繞景観の価値の変化状況を把握することによって行う。
視知覚心理学的な手法の適用による推定は、眺望景観の変化の予測手法と同様の手法を用いて行う。