地球環境に関する配慮としては、いまだ歴史が浅いものの、二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスの排出量及びその森林等による吸収量、熱帯材等の使用量等を評価の対象としている事例も見られる(港区の制度、オランダの環境影響評価事例、カナダの環境影響評価事例)。
事業等の影響の空間的、時間的な累積については、調査対象国のいずれの制度でも対象としている。累積的影響の例としては、当該事業以外の活動による大気や水質等の汚染の重合、小規模開発が積み重なることによる野外レクリェーション地や湿地の喪失、化学物質の環境中での蓄積や複合化による影響の発現等が挙げられている。これらの累積的影響については、取扱いが困難なものも多くこれまであまり実質的な予測評価は行われていないようであるが、国際的な場では課題として取り上げられ調査研究が行われている。また、近年、大気汚染物質の長距離移動・酸性降下物としての蓄積による影響、温室効果ガス排出による気候変化などの地球規模の環境影響が、環境影響評価において対象とされる累積的影響の一つとして国際的に認識されるようになっている。
我が国の場合、大気汚染や水質汚濁の予測評価において、いわゆるバックグランド濃度を考慮すること以外には、当該事業以外の累積的影響を勘案することは、あまり扱われていない。例えば、動植物種の消滅の評価において、周辺地域に当該種がいることをもって影響がないむね述べている事例があるが、この場合、累積的な開発等による周辺地域の動植物相(バックグランド)の将来変化は考慮されていないのが通常である。
環境へ与えるリスクを扱う事例については、化学物質等の漏洩等によるリスクを念頭におき環境保全対策の検討により対応する事例(滋賀県)、リスクの大きさ(影響の発生の可能性及びその大きさを含む)を予測評価する事例(オランダ)、代替案の比較検討においてリスクの大きさを定性的に比較検討している事例(イギリス)などがある。