平成13年度第1回全体会合
資料2-1
4)今後の課題
騒音・振動・低周波音の環境影響評価を進めていく上での留意事項として示したことが、これまでの全ての事例で考慮されていたわけではない。それぞれの留意事項を考慮し、併せて最新の知見等を参考とすることでより適切な環境影響評価へと近づいていくものと考えられる。
今後の環境影響評価を進めていく上で、より適切な形へと近づくために望まれる事項は、以下に示すとおりである。
- 複合騒音、在来鉄道振動、低周波音等の基準の設定
複合騒音や在来鉄道振動には基準が定められていないため、環境影響評価に際し、統一的な調査・予測・評価の手法が存在しない。騒音・振動・低周波音について環境配慮を効果的に進めていくためには、公的な基準が不可欠であり、早急な対応が望まれる。
低周波音については、平成12年10月に「低周波音の測定に関するマニュアル(環境庁大気保全局)」が作成され、このマニュアルにより測定された精度の高いデータを集積することにより、人体影響等について調査研究を進め、有効な低周波音対策を講じることとされている。
- 事後調査等による、予測の不確実性の程度に関する知見の蓄積
予測の不確実性の明記は、これまでの環境影響評価制度にはなく、新たに環境影響評価法によって示された考え方である。このような考え方についての研究や知見の蓄積は乏しく、実務レベルでの対応が困難な面もあるが、予測精度の向上や環境影響評価制度の健全な発展のためには、事後調査等により知見を蓄積し、解析していく必要がある。
- 固体音に関する調査・研究
道路や鉄道のトンネル部で発生した振動が地中あるいは杭を伝搬し、建物内で騒音として発生する固体放射音が問題となる場合がある。しかしながら、その発生が事業特性だけでなく発生する建物の構造等に強く依存すること、固体放射音の予測には詳細なデータが必要であるため環境影響評価の実施時点で予測することは困難な点が多く、今後の調査・研究が望まれる。
- 音の質に対する考え方
環境庁が認定した「日本の音風景100選」に挙げられるような望ましい音環境の保全や騒音の猛禽類等に対する影響については、非常に難しい面もあるが、環境影響評価での考え方について検討していく必要がある。
参考文献
環境庁(2000)騒音に係る環境基準の評価マニュアル.
公害対研究策センター窒素酸化物検討委員会(2000)窒素酸化物総量規制マニュアル(新版).
公害対策研究センター、東京、pp422.
(財)道路環境研究所(2000)道路環境影響評価の技術手法.丸善、東京.
(社)環境情報科学センター(1999)環境アセスメントの技術.中央法規出版、東京、pp1018.
(環境庁編 環境影響評価技術マニュアル(暫定版)の市販本)
中央公害対策審議会騒音振動部会振動専門委員会(1976)工場、建設作業、道路交通、新幹線鉄道の振動に
係る基準の根拠等について.
横浜市環境保全局(1999)横浜市大気汚染調査報告書 第38報.横浜市、pp238.
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