平成13年度第 2回環境負荷分科会
資料 3

3) 評価

(1) 評価の考え方

環境影響評価法における評価の考え方は、大きく下記のア、イの2種類があり、これらのうちアの視点からの評価は必ず行う必要があり、またイに示される基準、目標等のある場合には、イの視点からの評価についても必ず行う必要がある。

ア 環境影響の回避・低減に係る評価

イ 国又は地方公共団体の環境保全施策との整合性に係る検討

環境影響の評価は複数の環境保全措置の検討を踏まえて行う。従って、調査・予測・評価の実施段階では環境保全措置のケース毎に予測を行うこととなり、評価においても複数の環境保全措置を考慮して行わなくてはならない。
また、京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方に関する答申(平成14年1月)において、温室効果ガス別・分野別の排出削減目標量などを盛り込んだ「京都議定書目標達成計画」の策定、事業者の自主的取組の促進のための排出量等を事業者自らが把握・公表する仕組みや第三者による評価の仕組みの整備が必要であるとしている。温室効果ガス等の評価にあたっては、今後整備される地球温暖化防止に向けた国内制度を踏まえて、それらとの整合性を考慮していくことが必要である。

[1] 回避・低減に係る評価

(ア) 評価事項

温室効果ガス等における環境影響の回避・低減に係る評価としては、複数の環境保全措置の比較及び設定したベースラインとの比較によって得られた結果について記述する。

(a) 実行可能な範囲での最大限の回避・低減措置
前提とした回避・低減措置について以下の観点から実行可能な範囲で最大限の措置となっているかどうかを評価する。

(b)ベースラインからの削減量
設定したベースラインからの温室効果ガス等の削減量を評価する。なお、温室効果ガス等におけるベースライン設定の考え方は後述する。
(c)複数の環境保全措置の比較
事業計画において設定できる複数の環境保全措置の中で、採用案が最も温室効果ガス等の排出量が少ないかどうかを検証する。
(d)環境保全措置の実施と効果の確実性
事業によっては建設事業者と運用者が相違するようなケースがある。この場合、環境保全措置実施の確実性を確保する方法について具体的に記述する。
また、環境保全措置の内容によっては、効果に不確実性がある場合や新しい技術を導入する場合などは、その不確実性の程度を記述するとともに、予測した削減量を確保する方策を記述する。

(イ) 事業各段階での回避・低減措置

個別の事業においては、大別して施設の建設段階、供用段階及び解体・廃棄段階があり、各段階でのオペレーション(建設工事や運用、維持管理等の企画・作業・操作等)によって、資材・エネルギー等の入力及び温室効果ガスの排出等の出力が発生する。
評価においては、可能な限りオペレーションを詳細に分析し、個々のオペレーションにおいて実行可能な範囲で回避・低減の措置が図られているかを検討する。

(ウ) 回避・低減措置による環境負荷の削減量(削減量評価)
環境負荷の削減量については以下の点に着目して検討を行う。

(エ) 削減量評価のベースライン

削減量の評価は、基本的には複数の環境保全措置の比較により、実行可能な範囲において最大の削減を行うことができているかどうかで判断する。ただし、事業によっては比較すべき適当な環境保全措置の設定が困難な場合があり、その場合にはベースラインの考え方の導入が効果的である。ベースラインによる比較は次の式による。

A:ベースラインにおける発生・排出量
B:事業からの発生・排出量
C=A-B:事業における回避・低減措置による効果量(→評価の対象)
ベースライン設定の考え方の例としては、以下の2種があり、事業特性や地域特性に合わせて適正な考え方を導入する。

(a) 事業において回避・低減措置を考慮しない場合の発生・排出量
個別事業について評価を行う場合には、当該事業における回避・低減措置を考慮しない場合における発生・排出量をベースラインとする。ベースラインの設定方法は、当該事業と同等規模で回避・低減措置を考慮しない事業を想定するほか、同等規模の類似事例による実績を用いる方法等が考えられる(図3-5 (イ)参照)。
ベースラインを設定する場合において基本として考慮する技術としては、既存技術が原則となるが、技術水準は時間的に変化するものであり、ベースラインとして考慮する技術水準が現状又は近未来の技術水準に比して陳腐にならないような配慮が必要である。
考慮すべき時間的変化としては技術の進歩に伴うもののほか、社会・経済の状況変化に伴う経済性の変化なども考えられる。
(b) システム全体の現状での発生・排出量
当該事業の実施においては環境負荷が増加するが、関連する他の事業や種々の活動を含めた範囲(システム全体)では効率向上等により環境負荷が低減する場合も考えられる。このような場合は、当該事業を実施しない場合のシステム全体の発生・排出量をベースラインとして考える(図3-5 (ロ)参照)。
なお、この場合にはシステムとして捉える範囲(System boundary)及びその設定理由を明確にする必要がある。

図3-5 ベースラインの考え方


なお、評価に用いるベースラインは、技術の開発状況により刻々と変化していくため、採用した削減対策が、その時点で技術的側面から実行可能な最大限の努力であるかを検証する必要がある。この場合、技術展開の過去の実績から将来の予測に至る状況を客観的に示す必要がある。技術展開を模式化した一例(ここでは、以下「技術展開ロードマップ」という。)を図3-6に示す。

図3-6 技術展開ロードマップのイメージ


【ベースライン設定の考え方の例(システム全体で評価しようとする場合のベースラインの設定)】
システム全体の環境負荷量の発生・排出の削減が期待できるケースの例としては、地域または業界内・企業内における計画的な施設整備などが考えられる。
国や地方公共団体あるいは複数の事業所を有する大規模な企業等においては、提供する製品やサービスの供給計画等に応じて各種の施設整備が行われている。施設供用段階での環境負荷量は、技術的条件が同一であれば製品やサービスの量(事業での活動量)に関連して変化する。環境負荷量の経時的な推移の中で、当該事業において環境負荷の回避・低減措置を考慮しない場合(または、当該事業を実施しない場合)との差が、評価の対象となる(図3-7参照)。

図3-7 システム全体でのベースライン設定と回避・削減量評価の考え方の例

システム全体で評価する場合においては、次の点を明らかにする必要がある。
A: システム全体の環境負荷排出量の考え方(活動量との関連において)
B: システム全体の中での当該事業及び当該事業を含む関連計画の位置づけ
C: 必要に応じて、当該事業を含む一連の計画の中での当該事業の位置づけ

[2] 目標との整合に係る評価

国や地方公共団体において、温室効果ガスの排出削減や廃棄物発生・処理に係る計画・目標等が定められている場合には、これらとの整合性を評価する。具体的には、各自治体の環境基本計画等において温室効果ガスや廃棄物の排出・発生量削減に係る目標や廃棄物等の再利用率の目標等が掲げられている場合には、それらの目標等との整合性を検討する。なお、計画・目標等との整合性の検討にあたっては、その量や率のみならず、手段の整合性についても考慮する。

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