平成13年度 第1回総合小委員会

【Ⅲ-16】 用語解説
 
1.「景観」関連
囲繞景観(いにょうけいかん)
internal site view
 見る者の頭の中で立体的に意識される景観像のこと。実際に存在する景観ではない。視点から比較的近い視対象を見るときに意識される。囲繞景観は、視点が移動するとその景観像が容易に変わるため、三次元的、立体的に景観把握ができる。(堀繁・斉藤馨・下村彰男・香川隆英:フォレストスケープ 森林景観のデザインと演出:(社)全国林業改良普及協会)
景域(けいいき)
landscape,Landschaft[独]
 視覚的・地理的・文化的に同様の特徴を有する一定の地域。独語の「Landchaft」に対して飯本信之が最初に使用した。「景観」は視覚的概念が強いが、「景域」は地理的広がりを有し、生態的秩序性や有機性、郷土性などの要素を含めた総合的概念である。(東京農業大学造園学科編 造園学用語辞典:彰国社)
景観(けいかん)
landscape,Landschaft[独]
 人間を取りまく環境の総合的な眺め。独語の「Landchaft」に対して三好学が最初に使用した。「景」には「ひかり・ありさま・ようす」、「観」には「みかた・とらえ方」という意味が含まれている。すなわち景観(風景)という現象は、単に視覚的対象の眺めのみでなく、それを眺める主体(人間)に形成されるイメージや印象など心的効果との関係によって成立する。類語として「風景・風致・景域」などが挙げられ、厳密には若干異なった概念を有している。「景観」は元来地理学における学術用語であり、主に環境の視覚的特性を指す用語として用いられてきた。今日、概念が拡大し、一般にはかなり広い意味で用いられるようになったが、それでもなお分析的・操作的であり、客観的側面が強い。(東京農業大学造園学科編 造園学用語辞典:彰国社)
シークエンス
sequence
 車を運転するなど、視点を移動させながら次々と移り変わるシーンを継続的に体験していくことを意味する。特にその変化が顕著な場合、あるいは視点移動のルートが限定されていたり、意図的である場合、つまりその連続に意味上の脈略がある場合を指すことが多い。(篠原修:新体系土木工学 59 土木景観計画:技報堂出版)
シーン
scene
 固定的な視点において得られる透視図的な眺め。同義語に眺め、眺望、展望、景色、構図、透視形態等がある。(篠原修:新体系土木工学 59 土木景観計画:技報堂出版)
自然景観(しぜんけいかん)
natural landscape
 自然風景画主体となる景観。都市景観のように人工的に作り出された景観に対して使われる。山岳・峡谷・滝・高原・原野・湿原・湖沼・河川・海岸・岬・島・岩石・洞窟・自然現象・植物などが主体となる。(東京農業大学造園学科編:造園学用語辞典:彰国社)
自然人文景観(しぜんじんぶんけいかん)
natural, cultural landscape
 人文資源が核となって周囲の自然が核を包み込むような形で形成される景観で、自然のウエイトが大きいものをいう。庭園をはじめとする名勝・史跡などで、周囲の自然と一体となって優れた景観を構成しているものが多く見られる。(石井一郎・元田良孝:景観工学:鹿島出版会)
人為景観(じんいけいかん)
anthropogenic landscape; artificial landscape
 耕作・採草・放牧・伐採などの人間の作用を受けて成立している畑・草地・薪炭林などを主体とした景観。
人工景観(じんこうけいかん)
built landscape; man-made landscape
 土木構造物や都市施設、人工海浜など、人間が人工的に作り出した施設や環境を主体とした景観。
人文景観(じんぶんけいかん)
cultural landscape
 人文資源が主体となる景観で、主に自然景観に対して用いられる。庭園などの名勝地や風俗・政治・祭・宗教・学芸・産業などに関する遺跡、城跡・城郭、謝辞などが主体となる景観をいう。(石井一郎・元田良孝:景観工学:鹿島出版会)
眺望景観(ちょうぼうけいかん)
view
 見る者の頭の中で舞台の書き割りのように平面的に意識される景観像のこと。眺望景観は、多少の視点移動では変化しない景観で、二次元的、絵画的な景観把握となる。(堀繁・斉藤馨・下村彰男・香川隆英:フォレストスケープ 森林景観のデザインと演出:(社)全国林業改良普及協会)
風景(ふうけい)
scenery; landscape
 人間を取りまく環境の総合的な眺め。視覚性が強く、客観的・分析的な「景観」に対して、美醜、快/不快の概念など、人間的・文化的要素を含めたより総合的・主観的な概念といえる。また、「風景」には、風土ともいうべき地域的概念も含まれることから、「風景計画」には、視覚的要素の計画だけでなく、地域計画的要素も含まれる。(東京農業大学造園学科編:造園学用語辞典:彰国社)
風致(ふうち)
scenic beauty; scenery; landscape
 視覚的な対象の中でも、特に快い感情を抱かせる対象や、それによって醸成される状態に対して用いられる語。景観、風景、風致の順により広範囲な対象を含む。「風」は、ある範囲で共通の様式という意味を持ち、「致」は、趣・様子という意味がある。風致という言葉には、ある広がりの中に順応し、落ち着きがあり違和感がない、人間の感性におのずから融和していくことの全環境を意味すると考えられる。アメニティに近い意味を持つとも考えられる。(東京農業大学造園学科編:造園学用語辞典:彰国社)
ランドスケープ
landscape,Landschaft[独]
 一目で見渡せる土地の広がり、眺め、風景、風景画、景観、地形など。専門分野別に使用法が異なる。そもそも日本では、植物学者三好学が最初に「景観」と訳し、その後、地理学・生態学・都市計画学・土木工学などにおいて概ね景観の語を用い、造園学では風景・景観・景域などの語を用いることが多い。(東京農業大学造園学科編:造園学用語辞典:彰国社)
 
2.「触れ合い活動の場」関連
アクセシビリティー
accessibility
 交通手段の連結の利便性のことを指す。
アクセス
access
 ある地点から別の地点へ移動する際の、交通手段の連結のことを指す。
活動(かつどう)
activity
 自然を舞台として、または自然を対象として行う触れ合い活動をさす。
活動区(かつどうく)
 土地の起伏や地理的条件等の土地特性や、植生などの資源特性の重ね合わせからおおまかにくくれる空間区分のことをさす。これらの基礎条件をもとに区切った空間は、自然特性をめやすに区分したものといえ、自然との触れ合い活動の広がりの範囲は、これらの空間区分によって大まかに把握することができる。
活動種(かつどうしゅ)
type of activity
 自然との触れ合い活動に関する活動種とは、自然と触れ合う、又は自然があることによって成立する活動の内容から分類される活動タイプをいう。分類の視点や軸は、地域の特性に応じて多様に設定されうる。例として、関東地方の里地における活動種を以下に示した。
活動を支える環境(かつどうをささえるかんきょう)
 活動がその場所で実施されるに至った環境条件のこと。動植物等のように活動の対象となる資源、活動の便宜に関わる利便性、その場における開催のモチベーションを支える快適さなど。
里地(さとち)
countryside area
 都市域と原生的自然との中間に位置し、様々な人間の働きかけを通じて、環境が形成されてきたとする抽象的な地域概念。一般に、「里地(さと)」という言葉は、大自然と対比した場合「人の住むところ」という点を、高度に発達した都市に対比した場合「田舎(いなか)」という点を示すこととなる。(環境庁企画調整局・里地研究会:里地からの変革-地球環境時代のふるさとづくり:時事通信社:1996)
里山(さとやま)
 屋敷や農地に隣接し、農業や人間の働きかけを受けてきた田畑、小川、雑木林とそれを利用する集落を含む一帯。古くから、堆肥や薪燃料などの源として利用されていたが、生活スタイルの変化に伴い、荒廃しつつあった。しかし、現在では、都市の身近な自然であり、レクリエーションの場、自然探勝の場として里山の存在が見直され始めている。(重松敏則:市民による里山の保全・管理:信山社出版:1991)
自然公園(しぜんこうえん)
naturalpark
 ある地域の風景を代表する傑出した自然風景地で、わが国では国立公園・国定公園などに分けられる。1957(昭和32)年制定の自然公園法に基づいており、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3区分がある。(沼田真編:生態学辞典:築地書館:1988、社団法人日本観光協会:観光事典:1995)
自然との触れ合い(しぜんとのふれあい)
contact with nature
 子どもが母親の胸に抱かれているとき、そこでは五感を通した膨大な量の情報が行き来する。それとちょうど同じように、自然のふところに人間が深く入り込み、受動的に情報を受け取ることから、より積極的に自然とかかわりをもとうとする活動を含めた、さまざまな関わり方の総体や、個々の活動を意味する。
周遊(しゅうゆう)
tour
 観光者が、複数の対象、あるいは対象地を見て回る移動形態をいう。一般に、1ヶ所の対象地における留まる時間は相対的に短くなる。(財団法人日本交通公社編:現代観光用語事典:日本交通公社出版事業局:1984、社団法人日本観光協会:観光事典:1995)
収容力(しゅうようりょく)
carrying capacity
 ある施設や場所の収容可能な容量、おもに収容可能人数のことをいう。収容力を算出する方法としては、施設利用者の意識的側面から、あるいは施設の管理面から「効用最大の原理」による方法などが考えられる。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984)
宿泊利用(しゅくはくりよう)
overnight stay[use]
 来訪者が、1日以上の宿泊を伴い、ある施設やサービスを利用することをいう。
滞留(たいりゅう)
retention
 旅行先などにおいて、ある地点に一時的に留まることを指す。また便宜的に、ある施設やサービスを利用している時間の長さを指す場合もある。
着地(ちゃくち)
destination
 移動を伴う観光者の行動において、目的地となる施設や場所のことを指し、発地に対応するものである。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984)
同時滞留者数(どうじたいりゅうしゃ)
the number of visitors at a specific time
 ある時刻ごとの施設やサービスにおいて、施設やサービスを同時刻に利用している者の数を指す。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984)
発地(はつち/はっち)
origin
 移動を伴う観光者の行動において、ある施設や場所への来訪者の出発地のことをいう。たとえば、来訪者の居住地などを指す。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984)
日帰り利用(ひがえりりよう)
dayuse
 来訪者が、宿泊を伴わないで、ある施設やサービスを利用することをいう。
変動(へんどう)
fluctuation
  日 -ある指標の1日ごとの変化の流動。
  月 -ある指標の1カ月ごとの変化の流動。
 季節-ある指標の季節ごとの変化の流動。
 曜日-ある指標の曜日ごとの変化の流動。
誘致距離(ゆうちきょり)
service distance;attractive distance
 誘致圏の示す円の半径のことを指す。誘致圏が面的な広がりをもつのに対し、誘致距離は、線的な長さを示す。(www.mywoodhouse.com./ie/k/jiten.html)
誘致圏(ゆうちけん)
 ある施設やサービスを利用する人口は、通常同心円的な広がりをもつ。誘致圏とは、その利用人口のおおむね80%を包含する区域のことをいう。ここでは、触れ合い活動の場を利用する利用者の居住地が分布する範囲を意味して使用している。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984、www.mywoodhouse.com./ie/k/jiten.html)
利用実態(りようじったい)
description of the use[visit;visitors]
 ある対象や対象地における施設やサービスの使われ方の実状のことを指す。たとえば、利用者の属性などの利用者側の実態や、施設が利用される頻度や利用時間などをいう。(青木宏一郎:公園の利用:地球社:1984)
利用者(りようしゃ)
user[visitor]
 ある施設やサービスなどを利用する者をいう。
利用者数(りようしゃすう)
number of users[visitors]
 年間-1年間を通しての、ある施設やサービス、を利用した人数。
  日 -1日を通しての、ある施設やサービスを利用した人数。
 月間-1カ月を通しての、ある施設やサービスを利用した人数。
 観光に関する調査では、使用用語の定義が確立されていないのが現状である。そのため、様々な機関が実施した調査資料及び統計を利用するにあたっては、「観光者」「利用者」など、使われている用語の定義に注意する必要がある。(前田勇編:現代観光学キーワード事典:学文社:1998)

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