平成13年度 第1回検討会

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資料2-1

1-1 環境保全措置の検討と調査・予測・評価などの関係(全体の流れ)


1-1 環境保全措置の検討と調査・予測・評価などの関係(全体の流れ)

(1)スコーピング及び調査、予測の進め方(これまでの検討内容)

・ 図-1に示した検討の年次計画に基づき、平成10年度には自然との触れ合い分野のスコーピング手法について、平成11年度には環境影響評価の実施段階における調査・予測手法について検討し、平成12年度において保全措置の検討及び評価手法について検討することとした。
・ 3年間の検討全体を通じて、人と自然との豊かな触れ合いの確保という視点のもとに「景観」と「触れ合い活動の場」のふたつの項目が環境影響評価の対象とされたことを重視して、より良い環境配慮につながる効果的なアセスメント手法を検討していくこととした。

-10年度の検討内容

自然との触れ合い分野のアセスメントの現状と課題を整理した上で、環境影響評価法において新たに導入されたスコーピング(環境影響評価の項目・手法の選定)段階に焦点を絞り、検討手順と考え方、具体的な技術手法について検討した。
その中で、「景観」と「触れ合い活動の場」項目において、地域概況調査(資料調査・ヒアリング調査・現地踏査)により、事業実施区域周辺の主要な環境要素を抽出し、事業の影響要因との関係から環境影響評価の対象とすべき要素を絞り込んでいく過程、重点化・簡略化の整理と調査・予測・評価手法の検討方法、わかりやすい方法書を作成する上での留意点などのついて示した。

-11年度の検討内容

景観における調査・予測手法
特定の眺望点から特定の眺望景観を眺めた眺望景観への影響だけでなく、事業実施区域周辺の身近な身のまわりの景観への影響についても捉えることが重要と考え、「景観」を「眺望景観」と「囲繞景観」のふたつの要素に区分して、それぞれの影響を捉える技術手法を検討・整理した。
景観の価値を把握する軸として「普遍価値」(誰しもが普遍的に供用しているような価値軸)と「固有価値」(特定の地域や特定の主体に固有な価値軸)を設定し、その両面の価値に目を向けることが重要であることを示した。
眺望景観と囲繞景観のそれぞれについて、景観要素の状態を把握するとともに、普遍価値と固有価値のふたつの価値軸に照らして景観の価値を把握した上で、事業によるそれらの変化状況を捉えるものとし、そのための調査・予測手法を提示した。
囲繞景観の影響を把握する上で、事業実施区域周辺を対象として、身のまわりの景観として一体的に捉えられる区域を「景観区」として細区分し、区分された景観区を解析の単位とすることが有効と考えられた。

触れ合い活動の場における調査・予測手法
触れ合い活動の場への影響については、「活動特性」と「アクセス特性」のふたつの要素に区分して、それぞれの影響を捉える技術手法を検討・整理した。
触れ合い活動の場の価値についても、景観と同様に「普遍価値」と「固有価値」のふたつの価値軸を設定し、その両面の価値に目を向けることが重要であることを示した。
活動特性については、「活動の状態(利用実態・利用者実態)」「活動を支える環境の状態(資源・利便性・快適さ)」を把握するとともに、普遍価値と固有価値のふたつの価値軸に照らして触れ合い活動の場の価値を把握した上で、事業によるそれらの活動特性の変化状況を捉えるものものとし、そのための調査・予測手法を提示した。
触れ合い活動の場の環境影響評価では利用施設の整備された場所だけでなく、活動が行われている空間全体への影響を幅広く捉える必要がある。そこで、事業実施区域周辺を対象として、活動の観点からみて一体的な均質の空間として捉えられる区域を「活動区」として細区分し、活動が行われている活動区を活動特性への影響を把握する上での解析単位とすることが有効と考えられた。
アクセス特性についてはアクセスルートの改変や事業に伴う発生交通によるアクセスルートへの影響を捉えるものとし、そのための調査・予測手法を提示した。


(2)事業計画と環境保全措置の検討の関係

-早期段階からの環境配慮の検討
 事業計画においては、事業計画の当初から環境配慮が検討されるのが通常である。事業の内容によっては、環境影響評価の手続き以前に環境保全対策が具体的に検討される場合も多い。計画熟度が高まってしまった段階で環境保全対策の検討が行われた場合には、適切な措置が講じられない状況が予想され、環境影響評価全体のやり直しや、事業計画そのものの大幅な手戻りを生じるおそれがある。このため、一般的に、図-4に示したように、事業計画の早期段階での検討と同時並行で環境保全に関する検討が開始されることとなる。
 これらの検討に際しては、できるかぎり早い段階から専門家や住民等の意見を聞くことが有効である。

-自然との触れ合い分野では早い段階で検討が必要
 景観・触れ合い活動の場の項目では、景観区や活動区のまとまりを残す、または眺望点と眺望対象の相互の関係、活動の連続性や多様性を保つといった環境保全措置が最も重要であり、事業の立地・配置、あるいは規模・構造に関する環境保全措置の検討が重要である。例えば、事業における改変地と保全の対象となる場の位置関係などは、基本構想段階、基本計画段階までに把握し、極力早い段階において景観・触れ合い活動の場に配慮した環境保全措置に関する検討を始める必要がある。

-検討経緯の記載
 方法書においては、早期段階での環境保全に関する検討を踏まえつつ、事業者としての環境保全の基本的な考え方やその時点での環境保全措置の検討内容を出来る限り明らかにすることが重要である。そして、調査・予測結果を踏まえた段階に応じて、より具体的な環境保全措置を検討していくことになる。
 こうした環境保全措置に関する検討経緯は、回避・低減に係る評価において検討の対象となる(基本的事項第2.5.(3).ア)ものであり、また、最終的に準備書や評価書には、当該措置を講ずることとするに至った検討経緯をさかのぼって記載(法第14条第1項第7号ロ.括弧書き)する必要がある。

(3)スコーピング段階での環境保全に関する検討

-早期段階からの国民意見等の反映
 事業計画の早期段階での環境配慮が特に有効である自然との触れ合い分野については、地域特性の把握のために収集、整理された情報をもとに、学識経験者や地域住民、地方公共団体などの意見を早めに聞きつつ、これらを反映して事業計画の策定を進めることが必要である。したがって、環境影響評価の手続においても出来るだけ早い段階で方法書手続を実施し、専門家や住民等の意見を聞くことが重要である。

-環境保全の基本的な考え方を方法書に記載
 方法書においては、事業特性や地域特性に応じて、地域の景観や触れ合い活動の場の特性を踏まえて、どのように地域の人と自然との豊かな触れ合いの確保を図ろうと考えているのかを「環境保全の基本的な考え方」として整理し、これを踏まえた事業計画案とともに明らかにすることが重要である(図-4PDFファイル17k)。事業によっては、この段階で、既に様々な具体的な環境保全措置が検討され、事業計画に組み入れられていることも多い。これらの環境保全措置については、「環境保全の基本的考え方」に位置付け、できるだけ早い段階で専門家や住民等の意見を聞くことが有効である。

(4)環境影響評価実施段階での環境保全措置の検討

-保全方針の明確化
 環境保全措置の検討に際しては、まず、保全方針を取りまとめる。保全方針では、スコーピングで検討された環境保全の基本的な考え方、スコーピングなどで得られた意見、調査・予測結果などを踏まえ、保全措置の検討対象と検討目標、方法、実施時期や範囲等を明らかにする。

-最善の環境保全措置の検討
 次に、この保全方針を踏まえて、予測された景観・触れ合い活動の場への影響に対する回避、低減、もしくは代償するための環境保全措置を検討する。そして、その効果および他の環境要素への影響に関する予測・評価を繰り返すことにより、景観・触れ合い活動の場への影響が十分に回避・低減されているものであるかを検討する。また環境保全措置の検討内容に応じて、事業計画案について必要な見直しを行い、景観・触れ合い活動の場の保全を図るための最善の環境保全措置がとられていると評価されるまで検討を繰り返す必要がある。なお、景観・触れ合い活動の場への予測結果や環境保全措置の効果などは、その内容に不確実性を伴うことが多い。それらの確認、検証を行うための事後調査の実施についても、あわせて検討することが重要である。
 この検討結果は、事業計画策定の当初から図書作成時点までの事業計画案と環境保全措置の検討の経過を含め、準備書・評価書において、わかりやすく示すことが必要である。

-他の環境要素との関係性に留意
 自然との触れ合い分野は景観や触れ合い活動の場を構成している要素としての地学環境、水環境、生物環境等と人間の関わりにより成立しているものであるので、それらの環境要素(選定項目)についての評価や環境保全措置の検討との関連性にも十分留意して、自然との触れ合い分野の影響評価、環境保全措置の検討を行う必要がある。

(5)事業着手後の対応

-追加措置等の検討
 事業着手後においても、事後調査の結果次第で、環境保全措置の追加、それに伴う事業計画の修正、新たな事後調査の追加などが必要となる。これらについては、事後調査の結果により環境影響が著しいことが明らかになった場合等の対応の方針(基本的事項第3.2.(6).)として、準備書や評価書に示すことが必要である。
 また、事後調査の結果を当初の影響予測や環境保全措置の効果予測などと対比、検証した結果及び事後調査で得られた知見は、将来の環境影響評価技術の向上に資する等の観点から、一般に公表され、広く活用されることが望ましい。

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