(3)地域概況調査
(3)-1 陸域
(a)地域概況調査の留意点
(ア)既存資料調査
陸域生態系の既存資料調査において対象となる調査項目の例を表●にあげる。
(イ)概略踏査
概略踏査では類型区分図の区分ごとや、さらに主な植生ごとに、現地で実際に観察することにより現況の把握を行う。この際には、既存資料では得にくい情報を把握することが重要である。図●の調査票は、対象とした地域の生態系を概略把握するために、植生、地形・地質、土壌、水環境、人為的な管理状況、動植物の重要な生息場所などの状況を現地で記入するためのものである。図には、既存の植生図では把握されない植生の特徴や、動植物の生息環境となる湧水などが確認されている。
表● 対象となる調査項目
区分 | 調査項目 |
植物 |
植物相 |
表● 環境調査票
(3)-2 陸水域
(a)地域概況調査の留意点
河川や湖沼はマクロ的な生物分布や特性は地域ごとに共通性を有しつつも、個々の河川、湖沼や区間、区域では個性を有する。スコーピングではこの「個性」の部分に着目することが重要である。
対象事業実施区域およびその周辺の対象地域について把握する特性は表●に例示したように、区間や区域によって異なる環境特性として捉え位置づけを行う。なお、対象地域そのものの資料がない場合は、気象、流況や水質などは近傍の資料を用いるとともに、その他の要素については概略踏査時の確認項目として補完する。
これらの水域の自然性や人為影響の程度については地域的にみた相対的な比較から位置づけを行うが、人為の影響については集水域の土地利用の変遷、治水・利水の履歴などの時間的背景についても考慮する。
表● 対象地域の特性把握のための環境要素(例)
河川 |
湖沼 | |
位置 |
水系 |
水系 |
地形・地 質 |
地形 |
地形 |
規模 |
流程、屈曲率*3 |
面積、容積 |
気象 | 気温、降水量、風向・風速、日射量 | |
水温・水質 |
水温 |
水温 |
生物 | 植生分布、動植物相 | |
工作物 |
水際線の改変状況 |
水際線の改変状況 |
利用状況・負荷の状況 |
土地利用状況とその履歴 |
*1セグメント:中島(1983)では「おもに渓流で、河川と河川が合流するまでの河道区間をさす。谷次数で表す区間で、例えば流域内の最上流端から流れる渓流が他の渓流と合流するまでの区間は次数1のセグメントである」と示されている。
建設省河川局治水課(1996)では「類似した河道特性を有している河道区分をさし、基本的には河床縦断勾配と河床材料から区分を行う」と示されている。
*2肢節量:湖沼と同一面積を占める円の円周と湖岸線延長との比。湖沼が円形ならば肢節量=1。(環境庁,1998)
*3屈曲率:(河川の一定区間における流路長)/(一定区間の直線距離)(環境庁,1995)
(3)-3 海域
(a)地域概況調査の留意点
(ア)既存資料調査
既存資料調査では、当該海域の地形・基質、物理的環境条件(気象・海象等)、化学的環境条件(水質・底質等)、生息する生物についての情報などを極力多く収集することが必要である。特に、地形(海岸線・水深・河口など)と海岸や海底の基質(藻場・サンゴ礁などの生物的基質を含む)の分布は、海域の生物相を大きく左右するので、できるだけ詳しい情報を得る必要がある。また、事業の計画段階で事前に測量等の調査が実施されている場合には、それらも活用することが望ましい。表●に既存資料調査における資料と調査項目との例をあげる。
(イ)概略踏査
概略踏査では、当該海域の地形・基質、生物等について、現地で実際に観察することが重点となる。ただし、海域では水中の観察は困難であり、生物の採集も容易ではない。この段階では、主に海岸などから容易に観察できる、あるいは、たやすく手にとって見ることのできる調査が主体となる。
表● 既存資料調査における資料と調査項目の例
資料 | 調査項目 |
海図・地形図・地質図・航空写真 |
地形・基質の分布 |