平成13年度 第1回総合小委員会
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資料2
(21)事後調査に関する留意点
(21)-1 陸域
- 陸域生態系では、大気質、微気象、地下水などの環境要素の変化が、生息する生物種・群集の生息場所に対して間接的、副次的に影響し、生物種・群集への影響が徐々に現れる場合がある。また、植物種の成長や群落の遷移などへの影響も顕在化するまでに時間がかかる。これらを事後調査の対象とする場合は、影響の程度を長期的な視点で把握することを考慮し、想定される影響要因と環境要素および影響内容に応じた調査項目や手法の選定、調査期間や頻度の設定、調査地点・範囲の検討が必要である。
- 陸域の調査では、一般的に対象とする「生態系」に立ち入って調査することが多いことや、動物種を捕獲してデータを取得することがあり、また、上位性の種では人の接近を忌避する種もあることから、調査による影響が生じないような手法を選択する必要がある。特に事後調査では繰り返し同じ対象を調査することが多いことから特に留意する必要がある。
(21)-2 陸水域
- 陸水域生態系では、水質や水量・流量、流速などは定量的に変化を把握できる要素であることから、生物そのものの動態を追跡する調査と併行して調査対象とする必要がある。例えば、陸水域の生物にとって重要なのは、一般に流速として示される流心の流速ではなく河岸付近の流速であることなどを考慮し、影響を的確に把握できるように調査方法を検討する必要がある。
- 水質や水量・流量、流速などは短時間で急激に変化することのある環境要素であるため、各要素の特性を把握できるような調査頻度や継続的な追跡方法を考慮する必要がある。
- 陸水域生態系では、時間の経過とともに生態系への事業による影響が緩和される場合、反対に長期的に影響が累積してきて大きな影響が現れる場合、自然の動態として稀に起こる基盤環境の大きな変化による影響がある場合を分けてとらえられるような項目や手法を検討する必要がある。
(21)-3 海域
- 海域の生物は、海流のような大規模な環境要素に影響されるとともに、流れとともにあるいは成長に伴って移動するものが多い。そのため、陸域や陸水域の生態系に比べて年による変動が大きく、また季節変化の周期がはっきりしないことも多い。中には長期的な変動を示すものもある。このようなことから、事後調査にあたっては長期的な視点が必要である。事後調査の対象とした注目種や生態系の現象がどの程度の時空間で変動するのかを既往知見などから想定し、事業による影響や環境保全措置の効果を適切に追跡できる調査期間と調査頻度および調査範囲の検討が重要である。
- 海域における様々な現象は、そのほとんどが水面下でおこり、視覚的にとらえることが困難なため、事業による影響などの空間的・時間的な広がりを確認しにくいという難点がある。そのため、事後調査の当初はできるだけ多い調査地点、調査頻度とし、調査の進捗に応じてデータの代表性を検証し、調査地点などを絞り込んでいくことも考えられる。
- 海域では、波浪や塩分などが障害となって、船舶や自動測定機器による調査がおこない難いという特徴がある。特に生物に関する調査は、採集機器によって採集するか潜水などにより観察するかのいずれかが主体となっており、魚群探知機のような特定の項目を除いては、自動測定機器による安全かつ連続した調査はほとんどできないのが実態である。したがって事後調査に関しては、調査の目的を踏まえた項目・手法などの十分な検討と絞り込みが必要である。
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