平成13年度 第1回総合小委員会

資料2

(22)事後調査実施案の検討例 


(22)-1 陸域

  事後調査の実施案および報告の例を表●、●、●、●に示す。


表● フクロウに関する事後調査の実施案(例)

調査項目及 び調査内容 <繁殖に関する調査> 
  • 繁殖の成否
  • 巣立ち率 

<環境利用に関する調査>

  • 痕跡の確認 
  • 森林構造、林床植生 

       : 
       : 

調査方法  <繁殖に関する調査> 
  • 繁殖状況の確認:巣立ちの確認 

<環境利用に関する調査> 

  • 現地踏査:個体確認およびペリットの確認 

              : 
                       : 

調査範囲、地点  <繁殖に関する調査> 
  • 営巣地付近 

<環境利用に関する調査> 

  • 狩り場、ねぐらとして好適とされた場所 

          : 
          : 

調査実施時期と期間 <繁殖に関する調査>
  • 繁殖期に実施(3月~6月) 
  • 調査期間は工事中および供用後。供用後は少なくとも繁殖の継続が十分確認できるまでとする。

<環境利用に関する調査> 

  • 周年または季節ごとに実施。
  • 調査期間は工事中および供用後。供用後は少なくとも繁殖の継続が十分確認できるまでとする。

       : 
       : 

措置の効果が不十分な場合の対処方法
  • 保全措置の効果が不十分な場合は原因を調査により明らかにし、追加的な環境保全措置を計画・実施する。

 

表● カタクリに関する事後調査の実施案(例)

調査項目及び調査内容 <水環境に関する調査>
  • カタクリ個体群の生育状況(密度、開花個体・結実個体の割合)
  • 水環境(土壌の水分条件、近傍の地点での湧水量、流量)

<林床管理に関する調査>

  • カタクリ個体群の生育状況(密度、開花個体・結実個体の割合)
  • 生育環境の状況(森林群落の構造、林床植生の状況) 

        : 
       : 

調査方法  <水環境に関する調査>
  • カタクリ個体群の生育状況:調査定点における生育、繁殖状況の確認 
  • 水環境:調査定点における土壌水分、自動観測装置による流量などの測定

<林床管理に関する調査>

  • カタクリ個体群の生育状況:調査定点における生育、繁殖状況の確認
     (上記項目と連携しておこなう)
  • 生育環境の状況:調査定点における毎木調査、植生調査 

       : 
       : 

調査範囲、地点 <水環境に関する調査>
  • 事業により水環境に影響が及ぶ可能性があると考えられる範囲に調査定点を設置

<林床管理に関する調査>

  • 森林植生復元地の周辺に調査定点を設置

       : 
       : 

調査実施時期と期間 <水環境に関する調査>
  • カタクリ個体群の生育状況:カタクリの開花期に実施 
  • 水環境:土壌水分は○回/季、流量などは連続観測
  • 透水施設の設置による効果が確認できる期間とする。

<林床管理に関する調査>

  • カタクリ個体群の生育状況:カタクリの開花期に実施
  • 生育環境の状況:カタクリの生育期間に実施 
  • 調査期間はある程度の森林復元が見こめる供用後○年を目安とする。

       : 
       : 

環境保全措置の効果が不十分な場合の対処方法 
  • 環境保全措置の効果が不十分な場合は原因を調査により明らかにし、追加的な環境保全措置を計画・実施する。

 

表● フクロウに関する事後調査報告(供用後○年目)例

調査項目 <繁殖に関する調査>
  • 繁殖の確認 

<環境利用に関する調査>

  • 踏査による個体の確認、生息痕跡の確認。

                  : 
                  : 

環境保全措置の効果の確認結果 <繁殖に関する調査>
  • 今年もフクロウの繁殖が確認された。今年は巣立ち雛が2羽であり、巣立ちまで順調に発育したのが確認された。事業実施区域内での繁殖は毎年おこなわれている。
  • 今年は営巣場所が約100m移動した。これは以前の営巣場所で何らかの繁殖妨害があったことによると考えられる。

<環境利用に関する調査>

  • ペリット、個体確認により保全エリアで狩りがおこなわれていることが確認された。これらにより、下刈りなど森林管理の効果が出ていることが確認された。
  • 保全エリアは事業実施前と同様に休息場所として利用されていることが確認された。ただし、冬期の休息場所が事業実施区域から事業実施区域外に移動していた。これは保全エリアに落葉広葉樹が多く、冬期の休息場所としての機能が十分でないためと考えられる。

               : 
               : 

追加的措置  <営巣場所の保全>
  • 移動した営巣場所の近くは人の出入りが多いため、新たに立ち入り制限区域を設けた。

<保全エリアの管理計画の変更>

  • 環境利用に関する調査の結果を受けて、保全エリアの森林の管理計画に常緑広葉樹の育成を加えた。

               : 
               : 

今後の事後調査計画 <繁殖に関する調査>
  • 今年繁殖場所が移動したことから、繁殖場所が安定していないと考えられ、さらに○年は事後調査を継続する。

<環境利用に関する調査>

  • 管理計画の変更による効果を確認するためには、定期的な追跡調査が必要である。

      : 

 

表● カタクリに関する事後調査報告(供用後○年目)例

調査項目 <水環境に関する調査>

        :

<林床管理に関する調査>

  • カタクリ個体群の生育状況 
  • 生育環境の状況

        : 

環境保全措置の効果の確認結果 <水環境に関する調査>

        : 

 <林床管理に関する調査> 
カタクリ個体群の生育状況: 

  • 調査定点○においては個体群の密度、および開花個体、結実個体の割合は大きく変化しなかった。個体群の分布範囲は拡大傾向にある。
  • 調査定点○、○においては個体群の密度に変化は見られないが、開花個体および結実個体の割合が○%減少した。これは次項で述べる生育環境の変化による影響であると考えられた。

生育環境の状況:

  • 調査定点○では林分高の増加、階層構造の発達が認められたものの、落葉樹を主とする群落の基本的構造は変化していない。林床植生では落葉低木の割合が若干増加した。
  • 調査定点○、○においてはアズマネザサの被度が○%に増加し、林床では落葉多年生草本や落葉低木の被度が減少傾向にある。このような生育環境の変化がカタクリの生育状況に影響を及ぼしていると考えられた。エンゴサク類なども減少しており、生育環境の変化による影響はカタクリと同様の立地に生育する春植物にも及んでいると考えられた。

        : 
        : 

追加的措置  <水環境に関するもの>

        :

<林床管理>

  • アズマネザサの被度増加により生育環境の悪化した調査定点○、○における林床管理の時期、頻度の見直しをおこなう。
  • 生育環境を維持するための管理は継続する。今後も事後調査結果により随時、管理方法の再検討をおこなう。

        : 

今後の事後調査計画 <水環境に関する調査>

       : 

<林床管理に関する調査>

  • 追加措置の効果が見られ、カタクリの生育状況および生育環境が回復するまでの期間、年○回程度の調査をおこなう。生育状況および生育環境の回復が確認された後は○年に1回程度の調査をおこない、管理の効果を確認する。

       : 
       : 

(22)-2 陸水域

  事後調査実施案および報告の例を表●、●に示す。


表● 事後調査の実施案 

        回避または低減         代 償 
環境保全措置の内容  [1] 自然復元型工法を用いた低水護岸に よる底質および地形の維持。 
[2] 堰ゲート操作による汽水環境の維持。  
[3] 堰ゲート操作および曝気などによる底質およびDO濃度の維持。 
[4] 仔魚~成魚に対する迷入防止対策。 
[5] 回収・帰還装置による本川への帰還。 
[6] 魚道の設置による連続性の確保。 
[7]魚道および澪筋の施工による流下時間の維持。
[1] 堰下流域におけるワンド状水路の造成。 
[2] 堰下流域における人工干潟の造成。
調査項目および調査内容  調査地域内の状況 
・低水護岸における生物の生息状況。
・堰上流域における塩分の分布。
・堰上下流域における底質およびDO分布。
・取水口における迷入量。
・仔魚類の回収帰還装置による帰還率。
・魚道の利用状況および遡上率。
・堰上流域における流速分布。
・湛水区域内の魚類相。
造成したワンド状水路および 人工干潟とその周辺 
  ・物理・化学的項目 (水深、地盤高、勾配、水質、底質、流動) 
  ・生物および機能に関する項目(植生、底生生物、魚介類、 干潟の水質浄化能力) 
調査範囲 対象範囲全域 造成したワンド状水路および人工干潟とその周辺 
調査実施時期と期間 ・各項目ともに四季調査を原則とするが、対象とする生物の出現時期などにより、増減する。
・調査期間はいずれも○年間とする。
・各項目ともに四季調査とす る。 
  ・調査期間は、ワンド状水路 および人工干潟の効果が確認 
できるまでの期間とする。
調査方法 アセス実施段階における現地調査方法に準ずる。
調査結果の取り扱い 調査結果の公開およびインターネットによる公表。 
不測の場合の対処方法 不測の事態に陥った原因を調査し、事業が原因と判断される場合には、その影響を回避または低減(場合によっては代償)する環境保全措置を計画、実施する。
実施体制    事業者    事業者

 

表●(1) 事後調査報告(堰供用後○年目)例

環境保全措置の内容   [1] 自然復元型工法を用いた低水護岸による底質および地形の維持。 
[2] 堰ゲート操作による汽水環境の維持。 
[3] 堰ゲート操作および曝気などによる底質およびDO濃度の維持。 
[4] 仔魚~成魚に対する迷入防止対策。 
[5] 回収・帰還装置による本川への帰還。 
[6] 魚道の設置による連続性の確保。 
[7] 魚道および澪筋の施工による流下時間の維持。 
調査項目  低水護岸における生物の生息状況  堰上流域における塩分の分布   堰上下流域における 底質およびDO分布  取水口における迷入量 
効果の確認 ・低水護岸周辺にはヨシを主体とする植物群落が確認され、その範囲は○m2であり、事業前の○%で あった。
・低水護岸周辺には両生類およびアシハラガニの生息が確認され、確認された種には事業前との差は 認められない。また、アシハラガニおよびオオヨシキリの 確認個体数は事業前の○%であった。

 

ゲート操作時 には堰上に汽水環境の存在が確認され、その範囲は○mであり、事業前の汽水域の範囲の○%であった。  ・堰上下流域にはシ ルト質の堆積が確認され、CODは2.5~6mg/g、強熱減量は15~17%であり、事業前よりも上昇し  た。
・曝気装置周辺のDOは8~10mg/Lであり、その範囲は装置から約10mであった。
  ・取水口への仔アユ迷入量は日当たり○ ~○万尾であり、全流下量に対する比率は○%であった。
  ・稚魚~成魚の迷入については、成魚の迷入は確認されなかった。また、オイカワ、ヨシノボリ類などの小型個体が日当たり○~○尾迷入していることが確認された。
追加措置  特になし。  特になし。 ・シルト質の堆積が確認されたため、ゲート操作の頻度を上げることを検討する。 
・曝気装置の効果が及ぶ範囲が狭いため、装置の増設を検討する。
特になし。
今後の対応 特になし。  特になし。 特になし。    最新の迷入防止装置が開発される都度、追加施工を検討する。 
今後の事後調査計画        -      - 追加措置に応じたモニタリングを計画、実施する。   迷入防止装置を追加 する場合には、それに応じたモニタリングを計画、実施する。

 

表●(2) 事後調査報告(堰供用後○年目)例 

環境保全措置の内容 [1] 自然復元型工法を用いた低水護岸による底質および地形の維持。 
[2]堰ゲート操作による汽水環境の維持。 
[3] 堰ゲート操作および曝気などによる底質およびDO濃度の維持。 
[4] 仔魚~成魚に対する迷入防止対策。 
[5] 回収・帰還装置による本川への帰還。 
[6] 魚道の設置による連続性の確保。 
[7] 魚道および澪筋の施工による流下時間の維持。 
調査項目 仔魚類の回収帰還装置による帰還率 魚道の利用状況および遡上率 堰上流域における流速分布 
効果の確認 回収帰還装置による仔アユの帰還率は○~○%であった。  ・魚道は遊泳魚~底生魚および大型魚~小型魚までに利用されていることが確認された。
・ヨシノボリ類、アユおよび 小卵型カジカに標識放流をおこなった結果、魚道遡上率は○~○%であった。
堰上の澪筋における流速は○~○cmであり、湛水区域の平均流速の○倍であった。
追加措置 特になし。 特になし。 特になし。
今後の対応 特になし。 最新の魚道が開発される都度、魚道の改善を検討する。 特になし。
今後の事後調査計画       -  魚道の改善をおこなう場合に  は、それに応じたモニタリングを計画、実施する。          - 

 (22)-3 海域

  事後調査実施案および報告の例を表●、●に示す。


表● 事後調査の実施案

環境保全措置の内容 事業実施区域の変更(埋立面積を縮小し、マリーナを掘り込み型にする) 埋立予定地近傍に人工干潟を造成 
調査項目および調査内容 調査地域内の状況 
  ・水質、底質、流動の状況  
  ・アマモ場の生育状況(現存量、分布範囲)            
  ・アマモ場での仔稚魚の出現状況
造成した人工干潟とその周辺の状況 
・物理・化学的な項目
(粒度組成、勾配、流動、波浪、
                         水質、底質) 
・生物的な項目
(底生生物、卵、仔稚魚、魚介類、 
         干潟の浄化量) 
調査範囲  調査地域内全域(現地調査と同様)  造成した人工干潟とその周辺 
調査実施時期と期間   ・水質、底質、流動、波浪の状況 
 1回/季  

・アマモ場の生育状況およびアマモ場での仔稚魚の出現状況   
※現地調査と同様に、季節的なアマモの分布・成長、環境変化などが適切に把握できる時期として、アマモの芽吹き時期(2~4月)、繁茂期(7~8月)を確 実におさえる。 

・調査期間としては両項目とも、埋立完了後○年間とする。
・物理・化学的な項目 
        1回/季 

 ・生物的な項目 
         1回/季

・調査期間としては両項目とも、人 工干潟完成後、効果が確認できる期間とする。 
調査方法  現地調査の方法と同様とする。 
調査結果の取り扱い 調査結果の公開およびインターネットによる公表
不測の場合の対処方法 不測の状況になった原因を調査し、その原因による影響を回避、低減 (場合によっては代償)する環境保全措置を計画・実施する。
実施体制 事業者  事業者 

 

表●(1) 事後調査報告(埋立完了後○年目)例

環境保全措置の内容 事業実施区域の変更(埋立面積を縮小し、マリーナを掘り込み型にする)
調査項目 水質、底質、流動、波浪   アマモ場の生育状況  アマモ場での仔稚魚の出現状況 
効果の確認   水質について、存在前から埋立完了後○年間、CODは4mg/l前後、SSは5mg/l前後、T-Nは1.0mg/l程度、T-Pは0.1mg/l程度と大きな変化がみられない。
   底質について、残存干潟や浅海域での粒度組成は存在前と比較して 大きな変化はなく、埋 立地周辺において土砂の堆積傾向はみられなかった。 
 流動について、干潟前面の海域では、東から西への流向が卓越しており、流速も4cm/s前後であり、存在前と大きな変化はみられなかった。 
生育環境の変化はな く、分布範囲もほとんど変化していなかっ た。しかし、平均被度 は存在前が約60%であったのに対し、埋立完了後△年目に約50%と 低下したが、その後は60%前後まで回復し た。 存在前と同様に、埋立完了後○年間において、メバル、クロダイ の仔稚魚が多く確認さ れ、葉上生物では小型甲殻類が多く確認された。
追加措置  特になし  特になし  特になし
今後の対応  特になし   この平均被度の低下は、自然変動の範囲であると考えられることから、今後の対応は不要と判断した。 特になし 
今後の事後調査計画        -         -          -

 

表●(2) 事後調査報告(人工干潟造成後○年目)例

環境保全措置の内容  埋立予定地近傍に人工干潟を造成 
調査項目 粒度組成、勾配、流動、波浪、水質、底質 底生生物、卵、仔稚魚、魚介類 
効果の確認   人工干潟の粒度組成について、消失する干潟と同様の粒度組成(砂分80%、シルト・粘土分20%)で造成した。造成後○年間の粒度組成は、砂分70~80%、シルト・粘土分20~30%であり、人工干潟東側でシルト・粘土分が多くなってきたこ
とが確認された。
  人工干潟の勾配について、造成後○年間において、勾配の変化もみられなかった。
  流動について、対象となる海域では、東から南西への流向が卓越しており、流速も4cm/s前後であり、造成前と大きな変化はみられなかった。また、波浪についても同様に、造成前と比較して大きな変化は認められなかった。
  水質について、造成前から造成後○年間、CODは4mg/l前後、SSは5mg/l前後、T-Nは1.0mg/l程度、T-Pは0.1mg/l程度と大きな変化がみられない。
  底質について、人工干潟前面の底質の粒度組成は、造成後○年間大きな変化は認められなかった。
  注目種であるアサリについて、造成後1年目は10個体/0.1m2であったが、年々増加し造成後○年目には25個体/0.1m2まで増加したことが認められた。底生生物についても同様に出現種数、個体数とも年々増加傾向はみられるものの、消失した干潟の出現種数、個体数には及ばないことが認められた。
  注目種であるイシガレイについて、造成した干潟前面を産卵場や育成場として利用していることが認められた。他の魚介類の卵や仔稚魚も確認され、消失した干潟の前面同様、多種の魚介類に利用されていることが認められた。干潟の浄化量もアサリを含む底生動物が増加したため、浄化量も年々増加したものの造成後○年目で16kgN/日であり、消失した干潟(25kgN/日)の浄化量には及ばないことが認められた。
追加措置  特になし  特になし 
今後の対応と事後調査計画  人工干潟の粒度組成などの安定性が確認されていないこと、生物の生息状況および浄化量が消失した干潟と同程度の状況まで回復していないことが認められた。このような状況であることから、学識経験者による検討会を開き、今後の追加措置を念頭に置き、多様な生物の生息する人工干潟(消失した干潟と同程度の状況)の検討および今後の事後調査計画の見直しをおこなう。

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