環境影響評価とは、事業者が事業の実施による環境影響について自ら適正に調査・予測・評価を行い、その結果に基づいて環境保全措置を検討することにより、その事業計画を環境保全上望ましいものとしていく仕組みである。近年、市民の環境意識の高まりや、保全生物学などの学術分野における知見の蓄積によって、環境影響評価に対しても、このような時代の流れに対応した適切な調査・予測・環境保全措置・評価を行うことが求められている。適切な環境影響評価を行うためには、まず何を評価すべきかという視点を明確にして調査・予測・環境保全措置・評価を進めることが重要である。
「地形・地質」「植物」「動物」項目は、学術上もしくは希少性の観点から重要な動植物種、植物群落、注目すべき生息地、重要な地形・地質を対象とする点で「生態系」項目と異なることに留意しなければならない。これらの項目では、事業が重要な動植物種、植物群落、注目すべき生息地、重要な地形・地質の存続・持続可能性に及ぼす影響を調査・予測し、予測された影響を環境保全措置によってどの程度回避・低減できるかを評価する。
これらの調査は、単に調査地域の重要な動植物種、植物群落、注目すべき生息地、重要な地形・地質を網羅的に記載することを目的としたものではなく、環境保全措置や予測、評価を行うことを前提とした調査である。調査方針を設定する際には、環境保全措置や予測、評価を行うために必要な資料が得られるよう、十分検討しなければならない。
また、「地形・地質」「植物」「動物」項目は、「生態系」項目とは対象を選択する基準が異なるものの、地形や植物、動物は生態系を構成する要素でもあるため、スコーピング段階と同様に、調査・予測・環境保全措置・評価に際しても相互に十分な連携を図りながら進めるとともに、場合によっては作業を統合して行う必要もある。
同様に、「地形・地質」「植物」「動物」項目の調査においても、それぞれの項目ごとに独立で調査方針を設定するのではなく、効果的な予測・評価のために項目間で相互に連携を取って調査項目や調査範囲を設定する必要がある。例えば、ある動物種の生息地を評価する際に植物調査の資料を転用したり、植物調査の調査地点を基準として調査を行うことが考えられる。また、ある生息地の調査において、植物調査で計画されていたものよりも広い範囲の植物の情報が必要であると判断された場合は、それを基に植物調査の項目・範囲を広げて設定する。実際の調査の進行に伴って新たな調査が必要となったり調査範囲を広げなければならない場合もあるため、最初の調査項目設定の段階だけではなく、調査実施期間中も常に項目間での調整を心がけることが重要である。
これらの調査結果をもとに、重要な動植物種、植物群落、注目すべき生息地、重要な地形・地質に対する事業の影響を評価、予測する。そして予測結果をもとに、個々の対象について回避・低減・代償等の環境保全措置を検討、実施する。
事業着手後には、予測結果や環境保全措置の効果を検証するために事後調査を行うが、この結果は常に環境保全措置に反映させなければならない。事後調査の結果、予測結果と異なる影響が明らかとなった場合や、当初の環境保全措置の効果が充分ではないと判断された場合は、必要に応じて保全方針の修正を検討し、新たな環境保全措置を行う必要がある。