平成13年度第 2回環境負荷分科会
資料 3

3.工業団地でのケーススタディ(検討の流れ)

3.1 ケーススタディの流れ

図3-15 環境保全措置から事後調査への検討の流れ

3.2 環境保全措置

(温室効果ガス等のうち温室効果ガスにおける検討項目の例示)

1) 温室効果ガス等

(1) 保全方針の設定

保全方針の設定としては以下の検討を行う。
  ・ 保全対象の選定
  ・ 保全目標の設定

[1] 保全対象の選定
 
温室効果ガス等における保全対象の選定では、保全措置を必要とする環境要素(動植物の場合の重要種等)を選定するのではなく、環境負荷削減の観点から、環境負荷量が多く、環境保全措置の効果が期待できる環境保全措置の優先度の高い環境影響要因の抽出を行う。この作業は、次の事項がある。

(ア) ベースラインでの環境負荷量による環境負荷発生要因の検討

(a) 工場別の温室効果ガスの排出量の検討
 環境保全措置を考慮しない場合における温室効果ガス等の排出量により、寄与の大きい行為等を抽出する。
 表3-6は、工場別の環境負荷量発生量(ベースライン)であるが、製紙業A工場での排出が圧倒的に大きく、A工場での対策がまず優先されることがわかる。

表3-6 工場別の二酸化炭素排出量

工場 業種 都市ガス
(kgCO2/年)
A重油
(kgCO2/年)
電力(kgCO2/年)

事務所+工場

事務所 工場設備
A 製紙 27,720,780 261,124,453 910,540 12,936,058 13,846,598
B 鋼材溶接 765 - 89,283 7,302 96,585
C 倉庫 48 - 7,635 0 7,635
D 鋼材溶接 239 - 56,677 46,786 103,463
E 配管加工 239 - 42,468 306,694 349,161
F 鋳造 956,071 - 45,490 194,500 239,990
G めっき 4,899 - 17,125 106,560 123,685
H めっき 191,649 - 97,978 253,439 351,418
I 板金 119 - 49,837 98,710 148,548
合計 28,874,809 261,124,453 1,317,033 13,950,050 15,267,084

(b) 工程別の温室効果ガスの排出量の検討
  各工場での工程での温室効果ガスの排出量を検討し、対策の必要な、又は対策が効果的と考えられる工程を抽出する。

[2] 保全措置の目標設定
 
保全措置の目標設定の考え方は、基本的に評価の基準となる以下の事項である。
  ・ 実行可能な範囲での最大限の回避・低減措置の実施
  ・ 目標との整合性

(ア) 実行可能な範囲での最大限の回避・低減措置の実施
 
次の視点で目標を設定する。
本事業での各種活動が事業の目的に照らして温室効果ガスの排出が最小となる。
・ 採用する環境保全措置に関する技術は、現在の技術レベルに比較して先進的な技術を適用する。
・ 各種の環境保全措置が事業の採算性に照らして最大限となる。

(イ) 目標等との整合性

○ 市では、温室効果ガスの排出量について以下のような目標を持っている。
  ○ 市における温室効果ガス削減目標

○ 市においては、地球温暖化防止施策を中心とした「地球環境保全のための行動計画」が定められている。ここでは、COP3で合意した我が国での二酸化炭素削減量である平成2年レベルに対し-6%を平成20年~平成24年の間に達成することを目標としている。

また、本事業での工業団地進出企業は、内陸部の既設の企業であるため、本事業の実行によって○市の目標である6%削減を可能とするものとする。

(2) 環境保全措置の内容の検討(供用中について例示)

[1] 環境保全措置検討案

(ア) 環境保全措置の検討案の提示
温室効果ガスの環境保全措置として検討できる技術等について網羅的に把握し、本事業において適用可能な技術を抽出した。整理内容を表3-7に示す

表3-7 温室効果ガスの環境保全措置の網羅的把握ならびに適用可能な環境保全措置

排出源 事業の区分 対策の方向性 適用の可否

建設
工事

建設工事 建設機械の効率化
工事の合理化、短期化
環境負荷の少ない資材の利用

固定発生源

  工場、製造系開発 製造過程の省エネルギー化
リサイクル率向上
低炭素燃料への転換
非化石燃料への転換
施設間のエネルギー融通
未利用エネルギーの活用

自動車

自動車の高効率化
効率的輸送
輸送量の削減

・ 選定に当たって、その選定理由を明確にする。
・ 個別検討技術の提案(仮案)

(a) 未利用エネルギー活用等に関する保全措置
(ⅰ) コージェネレーション
(ⅱ) 廃棄物焼却廃熱の供給
(b) 省エネルギーに関する保全措置
(ⅲ) 都市ガスの利用(二酸化炭素排出量の少ないエネルギーへの転換)
(ⅳ) 個別設備機器への省エネルギー機器の採用

(イ)環境保全措置の内容の整理
 
各環境保全措置について技術的内容と実施方策についてとりまとめを行う。

(a) 技術的内容の整理
・ 環境保全措置の種類・方策
・ 環境保全措置の規模
・ 事業計画との関連(事業計画の変更点)
・ 効果の原単位等
・ 環境保全措置実施の不確実性
・ 効果達成の不確実性

(b) 環境保全措置の実施に関する内容整理
・ 実施主体
・ 実施時期
・ 実施場所
・ 実施の裏づけとなる合意事項、予算措置等

[2] 環境保全措置の実施案の検討
 
個別の検討案を組み合わせた比較検討案として下記のような実施案の提示(仮案)を行う。
第1案 対策を講じない場合(ベースライン)
第2案 対策案1(現状の通常技術を採用した設備案)
第3案 対策案2(廃棄物焼却改善案:N2Oの排出を抑制する。)

[3] 環境保全措置の効果の検討及び他の環境要素の環境影響の検討

(ア) 環境保全措置の効果の検討
・ 予測手法にしたがって、温室効果ガスの排出量を検討する。

(イ) 他の環境要素の環境影響の検討

環境保全措置によって発生する可能性のある環境影響について検討を行う。
  この段階は、スコーピングの段階と同様の検討内容となる。

(a) 環境影響要因及び環境要素の抽出
・ 各環境保全措置の環境影響要因を検討して、影響が考えられる環境要素を抽出し、表3-8のような関連表として取りまとめる。

表3-8 温室効果ガス環境保全措置による環境影響要因-環境要素検討表

注:表中の○は、検討対象項目として選定を表す。
  表中の△は、影響があるが明らかに軽微と判断できるので検討の対象外とする。

(b) 事業計画(又はスコーピング)へのフィードバック
 
環境保全措置に伴う環境影響要因と環境要素の関連の検討作業は既にスコーピングにかかわる作業といえる。
  環境保全措置の実行に伴い、環境影響の存在を確認した後、事業計画及びスコーピングに戻り、以下の検討作業を行う。
(ⅰ) 事業計画に係る事項
・ 環境保全措置の施設計画・土地利用計画等
・ 環境保全措置の稼動・供用計画、維持管理計画
(ⅱ) 各環境要素に対する予測・評価に係る事項
・ 活動量の把握(負荷量の把握)
・ 環境影響の予測
・ 環境影響の評価

(3) 環境保全措置の妥当性の検討
  妥当性の検証では、評価を行うに当たって必要となる検証データを検討・整理する。
[1] 個別の環境保全措置検討案の妥当性の検証
  環境保全措置の実施案に採用した個別の環境保全措置について次の視点で妥当性についての考察を行う。
(ア) 事業的側面
(イ) 技術的側面
(ウ) 経済的側面

[2] 環境保全措置の実施案の妥当性の検証
  個別環境保全措置を組み合わせた実行案について次の視点で妥当性の検証を行う。
(ア) 温室効果ガス等における評価のための検証
・ 実行可能な範囲で最大限の回避・低減がなされている根拠
・ 目標との整合性
(イ) 総合的な環境影響に関する評価のための検証
 環境保全措置によって引き起こされる可能性のある他の環境要素での影響を考慮した総合的な評価を行うための根拠

2)廃棄物等

(1) 保全方針の設定
 [1] 保全対象の選定
  廃棄物等における保全対象の選定では、保全措置を必要とする環境要素を選定するのではなく、環境負荷削減の観点から、環境負荷量が多く、環境保全措置の効果が期待できる環境保全措置の優先度の高い環境影響要因の抽出を行う。この作業は、次の事項がある。
(ア) ベースラインでの環境負荷量による環境負荷発生要因の検討
(a) 工場別の廃棄物等排出量の検討
  環境保全措置を考慮しない場合における温室効果ガス等の排出量により、寄与の大きい行為等を抽出する。
(b) 工程別の温室効果ガスの排出量の検討
  各工場での工程での廃棄物の排出量を検討し、対策の必要な、又は対策が効果的と考えられる工程を抽出する。
 表3-9のようにマトリックス表を作成し、工程と排出物の関連を検討する。

表3-9 製紙工場(A工場)での産業廃棄物発生工程の検討事例

  抄紙機
設備
古紙処理
設備
蒸発濃縮
設備
焼却設備 排水処理
設備
燃え殻   ●  
汚泥
廃油
廃酸
廃アルカリ
廃プラスチック類        
紙くず  
木くず  
繊維くず  
動植物性残さ
ゴムくず
金属くず
ガラスくず及び陶磁器くず
鉱さい
コンクリート殻  
動物のふん尿  
動物の死体
ばいじん  

[2] 保全措置の目標設定

(ア) 実行可能な範囲での最大限の回避・低減措置の実施
    次の視点で目標を設定する。
・ 本事業での各種活動が事業の目的に照らして廃棄物等の排出が最小となる。
・ 採用する環境保全措置に関する技術は、現在の技術レベルに比較して先進的な技術を適用する。
・ 各種の環境保全措置が事業の採算性に照らして最大限となる。

(イ) 目標等との整合性
 
  ○ 市では、一般廃棄物の排出量について以下のような目標を持っている。

表3-10 ○市における減量化・再生利用(資源化率)目標値

年度 減量化目標値 再生利用目標値(資源化率)
2010年 35% 22%

注 1)減量化目標値は1990年度をベースとした一人一日排出量の減量化率
 2)再生利用目標値は排出対象量に対する資源化量の割合

また、本事業での工業団地進出企業は、内陸部の既設の企業であるため、本事業の実行によって○市の目標である6%削減を可能とするものとする。
他に、本事業計画に関連する事業者団体又は事業者に係る計画等として、「建設工事に係る資材の再資源化に関する法律」(以下、「建設リサイクル法」という。)に定める再資源化目標として表3-11に定める数値が示されている。
 

表 3-11 「建設リサイクル法」に定める平成22年度における
建設副産物の再資源化等の目標値

資材名 再資源化等率(%)
コンクリート塊

95

建設発生木材
アスファルト・コンクリート塊

(2) 環境保全措置の内容の検討(供用中について例示)

[1] 環境保全措置検討案

(ア) 環境保全措置の検討案の提示
・ 廃棄物等の環境保全措置として検討できる技術等について網羅的に把握する。整理内容は表3-12に示す方向性に基づいた技術的内容が考えられる。

表3-12 廃棄物等の環境保全措置の網羅的把握の例(リサイクル技術)
 

(イ) 環境保全措置の検討案の提示
・ 網羅的に把握した技術等対策メニューから本事業において適用可能な技術を抽出する。
・ 選定に当たって、その選定理由を明確にする。
・ 個別検討技術の提案(仮案)
(a) 紙類の再生
(b) 厨芥のコンポスト化
(c) 廃棄物の焼却
(d) 廃プラスチックの高炉利用(還元剤)
(e) ばいじんのセメント原料化
(f) 分別回収+資源化
(g) 建設発生土の自区内再利用

(ウ) 環境保全措置の内容の整理
  各環境保全措置について技術的内容と実施方策についてとりまとめを行う。
(a) 技術的内容の整理
・ 環境保全措置の種類・方策
・ 環境保全措置の規模
・ 事業計画との関連(事業計画の変更点)
・ 効果の原単位等
・ 環境保全措置実施の不確実性
・ 効果達成の不確実性
(b) 環境保全措置の実施に関する内容整理
・ 実施主体
・ 実施時期
・ 実施場所
・ 実施の裏づけとなる合意事項、予算措置等

[2] 環境保全措置の実施案の検討
 
個別の検討案を組み合わせた比較検討案として下記のような実施案の提示(仮案)を行う。
第1案 対策を講じない場合(ベースライン)
第2案 対策案1(現状の通常技術を採用した設備案)
第3案 対策案2(廃棄物焼却を行わない場合)

[3] 環境保全措置の効果の検討及び他の環境要素の環境影響の検討

(ア) 環境保全措置の効果の検討
・ 予測手法にしたがって、廃棄物等の排出量を検討する。

(イ) 他の環境要素の環境影響の検討
 
環境保全措置によって発生する可能性のある環境影響について検討を行う。
  この段階は、スコーピングの段階と同様の検討内容となる。
(a) 環境影響要因及び環境要素の抽出
・ 各環境保全措置の環境影響要因を検討して、影響が考えられる環境要素を抽出し、表3-13のような関連表として取りまとめる。

表3-13 廃棄物等環境保全措置による環境影響要因-環境要素検討表

 

影響要因の区分

 

 

 

 

環境要素の区分

土地又は工作物の
存在及び供用



















剤)












(還





























環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素 大気環境 大気質    
騒音        
低周波音        
振動        
水環境 水質        
底質          
地下水        
土壌に係る環境その他の環境 地形及び地質            
地盤            
土壌        
生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素 動物            
植物            
生態系            
人と自然との豊かな触れ合いの確保を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素 景観            
人と自然との触れ合いの活動の場              
環境への負荷の量の程度により予測及び評価されるべき環境要素 温室効果ガス等  
廃棄物等              

注:表中の○は、検討対象項目として選定を表す。
  表中の△は、影響があるが明らかに軽微と判断できるので検討の対象外とする。

(b) 事業計画(又はスコーピング)へのフィードバック
  環境保全措置に伴う環境影響要因と環境要素の関連の検討作業は既にスコーピングにかかわる作業といえる。
  環境保全措置の実行に伴い、環境影響の存在を確認した後、事業計画及びスコーピングに戻り、以下の検討作業を行う。
(ⅰ) 事業計画に係る事項
・ 環境保全措置の施設計画・土地利用計画等
・ 環境保全措置の稼動・供用計画、維持管理計画
(ⅱ) 各環境要素に対する予測・評価に係る事項
・ 活動量の把握(負荷量の把握)
・ 環境影響の予測
・ 環境影響の評価

(3) 環境保全措置の妥当性の検討
  妥当性の検証では、評価を行うに当たって必要となる検証データを検討・整理する。

[1] 個別の環境保全措置検討案の妥当性の検証
  環境保全措置の実施案に採用した個別の環境保全措置について次の視点で妥当性についての考察を行う。
(ア) 事業的側面
(イ) 技術的側面
(ウ) 経済的側面

[2] 環境保全措置の実施案の妥当性の検証
  個別環境保全措置を組み合わせた実施案について次の視点で妥当性の検証を行う。

(ア) 廃棄物等における評価のための検証
・ 実行可能な範囲で最大限の回避・低減がなされている根拠
・ 目標との整合性
(イ) 総合的な環境影響に関する評価のための検証
  環境保全措置によって引き起こされる可能性のある他の環境要素での影響を考慮した総合的な評価を行うための根拠

3.3 事後調査

1) 事後調査計画

(1) 事後調査の必要性
・ 事業特性、地域特性及び環境保全措置の内容から事後調査の必要性について検討する(以下、事後調査が必要であることを前提でケーススタディを行う。


( 2) 事後調査の内容
・ 調査事項
・ 調査対象の指標
・ 調査結果の評価

2) 事後調査の活用
・ 事後調査の結果、環境負荷量が環境影響評価段階の予測値を上回ることがあった場合には、事業計画に立ち返って対策を講じる必要がある。そのような場合の、フィードバック体制や新たな保全措置の実施の確実性の確保について述べる。

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