自然との触れ合い分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
自然との触れ合い分野の環境影響評価技術(III)環境保全措置・評価・事後調査の進め方について(平成13年9月)

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3 評価

(1)評価の考え方

-影響の客観的な評価

 景観・触れ合い活動の場に関する評価は、保全方針で明らかにした環境保全措置の対象と目標に対して、採用した環境保全措置を実施することにより、予測された影響を十分に回避または低減しうるか否かについて、事業者の見解を明らかにすることによりおこなう。

評価において事業者の見解を示すにあたっては、その根拠ができる限り客観的に説明される必要がある。そのためには、個々の環境保全措置の妥当性の検証結果を引用しつつ、複数案の比較結果や実行可能なより良い技術が取り入れられているか否かについての検討結果を一覧表などに整理して示した上で、景観・触れ合い活動の場への影響について全体としての見解を示すのが一般的である。その際、以下の点に留意が必要である。

-景観における評価の客観性確保

 景観において評価の客観性を高めていくためには、環境保全措置の目標において認識項目や指標をできる限り具体的に明記することが重要である。そのためには、調査や予測において、現況の価値認識の把握や変化状況の予測が、客観性の高い説得力のある内容として整理され解説されている必要がある。

 景観の価値認識の把握や変化状況の予測にあたっては、眺望景観と囲繞景観のそれぞれに対して、普遍価値と固有価値の二つの価値軸に照らして重要な認識項目を設定し、認識項目と関わりが深い(相関が高い)代表的指標を既存の知見や研究例などを参考に選定することとしている。したがって、調査の段階での認識項目と指標の選定における客観性の確保が最も基本となる。

 そのため、既存の知見や研究例の引用のみでは説得力ある説明ができないような場合には、個別案件ごとの調査において、現況の景観の価値認識をヒアリングや評価実験等により把握し、その結果と景観の状態把握結果とを解析することにより、相関の高い指標を抽出することも重要となる。

 また、景観の視覚的変化予測はコンピュータ・グラフィック技術の導入により予測精度および再現性が格段に進歩していることから、これらの最新技術を積極的に導入することにより、一般の方々にも分かりやすい予測結果を評価の根拠として示していくことも、評価の客観性の向上にとって大変有効である。

-触れ合い活動の場における評価の客観性確保

 触れ合い活動の場において、評価の客観性を高めていくためには、環境保全措置の目標において、保全すべき活動種を明確に提示し、活動種に対する変化状況の予測が整理されることが必要である。

 触れ合い活動の場の価値認識の把握は、保全すべき活動種を明らかにするためにおこなわれるものであり、その把握のための指標の選定においては、できるだけ客観的かつ詳細であることが望まれる。

 価値認識の把握において、客観性に欠けているとみなされたり、説得力のある説明ができない場合には、ヒアリングや追加調査、使用データの見直しなどをおこない、場の利用者の実感に配慮した結果を提示することが望ましい。

(2)総合的な評価との関係

-他分野の評価結果との総合化

 準備書や評価書においては、景観、触れ合い活動の場などの自然との触れ合い分野に関する各環境要素ごとの評価結果は、大気・水環境分野、生物多様性分野、環境負荷分野などに関するそれぞれの環境要素ごとの評価結果と併せて「対象事業に係る環境影響の総合的な評価」として取りまとめて示す必要がある。

それぞれの環境要素間には、トレード・オフの関係が成立するものがあることから、総合的な評価においては、これら環境要素間の関係や優先順位について事業者はどうとらえて対応したのかについて明確に示す必要がある。

-総合評価の手法と表現方法の創意工夫

 総合評価の手法および表現方法としては、一覧表に整理する方式があり、ほかには、一対比較による方法や得点化する方法などが知られている。今後は、合意形成の手段でもある環境影響評価の目的達成に向け、事業者の総合的な見解として、対象事業が及ぼす環境影響に対する環境配慮のあり方をその根拠とともに、住民などに分かりやすく簡潔に伝えられるように個別案件ごとに創意工夫を重ねていく必要がある。

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