自然との触れ合い分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
自然との触れ合い分野の環境影響評価技術(II) 調査・予測の進め方について(平成12年8月)

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第3章 今後の検討課題

 今年度の中間報告では、「景観」「触れ合い活動の場」のそれぞれの項目を対象として、前年度のスコーピングに関する検討を踏まえ、環境影響評価の実施段階の調査手法及び予測手法について検討した結果をとりまとめた。検討に際しては今回制定された環境影響評価法において、人と自然との豊かな触れ合いの確保という視点のもとに「景観」と「触れ合い活動の場」のふたつの項目が環境影響評価の対象としてあげられたことを重視して検討を行い、以下のような手法をとりまとめた。

 「景観」項目については、眺望景観と囲繞景観のふたつの要素に分けて、それぞれ景観要素の状態を把握するとともに、普遍価値と固有価値のふたつの価値軸に照らして景観の価値を把握した上で、事業によるそれらの変化状況を捉えるものとし、そのための調査・予測手法を提示した。

 「触れ合い活動の場」項目については、活動特性とアクセス特性のふたつの要素に分けて、まず活動特性については活動の状態、活動を支える環境の状態を把握するとともに、普遍価値と固有価値のふたつの価値軸に照らして触れ合い活動の場の価値を把握した上で、事業によるそれらの活動特性の変化状況を捉えるものとした。また、アクセス特性についてはアクセスルートの改変や事業に伴う発生交通によるアクセスへの影響を捉えるものとし、そのための調査・予測手法を提示した。

 これらの手法には、「景観」項目では、囲繞景観への影響予測や価値軸に照らした価値の把握など、これまでの環境影響評価では適用実績が少なく、今後事例の積み重ねにより一層の技術的な向上を図っていくことが望まれるものも含まれている。また、「触れ合い活動の場」項目は、項目そのものが新しい分野であり、適用実績は少なく、調査・予測技術の向上の必要性も高い。したがって、今回の中間報告で提案した調査・予測手法の考え方について、一般の理解を得るための取組を進めるとともに、今後実施される様々な案件において、今回の提案を参考として案件ごとに創意工夫を加えながら実施事例を積み重ねていくことが特に重要である。そうした環境影響評価への適用事例や新たな調査研究から得られる情報を収集、蓄積し、環境影響評価に関わる様々な主体がそれらの情報を活用していくことを可能とするデータベースの整備も必要と考えられる。

 次年度は、これまで2年間の検討結果を踏まえて、「環境保全措置」、「評価」及び「事後調査」にかかる手法について主に検討を行うことを予定している。対象地域の自然環境の特性、重要性や事業の影響内容に応じた適正な環境保全措置のあり方、影響の回避、低減あるいは代償が適切に図られているかを評価するための手法、景観や触れ合い活動の場の時間的な変化をみながら柔軟な保全対策を講じていくための事後調査の手法などについて検討を行っていく必要がある。その際に、環境保全措置の検討のレベルによって予測に求められる精度が異なることへの対応や複数案の比較による評価を行うために調査、予測、保全措置検討、評価の作業の流れと結果をどのように整理すべきかといった観点から、今年度の

調査・予測手法に関する検討内容についても、次年度の検討結果により見直しを加えていくことが必要と考えられる。

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