南北に長い日本列島の生態系は、気候、地形・地質、人間の営為などの影響により多種多様であり、対象地域の生態系の分布とその特性を把握することは大切である。
その際に参考となるものとして、現在、環境庁自然保護局計画課において、「生物多様性保全のための国土区分(試案)」(以下「国土区分」という)及び「区域ごとの重要地域情報(試案)」の検討が進められている。
「国土区分」は、既存の文献資料や自然環境保全基礎調査など各種調査結果により、日本の自然環境の特性及び地域の生物学的特性を示す自然科学的な指標について整理し、その指標に基づいて生物学的特性からみた地域のまとまりを概括的に示したものであり、全国を10に区分している(図2-5、6)。
「区域ごとの重要地域情報」では、この10区分に基づき、各地域の生物学的特性を踏まえた生態系レベルでの生物多様性保全を図るため、植物群集を主な指標として、A:区域の生物学的特性を示す生態系、B:区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる重要な生態系、C:伝統的な土地利用により形成された注目すべき二次的自然、の観点から、「生物群集タイプ」としてその生態系の区分を行っている(表2-7)。
これらの「国土区分」及び「生物群集タイプ」などを参照し、対象地域がどの区分に属し、どのような生物群集タイプを含むかを把握することにより、当該対象地域の生態系の特性や生物相を概略的に把握することが可能である。
A:区域の生物学的特性を示す生態系
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B:区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる重要な生態系
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C:伝統的な土地利用により形成された注目すべき二次的自然
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