大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(I)<スコーピングの進め方>(平成12年8月)

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第3章 大気・水・土壌環境の分野別スコーピングの進め方

1 大気環境

1-1 大気質・悪臭

 大気質分野の環境影響評価においては、従来の環境影響評価において対象とされてきた窒素酸化物、硫黄酸化物などに加え、ダイオキシン、ベンゼン等の有害物質やディーゼル排気起源の粒子状物質などの汚染物質が問題となる場合が増えている。また、従来環境基準との対比において用いられてきた年平均濃度だけではなく、ダウンウォッシュなどの特殊条件下で生じる短期濃度も重要視されるようになっている。
 また悪臭分野においては、工場・事業場等からの製品製造等に伴う臭気発生に加え、焚き火などの燃焼臭の苦情が増加するなど、価値観や生活環境の変化に伴い悪臭の概念も変化しつつある。
 環境影響評価においてこれらの新たな課題に適切に対応するためには、既往事業の環境影響評価や各種マニュアル等を参考にするのみならず、事業特性、地域特性に基づき個々別々の事業における課題を適切に抽出するスコーピングの実施が重要である。

 

1)事業特性の把握

 大気質・悪臭に係る事業特性として、以下のような項目について整理する。
 事業計画の内容が固まっていない早期の段階でのスコーピングにおいては、特に工事の実施に係る項目など、詳細の把握が難しい場合があるが、類似事例等を参考に想定される内容について把握する。

(1)工事の実施に係る項目

・工事の内容、工法、期間
・工事の位置、範囲
・工事に使用する建設機械の種類、台数、稼働位置、稼働期間等
・工事用車両の走行台数、期間、走行経路
・仮設工作物、土取場、土捨場などの計画

 

(2)施設等の存在・供用に係る項目

・施設の内容、位置、規模
・施設の供用期間
・施設からの排出ガスの種類、量、排出高さ
・施設から発生する悪臭物質の種類、量、排出高さ
・施設からの発生集中交通量
・発生集中交通の走行経路

 これらの情報は方法書に事業の内容等として記載されるものであるが、記載に際しては一般的な事業内容や、他の影響評価項目に係る事業特性の把握の内容とあわせて、方法書を読む者が事業内容等をイメージしやすいように工夫することが必要である。

 

2)地域特性の把握

 地域特性の把握は、基本的に既存資料の収集整理および現地踏査によって行い、必要に応じてヒアリングを行う。

 

(1)地域特性把握の範囲

 環境影響評価の調査地域は、「対象事業の実施により環境の状態が一定程度以上変化する範囲を含む地域又は環境が直接改変を受ける範囲及びその周辺区域」(基本的事項)とされている。大気質・悪臭に係る地域特性の把握のための調査対象地域(以下、調査対象地域という)の設定にあたっては、事業実施区域からの影響範囲に加え、自動車交通などの移動発生源による影響範囲を考慮しなければならない。なお、調査対象地域の設定にあたっては、「第2章2 スコーピングの実施手順」に示したとおり、項目あるいは調査の対象事物によって調査対象地域が異なることに留意する必要がある。

[1] 固定発生源等を対象とする場合の調査対象地域の設定

 大気質あるいは悪臭に影響を与える発生源が、煙突等の固定発生源である場合や工事中の建設機械のように限定された地域における移動発生源である場合の調査対象地域は、当該発生源により大気質への一定程度の影響を及ぼす地域を含む範囲とし、発生源の位置を中心に地形・風向等の条件および既往事例における影響範囲を勘案して設定する。

[2] 移動発生源を対象とする場合の調査対象地域の設定

 大気質あるいは悪臭に影響を与える発生源が、自動車交通等の移動発生源である場合の調査対象地域は、当該移動発生源の移動経路および移動発生源により一定程度の影響を及ぼす地域を含む範囲とする。自動車交通については、当該事業による発生集中交通の移動経路及び周辺地域の環境の状況を勘案して設定するものとする。

 

図3-1-1 移動発生源を対象とする場合の調査対象地域(例)

 

 大気質に係る調査範囲として、事業実施区域、移動経路等の各発生源からの距離の目安を表3-1に示す。

表3-1-1 大気質に係る調査範囲の目安

煙源種類 最大着地濃度距離及び設定方法 対象範囲
ばい煙発生源

(煙突高さ)
50m未満
50~150m
150m以上
0.5km(20m) ~ 2km(100m)

2km ~ 9km(200m)

9km ~ 15km(500m)

~4km
~18km
~30km
自動車発生源
船舶発生源
航空機

ばい煙発生源の50m未満に準ずる
1,000mへ上昇するまでの水平距離
~2km
~4km
~10km程度
粉じん発生源
炭化水素発生源
群小発生源
工事中
ばい煙発生源の50m未満に準ずる ~4km

出典:「環境アセスメントの技術」(社)環境情報科学センター編

 

(2)自然的状況

[1] 大気環境の状況

(ア)大気質の状況

 環境基準が設定された大気汚染物質の測定は、通常国や都道府県・市区町村によって実施されており、常時監視測定局および移動測定局の測定データを収集・整理する。有害物質についても、国や都道府県・市区町村によって測定されている場合があるので、これらの測定データを収集・整理する。
 対象とする測定局は、一般環境大気については、事業実施区域に最も近隣のものを基本とするが、周辺の複数局のデータを収集することにより、調査対象地域の特性を把握することも重要である。また、道路沿道については、対象事業により影響を及ぼすと考えられる路線沿線の測定データを基本とする。
 各データは、最新のデータとともに過年度のデータを収集整理し、経年変化を把握する。これらのデータは、整理された印刷物の他、インターネット等で磁気データとして入手可能な場合もある。

(イ)悪臭の状況

 悪臭の状況についての既存資料は、特に著しい悪臭発生源が位置する場合を除き、通常地方自治体の苦情統計として整備されている程度である。従って、対象地域の悪臭の状況については、現地踏査を行い、当該地域の特徴を把握しておくことが必要となる。

(ウ)気象の状況

 気象観測は、気象台・測候所等の気象官署や大気質の常時監視測定局、学校、市役所等の公共施設において多く行われている。
 (ア)において収集した大気質データとの整合を図るためには、大気質の常時監視測定局のデータを用いることが最も適しているが、常時監視測定局における気象測定項目は風向・風速等に限定されるため、日射量、雲量等のその他のデータを収集する場合には、気象官署における測定データを用いる必要がある。
 また、逆転層などの特に大気質に大きな影響を与える気象現象の可能性がある場合には、気象官署の資料やヒアリングを通じてその状況を把握しておく。また、気象庁より配信されるGPVデータの使用により、より詳細な気象状況の把握が可能である。

[2] 自然的地理条件の状況

 大気質に影響を与える可能性のある平地、山地の別、海域や河川との位置関係や盆地地形などの自然的地理条件の有無を確認する。

[3] 動植物の生息又は生育、植生及び生態系の状況

 大気質・悪臭の変化に伴って生じる生物の多様性分野への影響の評価は生物の多様性分野において行うが、その前提条件となる大気質・悪臭の状況などについては、大気質・悪臭の項目において整理する必要がある。
 生物の多様性分野における調査範囲は、通常直接改変地域及びその周辺に設定されるが、大気質の影響は広域に及ぶ場合があるため、大気質の変化による生物の多様性分野への影響が考えられる場合には、生物の多様性分野の調査範囲をさらに拡大する必要が生じる。また、大気質分野の調査範囲を検討する上で、周辺地域に大気質により影響を受ける重要な植生などが分布すれば、その範囲も大気質の調査範囲として含める必要がある。以上のように、スコーピング段階において大気質・悪臭の変化に伴う生物の多様性分野への影響が考えられる場合は、その相互関係により調査の範囲や手法を決定する必要がある。

[4] 景観及び人と自然との触れ合い活動の状況

 大気質・悪臭に伴って生じる景観及び人と自然との触れ合いの活動の状況への影響の評価は自然との触れ合い分野において行うが、その前提条件となる大気質・悪臭の状況などについては、大気質・悪臭の項目において整理する必要がある。
 影響が懸念される場合としては、重要な人と自然との触れ合い活動の場の大気質が著しく変化したり、悪臭の影響が及ぶ場合や、重要な景観資源において粉じん濃度が高くなる場合などが挙げられる。

 

(3)社会的状況

[1] 人口及び産業の状況

(ア)人口の状況

 調査対象地域の人口およびその分布を把握する。

(イ)産業の状況(被影響対象)

 調査対象地域の産業として、大気質の変化の影響を受けやすいと考えられる産業の規模、内容、位置等について調査を行う。対象となる産業の例を以下にあげる。
 花卉栽培、果樹園などの農業、干物製造業など天日干しを行う製造業、自動車販売業など屋外に商品を置く販売業 等

(ウ)産業の状況(発生源)

 調査対象地域の産業として、大気質・悪臭の発生源となっている産業の状況について、統計的概要および主要施設の位置等を把握する。悪臭については、工場等による地域特有の匂いがある場合があるため、現地踏査による把握を併用することが必要である。

[2] 土地利用の状況

(ア)土地利用の状況

 主に土地利用図により、土地利用の状況を把握する。場合によって植生図、航空写真等の既存資料や、現地踏査を併用する。

(イ)用途地域の指定状況

 主に都市計画図により、調査対象地域の用途地域の指定状況を把握する。また、将来にわたる影響検討のため、将来的な土地利用動向の方向性を知るために、各自治体の総合計画などを参照することも必要である。

[3] 交通の状況

(ア)自動車交通量の状況

 「工事の実施」あるいは「土地又は工作物の存在及び供用」に関して、自動車交通による大気質への影響を環境影響評価の対象項目として選定する場合(重点化により選定しようとする場合、あるいは簡略化により対象項目から除こうとする場合を含む)には、対象となる経路の自動車交通量の状況を把握する。
 自動車交通量の状況は、主要道路については、道路交通センサス(全国道路交通情勢調査)において交通量の測定がなされており、その他都道府県・市区町村で測定を行っている場合もあるため、これらの資料を収集・整理する。スコーピング段階における資料整理項目としては、以下に示すような項目があげられる。

・24時間交通量、12時間交通量、ピーク率
・大型車混入率
・混雑度

 なお、対象とする路線の交通量に関する既存資料のない場合には、現地踏査等により概略の交通の状況を把握しておくことが望ましい。また、道路計画や周辺開発計画による将来的な交通量の変動の可能性についても検討しておくことが必要である。

(イ)その他の交通量の状況

 船舶の航行、航空機の離発着等により大気質への影響が考えられる場合には、船舶や航空機の交通量についても把握する。

[4] 被影響施設等の状況

(ア)被影響施設の配置の状況

 土地利用状況の面的状況把握に加え、大気汚染の影響を受けやすいと考えられる施設の配置を把握する。調査対象とする施設には表3-1-2に示すような施設が挙げられる。

表3-1-2 影響を受けやすいと考えられる施設の例

区分 施設の例
文教施設 保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校、各種学校 等
医療施設 病院、診療所、療養所 等
その他公共施設 図書館、児童館、福祉施設 等
公園等 児童公園、都市公園 等
産業施設等 花卉栽培、果樹園等の農業  等

(イ)住宅の配置の概況

 住宅の配置は、土地利用状況や都市計画法に基づく用途地域の指定状況などに加え、現地踏査によりその現況を把握しておくことが望ましい。特に大気質においては、高層住宅の存在や斜面地の住宅分布など、住宅配置の高さ方向に係る情報についても把握する必要がある。
 また、将来的な住宅開発等の可能性についても、各地方自治体の土地利用誘導施策等を総合計画等の資料により把握しておく必要がある。

[5] 法令・基準の状況

 大気質、悪臭に係る法令・基準の状況として、以下のような法令・条例等から必要なものを選択し、環境基準、規制基準、目標及びその規制地域等を整理する。

(ア)大気質に関する法令等

環境基本法(環境基準)
大気汚染防止法
自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法
公害防止計画 等
地方自治体の公害防止条例 等
地方自治体の環境基本計画 等

(イ)悪臭に関する法令等

悪臭防止法
公害防止計画 等
地方自治体の公害防止条例 等
地方自治体の環境基本計画

 

[6]その他の事項

(ア)地理的条件の概況

 地理的条件の概況として、自然的地理条件に加え、大気質に影響を与える人工構造物(大規模な建物など)についても把握するものとし、地形図、住宅地図などを基に地形地物の状況を概略把握する。スコーピング段階では、平地、山地の別、海域や河川との位置関係や盆地地形などの自然地理条件や、ストリートキャニオンなどの構造物による条件など、大気質に大きな影響を与える条件の有無を確認する。

 

(4)概略踏査の考え方

 概略踏査においては、環境影響評価に十分な経験を有する技術者が、対象地域内を踏査することにより、既存資料調査で把握した地域情報の確認及び修正や、既存資料では把握することのできなかった地域情報の補完を行う。
 大気質の既存資料は、ほとんどが点情報であり、また情報の密度も低いため、現地踏査によりこれらの点情報の間の地域特性を補完することが必要である。また、土地利用や道路利用の状況を現地で確認することにより、その地域の生活の特徴や道路の利用状況などを知ることができる。
 また、既存資料として用いる測定点については、その周辺の踏査を行い、周辺の事物や発生源の状況、気象の状況など測定の行われている条件等を把握しておく必要がある。
 地域特性把握のための概略踏査では、後述の調査・予測・評価のための地点設定のための踏査を兼ねることができる。この場合には、選定される環境影響評価項目および調査・予測・評価手法について大まかなイメージを持った上で概略踏査を行う必要がある。

 

3)環境影響評価の項目の選定

(1)標準項目

 主務省令で定められた標準項目は、対象事業の種類事の一般的な事業内容について実施すべき内容を定めたものであり、事業の内容や地域特性は全て異なるため、常に項目の追加、削除の必要が生じることに留意する。
 環境影響評価法の対象となる各事業毎の大気質および悪臭に係る標準項目は表 3-1-3に示す通りである。

 

表3-1-3 大気質、悪臭に係る標準項目
fig_01.gif (11173 バイト)

 

(2)環境影響評価の項目の選定

[1] 影響要因の抽出

 対象事業の事業特性から、事業における影響要因を抽出する。影響要因の抽出は、各事業毎に規定された標準的な影響要因(標準項目の表の上欄に掲げられた影響要因の細区分)に対し、事業特性に応じて要因の削除及び追加を行うことにより実施できるが、標準項目を参照せずに影響要因を抽出し、抽出された影響要因を標準項目の区分に従って分類し、要因の削除及び追加を行うこともできる。

 大気・悪臭に係る影響要因は、表3-1-4に示すような大気汚染物質の発生過程や、表3-1-5に示すような悪臭発生源に留意しつつ選定する。悪臭については、事業実施区域から直接発生する悪臭の他に、排水からの悪臭などの二次的な悪臭の発生と影響範囲の広がりにも留意する。

表3-1-4 主な大気汚染物質の発生形態

発生形態 内容
燃焼 エネルギー目的の燃焼、焼却、脱臭、内燃機関
蒸発 高温冶金、油類の処理・運搬、溶剤、塗料
製造・処理・加工 金属精錬、焙焼、焼結、乾燥、反応、木材・石材加工、廃棄物処理
粉粒体の処理・運搬 原料の粉砕、ふるい分け、混合、加工、運搬、建設工事
漏洩・散布 ガス・化学工業における貯蔵・加工、農薬・消毒薬の散布
摩耗 タイヤ・機械類の摩耗
事故 火災、爆発、ガス放出

((社)環境情報科学センター(1999)を一部改変)

表3-1-5 発生源別悪臭苦情件数(平成7年度)

区分 比率(%) 区分 比率(%)
畜産農業 16.2 移動発生源 0.1
製造業 飼料・肥料製造工場 1.8 建設作業現場 2.8
食料品製造工場 6.6 下水・用水 6.7
化学工場 4.5 ごみ集積場 0.3
その他製造工場 11.9 個人住宅、アパート、寮 13.1

サービス業その他

26.0 不明 9.9

(環境庁(1997)平成9年度版環境白書 各論)

【留意点】

 既往の環境影響評価においては、現況濃度に対する大気汚染物質(NOx,CO)濃度への寄与率は、工事用車両、供用後の関連車両の走行および供用後の固定発生源からの排出において2%程度以下の場合が多いのに対し、工事中の建設機械稼働による寄与率は場合によっては数十%にも達しており、建設機械稼働による大気汚染物質濃度への寄与が非常に大きいことを示している。

 影響要因の検討にあたっては、建設機械による影響が非常に大きいことに十分留意する必要がある。

[2] 環境要素の抽出

 事業実施区域及びその周辺の地域特性から、環境の変化による影響を受ける環境要素を抽出する。環境要素の抽出は、各事業毎に規定された標準的な環境要素(標準項目の表の左欄に掲げられた環境要素の細区分)に対し、地域特性に応じて要素の削除及び追加を行うことによる。なお、この段階で影響要因と環境要素の関係を厳密に検討する必要はないが、影響要因に全く関係しない環境要素を選定したり、あるいは影響要因があるにもかかわらず関連する環境要素が選定されないなどの事態が生じないように、影響要因をある程度考慮しつつ環境要素を検討することが必要である。

 大気質に係る環境要素は、汚染物質により区分されており、表3-1-6に示すような大気汚染物質のうち標準項目以外の物質による大気質への影響の有無についても考慮する。特に、新たに有害物質として認知されるようになった物質や、法令等による規制物質ではないが住民等の関心の高い物質などにも留意する。

表3-1-6 主な大気汚染物質
fig_02.gif (9789 バイト)

 

[3] 項目の検討

 影響要因と環境要素の関係から、環境影響評価の対象となる項目を選定する。この際に、標準項目の表において空欄となっている部分(標準項目の表に記載された影響要因と環境要素においては関連しないとされている部分)についても、特に影響要因の内容が若干異なることにより、対象とすべき必要が生じる可能性があることに留意する。

[4] 不必要な欄の削除

 項目として全く選定されなかった影響要因および環境要素を表から削除し、環境影響評価項目選定のマトリックスを完成する。

[5] インパクトフローによるチェック

 マトリックス表現によって十分に表現されない環境影響の漏れを防止するため、インパクトフロー型の影響関連図を作成し、選定した影響要因及び環境要素の検討を行う。

 

(3)項目の削除と追加

 上で抽出された環境影響評価の項目と、各事業区分毎に定められた標準項目を比較し、削除された項目及び追加された項目を把握した上で、各々について削除及び追加の考え方に合致していることを確認する。項目の削除及び追加は、以下のように定められた条件に合致していることが必要である。

[1] 項目の削除を行う場合

4 第一項の規定による項目の削除は、次に掲げる項目について行うものとする。
標準項目に関する環境影響がないか又は環境影響の程度がきわめて小さいことが明らかである場合における当該標準項目
対象事業実施区域又はその周囲に、標準項目に関する環境影響を受ける地域その他の対象が相当期間存在しないことが明らかである場合における当該標準項目

(環境事業団が行う宅地造成に係る指針 第六条)

 

 ここで、「影響がないあるいは著しく小さいことが明らかな場合」とは、標準項目の表の上欄に掲げられた影響要因の細区分に相当する行為対象がない場合や、事業規模あるいは排出ガス量等から、類似事例に照らして大気質への影響が著しく小さいことを説明できることが必要である。
 また、「環境影響を受ける区域その他の対象」とは、人の生活環境に係る区域、大気質により影響を受ける自然環境の存在する地域などを指し、「相当期間存在しないことが明らかである」とは、少なくとも事業の工事期間、存在及び供用期間中にはこれらの対象が存在しないことが、土地利用規制、土地利用誘導施策等により明らかにされている場合を指す。例えば、住民や配慮すべき自然環境のない工業地帯内における局所的な大気質への影響等がこれに相当する。しかし、この場合でも当該地域の大気質濃度が環境基準等の基準に照らして十分良好な状態になければ、項目の削除は行うべきではない。

[2] 項目の追加を行う場合

5 第一項の規定による項目の追加は、次に掲げる項目について行うものとする。
事業特性が標準項目以外の項目(以下この項において「標準外項目」という。)に係る相当程度の環境影響を及ぼすおそれがあるものである場合における当該標準外項目
対象事業実施区域又はその周囲に、次に掲げる地域その他の対象が存在し、かつ、事業特性が次のイ、ロ又はハに規定する標準外項目に係る環境影響を及ぼすおそれがあるものである場合における当該標準外項目
標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象
標準外項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象
標準外項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し、又は著しく悪化するおそれがある地域

(環境事業団が行う宅地造成に係る指針 第六条)

 

(ア)標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象

例:
大気汚染物質が滞留しやすい気象条件を有する地域
学校、病院、住居が集合している地域、その他の人の健康の保護又は生活環境の保全についての配慮が特に必要な施設又は地域
大気質の影響を受けやすい産業施設等が分布する場合

(イ)標準外項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象

例:
大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第5条の2第1項に規定する指定地域
自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)第6条第1項に規定する特定地域

(ウ)標準外項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し、又は著しく悪化するおそれがある地域

環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定により定められた環境上の条件についての基準(第5条第1項第2号イ及び別表第2において「環境基準」という。)であって、大気の汚染に係るものが確保されていない地域
地方公共団体が定めた環境基本計画等の大気汚染に係る目標値があり、それが達成されていない地域

 

4)調査、予測及び評価の手法の選定

(1)調査・予測・評価手法検討の考え方

 環境影響評価における調査・予測・評価を効果的かつ効率的に行うためには、環境影響評価の各プロセスにおいて行われる作業の目的を常に明確にしておくことが必要である。環境影響評価における最終的な目的は「評価」であることから、スコーピング段階における調査・予測・評価の手法検討では、実際の環境影響評価における作業の流れと逆に、評価手法の検討→予測手法の検討→調査手法の検討の順に検討を進める必要がある。特に、項目や手法の重点化、簡略化を行う場合には、従来の環境影響評価とは異なった調査が必要になったり、あるいは従来行われてきた調査が不必要になったりする場合があるため、スコーピング段階でこの評価、予測、調査の関係について十分な検討が行われていないと、無駄な調査の実施や調査不足による手戻り等が生じるおそれがある。
 大気質・悪臭に係る環境影響評価においては、評価対象を長期濃度とするのか短期濃度とするのかによって、予測手法が異なり、また、事業地域における地形条件、気象条件等によっても適用すべき予測手法や必要な条件が異なり、さらに調査手法も異なってくる。従って、評価の対象を明確にした上で、事業地域の地域特性に合わせた予測手法を選定し、さらにそのために必要な調査手法を選定することが必要である。

 

図3-1-2 大気質に係る調査・予測・評価手法検討の流れ(例)
fig_03.gif (21301 バイト)

 

(2)評価の考え方

 環境影響評価法における評価の考え方は、大きく下記のア、イの2種類がある。これらのうちアについては評価の視点に必ず盛り込む必要があり、またイに示される基準・目標などのある場合には、イの視点も必ず盛り込む必要がある。
 ア、イの評価を行う場合には、イの基準などとの整合が図られた上でさらにアの回避低減の措置が十分であることが求められる。現状において環境基準を満足していない地域など、イの基準等との整合が図られない場合には、それを明らかにするとともに、アの視点からより一層の回避・低減の措置を検討した上で、双方の評価をあわせて総合的に評価することになる。

 

 ア

環境影響の回避・低減に係る評価
 建造物の構造・配置の在り方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策を対象として、複数の案を時系列に沿って若しくは並行的に比較検討すること、実行可能なより良い技術が取り入れられているか否かについて検討すること等の方法により、対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が、回避され、又は低減されているものであるか否かについて評価されるものとすること。
 なお、これらの評価は、事業者により実行可能な範囲内で行われるものとすること。

 イ

国又は地方公共団体の環境保全施策との整合性に係る評価
 評価を行うに当たって、環境基準、環境基本計画その他の国又は地方公共団体による環境の保全の観点からの施策によって、選定項目に係る環境要素に関する基準又は目標が示されている場合は、当該基準等の達成状況、環境基本計画等の目標又は計画の内容等と調査及び予測の結果との整合性が図られているか否かについて検討されるものとすること。

 ウ

その他の留意事項
 評価に当たって事業者以外が行う環境保全措置等の効果を見込む場合には、当該措置等の内容を明らかにできるように整理されるものとすること。

(基本的事項 第二項五(3))

 環境基準等の基準・目標が設定されている大気質については、上記ア、イの評価を併用することとなる。従来の環境影響評価においては、一般的にはイの視点のみによる評価が行われていたため、特にアの視点による評価を行うための調査・予測・評価手法の選定には、手戻り等を生じないように十分な検討を行う必要がある。ウの留意事項においては、事業計画と事業者以外の者が実施する対策等の内容・効果・実施時期がよく整合していることや、これらの対策の予算措置等の具体化の目途が立っていることを客観的資料に基づき明らかにする必要がある。

 

(3)調査・予測・評価範囲及び地点の設定

[1] 調査・予測・評価の対象とする地域・地点の考え方

 基本的事項において、調査および予測の対象となる地域(以下、調査地域、予測地域)・地点(以下、調査地点、予測地点)の範囲は、下記のように定められている。

調査地域
 調査地域の設定にあたっては、調査対象となる情報の特性、事業特性及び地域特性を勘案し、対象事業の実施により環境の状態が一定程度以上変化する範囲を含む地域又は環境が直接改変を受ける範囲及びその周辺区域等とすること
調査の地点
 調査地域内における調査の地点の設定に当たっては、選定項目の特性に応じて把握すべき情報の内容及び特に影響を受けるおそれがある対象の状況を踏まえ、地域を代表する地点その他の情報の収集等に適切かつ効果的な地点が設定されるものとすること
予測地域
 予測の対象となる地域の範囲は、事業特性及び地域特性を十分勘案し、選定項目ごとの調査地域の内から適切に設定されるものとすること。
予測の地点
 予測地域内における予測の地点は、選定項目の特性、保全すべき対象の状況、地形、気象又は水象の状況等に応じ、地域を代表する地点、特に影響を受けるおそれのある地点、保全すべき対象等への影響を的確に把握できる地点等が設定されるものとすること。

(基本的事項第二項五(1)、(2))

 

[2] 調査地域

 大気質・悪臭に係る調査地域は、調査対象とする大気汚染物質等の特性や事業内容、気象や地形及び土地利用等の地域の特性等を踏まえて設定する。大気質・悪臭においては、各物質の拡散特性から、発生源ごとに概ねの影響範囲を想定することができる。影響範囲の目安は表3-1-1に示したとおりである。

[3] 調査時点

 大気質・悪臭の状況は、その移流・拡散の場となる大気の状況により大きく左右される。調査時点の設定にあたっては気象条件や大気汚染濃度の季節変動等大気の状況の変動を十分に考慮する必要がある。特に発生源は時刻、曜日、季節などによって異なるため、短期濃度、長期濃度など求める対象に応じて調査時期・期間を設定する。

[4] 調査地点

 大気質・悪臭の調査は定点において行われるため、調査地点を設定することとなる。現地調査を実施する場合の調査地点は以下のような項目に配慮して設定し、また既存資料を用いる場合には、以下のような項目の条件に合致することを確認した上で用いる。

(ア)地域を代表する地点

 バックグラウンド濃度の設定など、調査対象地域の大気質・悪臭の代表的な状況を知るための地点として調査地点を設定する場合には、近隣の発生源による影響が少なく、気象条件の安定した箇所を選定する。

(イ)特に影響を受けるおそれのある地点

 事業による影響が特に大きいと予想される地点(最大着地濃度の予想される地点、敷地境界、主要道路の交差部、インターチェンジ 等)は、事業特性や類似事例からおおまかな地点を予想して設定する。なお、設定した地点には、他の発生源等の影響が少ないことを確認する必要がある。

(ウ)特に保全すべき対象等の存在する地点

 医療施設、文教施設など特に保全すべき対象等の存在する地点を予測地点として設定する場合に、道路など他の発生源の影響により、(ア)の地域の代表地点とは異なる状況が予想される場合には、これらの地点を調査地点として選定する。

(エ)既に環境が著しく悪化している地点

 道路、固定発生源などの他の発生源による影響を受けて、既に大気質・悪臭の状況が悪化していると考えられる地点を選定する。

(オ)現在汚染等が進行しつつある場所

 近隣の別発生源により現在汚染が進行しつつあると考えられる箇所などは、当該事業による影響とその他の影響を区分するため、事業実施前の状況を把握する。

 

図3-1-3 大気質・悪臭調査地点の設定

 

[5] 予測地域

 調査実施前のスコーピングの段階においては、特別な理由のない場合には予測地域を調査地域と同一に設定することが考えられるが、調査を実施した結果から予測する必要がないと判断された地域がある場合には、調査地域から予測地域をしぼりこむことができる。
 また、例えば汚染物質の排出量そのものにより予測・評価を行う場合には、特に予測地域を定めずに予測・評価を行うこととなる。

[6] 予測地点

 予測地点は、調査地点と同様に環境の状況の変化を重点的に把握する場合に設定するものであり、定点での評価を必要としない場合には必ずしも予測地点の設定を必要としないが、調査地点における(イ) 特に影響を受けるおそれのある地点や、(ウ) 特に保全すべき対象等の存在する地点のある場合には、これらの地点を予測地点とすることが考えられる。なお、高さ方向を考慮に入れた地点の設定が必要な場合があることに留意する。また、事後調査におけるモニタリング実施地点などにも配慮して予測地点の設定・選定を行う必要がある。

 

(4)予測・評価の対象とする時期の考え方

 予測・評価の対象時期は、基本的に「第2章2 スコーピングの実施手順」に示す考え方に基づいて設定するが、大気質においては、特に工事中と供用時や、異なる発生源からの汚染物質の排出(事業実施区域からの排出と自動車交通による排出など)に留意して予測・評価対象時期を設定する。自動車からの汚染物質排出については、排ガス規制適合車比率の変化により、台数・車種構成等が同一でも予測・評価年次によって排出ガス量が異なる可能性にも留意する。

 

(5)調査・予測手法の選定

[1] 手法の選定

 大気質・悪臭の予測においては、当該地域の気象条件、地形条件、周辺の事物の条件などにより、適用できる予測手法が異なる。したがって予測手法選定にあたっては、既往の環境影響評価における事例を参考とするだけでなく、さまざまな予測手法の適用範囲を十分に検討した上で手法を選定し、場合によっては条件に応じたチューニングを施す必要がある。なお、モデルにチューニングを施した場合には、その内容及び理由を明確に示すことが必要である。
 また、予測手法によって予測結果が異なることが予想されるため、必要に応じて複数の予測手法の併用についても考慮する。
 予測手法選定にあたって考慮すべき条件としては、表3-1-7に示すようなものがあり、当該事業において発生する条件に対応した予測手法を選定する。
 予測等に用いる技術手法については、既往の評価書等を参考にするばかりでなく、以下に示すような環境影響評価技術に関する図書資料や、学会の論文など、あるいは海外の予測手法(米国EPAの手法等)を参照することが必要である。なお、海外の手法を用いる場合には、我が国とは異なる気象・地形条件などに合わせて作成されたモデルであることに十分留意する必要がある。

環境アセスメントの技術(社)環境情報科学センター
環境影響評価技術シート(本中間報告書 第5章)
地方自治体の環境影響評価技術指針

表3-1-7 大気質予測において考慮すべき主な条件

区分 現象の特徴
気象条件 逆転層 上空の逆転層により排煙の上方への拡散が制約され、地表面と上昇逆転層の間で高濃度が生じる
海陸風 海陸風の交代時に一旦移送された汚染物質が吹き戻される、あるいは海陸風の交代時の凪により滞留した汚染物質がその後移送されて高濃度を生じる
ダウンウォッシュ
ダウンドラフト
強風時に煙突や建物背後の渦領域に排煙が取り込まれ、排煙の上昇が妨げられるとともに渦領域での拡散が大きくなり、地上に高濃度を生じる1
フュミゲーション 安定層に排出された排煙が何らかの境界層により不安定層に取り込まれることにより地上に高濃度が生じる2
地形条件 起伏等 高層ビル等の高所や、斜面に排煙が衝突する場合などは平坦地地上部と異なる濃度が発生する3
複雑地形 峡谷などの複雑地形により拡散場の条件が非一様・非定常条件となる
都市域 ビル周辺では複雑な気流が発生する
道路構造 盛土・高架構造 道路構造による気流の流れが生じる
掘削・トンネル 汚染物質の排出が交通によって生じた気流の影響を受ける
時間条件 短期濃度 特殊気象条件下で短期的な高濃度が発生する他、発生源強度の変化する非定常煙源では短期濃度を検討する必要がある

 

[2] 原単位等の検討

 予測に用いる原単位等は技術や生活様式などさまざまな要因により常に変化するものであり、また地域性を持つ場合もあるため、常に最新の資料、あるいは当該地域に適した資料の有無や内容を確認することが必要である。

[3] 気象条件の検討

 大気・悪臭の予測においては、風向・風速などの気象条件が気流の場の再現に大きな影響を及ぼす。
 長期濃度の予測にあたっては、過去の気象資料から最新または代表的と思われる対象年を選定し、異常年検定をした上で予測条件とする手法が一般的であるが、平均的な気象条件が必ずしも平均的な予測結果とはならない。したがって、必要に応じて複数の気象条件に基づく予測を実施した上で幅を持った予測結果を示したり、それらを元に平均的な予測結果を導き出すなどの手法も重要となる。

 

1 ダウンウォッシュが生じる可能性のある場合は以下のように考えられている。
[1]煙突によるダウンウォッシュ:
 Vs/u<1.5  (Vs:排ガスの吐出速度  u:煙突頭頂部の風速)
[2]近接する建物によるダウンウォッシュ:
 hs≧hb+1.5Lb  (hs:煙突高さ  hb:建物高さ  Lb:建物高さと建物幅の小さい方)
2 フュミゲーションには、[1] 接地逆転層が日射により崩壊する時に、排煙が地表近くの不安定層内に取り込まれる場合(接地逆転層崩壊型)、[2]海と陸や郊外と都市域など、性格の異なる地表面境界から発達する内部境界層に排煙が取り込まれる場合(内部境界層型)がある。
3 EPAでは周囲50km以内に煙突より高い地形が存在しない場合は平坦とみなしている。

 

(6)手法の重点化・簡略化

 大気質・悪臭において手法の重点化・簡略化を検討する要素としては、以下のようなものが考えられる。

〔手法の重点化を検討する要素〕

[1] 想定される環境への影響が著しい場合

[2] 環境影響を受けやすい地域又は対象が存在する場合

逆転層など大気汚染物質が滞留しやすい気象条件を有する地域
盆地、ストリートキャニオンなど大気汚染物質が滞留しやすい地形条件を有する地域
学校、病院、住居が集合している地域、その他の人の健康の保護又は生活環境の保全についての配慮が特に必要な施設又は地域

[3] 環境の保全の観点から法令等により指定された地域又は対象が存在する場合

大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第5条の2第1項に規定する指定地域
自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)第6条第1項に規定する特定地域

[4] 既に環境が著しく悪化し又はそのおそれが高い地域が存在する場合

環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定により定められた環境上の条件についての基準(第5条第1項第2号イ及び別表第2において「環境基準」という。)であって、大気の汚染に係るものが確保されていない地域

[5] 地域特性、事業特性から標準手法では予測が技術的に困難と思われる場合

地形等の条件から複雑な風条件を有する地域

[6] 事業者が環境保全上特に重視したものがある場合

地域特性・事業特性、ならびに事業における環境保全上の方針等に照らして、事業者が特に環境保全上重要だと判断したものがある場合

 

〔手法の簡略化を検討する要素〕

[7] 環境への影響が極めて小さいことが明らかな場合

大気汚染物質の排出量や類似事業の事例などから、環境への影響が極めて小さいことが立証できる場合

[8] 影響を受ける地域又は対象が相当期間存在しないことが明らかな場合

大気汚染、悪臭により影響を受ける住居、施設等が影響範囲内に現在および将来にわたって存在しないことが明らかな場合には、影響を受ける地域や対象のない区域について詳細な予測計算等を行うより、広域的な観点から汚染物質等の排出量により評価するなどの手法が考えられる。

[9] 類似の事例により標準手法を用いなくても影響の程度が明らかな場合

類似事業における実測例等から影響の程度が推定可能な場合

 

(7)大気質・悪臭に関する手法の整理

 スコーピング段階では上記の結果を踏まえ、事業者が適切かつ実施可能と判断した手法を選定する。選定にあたっては、調査・予測・評価に関する計画内容として概ね以下の事項について整理する。
 その際、調査手法・予測手法・評価手法の選定に関する基本的事項及び技術指針の内容に十分留意することが必要である。

[1] 調査手法
・調査対象・調査項目:調査の対象とすべき要素と調査すべき情報の種類
・調査地域・地点:範囲、位置等(図面情報等)
・調査法:調査対象、調査項目、調査地域の特性に応じて選定
・調査期間・時期:期間、時期、回数等(工程表等)
・調査体制

[2] 予測手法
・予測する影響の種類:対象要素に関して予測する影響の種類
・予測地域・地点:範囲、位置(図面情報等)
・予測法:予測する影響の種類に応じて選定
・予測時期:工事中、存在・供用時等影響の発生時期に応じて設定

[3] 評価手法
・評価及び環境保全措置検討の基本方針

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