環境影響評価制度は、1969年(昭和44年)にアメリカにおいて世界で初めて制度化されて以来、世界各国で、その制度化が進展してきている。我が国においても、昭和47年の閣議了解を嚆矢として、環境影響評価の考え方の重要性が認識され、各種の制度化が進められてきた。
昭和59年に行われた「環境影響評価の実施について」の閣議決定は、規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業について、環境影響評価の統一的な手続を定めるものであった。以来、10余年を経過し、環境影響評価の実績は着実に積み重ねられてきている。
また、世界各国においても、さらに、我が国の地方公共団体においても、環境影響評価制度は、急速に普及し、近年では、国際条約等の中でも、環境影響評価がとりあげられるようになってきている。
近年、環境問題は、社会の持続可能性の確保の問題、地球環境問題、事業者や国民の通常の活動に起因する環境負荷の集積の問題など、時間的、空間的、社会的に広がりを有するものとなっている。平成5年に制定された「環境基本法」は、近年の環境問題の様相の空間的・時間的・社会的広がりに対応できるよう、環境の保全の基本的理念とこれに基づく基本的施策の総合的枠組みを示すものであり、その中において、環境の保全に関する基本的な施策の一つとして「環境影響評価の推進」が位置づけられた。そして、環境基本法の国会審議や、環境基本法に基づき平成6年に策定された「環境基本計画」において、我が国におけるこれまでの経験の積み重ね、環境の保全に果たす環境影響評価の重要性に対する認識の高まり等にかんがみ、内外の制度の実施状況等に関し、関係省庁一体となって調査研究を進め、その結果等を踏まえ、法制化も含め所要の見直しを行うとの政府方針が示されている。
本調査研究は、当該政府方針に沿って、我が国における国、地方を通じた各種の環境影響評価制度、諸外国等の環境影響評価制度について、環境影響評価制度をめぐる諸課題毎に横断的、総合的に分析整理することを目的とするものである。
本調査研究に当たっては、関係省庁や地方公共団体に対するヒアリング、国内現地調査、海外現地調査、文献調査等を実施し、環境影響評価をめぐる現状と課題について分析整理する作業を行った。