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1) 計画の内容と複数案の考え方
一般廃棄物処理計画は、市町村が区域内の一般廃棄物の処理に関し定める計画である。一般廃棄物処理基本計画は、10~15年を対象期間とし、おおむね5年ごとに見直される。
本報告書では、各種想定されうる観点の中から、一般廃棄物の処理のあり方に関し、種別ごとに排出抑制と処理方法の組み合わせからなる複数案を設定した場合を検討した。
(1) 市町村の一般廃棄物処理計画の内容
[1] 計画の法的根拠
市町村の一般廃棄物処理計画は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、「廃棄物処理法」とする。)第6条に基づいて策定されるものである。図-3.3に示すように、一般廃棄物処理計画には、一般廃棄物の処理に関する基本的な事項について定める基本計画と、基本計画の実施のために必要な各年度の事業について定める実施計画がある。一般廃棄物処理基本計画は、10~15年を対象期間として策定され、おおむね5年ごとに見直される。また、計画策定の前提条件となっている諸条件に大きな変動があった場合も見直しが行われる。
図-3.3:市町村による一般廃棄物処理の計画体系
出典:厚生省「ごみ処理基本計画策定指針」(平成5年)
一般廃棄物処理計画は、地方自治法で定められた、市町村の総合的・計画的運営のために策定される基本構想に即して定められなければならない。また、一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。
その他、一般廃棄物処理計画は、循環型社会形成推進基本法及び関連個別法とそれに基づく諸計画等、国及び市町村の環境基本法及び条例、環境基本計画等との整合を図る必要があると考えられる。
[2] 計画の内容
一般廃棄物処理計画では、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する以下の項目について定めるものである。
・一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み
・一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項
・分別して収集するものとした一般廃棄物の種類及び分別の区分
・一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項
・一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項
・その他一般廃棄物の処理に関し必要な事項
(2) 一般廃棄物処理計画と個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階との関係
通常、個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想の検討と、一般廃棄物処理計画の見直しは、並行して進められることが多い。一般廃棄物処理計画においては、一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項が定められることになっているが、実際には、施設整備計画の構想段階において、施設の処理能力、立地、処理方式などの諸元が検討され、整備の見込みが立ったものについて、一般廃棄物処理計画に立ち返り、処理施設の整備に関する事項として位置づけられる場合が多い。
このような実際の計画策定上の事情はあるものの、本検討においては、便宜的に、一般廃棄物処理計画において、一般廃棄物の処理に関する基本的な事項及びそれに基づき設定される処理施設の種類・施設数・規模・能力等が決定される場合を想定している。また、個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階においては、施設の具体的な処理方式、立地等が決定されるものとしている。
したがって、各市町村が実際にSEA導入の検討を行う場合は、実際の検討プロセスに応じて、柔軟に、適用のタイミングや検討内容について定める必要がある。
(3) 複数案の考え方
[1] 複数案の考え方
計画の立案において、複数案は実行可能な範囲内をカバーした上で、環境保全上の観点から特に重要な案について検討することが必要である。
本計画策定における複数案としては、一般廃棄物の処理の目標量及びあり方に関して設定することが想定される。本計画は市町村全域を扱う計画であり、またとりうる施策も幅広いことから、SEAの検討範囲を明確にすることが必要であり、それぞれの案の環境面の特徴を、効果的に比較できるよう留意することが重要である。都道府県の廃棄物処理計画に比し、計画内容がより具体的となるため、複数案の設定もより詳細な内容となる。
[2] 今回の検討で想定した複数案の例
一般廃棄物処理計画は、当該市町村区域内の一般廃棄物の処理の全体像に関し、検討する段階である。一般廃棄物の処理のあり方に関し、種別ごとに排出抑制と処理方法の組み合わせからなる複数案を設定した場合を例2に示した。
なお、特定の種別の処理のあり方について重点課題として、検討範囲を絞った複数案を設定することも可能と考えられる。
例えば、生ごみの処理の中期的な将来におけるあり方について、各家庭での個別処理を促進する案(各家庭にコンポスト容器又は電動式生ごみ処理容器を普及)、分別収集して施設で堆肥化する案、分別収集してメタン発酵・燃料電池発電する案などを検討することが考えられる。