廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの考え方(平成13年9月)

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第3章 廃棄物分野の計画等におけるSEAの進め方の例

 SEAは計画等の策定プロセスから独立した手続きで行われるが、計画等の策定という最終的な意思決定は、その策定プロセスの中で、経済性、地域性、技術的可能性などの要素に、適切な環境配慮がなされるようSEAの結果を反映しつつ、総合的に判断されるものである。

 本章では、[1]都道府県の廃棄物処理計画、[2]市町村の一般廃棄物処理計画、[3]市町村の個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階、を対象に、SEAの進め方について、複数案を設定し、評価項目や調査予測手法の選定、複数案の比較評価等に関する例を示している。

 これらは、地方公共団体が自主的にSEAの先進的な取組を試みるに際して、参考となるSEAの進め方の一例を示すものであり、実際に地方公共団体がSEAを導入するに際しては、それぞれの計画等の特性や地域の特性に柔軟に対応しつつ実施することが適当である。

 また、本章で示した例は、説明のために単純化したモデルであり、実際には、複数案の設定において、全く別の案を設定したり、ここに提示した案を組み合わせたりすることが可能であるし、計画等の性格や前提条件によって、異なる項目や手法による調査・予測・評価も可能である。

1.都道府県の廃棄物処理計画

1) 計画の内容と複数案の考え方

 廃棄物処理計画は、都道府県がその当該区域内の廃棄物の減量その他その適正な処理に関し定める計画であり、おおむね5年ごとに改定される。

 本報告書では、各種想定されうる観点の中から、[1]廃棄物の排出抑制と処理方式の組み合わせからなる廃棄物処理のあり方を検討する場合、[2]一般廃棄物の広域処理のあり方を検討する場合を検討した。

(1) 都道府県の廃棄物処理計画の内容

[1] 計画の法的根拠

 都道府県の廃棄物処理計画は、廃棄物処理法第5条の3に基づき、一般廃棄物及び産業廃棄物の両方を対象に策定される。第1次の計画は、平成13年度以降に策定され、おおむね5年ごとに改定されることとなっている。

 廃棄物処理計画は、環境大臣が策定する「廃棄物の排出の抑制、再生利用等による廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(以下、「廃棄物処理法に基づく基本方針」とする。)(平成13年5月策定)に即していなければならない。廃棄物処理計画は、廃棄物処理法に基づく基本方針の変更その他計画策定の前提となる諸事情に変化があった場合は見直しを行う必要がある。

 また、廃棄物処理法に基づく基本方針において、国土利用計画法に規定する国土利用計画、国土総合開発法に規定する国土総合開発計画、地域の振興または整備に関する計画及び環境の保全に関する国または地方公共団体の計画との調和を図ること等が定められている。

[2] 計画の内容

 当該都道府県の区域内における廃棄物の減量その他その適正な処理に関し、以下の内容について定めるものである。

・廃棄物の排出量、再生利用量、中間処理量、最終処分量等の現状

・廃棄物の発生量及び処理量の見込み

・廃棄物の排出抑制、再生利用、中間処理、最終処分等の目標及びそれを達成するための措置

・一般廃棄物の適正な処理を確保するために必要な体制について(広域的な処理や市町村間の調整等について)

・産業廃棄物の処理施設の整備について(処理施設の確保のための方策、施設整備の際に配慮すべき事項)

・その他不適正処分の防止のための監視・指導に関する事項、国民及び事業者への意識の啓発に関する事項等

(2) 複数案の考え方

[1] 複数案の考え方

計画の立案において、複数案は実行可能な範囲内をカバーした上で、環境保全上の観点から特に重要な案について検討することが必要である。

 本計画策定における複数案としては、廃棄物の処理の目標量及び処理方法や広域処理のあり方に関して設定することが想定される。本計画は都道府県全域を扱う計画であり、またとりうる施策も幅広いことから、SEAの検討範囲を明確にすることが必要であり、それぞれの案の環境面の特徴を、効果的に比較できるよう留意することが重要である。

[2] 今回の検討で想定した複数案の例

 都道府県の廃棄物処理計画は、都道府県域内の廃棄物処理の基本的な方向を定めるものであり、循環型社会の構築という新たな課題に取り組むため、廃棄物の排出抑制、適正な循環的利用、適正処分を実現することに加え、廃棄物処理システム全体から生じる環境負荷を低減させるための方策を検討する必要があると考えられる。このような視点から、廃棄物の排出抑制と処理方法の組み合わせからなる複数案を設定した場合を例1-1として示した。

 また、本計画においては広域的処理の観点からの検討も行われることから、例1-2において、一般廃棄物の広域処理のあり方に関する複数案を設定した場合を示した。

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