廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの考え方TOPへ戻る
1.適地選定のプロセスとそのなかでの環境配慮の手法
一般廃棄物処理施設の適地選定は、市町村の一般廃棄物処理計画に定められる基本計画(排出抑制、再資源化、収集運搬、中間処理、最終処分)に基づき、処理に必要とされる施設の規模等が決定された後におこなわれる。(なお、既に施設の用地を確保しているなどの前提条件から計画策定上、立地の複数案を検討する余地がない場合もある。)
適地選定のプロセスは様々である。まず、施設を立地することが可能な地域を面的に洗い出して、そのエリア内で複数の候補地を抽出し、比較検討することで適地を選定する場合や、あらかじめ建設可能な地点が限られており、そのなかで適地を選定する場合などがあると考えられる。
中間報告書では、複数案の設定のなかであらかじめ候補地を数か所に絞り込んだ場合を想定して、その後の適地選定プロセスにSEAを適用した場合の環境影響を調査・予測・評価する手法について検討を行った。一方で、より早期の施設を立地することが可能な地域を面的に洗い出す作業のなかで環境配慮のあり方を検討する方法もあり、その段階をSEAの予測・評価の対象とする場合もあると考えられる。
ここでは、補足として、施設を立地することが可能な地域を面的に洗い出す際に、どのような環境配慮を検討することができるかについて整理を行った。
2.ポジティブマップとネガティブマップ
施設を立地することが可能な地域を面的に絞り込むに際しては、あらかじめ施設の概略的な設計に基づいて必要な敷地面積を設定するとともに、除外地域、すなわち物理的制約条件や法律的制約条件から施設の建設地としての適性を欠く地域を設定するとともに(=ネガティブ・マップの作成)、地図情報に基づく運搬コストシミュレーションや地域住民からの推薦により適地図(=ポジティブ・マップの作成)を行い、ネガティブ・マップ及びポジティブ・マップの重ね合わせにより、候補地を3~10箇所程度リストアップすることが考えられる。
3.ネガティブ・マップの作成
ネガティブ・マップは、施設の建設を避けるべき除外地域として設定されるもので、通常は法的な規制や、地形条件(例えば、地形勾配の急峻な地域、断層地域、水源地域の近接地、必要な面積及び空間の確保が困難な地域等)等が挙げられる。
このうち、法的規制は建築、都市計画、道路、河川、農業など様々な分野に係わるものが考えられ、非常に多岐にわたっている。法的規制には、解除が難しいものから、比較的易しいものまであり、一律に扱うことはできない。
環境配慮の方策として、法的規制については、環境関係の指定規制を組み入れることが考えられる。また、公共用水域への放流を伴う場合には、上水取水口等の利水地点上流側の一定範囲を除外地域とすることが考えられる。
3.ポジティブ・マップの作成
ポジティブ・マップは、ネガティブ・マップとは逆に施設の建設に適した地域として設定されるものであり、通常は廃棄物の搬入を考慮した道路との近接性や、下水道等のユーティリティとの近接性等を考慮して設定される。
環境配慮の方策としては、住居地域への立地を回避するため、住居以外の特定の土地利用を適地とすること、運搬に係るエネルギー消費を考慮し、人口重心の周辺を適地とすること、公共用水域への放流を回避するため下水道の整備済みもしくは整備予定区域を適地とすることなどが考えられる。
4.ポジティブ・マップとネガティブ・マップの重ね合わせ
図-1に示すとおり、ポジティブ・マップ及びネガティブ・マップを重ね合わせることにより、廃棄物処理施設の建設が可能な地域を抽出することができる。ポジティブ・マップ及びネガティブ・マップの作成から地理情報システム(GIS)を用いることにより、建設可能地域の抽出作業を効率的に行うことができる。立地の候補地は、この建設可能地域から選定する。