廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの考え方(平成13年9月)

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本報告書を活用するに当たって

 本報告書は、個別分野における戦略的環境アセスメント(SEA)の検討として、まず廃棄物分野を取り上げ、基本的考え方や進め方の例について検討結果をとりまとめたものである。

 SEAについては、わが国においては一般的な制度はまだなく、実施事例も少ないのが現状であり、当面はできるところから取り組み、具体的事例を積み重ねることが求められている。そのような先進的な取組を促進するための参考となる情報を提供するのが本報告書の趣旨である。

 なお、廃棄物分野においてSEAを実施するに当たっては、計画等の策定者である都道府県や市町村の自主性を尊重するとともに、本報告書に示した考え方等を活用しつつ、個別の計画等の策定手続や内容、地域の特性等に即した工夫が柔軟に行われる必要があると考える。

はじめに 報告書の目的・趣旨

(1) 戦略的環境アセスメントについて

 戦略的環境アセスメント(SEA)とは、政策、計画、プログラム(以下、政策・計画等という)を対象とする環境アセスメントであり、事業に先立つ上位計画や政策などの段階で、環境への配慮を意思決定に統合(意思決定のグリーン化)するための仕組みである。

 戦略的環境アセスメントについては、環境影響評価法(平成9年公布)制定の際の中央環境審議会における議論や国会での審議、委員会の附帯決議においても課題となっていたが、環境基本計画(平成12年12月に閣議決定)の中で、社会経済の環境配慮のための政策手法の一つとして位置づけられ、政府として、上位計画や政策における環境配慮のあり方について、現状での課題の整理や内容手法などを具体的に検討すること、国や地方公共団体における取組の実例の積み重ねを行うこと、環境配慮のあり方に関するガイドラインの策定を図ること、必要に応じて制度化の検討を進めることが定められた。

 環境省(環境庁)では、これまで、学識者等からなる戦略的環境アセスメント総合研究会(以下、総合研究会という。)を開催し、平成12年8月に報告書をとりまとめた。この報告書においては、国内外の戦略的環境アセスメントの制度や事例等を調査し、それを踏まえて、わが国での導入に当たっての基本的な考え方を原則としてとりまとめ、具体的事例を積み重ねることなど今後の方向について提言を行っている。

(2) 個別分野における戦略的環境アセスメントのあり方に関する検討について

 わが国においても、政策・計画等の策定段階での一定の環境配慮は、環境基本法第19条あるいは環境基本計画に基づき、既に政策・計画等の策定主体において少なくとも内部的な検討が行われ、意思決定への環境配慮の統合が進みつつあると考えられる。また、近年における情報公開法の制定やパブリックコメントの導入、公共事業に対する費用対効果分析や政策評価の導入にみられるような一般的な意思決定システムのオープン化、評価手続の導入の動きが進みつつあり、戦略的環境アセスメントの導入の基礎的条件は整いつつあると考えられる。したがって、総合研究会において明らかにされた原則、留意点を踏まえ、国や地方公共団体が具体的に実例の積み重ねを図ることは可能であろう。

 しかしながら、国内における事例が少ないことや技術手法等が発展段階にあることなどが、具体的な積み重ねを行うに際して高いハードルになっていると思われる。そこで、政策・計画等の策定主体の参考となるよう、より具体的な計画分野に応じて計画類型ごとに、総合研究会報告書で示された原則等を当てはめ、政策・計画等の決定手続に即して環境面から経るべき手続きや、評価のための技術手法、参考となるデータ等を提示することが必要である。

 このため、環境省では、個別分野における戦略的環境アセスメントのあり方について検討することとしている。その基礎となる調査をパシフィックコンサルタンツ株式会社に委託し、学識者からなる「個別分野における戦略的環境アセスメントに関する研究会」(座長:井村秀文名古屋大学大学院教授)を設置し、検討を行っているところである。

(3) 廃棄物分野を検討対象とすることについて

 検討の対象として、まず、廃棄物分野を取り上げた。これは、

  • 物質循環やダイオキシン類等について一定の環境配慮が行われており、これらの課題について住民等の意識も高く、より客観性・信頼性の高い配慮が求められていること。また、廃棄物分野の政策・計画等の策定者にとっても、その環境保全努力が、戦略的環境アセスメントを通じて、社会的に評価され、当該政策・計画等への住民等の理解を促進することが期待されること。

  • 廃棄物問題は、事業者や住民等の理解と協力が必要であり、政策・計画策定に当たっては、住民等の意見を聴く場を設けるなど一定の意思決定システムのオープン化が見られつつあり、戦略的環境アセスメントの基礎的条件が整いつつあること。

  • 廃棄物分野は、物質循環及び適正処理の視点から分野全般の施策の見直しが行われているところであり、諸政策・計画等の策定、見直し等に併せて、戦略的環境アセスメントを実施することも可能であると考えられること。

  •  から、戦略的環境アセスメントの導入の可能性がある分野として、検討対象に選定したものである。

     廃棄物分野の中にも、様々な政策・計画等の種類があるが、検討の中では、計画やプログラム段階である廃棄物処理関係の計画等(都道府県の廃棄物処理計画、市町村の一般廃棄物処理計画、市町村の個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階)について戦略的環境アセスメントの導入可能性を検討した。

    (4) 報告書のとりまとめについて

     これまでの検討において、総合研究会報告書で示された原則や留意点は、廃棄物分野においても基本的に当てはまることが明らかになったことから、報告書を取りまとめたものである。

     本報告書が活用され、わが国における戦略的環境アセスメントの実例の積み重ねが促進されることを期待するものである。

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