今年度は、陸水域生態系を対象としてスコーピングの進め方を中心に検討を行い、陸水域生態系の特性を整理するとともに、注目種・群集の選定を中心とした効果的なスコーピングの進め方やその実施上の留意点などをとりまとめた。また、陸水域生態系における注目種の選定について作業例を示した。
本検討会の次年度における主要な検討課題としては次のような事項があげられる。次年度の検討結果を受けて、今回提示した陸水域生態系に関するスコーピングの進め方の内容についても見直しを加え、生態系の保全の観点からより良い環境配慮を事業計画に組み込むための効果的な環境影響評価手法をとりまとめていく必要がある。
(1)調査・予測
・ | ケーススタディを実施し、具体的な陸水域の環境特性、地域特性や事業特性を踏まえた調査・予測・評価の進め方と留意点の整理 |
・ | 上位性、典型性、特殊性等の視点から注目される種・群集を通じて生態系への影響を予測・評価する手法 |
・ | 調査・予測・評価段階における基盤環境の類型区分と解析手法 |
・ | 物質循環やエネルギーフローなど生態系の機能、有用な資源価値や多面的な環境保全機能に関する予測・評価手法 |
・ | 生態系の動的な側面(陸水域の持つ常に変動を繰り返しながら維持される性質、台風等による増水などレアイベントの発生)の考慮 |
・ | 注目種・群集によらない調査・予測・評価手法 |
・ | 定量的な予測・評価手法の検討、定性的な予測・評価手法の活用方法、予測におけるモデルの導入 |
・ | 水環境に関する環境負荷の生物への影響に関する予測・評価手法 |
・ | 生物の多様性分野の各項目間における調査・予測・評価の連携 |
(2)環境保全措置
・ | 回避、最小化から代償措置にわたる幅広い選択肢の中から、生態系の特性や事業による影響内容に応じて適正な環境保全措置(ミティゲーション)を選択・立案し、その効果を評価するための考え方と手法 |
・ | 環境保全措置の種類や内容と調査・予測・評価に求められる内容との関係 |
・ | 生態系の変化を継続的に捉えながら、その変化状況に応じて順応的に環境保全措置を講じていく順応的管理(アダプティブ・マネジメント)の考え方の導入 |
・ | 環境保全措置の効果を含め、生態系への影響の時間的な変化や長期にわたる累積的な影響を捉えていくための手法及び適切な予測対象時期の設定 |
(3)影響評価
・ | 複数の事業計画案、複数の環境保全措置を踏まえた評価の考え方と手法 |
・ | 複数の注目種・群集に関する調査・予測結果や生態系の重要な機能に関する調査・予測結果から生態系への影響を総合的に評価するための手法 |
・ | 環境保全措置を踏まえた評価結果の妥当性を検討するための考え方と手法 |
(4)事後調査
・ | 調査・予測・評価結果や予測の不確実性の程度を踏まえた事後調査の考え方と手法 |
・ | 事後調査計画(調査項目、調査地点、調査期間など)や事後調査結果の解析方法 |
・ | 事後調査結果を環境保全措置の実施内容に反映させる手法 |
(5)表現方法、環境影響評価に必要な基盤整備に関する事項
・ | スコーピング段階で用いる文献・資料の整備、充実 |
・ | 既存の調査・予測・評価手法や研究成果のレビューと課題の整理、環境影響評価手法の向上のための事後調査結果の活用 |
・ | わかりやすい図書(方法書、準備書、評価書)の作成方法 |
・ | わかりやすいデータの解析・表現方法、GIS(地理情報システム)等の活用による基盤情報の整理、表現方法 |