1 ケーススタディによる検討のねらいと方法
1-1 検討のねらい
本報告書の第1章で、海域生態系の環境影響評価を進めるにあたっての基本的な考え方から調査・予測の手法について示した。生態系の評価に至るにはスコーピングから影響の予測・評価まで多くの項目の調査とそれらの相互関連を把握していかなければならない。そこで、ケーススタディによる検討を実施し、スコーピングから環境影響評価の実施段階の調査・予測までの手順を検討すること、また、図表等を用いて具体的手法の例を提示することにより、作業イメージの具体化を図ることとした。
なお、このケーススタディで示されたものはあくまでも考え方を整理するための一助とするものであって、実際のスコーピング及び環境影響評価の見本ではないことに留意する必要がある。本ケーススタディーで検討される環境影響や予測手法は環境影響評価を行うために考慮しなければならないもののうちの一部分であり、ここで示した影響要因、手法のみにより生態系に対する影響の全体が把握できるわけではないことに留意しなければならない。今年度のケーススタディーでは、実施段階の調査・予測までを検討しており、予測された影響を回避・低減するための環境保全措置の検討や評価については扱っていない。
また、このケーススタディーは想定した事業の是非を検討するものではなく、あくまで事業による影響を的確に捉えるための方法について検討し、その道筋を示すことをねらいとしたものである。
実際の環境影響評価に際しては、ここに示された考え方や作業例を参考として、事業の特性や地域の環境特性に応じて最も適した方法を創意工夫して検討していかなければならない。
1-2 対象とする地域と事業の想定
1)本州太平洋沿岸中部の比較的大きな内湾(図II-2-1)
2)事業内容
・公有水面埋立(100ha)
・上物施設は道路用地、宅地、緑地(公園)、マリーナ
3)基本条件
・上物施設による海域への環境影響はないものとする。
・建設資材や埋立資材等からの溶出等による影響はないものとする。
・埋立地の存在時の影響を対象として、調査・予測の作業例を示す。
図II-2-1 事業実施区域とその周辺の広域地形
1-3 ケーススタディの作業手順
環境影響評価の作業手順としては、第1章でスコーピングから環境影響評価の実施段階への手順を示した。今回のケーススタディはその手順に則り実施した。
図II-2-2 ケーススタディの流れ