生物の多様性分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
生物多様性分野の環境影響評価技術(I) スコーピングの進め方について(平成11年6月)
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第3章 今後の検討課題
初年度の本検討会の議論では、環境影響評価法において新たに導入されたスコーピング(環境影響評価の項目・手法の選定)の段階に焦点をあてて、その効果的な運用を支援するための技術的な指針をとりまとめた。
次年度は、生物の多様性分野における「地形・地質」「植物」「動物」「生態系」の各項目に関する調査・予測・評価段階の効果的な手法について、検討を進める。また、生態系については、初年度に検討を開始した陸域生態系、海域生態系に加えて、陸水域生態系についての検討を開始する予定である。
次年度以降の検討に際して、重要な課題と考えられる点を以下に掲げる。
1)科学的、客観的な調査・予測・評価に関する事項
- 既存の調査・予測・評価手法や研究成果のレビューと課題の整理
- 的確な予測評価を行うために必要な調査手法
- 定量的な予測評価の導入と定性的な予測評価との組み合わせ
- 予測評価におけるモデル的な考え方の導入
- 適切な評価の視点、尺度の設定の考え方の整理
- 生物の多様性分野の各項目間における調査・予測・評価の連携
- 大気環境・水環境等に関する環境負荷の生物への影響の予測評価手法
2)生態系の影響評価に関する事項
- 上位性、典型性、特殊性の視点から注目される種・群集を通じて生態系への影響を予測評価する手法
- 調査・予測・評価段階における基盤環境の類型区分と解析手法
- 物質循環やエネルギーフローに着目して生態系への影響を予測評価する手法
- 生態系の持つ有用な資源価値や多面的な環境保全機能に関する影響評価
- 生態系の動的な側面(常に変動を繰り返しながら動的に維持される性質、台風や地滑りなどのレアイベント(稀に起こる事象)の影響も大きいことなど)の考慮
3)適切なデータの整備・解析・表現・蓄積・活用技術に関する事項
- 広範な主体にとってわかりやすいデータの解析・表現や図書(準備書・評価書)作成の方法
- GIS(地理情報システム)や衛星画像の活用による基盤情報の整備手法
- 希少種に関するデータの取り扱い
4)環境保全措置の考え方と適用技術に関する事項
- より良い環境配慮につなげるための適切な環境保全措置(ミティゲーション)の考え方の整理
- 自然環境の特性や重要性に応じて適正な環境保全措置を適用するための技術的な指針・生態系の動的な側面を考慮した環境保全措置のあり方、アダプティブ・マネジメント(順応的管理)の考え方の導入
- 予測の不確実性を補う事後調査のあり方と事後調査結果の活用
- さらに効果的な環境影響評価の実現のため、環境影響評価を支える基盤の強化に関して、以下の点も重要な課題であるとの指摘がなされた。
1) |
植生、動植物の分布、生息状況や基盤環境等に関する最新の基礎的データ、生態系区分や生物群集タイプごとの動植物目録、生態的特性等に関するデータベースの整備と公開 |
2) |
食性、生活史、生息に必要な環境条件、環境変化による影響等の生態に関する基礎的な知見の蓄積 |
3) |
多様な生態系における長期的なモニタリングデータの収集、蓄積と公開 |
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