生物の多様性分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
生物多様性分野の環境影響評価技術(I) スコーピングの進め方について(平成11年6月)

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4 「生態系」に関するスコーピングの進め方

4-1 生態系の環境影響評価に関する検討方針

 基本的事項(平成9年12月12日環境庁告示第87号)において、生態系項目については、以下に示す方針を踏まえ、調査・予測・評価を行う旨が示されている(基本的事項第二、二、(2)、イ(抄))。

地域を特徴づける生態系に関し、概括的に把握される生態系の特性に応じて、
    生態系の上位に位置するという上位性、
    生態系の特徴をよく現すという典型性、
    特殊な環境等を指標するという特殊性
 の視点から、注目される生物種等を複数選び、これらの生態、他の生物種との相互関係及び生息・生育環境の状態を調査し、これらに対する影響の程度を把握する方法その他の適切に生態系への影響を把握する方法によるものとする。

 生態系は、ある地域における生物群集と非生物的環境が相互関係をもったまとまりの中での物質循環やエネルギー流からなる機能系として捉えられるものである。
 人類もまた生態系の一構成要素として、その生存のために生態系から様々な資源と環境保全機能の恩恵を受けていることから、生態系の環境影響評価では、これら生態系のすべての構造・機能に着目した調査を行うべきである。しかしながら、現時点ではすべての生態系に適用可能な調査手法を確立することが困難であるため、基本的事項には、上位性・典型性・特殊性の視点から注目される生物種または生物群集(以下、「注目種・群集」という)を複数選び、これらの調査を通して生態系に対する影響の程度を把握するという、生物種・群集に着目した手法が例示されている。
 今回は、その手法の具体化を図ることを当面の中心課題として検討を行った。また、上位性・典型性・特殊性の視点からだけでは評価しきれない生態系の機能についても併せて検討を行った。なお、上記の基本的事項の最後に「その他の適切に生態系への影響を把握する方法」とあるように上位性・典型性・特殊性の視点から注目される種・群集に着目する方法はひとつの手法の例であり、それに代わる適切な手法の選択も可能である。
 生態系は、陸域、陸水域、海域に区分され、それぞれの生態系の特性や調査手法には異なった面が多い。このため、本検討会では、3つに大別されるそれぞれの生態系の特性に応じた手法の検討を行うこととし、今回は、陸域と海域に関する検討を行った。なお、陸水域は次年度に検討を開始する予定である。
 また、陸域と海域の境界については今回明確な定義は行っていないが、これは生物群集を対象にすることから厳密な線が引けないためである。陸域及び海域、それぞれ対象の範囲を幅広く含め、特に海浜等の境界に近い部分は見落としがないよう、陸域、海域のいずれかでその評価が行われることが必要である。

 4-2 上位性、典型性、特殊性の視点から注目種・群集の考え方

1)生物群集の視点から行う生態系の環境影響評価の方向性

 生物群集の視点から生態系の構造・機能を捉えていくためには、生物群集の多様性、生態遷移、食物連鎖等にみられる生物間の相互作用等に着目し、対象事業が当該地域へ及ぼすこれらの側面に対する影響を、生物種または群集を通じて把握・評価することが必要である。その場合、対象地域のすべての生物について詳細な調査を行うことは難しいため、対象地域の生態系の特性を捉える上で適切な種または群集に注目することが望ましい。

2)生態系における生物群集の捉え方

 生物群集は様々な分類群の種からなっているが、生態系の中で重要な機能的役割を担う種は、種子植物、シダ植物、蘚苔植物、海藻・海草類等の植物や、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、その他の無脊椎動物等様々な分類群にわたる。そして、それぞれの生物種の機能的な役割は、例えば、一次消費者である草食哺乳類とバッタ類では同じ栄養段階に位置する種であってもその役割が異なるので、異なる生活形をもつグループとして区別することができる。このため、注目種・群集は、このような視点で様々な生活形グループを対象として検討していくことが望ましい。

3)様々な生態系の捉え方

 環境影響評価の対象地域として、陸域では森林、草地、河川等が、海域では岩礁、干潟、砂(泥)浜等の様々な環境が考えられるが、多くの場合、対象地域内には様々な環境が複合して存在している。さらに、小規模な湿地やため池などのように、そこで生活史の大部分を完結する生物種などによって構成される小さな生態系が対象地域に点在している場合も少なくない。
 このように生態系は、多様な環境が有機的に集合した里地生態系などの大きなスケールから、そこに含まれる比較的広い環境(森林、草地、耕作地など)、小規模な環境(湿地、ため池など)まで、いろいろなレベルで階層的に捉えることができる。そして、このような環境に応じて様々な生物群集が捉えられ、そこには、捕食・被食関係などの異なった食物連鎖からなる食物網が成立している。したがって、注目種・群集を選ぶ際には、対象事業が及ぼす影響の性質や程度を考慮して、対象地域における生態系の階層性や異なった食物連鎖の存在にも着目する必要がある。
 植物群落は水平的には不均質で様々な植物群落がパッチ状に分布しており、垂直的には高木層、亜高木層、低木層、草本層といった階層構造をもつ。このような植物群落の分布や構造は系内の環境を複雑に変化させ、動物の多様な生息空間を形成している(図2-3)。このため、生態系の構造を捉える上で植物群落の水平的・垂直的な構造に着目することも重要である。

 

図2-3 森林の階層構造と生物群集

fig2-3.JPG (66600 バイト)

4)注目種・群集を通じた環境影響評価のポイント

 先ず、大気環境、水環境、地形・地質、土壌などの基盤環境と、群集を構成する生物相を把握した上で、上位性・典型性・特殊性の視点から対象地域の生態系の特性を、効率的かつ効果的に把握できるような注目種・群集を選定する。そして、これらの生活史などを考慮して、他の生物との関係、生息場所との関係、これらに対する事業の影響の程度などを中心に把握する。この時、選定された注目種・群集にのみ着目するのではなく、全体を支えている様々な環境の特性、構造や生物種間の関係を捉えていくことが大切である。

5)上位性、典型性、特殊性の考え方と該当例

 上位性、典型性、特殊性の考え方とそれぞれの該当例を以下に示す。
 ここで、ひとつの種・群集であっても、対象となる地域の生態系や生物群集の捉え方によって、異なった視点(上位性・典型性・特殊性)で選ばれる場合があることに留意する必要がある。

◎上位性

 生態系を形成する生物群集において栄養段階の上位に位置する種を対象とする。該当する種は相対的に栄養段階の上位の種で、生態系の攪乱や環境変動などの影響を受けやすい種が対象となる。また、対象地域における生態系内での様々な食物連鎖にも留意し、小規模な湿地やため池などでの食物連鎖にも着目する必要がある。そのため、対象地域の環境のスケールに応じて、哺乳類、鳥類などの行動圏の広い大型の脊椎動物以外に、爬虫類、魚類などの小型の脊椎動物や、昆虫類などの無脊椎動物も対象とする。

[該当種の例]
 以下に挙げた例は一例であって、事業ごとに対象となる生態系にふさわしい種を選定する必要がある。

○環境のつながりや比較的広い環境を代表し、栄養段階の上位に位置するもの
 [陸域]
哺乳類では食肉類(ヒグマ、キツネ、イタチなど)など
鳥類では行動圏の広い猛禽類(イヌワシ、オオタカ、フクロウなど)や、河川環境での魚類食の鳥類(ウ類、サギ類、カワセミ類など)など
爬虫類では森林や水田などのある里山環境でのヘビ類(アオダイショウ、ヤマカガシなど)など
 [海域]
哺乳類では魚類食のもの(アシカ類、アザラシ類、スナメリなど)など
鳥類では行動圏の広い猛禽類(ミサゴ、ハヤブサなど)、魚類食の鳥類(ウ類、サギ類、アジサシ類など)など
爬虫類では魚類食のウミヘビ類など
魚類では魚類食のスズキ、ヒラメ、カマス類など
○小規模な環境における、栄養段階の上位に位置するもの
 [陸域]

昆虫類では、池沼・ため池などのタガメなど

◎典型性

 対象地域の生態系の中で重要な機能的役割をもつ種・群集や、生物の多様性を特徴づける種・群集を対象とする。該当するものは、生物間の相互作用や生態系の機能に重要な役割を担うような種・群集(例えば、植物では現存量や占有面積の大きい種、動物では個体数が多い種や個体重が大きい種、代表的なギルドに属する種など)、生物群集の多様性を特徴づける種や生態遷移を特徴づける種などが対象となる。また、環境の階層的構造にも着目し、選定する必要がある。

※ギルド:同一の栄養段階に属し、ある共通の資源に依存して生活している複数の種または個体群のこと。

[該当種・群集の例]
 以下に挙げた例は一例であって、事業ごとに対象となる生態系にふさわしい種・群集を選定する必要がある。

○生物間の相互作用や生態系の機能に重要な役割をもつ種・群集
 [陸域]
多くの動植物種の生息環境となるスダジイ林、コナラ林、ブナ林、ススキ草原など
摂食などにより植生に強い影響を及ぼす哺乳類のシカなど
樹木の穿孔性甲虫類を採食するキツツキ類など
 [海域]
広く分布し現存量・占有面積の大きい、藻場の構成種(アマモ、コンブ類、アラメ、ホンダワラ類など)、マングローブ、造礁サンゴ、汽水域のヨシなど
数量的に多く、生態系の中でのエネルギーフローの大きい、干潟のゴカイ類、二枚貝類、カニ類、シギ・チドリ類、内湾のハゼ類、ボラ類、カレイ類など

○生物群集の多様性、生態遷移を特徴づける種・群集

 [陸域]

哺乳類では、里地の森林を特徴づけるタヌキなど
鳥類では、山地落葉広葉樹林のゴジュウカラ、里地落葉広葉樹林のヤマガラなど
両生類では、水田や森林のヤマアカガエルやサンショウウオ類など
昆虫類では、クヌギ・コナラを中心とした雑木林のオオムラサキやギフチョウ、シバ草原・ススキ草原などにみられる草原性のチョウ類、池沼・湧 水やため池などのトンボ類など
植物では、クヌギ・コナラ二次林にみられる春植物(カタクリなど)、ススキ草原に特徴的な植物(オキナグサ、マツムシソウ、ミヤコアザミなど)、シバ草原に特徴的な植物(ヒメハギ、フデリンドウなど)など
 [海域]

魚類では、干潟のムツゴロウ、トビハゼ、藻場のヨウジウオ類、サンゴ礁のチョウチョウウオ類、汽水域のシラウオなど

甲殻類では、干潟のシオマネキ類、サンゴ礁のサンゴガニ類、砂泥底域のシャコ、岩礁潮間帯のフジツボ類など

貝類では干潟のウミニナ類、マテガイ類、汽水域のヤマトシジミ、サンゴ礁のシャコガイ類、岩礁潮間帯のタマキビ類、カサガイ類、イガイ類、海 藻藻場のアワビ類、サザエ類など

◎特殊性

 小規模な湿地、洞窟、噴気口の周辺、石灰岩地域などの特殊な環境や、砂泥底海域に孤立した岩礁や貝殻礁などの対象地域において占有面積が比較的小規模で周囲にはみられない環境に注目し、そこに生息する種・群集を選定する。該当する種・群集としてはこれらの環境要素や環境条件に生息が強く規定される種・群集があげられる。

[該当種・群集の例]
 以下に挙げた例は一例であって、事業ごとに対象となる生態系にふさわしい種・群集を選定する必要がある。

○特殊な環境を特徴づける種・群集
 [陸域]
哺乳類では洞窟性、樹洞性のコウモリ類など
昆虫類では洞窟性甲虫類など
貝類では石灰岩地の陸産貝類など
植物では、特殊な立地に生育する植物種・植物群落:湿地植生(サギソウ、モウセンゴケ、ミズゴケ類など)、火山植生(フジハタザオ、フジアザミなど)、蛇紋岩地植生(ヒダカトリカブト、ナンブイヌナズナなど)など
 [海域]
潮間帯上部の礫浜にみられる生物(ウミコオロギ、ウシオグモなど)
海岸部の特殊な立地に生育する植物種・植物群落:海岸砂丘植生(ハマボウフウ、ハマニンニク、ハマナスなど)、塩沼地植生(ウラギク、ハママツナ、アッケシソウなど)、海岸断崖植生(トベラ、ハマビワ、ノジギクなど)など

○比較的小規模で周囲にはみられない環境を特徴づける種・群集

 [陸域]

渓流沿いの空中湿度の高い着生植物の多い斜面林
水生植物が繁茂した動植物の豊かな池沼・ため池にみられる植物(ヒツジグサ、ジュンサイなど)や水生昆虫(トンボ類、ゲンゴロウ類など)など
小規模な湧水にみられるホトケドジョウなど
 [海域]

砂泥海域の極一部に存在する岩礁の生物や海藻群落など

河口などの狭い範囲に偏在する生物(エドハゼ、ハゴロモハゼなど)

なお、陸水域については、今後の検討課題のため、本内容には十分に含まれていない。

 

生態系を特徴づける上位性、典型性、特殊性に係わる注目種・群集について

 生態系の諸性質は生物と無機物を含む栄養段階構造に係わるものと系の中の生物
サイドの担い手である生物群集の諸特性に係わるものと大きくふたつに分けることができる。環境庁の指針(基本的事項)では、生態系を特徴づける生物の指標として上位性、典型性、特殊性が挙げられている。上位性は前者つまり栄養段階に係わり合うものであり、典型性は後者つまり群集の特性と関連する。特殊性は大きな生態系の中の亜生態系ともいうべきものを表す場合を指し、それ自体ひとつのユニークな生態系を形づくっているが、周辺から相対的に独立しているような系である。
 上位性というのは食物連鎖の上位にある種が代表するような生態系の性質ということで、上位性種としてはイヌワシやクマタカやノスリなどの肉食鳥は当然のものとして挙げられるが、哺乳類についてはわが国ではイタチやテンなどはいても他に目立つ捕食者は少ないので上位性の記載に困難なことが多い。上位性に注目して、それをインパクトアセスメントでどう取り扱うのか、また取り扱おうとしているのか、が問題であるので上位性の抽出にいたずらに労力を傾注する必要はない。場合によっては上位性で注目する種はない、とすることもあり得る。
 上位性種は群集の食物連鎖において種間関係構造を決定するのに重要な役割を果
たしている優占的な捕食者であって、各群集における上位の捕食者である場合(これを中枢捕食者またはキーストーン捕食者keystone predatorともいう)を指すのであるから、全体の群集の構造を知ることが前提条件となる。
 また、さらに重要なことはひとつの生態系に属する群集はひとつではないということである。図aに、陸上の生物群集の概念を示した。この図では植物は第一次生産者ということで一層で表している。無脊椎動物は体が小さく、個体数が多いが、無脊椎動物の間で食物連鎖を形づくり、無脊椎動物の栄養ピラミッドを作っている。このようなまとまりを生活形グループと呼んでいる。生活形グループは動物の大きなまとまりごとにあるので、図aではこの他、両生類、爬虫類、鳥類、小型哺乳類、大型哺乳類に分けてある。この生活形グループごとに上位性を考えてみることが必要であろう。
 典型性についてもほぼ同様に生活形グループごとに見ることができる。ただし、典型性では動物の場合、個体数が多い、または全体的に現存量が大きいなどが選定の条件となろう。典型性はブナ林、ミズナラ林、亜熱帯照葉樹林など植生で表現されることもあろうが、動物では植生に対応したものが選ばれることになろう。
 ここで、動物の個体数と個体重の関係について考えるための示唆を与える図を示す(図b)。この図は北米の動物について、個体の大きさ、この場合は体のサイズとそれぞれの大きさをもつ種類数を頻度として表してある。横軸のサイズは対数表現となっている。無脊椎動物の代表とも言える昆虫が0.2~0.3cmのところで山をつくり、他方、脊椎動物は10~20cmで山をつくっている。明らかにふたつの山は違いがあり、昆虫と脊椎動物は動物として基本的な諸性質が異なることが示唆される。昆虫は数で勝負し、脊椎動物は個体重でその優位が決まるとも言える。場所の要求についてもこのことは反映していて、昆虫類では小さな生息場所が数多く散布されている必要があるのに対して、脊椎動物では個体あたりの必要面積が大きく、一定サイズ以上の面積が不可欠である。
 上述の上位性や典型性を選定するときに生活形という考え方が大事であるのはこのサイズと種類数の関係からも言えるであろう。
 いずれにせよ、上位性、典型性、特殊性を問題にするということは、人為的な撹乱を与えようとするときの影響評価である。注目種・群集の選定に努力するだけでなく、撹乱を与えようとする場合に生態系全体の管理をいかに持続的に行えるか、手段の適用にあたって順応的に考えることが大事である。

(座長代理:小野勇一)

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4-3 陸域生態系に関するスコーピング

1)スコーピングにおける作業の流れ

 陸域生態系に関するスコーピングにおいては、陸域の基盤環境と生物群集の概要などを把握し、予定される事業による影響を想定した上で、最新の科学的知見に基づき最も適切と考えられる調査・予測・評価の計画を立案することが重要である。そのため、生態系項目では、「植物」「動物」といった生物に関する項目、「大気環境」「水環境」「土壌環境・その他の環境」といった非生物的環境に関する項目で収集した情報に生態学的な知見を加えて、総合的に捉えることが主眼となる。
 その手順は、図2-4のように、大別して、1.地域特性の把握、2.項目及び調査・予測・評価手法の選定、といった作業区分に分けられる。

 地域特性の把握:
生態系に関する基礎情報の収集・整理を行う「地域概況調査」、及び「全国的な生態系区分における位置づけ」「陸域の類型区分」を通じて、対象地域の生態系の概要を把握する。
 
 項目及び調査・予測・評価手法の選定:
 事業による影響が対象地域のどの環境(類型)に影響を及ぼすおそれがあるのかを想定し、評価する上で重要な類型区分を検討、選定する。次に対象とする生態系の構造・機能について生態学的な観点から概略的に整理し、注目種・群集を抽出する。これらの結果を踏まえ、生態系に関する調査・予測・評価手法の選定を行う。
 

2)地域特性の把握

(1)地域概況調査

 地域概況調査は、既存資料調査、専門家等へのヒアリング及び概略踏査により行うが、これは「植物」「動物」を中心とした他の項目との共通の作業となる部分が多い。
 調査地域については、対象事業実施区域及びその周囲(以下、「対象地域」という)を基本とするが、既存資料調査・専門家等へのヒアリングにおいては、生態系の特性を明らかにするために、周辺地域を含む広域を対象に整理・解析を行うことが必要となる。調査地域は生態系や動物の特性などを踏まえ、必要に応じて、例えば、集水域、地形などで指標されるまとまりを考慮することも必要である。

[1]既存資料調査
 調査すべき情報は、「植物」「動物」を中心に、「大気環境」「水環境」「土壌環境・その他の環境」の項目と共通した、生態系に関する基礎的な情報についてであり、他の項目と連携しながら収集する。

 

図2-4 陸域生態系に関するスコーピングにおける作業の流れ
fig2-4.jpg (71394 バイト)

 特に、生物に関する情報は、対象地域自体を対象とした詳細な資料がある場合はほとんどなく、都道府県や市町村単位の文献などを中心に調査することとなる。それらの文献から対象地域を含む広域の環境などを把握し、当該対象地域にみられる可能性のある生物種を類推し、追加していくことが必要になる。
 既存資料調査において対象となる調査項目としては、以下のものが考えられる。

○対象となる調査項目

区分 調査項目
植物 植物相
植生
動物 動物相
大気環境 温度(気温・水温)
湿度
降水量
風(風向・風速)
大気質
水環境 水質
底質
地下水
土壌環境・その他の環境 地形・地質
土壌
傾斜度
その他 土地利用など

[2]専門家等へのヒアリング
ヒアリングは、既存資料調査の補完を行うとともに、現地の事情に詳しいものでなければ得られにくい情報(生物種の分布、季節的動向など)の収集を目的として行う。また、生態系項目においては、地域の研究者などから、注目すべき環境や注目種・群集についての意見を聴くことも必要である。

[3]概略踏査
 概略踏査では、生態系を意識して、対象地域の地形・地質、生物などの概要について、現地で実際に確認することが重点となる。そこでは、後述する陸域の類型区分ごとに、既存の植生図や地形図などを参考とし、どのような環境、植物相及び動物相がみられるのかを概略把握する。また、必要に応じ既存資料調査やヒアリングで得られた情報を現地で実際に確認する。
 さらに、注目種・群集、主要な環境の場、基盤環境の捉え方などを念頭に置きつつ、生態系調査を考える上でどのような種・群集、どのような環境が重要となるのかを把握することが重要である。

(2)全国的な生態系区分における位置づけ

 南北に長い日本列島の生態系は、気候、地形・地質、人間の営為などの影響により多種多様であり、対象地域の生態系の分布とその特性を把握することは大切である。
 その際に参考となるものとして、現在、環境庁自然保護局計画課において、「生物多様性保全のための国土区分(試案)」(以下「国土区分」という)及び「区域ごとの重要地域情報(試案)」の検討が進められている。
 「国土区分」は、既存の文献資料や自然環境保全基礎調査など各種調査結果により、日本の自然環境の特性及び地域の生物学的特性を示す自然科学的な指標について整理し、その指標に基づいて生物学的特性からみた地域のまとまりを概括的に示したものであり、全国を10に区分している(図2-5、6)。
 「区域ごとの重要地域情報」では、この10区分に基づき、各地域の生物学的特性を踏まえた生態系レベルでの生物多様性保全を図るため、植物群集を主な指標として、A:区域の生物学的特性を示す生態系、B:区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる重要な生態系、C:伝統的な土地利用により形成された注目すべき二次的自然、の観点から、「生物群集タイプ」としてその生態系の区分を行っている(表2-7)。
 これらの「国土区分」及び「生物群集タイプ」などを参照し、対象地域がどの区分に属し、どのような生物群集タイプを含むかを把握することにより、当該対象地域の生態系の特性や生物相を概略的に把握することが可能である。

 

表2-7 生物群集タイプ一覧(試案)

A:区域の生物学的特性を示す生態系
1:  北方針葉樹林生物群集 第1区域
2:  夏緑樹林生物群集 第2区域
3:  北方針広混交林生物群集 第2区域
4:  夏緑樹林(太平洋側型)生物群集 第3区域
5:  夏緑樹林(日本海側型)生物群集 第4区域
6:  照葉樹林生物群集 第5~8区域
7:  亜熱帯林生物群集 第9区域
8:  亜熱帯林(海洋島型)生物群集 第10区域
B:区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる重要な生態系
9:  高山性生物群集
10:  亜高山性生物群集
11:  山地性生物群集
12:  洞窟・風穴生物群集
13:  河畔林生物群集
14:  河川生物群集
15:  湖沼生物群集
16:  高層湿原生物群集
17:  低層湿原生物群集
18:  汽水性生物群集
19:  潮間帯生物群集
20:  マングローブ生物群集
21:  火山荒原生物群集
22:  石灰・蛇紋岩地生物群集
23:  海岸生物群集
24:  崩壊地生物群集

25: 

岩角地生物群集
C:伝統的な土地利用により形成された注目すべき二次的自然
26:  里山二次林生物群集
27:  谷津田(水田と周辺の二次林)生物群集
28:  ため池群生物群集
29:  二次草原生物群集

※これは重要な生態系を選定するための区分であり、すべての生物群集タイプが含まれているわけではない。

 

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(3)陸域の類型区分

 環境影響評価の対象地域は、多くの場合複数の生態系で占められており、それぞれの生態系がモザイク状に複合して存在している。これらの対象地域の生態系の分布の概況をつかむために、基盤となる環境の類型区分を行い把握することが有効である。
 陸域については、地形・地質、土壌、水文などの自然的要素、植生、気象などの概要をもとにして、植物、動物、生態系の基盤となる環境を地図上で整理することにより、地域の自然環境に関する簡単な類型区分を行う(縮尺1/1万~1/5万)。手法としては、地形図、地質図、土壌図、土地利用図、土地分級図、植生図、流域区分図、航空写真などの既存資料を利用し、これらを選択的に、マッピング、オーバーレイなど(GIS(地理情報システム)による主題図作成など)することにより行う手法がある。
 これらの区分の方法は、事業の特性、影響要因によっては、重視すべき区分の条件が異なる。このため区分する手法についてもいろいろ考えられるが、生態系を考える上では、上記の手法による解析に加え、生態系としての生物群集や基盤環境のつながりに着目し、そこから捉えられる特徴を有する地域をひとつのまとまりとして区分することもできる(例えば谷津田など)。
 具体的には、地形、土地利用、植生、流域などを大きなまとまりとして捉えるとともに、小規模であるが特徴のある生物群集の存在がある場合には、それらについても考慮して区分を行う。これにより、対象地域にみられる生態系としてのまとまりを有する環境の分布や規模などの概要が把握される。(図2-7)
 この類型区分は、スコーピング段階での作業(生態系項目の注目種・群集の選定、動植物の生息場所の整理など)に利用し、作成した地図は、以後の地域概況調査の結果などを整理する基礎図面として情報整理に活用する。さらに、環境影響評価段階での調査の結果を踏まえて作成する詳細な基盤環境図(類型区分図)の基礎とするなど、この区分を用いて様々な調査・予測・評価を行うことができる。

(4)生態系の概要の把握

 上記(1)~(3)の作業により収集された生態系に関する情報をもとに、対象地域の生態系の特徴などをとりまとめる。その際、これまでの作業を踏まえ、対象地域の生態系の全国的な位置づけ、対象地域にみられる生態系、生態系の構成要素である地形・地質などの非生物的環境及び生物群集の特徴に関し、これらの相互関係なども含め、整理することが大切である。

3)環境影響評価の項目及び調査・予測・評価手法の選定

 以下の事項についての検討結果を「2)地域特性の把握」の結果と合わせて方法書にとりまとめ、方法書手続を通じて提出された意見を踏まえ、適切な項目・手法を選定する。

 

図2-7 陸域の類型区分
fig2-7.JPG (63383 バイト)

(1)評価する上で重要な類型区分の検討・選定

 事業の影響が対象地域の生態系のどの類型に及ぶおそれがあるかを予想し、評価の際に重要と考えられる類型を選定する。その作業は、事業計画の実施位置及び内容から影響要因の種類と影響の及ぶ範囲・期間などを想定し、工事中及び存在・供用時といった影響の発生する時期及び内容に応じて、陸域の類型区分との関係を整理することにより行う。
 このような作業にあたっては、陸域の類型区分や生物の分布と事業計画との関係を図化して整理する方法や、事業特性により想定される影響要因と対象地域の生態系の類型区分との関係をマトリックスとして整理する方法が有効であると考えられる。

(2)対象とする生態系の構造・機能の概略検討

 対象地域の生態系の中で影響を受けると予想される類型が抽出されたら、その類型を構成する非生物的環境とそこにみられる生物群集、両者の関係、群集内の食物連鎖、生物群集の多様性、構成種の生態的地位などの関係について整理・把握する。なお、スコーピング段階でのこれらの作業は既存資料調査、ヒアリング、概略踏査などにより行うことは前述のとおりであり、「地域特性の把握」によって整理された生物相、基盤環境などに関し、既存の生態学的な知見を加えるなどして把握される範囲で行う。例えば、動物では、生息場所の利用などの生活史、捕食・被食などの種間の関係、生息を規定する環境要因、採食ギルドなど、植物種及び植物群落では、分布域、生育場所、群落の相観などである。(「(4)注目種・群集を抽出するためのモデル的な手順」参照)
 上記の作業の結果から、対象地域へ及ぼす影響、特に対象地域の生息場所、生物群集や生態系の構造・機能のどこに及ぼす影響が大きいのかを検討し、生態系の環境影響評価にあたり、どのような側面への影響の評価に重点を置くべきかを検討する。

(3)注目種・群集の抽出

 「4-2 上位性・典型性・特殊性の視点から注目される種・群集の考え方」に基づき、注目種・群集の選定を行う。
 注目種・群集の選定にあたっては、これまでの(1)~(2)で行った作業の結果を踏まえ、対象地域の生態系への影響を予測・評価するためにふさわしい注目種・群集を選定する。その際は、前述のように様々な生活形グループが対象となるが、これらの生息空間の大きさや特性も十分考慮する必要がある。また、生態学的な知見の豊富な種などを選定することが効果的である。そして、選定された注目種・群集に関しては、再度、それらと環境要素の関係及び生物間の関係などについて整理を行うことが大切である。
 方法書を作成する際には、想定であっても注目種・群集の選定の考え方や候補を示すことが大切である。これにより事業者が対象地域の生態系をどう捉えているかという点や環境影響評価段階での調査における項目・手法の選定理由が示され、方法書に対してより具体的かつ有益な意見や情報を得ることができる。
 また、前述のようにスコーピング段階で選定した注目種・群集については、方法書への意見や環境影響評価段階での調査における十分な現地調査を参考にして再検討や見直しを行い、より適切な注目種・群集が選定されることが望ましい。
 スコーピングの段階では、注目種・群集の選定が困難である場合もあり得る。その場合は、方法書においては選定手法のみを具体的に明らかにし、環境影響評価段階での調査によってデータが蓄積した時点で選定する。例えば、注目種・群集を決められないまでも、湿地などの特殊な環境に着目して適切な注目種・群集を環境影響評価段階での調査を通じて選定する旨を方法書に示す。この場合も、注目種・群集を選定した理由を準備書において明らかにする必要がある。

(4)注目種・群集を抽出するためのモデル的な手順

 ここでは、「2)地域特性の把握」で把握された対象地域の生態系の概要(対象地域の生物相や環境の類型区分など)を踏まえ、注目種・群集を抽出していくためのモデル的な手順の例を示す。

 

図2-8 注目種・群集の抽出のためのモデル的な手順例
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 本作業は、評価の対象とすべき生態系について検討し、事業による影響が予想される環境(類型)及びそこを生息場所としている生物群集を対象とする。具体的には、主要な種・群集の生態や生息場所、生態系でのこれらの機能的な役割などについて整理を行うとともに、影響要因も踏まえて、注目種・群集の選定を行う(図2-8)。

[1]生態的特性表の整理(表2-8~13)
 前述のように、対象地域にみられる生物相の内、生態系を捉える際に重要となる主要な動物、植物、植物群落の種・群集を対象として、それぞれ主に既存資料を参考にして生態学的知見についてとりまとめる。
 動物では、生息場所の利用などの生活史、捕食・被食などの種間の関係、生息を規定する環境要因、採食ギルドなどを、植物種及び植物群落では、分布域、生育場所、群落の相観など表に示す項目を参考としてとりまとめる(動物:表2-8、9、植物種:表2-10、11、植物群落:表2-12、13)。
 これにより、生態系における種・群集の機能的な役割や種間の関係などについて基本的な内容を理解することができる。

[2]主要な生息場所-生物種・群集表(表2-14)
 生息場所は生物群集を成り立たせている基盤である。陸域においては、地形・地質、気象などの基盤環境、及びそこに成立する植生によって生物群集が異なる場合が多くみられる。対象地域の生物の多様性などを理解するためには、どのような生息場所があり、そこにどのような生物相がみられるのかを把握することが大切である。
 対象地域における、主要な動植物の生息場所について、地域概況調査で行った類型区分を参考にしながら、既存資料や概略踏査などからとりまとめる。
 ここでは、環境の類型区分について、そこにみられる種・群集を分類群ごとに、また、森林に関してはどのような要素に種が依存しているかについても併せて整理する。この表には、種・群集についてそれが主に依存している環境のみ記載してあるが、種によっては生活史の中で複数の環境を利用するものもあり、主要な種に関しては、そうした考慮も必要である。
 これにより、対象地域にみられる生息場所での生物相の概要や、多様な動植物の生息場所について理解することが可能となる。また、注目種・群集の選定に際し、これらの生息場所が対象地域にどのような分布をしているかをも考慮することにより、典型性や特殊性の視点から、どのような類型及び生物種などに着目すればよいのか把握することができる。

[3]食物網の模式図(図2-9)
 食物連鎖は捕食・被食などの生物相互の関係を把握する上で重要であり、対象地域における食物網の概要についてとりまとめを行う。これは、スコーピング段階では対象地域での食性分析に基づいたものではなく、主に既存資料や生態学的知見をもとに行う。
 食物連鎖関係による食物網については様々な表現方法が考えられるが、ここでは、環境の類型区分に着目し、食物連鎖が対象地域のどの類型を主体として成立しているのかを示した。
 これにより、対象地域における食物連鎖をとおした様々な種間の関係、及びそれがどの類型を主体にしているのかの概要を理解でき、上位性に該当する種を選定する上で参考となる。

[4]基盤環境と生物群集に関する模式図(図2-10)
 上記作業により得られた情報により、事業の影響を受けると予想される場所を中心として、比較的大きなスケールをもって、対象地域にみられる主要な環境及びそこにみられる生物相や基盤環境などについて模式的に表現する。
 生物相に関しては、生息場所に対応する主要な種を記入する。樹林などは、動植物の生息場所としての表現や階層性などにも注意して表現すると効果的である。これにより、様々な環境を利用する種がいること、種によって異なる環境の組み合わせが重要であることが示される。
 このように対象地域の生態系の概要を模式図的に表すことは、広く一般から有意義な意見を得るためにも効果的な手法のひとつである。

[5]注目種・群集の選定
 これまでの作業を踏まえ、「4-2 上位性・典型性・特殊性の視点から注目される種・群集の考え方」を参考とし、重要とした類型に生息する生物の中から、注目種・群集の選定を行う。そして、選定された注目種・群集に関しては、再度それらと環境要素の関係及び生物間の関係などについて整理を行う。

 

表2-8 動物種の生態的特性表例
tbl2-8.jpg (176897 バイト)

表2-9 動物種の生態的特性表に関わる記載項目例

1.生活史
 (1)生息場所の利用様式

[1]対象地における定住性(移動性)を記載
  (地域特性をふまえた記載が重要)
[2]繁殖・産卵等の時期や日周活動等
   年間を通して生息
   季節的生息
   繁殖期のみ生息
   冬期のみ生息(地域間移動、国外への渡りなど)
   活動時間帯
   昼行性、夜行性など

 (2)生息場所の利用内容

以下の、[1]と[2]の関係を整理して、対象地の主要な環境要素を抽出する
[1]生息場所の利用内容
   繁殖地(集団繁殖地、産卵場所、交尾場所など)
   採食地(群採食地)
   ねぐら(単独、集団)
[2]生息場所の環境要素
   [1]に関わる主要な環境要素

 (3)生活圏の空間的広がり(行動圏の面積)

種ごとに既存資料から推定値を記載

2.種間の関係

    現地概査と既存資料より作成した生物種リストをもとに推定する。

 (1)食性(捕食・被食関係)

対象地における食性を整理(既存資料から整理)
  動物食(肉食、魚類食、腐肉食など)
    雑食
    植物食(種子(堅果)食、果実食、葉食など)

 (2)捕食者

対象地における捕食者(既存資料から整理)

 (3)その他(託卵、寄生など)

該当種・事項を記載

3.生活形

 (1)採食ギルド区分

生態系内の種または種群間の関係(競争関係など)を把握するために、生息場所、食性などからタイプ区分する。
食性、生息場所の他、定着性(渡り)、昼夜活動、社会構造、体のサイズなどからの区分も可能である。

表2-10 植物種の生態的特性表例

種名 科名 生活形 分布域 生育場所 備考
タマノカンアオイ ウマノスズクサ科 常緑多年草(G) 丘陵地 落葉樹林内  
タヌキモ タヌキモ科 多年草(HH) 低地 池沼   
ヤマウグイスカグラ スイカズラ科 常緑低木(N) 低地 落葉樹林内    
フジバカマ キク科 多年草(H) 低地 草原内、河岸 栽培植物
野生化?
ミズオオバコ トチカガミ科 多年草(H) 低地 池沼、水田    
ヒルムシロ ヒルムシロ科 多年草(HH) 低地 池沼    
カタクリ ユリ科 多年草(G) 低地~山地 落葉樹林内    
ヨシ イネ科 多年草(HH) 低地~山地 湿地    
マコモ イネ科 多年草(HH 低地 水辺    
カサスゲ カヤツリグサ科 多年草(HH) 低地 河畔、池畔、湿地    
キンラン ラン科 多年草(G) 低地~山地 落葉樹林内       

※本表は主要な種を対象とし、既存文献・概略踏査等により作成する。

表2-11 植物種の生態的特性表に関わる記載項目例

 
1.生活形
 1年草、2年草、多年草、矮生低木、低木、亜高木、高木に分け、永年植物については夏緑、冬緑、常緑を区別する。生活形はラウンケアの休眠型区分に従い、E:着生植物、S:多肉植物、MM:大型地上植物、M:小型地上植物、N:微小地上植物、Ch:地表植物、H:接地(半地中)植物、G:地中(土中植物、HH:水湿植物、Th:1ないし2年植物とする。さらに寄生や蔓性などの特殊な生育形についても付記する。

2.分布域
 植物種の生育地を地理的・地形的観点から広域的に区分する植生帯を記す。対象地域の植生帯区分における位置づけと、個々の植物が生育する植生帯との関係づけを行う。

3.生育場所
 植生帯よりも具体的な生育環境として、各植物の生態的に良好な生育立地を記載する。

4.備考
 帰化植物・栽培植物:帰化植物及び栽培植物が逸出して野生化したものも含む。
 その他、種の生態に関する知見を記載する。

表2-12 植物群落の生態的特性表例

群落名 群落の相観 分布域
(垂直分布)
立地 上級単位
イロハモミジ-ケヤキ群集 夏緑常緑混生高木林 低地~山地帯 渓谷 ヤブツバキクラス
クヌギ-コナラ群集 夏緑広葉樹二次林 低地帯上部 丘陵地、台地 ブナクラス
ヤマツツジ-アカマツ群集 常緑針葉樹二次林 低地~山地帯 乾性立地 ブナクラス
オニスゲ-ハンノキ群集 夏緑広葉樹高木林 低地帯 水湿地 ハンノキクラス
センニンソウ群集 つる植物群落 低地帯
林縁 ノイバラクラス
ジュンサイ-ヒツジグサ群集 浮葉植物群落 低地帯 水湿地、池沼 ヒルムシロクラス
カサスゲ群集 多年生草本植物群落 低地帯 低湿地、富栄養立地 ヨシクラス
アオウキクサ-サンショウモ群集 浮水植物群落 低地帯 水田、池沼 コウキクサクラス
ウリカワ-コナギ群集 水田雑草群落 低地帯 水田 イネクラス
カラスビシャク-ニシキソウ群集 畑地雑草群落 低地帯 台地上の畑耕作地 シロザクラス

※本表は主要な群落を対象とし、既存文献・概略踏査等により作成する。

表2-13 植物群落の生態的特性表に関わる記載項目例


 1.群落の相観

群落の外形を全体的にとらえ、区分する方法で、大まかな群落の特徴を把握するのに有効である。群落の高さ、主要構成種の生活型などに着目して区分する。例えば、夏緑広葉高木林、常緑広葉高木林、多年生草本植物群落、一年生草本植物群落のように区分する。

 2.分布域

 群落の生育地を地理的・地形的観点から広域的に区分する植生帯を記す。群落が生育する植生帯を記載することは、地域に生育する群落が典型的なものであるか、特殊なものであるかを判断する上で重要である。例えば、地域のほとんどの群落が山地帯に所属するものである場合、低地
帯に所属する群落は特殊な存在である。

 3.立地

 植物群落を支える具体的な環境として、各群落の立地を記載する。

 4.所属する上級単位

 その群落が所属する植物社会学的な上級単位名を示す。共通の標徴種によりまとめられた植物社会学的な群落の最少単位:群集は共通の標徴種により群団、オーダー、クラスへと上級単位にまとめられてゆく。上級単位は植生帯を越えた群落の共通性を把握するのに有効であり、群落の典型性、特殊性を把握することができる。

 

表2-14 主要な生息環境-生物種・群集表例
tbl2-14.jpg (149727 バイト)

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(5)調査・予測・評価手法の選定

 調査・予測・評価手法の選定にあたっては、地域概況調査の結果、類型区分の検討結果、生態系の構造や機能に関する概略検討結果などに基づき、生態系の多様性や機能などをできる限り把握し、事業による影響の予測・評価がより正確にできる手法を選定する。

[1]調査手法の選定
 生態系の調査では、上位性・典型性・特殊性の視点から抽出された注目種・群集に関する調査を主体に行うことになる。
 調査手法の選定では、対象事業が及ぼす影響の範囲と注目種・群集の生息場所、行動圏や生活史などとの関係を考慮し、現況の把握及び影響の予測・評価に必要な調査項目、手法、範囲、時期などを検討する。また、事業計画が十分進んでいない段階に調査計画を立案するため、調査計画は幅広くかつ柔軟に設定する必要がある。
 調査すべき情報は、評価する内容により異なるが、注目種・群集の生態及び他の動植物との関係や生息場所との関係が中心となり、生息場所に関しては、土壌、地形、植生などについての調査が重要である(表2-15、16)。
 なお、注目種・群集に関しては、「植物」「動物」の環境影響評価段階における調査の結果なども受け、追加・見直しなどを行う必要がある。

[2]予測手法の選定
 事業計画による各種の影響要因が及ぼす注目種・群集への直接・間接的な影響、さらに注目種・群集の調査で得られた結果より把握される生態系の構造・機能などへの影響に対して予測を行うこととなる。
 予測する影響の種類としては以下のようなものが挙げられ、予測する影響の種類に応じて有効な予測手法を選定する。その際、可能な限り定量的な予測手法を用いるものとする。予測対象時期は、工事中、存在・供用時などの影響の発生時期に応じて設定する。

 予測する影響の種類の例:
   ・注目種・群集への対象事業の直接・間接的な影響
    (生息場所、餌資源、繁殖、移動・分散、個体数・現存量などへの影響)
   ・注目種・群集により把握される生態系の構造・機能などへの影響
    (生物の多様性、食物連鎖、栄養段階、環境の形成・維持など)

[3]評価手法の選定
 対象地域の生態系に及ぼす影響の回避・低減に関する評価及び環境保全措置検討の基本方針について、対象事業における代替可能性の幅なども踏まえ、事業者の見解を示す。
 評価手法の選定段階では、予測手法の選定で述べたように、どの注目種・群集を対象とするのか、また、生態系の構造や機能のどの部分を対象とするのかが重要となる。現状では、生態系の多様性や機能の価値を総合的に表現できる方法は確立されていない。対象地域の生態系をどのように捉え、何を指標として評価を行うか、言い換えれば、事業者が対象地域をどのように判断するかを明確に示すことが評価に際して重要な点である。また、事業者が対象地域の特性を理解した上で、注目種・群集の生息・生育が損なわれないこと、生物種・群集の多様性が損なわれないことを考えることが、より良い評価につながると考えられる。評価手法の選定にあたっては、これらのことを十分検討して手法の選定を行う必要がある。
 評価手法選定にあたっての検討項目としては、以下のものが考えられる。

 評価手法選定にあたっての検討項目の例:
   ・陸域生態系の評価方法とその視点
    (生物の多様性、食物連鎖、栄養段階、環境の形成・維持など)
   ・予測範囲より広い生態系に及ぼす影響
   ・影響の回避、低減の評価
    (複数案の比較検討、実行可能なより良い技術の検討など)
   ・環境保全措置の効果・影響の評価
   ・環境保全に関する基準または目標との整合性など

 

表2-15 注目される植物種・植物群落についての調査項目例


植物種

[1]分布、生活史に関する調査
   ・対象地域における分布
   ・対象地域での繁殖状況の調査

[2]生育量に関する調査
   ・個体数や被度・密度に関する調査

[3]生育環境に関する調査
   ・基盤環境に関する調査
      気象、地形、地質、土壌、水質、水文条件など
   ・生育環境としての植生に関する調査
      出現する群落、生育地の植生構造、共存する植物種、主要競争種(帰化種)の有無など
   ・その他の生育環境に関する調査
      管理の状況、人為的影響を受けなくなってからの年数など

[4]生態に関する調査
   ・植物季節(フェノロジー)、種子の生産量など

[5]その他
   ・生育可能地などの存在・配置に関する調査
   
   など

植物群落

[1]群落の分布に関する調査
   ・植生図
   ・植生図に表せない群落の分布の把握

[2]植生調査
   ・対象地域における群落の種組成

[3]群落の構造に関する調査
   ・階層構造、現存量(葉・花・果実等)、ギャップの分布・大きさ 

[4]立地環境に関する調査
   ・基盤環境に関する調査
      気象、地形、地質、土壌、水質、水文条件など
   ・その他の立地環境に関する調査      
      管理の状況、人為的影響を受けなくなってからの年数など

[5]生物群集に関する調査
      動植物の生息種や動植物の生息場所となる要素の分布
      訪花性昆虫等 

[6]その他
   ・群落の遷移や更新に関する調査 
   ・潜在的に群落の成立が可能な地域の存在・配置に関する調査

   など

表2-16 注目される動物種・群集についての調査項目例

[1]分布、生活史に関する調査
   ・対象地域における分布
   ・対象地域での定着性(季節的移動)と繁殖に関する調査

[2]生息数に関する調査
   ・個体数や密度(密度分布)に関する調査
      全域または主要環境別

[3]食性に関する調査
   ・主な餌種(採食空間)
      餌種構成比(生活史のステージや季節性)
   ・主要餌種の分布と密度
      季節性も考慮

[4]その他種間の関係に関する調査
   ・主要捕食者の密度
   ・主要競争種(帰化種など)の密度
   ・その他
      託卵・寄生などの寄主の密度など

[5]生息環境に関する調査
   ・基盤環境に関する調査
      気象、地形、地質、土壌、水質、水文条件など
   ・生息環境としての植生に関する調査
      植生構造、現存量など
   ・その他の生息環境に関する調査
      管理の状況、人為的影響を受けなくなってからの年数など

[6]環境の空間的利用に関する調査
   ・行動圏調査によりどの環境をよく利用しているかなど
   ・空間的利用の季節的変化

[7]重要な資源の分布に関する調査
   ・餌資源・繁殖環境などの分布や量など

など

 

4-4 海域生態系に関するスコーピング

1)スコーピングにおける作業の流れ

 海域生態系に関するスコーピングでは、海域の構造的環境とそこに生息する生物の概要などを把握し、予定される事業による影響を想定した上で、最新の科学的知見に基づき最も適切と考えられる調査・予測・評価の計画を立案することが重要である。その手順は大別して、地域特性把握のための地域概況調査と海域の類型区分及びそれらの結果を基に行う項目及び調査・予測・評価手法の選定といった作業区分に分けられる。
 その流れは、おおよそ図2-11に示すとおりである。

図2-11 海域生態系に関するスコーピングにおける作業の流れ
fig2-11.JPG (45229 バイト)

 

2)地域特性の把握

(1)地域概況調査

 地域概況調査では、既存資料調査、専門家等へのヒアリング及び概略踏査を行う。

[1]既存資料調査
 既存資料調査では、当該海域の地形・基質、物理的環境条件(気象・海象等)、化学的環境条件(水質・底質等)、生息する生物についての情報などを極力多く収集することが必要である。特に、地形(海岸線・水深・河口など)と海岸や海底の基質(藻場・サンゴ礁などの生物的基質を含む)の分布は、海域の生物相を大きく左右するので、できるだけ詳しい情報を得る必要がある。十分な資料がない海域では、後述するヒアリングや概略踏査において補完する。また、事業の計画段階で事前に測量等の調査が実施されている場合には、それらも活用することが望ましい。
 既存資料調査における資料と調査項目としては、以下のものが考えられる。

○既存資料調査における資料と調査項目の例

資料 調査項目
 海図・地形図・地質図・航空写真
 地域(港湾等)計画資料
 潮流・波浪・潮位資料、気象資料
 公共用水域水質測定結果
 地方公共団体の環境保全に関する資料
 水産研究所・水産試験場資料
 大学・博物館等資料
 自然環境保全基礎調査資料
 レッドデータブック類(環境庁・水産庁・地域)
 水産統計資料
 学会誌・一般図書・同好会誌
 既存の環境影響評価書、地域の情報誌、その他
 地形・基質の分布
 地域(港湾等)計画
 海象条件
 気象条件
 河川流入状況
 水質・底質の現況
 生物の分布状況
 主要な生物の生理・
  生態特性
 など

[2]専門家等へのヒアリング
 ヒアリングは既存資料調査の補完を行うとともに、現地の事情に詳しいものでなければ得られにくい情報(特に生物種・群集の分布、季節変化など)の収集を主眼として行う。また、研究者などから注目すべき環境(藻場・干潟等)や注目種・群集についての意見を聴くことも必要である。
 ヒアリングの対象と調査項目としては、以下のものが考えられる。

○ヒアリングの対象と調査項目の例

対象 調査項目
 水産研究所・水産試験場
 大学・博物館等
 地方公共団体環境保全部局
 漁業従事者
 自然保護団体・愛好家、その他
 注目すべき環境(藻場・干潟等)
 注目種・群集の分布状況及び季節変化
 水産生物の概況(種・量・漁期等)
 生態系の特徴
 など

[3]概略踏査
概略踏査では、当該海域の地形・基質、生物等について、現地で実際に観察することが重点となる。特に、後述する海域の類型区分ごとに、どのような構造的環境と生物がみられるのかを概略把握することが重要である。また、既存資料調査やヒアリングで得られた情報を実際に確認することも望まれる。ただし、海域では水中の観察は困難であり、生物の採集も容易ではない。この段階では、主に海岸などから容易に観察できる、あるいは、たやすく手にとって見ることのできる調査が主体となる。
 概略踏査における調査方法と調査項目としては、以下のものが考えられる。

○概略踏査における調査方法と調査項目の例

調査方法 調査項目
 現地観察
 市場視察
 記録写真、その他
 地形・基質の分布
 代表的生物
   (干潟・藻場・潮間帯など)
 既往知見の確認  など

 
(2)全国的な海域区分における位置づけ

 海域における生態系の調査・予測・評価にあたっては、陸域と同様に代表的な生物種・群集を選定し、検討することとなる。この際、対象海域が地理的にあるいは広域的な生物分布からみて、どのような位置にあるのかを知ることが必要である。
日本の沿岸域は南北に長く、暖流・寒流に洗われており、一口に海域と言っても様々な自然環境が存在する。環境影響評価を行うためには、まず、評価対象となる海域の海流や生物相の特徴などから、環境と生物の地域的な位置づけを念頭に置くことが重要である(図2-12、13、14参照)。

(3)海域の類型区分

 陸域生態系では、比較的安定した植物群落が基礎となっており、それらが動物相を支えている。それに対して海域では、海底の基質が固いか柔らかいか、外海か内湾か、などという物理的環境要素が生物のあり方に大きく影響している。したがって、海域生態系の影響評価を行うためには、対象海域の構造的環境要素と生物の実態を詳しく調べる必要がある。しかしながら、海域には様々な環境と生物が存在し、それらは海水の流れや生物自身の成長・移動などによって大きく変化するとともに時空間的な連続性・関連性が強い。そのような複雑な系をまとめて表現し、総体的に影響の予測・評価を行うためには、きわめて複雑な予測モデルなどの手法が必要となるが、現状では海域生態系の変化を総体的に予測できる確実で普遍的な手法は確立されていない。また、評価にあたっては、海域生態系の特性に応じた評価が必要とされるが、評価方法を検討する各々の当事者がイメージしている「場(まとまりとして捉えられる海域生態系の範囲)」の捉え方に差があり、評価方法についての統一性を欠くことも多い。
このようなことから、海域の環境と生物相を模式化・類型化し、そこでの非生物的環境要素と個々の生物(代表的生物種・群集)に関する知見から影響を予測・評価し、それらを総合して評価結果とすることが、現時点で最も効果的な方法であると考えられる。さらに、影響評価を行う当事者が海域の環境と生物のあり方を深く理解するためにも、海域空間を模式化・類型化して影響を検討する過程は、きわめて重要であると考えられる。
 類型化にあたっては、生態系が[1]非生物的空間、[2]生物群集、[3]生物による機能(場を構成する生物)の3者から構成されている(図2-15)という観点から、構造的要素と生物的要素の組み合わせを整理し、干潟・藻場などという一般に認識されやすい名称の類型区分(生態系区分)とすることが考えられる。この考えに基づいて行った類型区分の事例を表2-17に示す。
 海域の類型区分に用いる資料と検討項目としては、以下のものが考えられる。

fig2-12.JPG (41612 バイト)

fig2-13.JPG (47349 バイト)

fig2-14.JPG (52384 バイト)

 

○海域の類型区分に用いる資料と検討項目の例

資料 検討項目
 既存資料調査結果
 ヒアリング結果
 概略踏査結果
 その他
 地形・基質の分布
 主要生物・群集の分布・季節変化
 上記分布の模式化・類型化

 

図2-15 生物生息場の類型化のもとになる考え方(日本沿岸域学会、1998)
fig2-15.JPG (16872 バイト)

 

表2-17 海域の類型区分例

  環境要素 一般的名称
塩分 地形 水深(潮位) 基質(非生物) 基質(生物) 一般的名称1 一般的名称2
区分 海水域 外海 潮間帯
(海岸域)
砂浜 砂浜
礫浜 礫浜
岩礁 磯(岩)浜 磯(岩)浜
造礁サンゴ サンゴ礁 サンゴ礁
海下帯
(海域)
泥底域 砂泥底域
砂泥 砂泥底域
砂底域
礫底域 礫底域
岩礁 岩礁域 海藻藻場
岩礁性アマモ類 アマモ場
ホンダワラ類 ガラモ場
コンブ類 コンブ場
アラメ類 アラメ場
ワカメ類 ワカメ場
テングサ類 テングサ場
アオサ・アオノリ類 アオサ・アオノリ場
造礁サンゴ サンゴ礁 サンゴ礁
内湾(海) 潮間帯
(海岸域)
泥干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローブ類 マングローブ林 マングローブ林
砂泥 砂泥干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローブ類 マングローブ林 マングローブ林
砂浜 砂浜
砂質干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローブ類 マングローブ林 マングローブ林
貝殻礁 貝殻礁 貝殻礁
礫浜 礫浜
岩礁 磯(岩)浜 磯(岩)浜
造礁サンゴ サンゴ礁 サンゴ礁
潮下帯
(海域)
泥底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
貝床(ホトトギスガイ) 貝床 貝床
砂泥 砂泥底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
貝床(ホトトギスガイ) 貝床 貝床
砂底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
礫底域 礫底域
貝殻礁 貝殻礁 貝殻礁
岩礁 岩礁域 岩礁域
岩礁性アマモ類 アマモ場 海草藻場
ホンダワラ類
コンブ類
アラメ類
ワカメ類
テングサ類
アオサ・アオノリ類
ホンダワラ類
コンブ類
アラメ類
ワカメ類
テングサ類
アオサ・アオノリ類
海草藻場
造礁サンゴ サンゴ礁 サンゴ礁
汽水域 河口
潟湖
汽水湖
潮間帯
(川岸・湖岸)
泥干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローグ類 マングローグ林 マングローグ林
ヨシ類 ヨシ原 ヨシ原
砂泥 砂泥干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローグ類 マングローグ林 マングローグ林
ヨシ類 ヨシ原 ヨシ原
砂浜 砂浜
砂質干潟 干潟
アマモ類 アマモ場 海草藻場
マングローグ類 マングローグ林 マングローグ林
ヨシ類 ヨシ原 ヨシ原
貝殻礁 貝殻礁 貝殻礁
潮下帯 泥底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
貝床(ホトトギスガイ) 貝床 貝床
砂泥 砂泥底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
貝床(ホトトギスガイ) 貝床 貝床
砂底域 砂泥底域
アマモ類 アマモ場 海草藻場
貝殻礁 貝殻礁 貝殻礁
礫(転石) 礫底域 礫底域
岩盤 岩礁域 岩礁域

類型区分

海水域
潮間帯
砂浜
礫浜
磯(岩)浜
貝殻礁
干潟
海草藻場
サンゴ礁
マングローブ林
潮下帯
砂泥底域
礫底域
岩礁域
貝殻礁
海草藻場
海藻藻場
サンゴ礁
貝床
汽水域
潮間帯
砂浜
貝殻礁
干潟
海草藻場
マングローブ林
ヨシ原
潮下帯
砂泥底域
礫底域
岩礁域
貝殻礁
海草藻場
貝床
注: 類型区分については一般的名称1または2のいずれを用いてもよい。

 

注: 潮上帯において海域と関連の強い環境や生物が存在する場合には潮間帯に含めて扱う。

 

注: 人工構造物は天然の基質に準じて類型化するが、人工と天然の基質は、区別して取り扱う。

 

注: この表に該当しない類型については、同類の類型化を行い、適切な名称をつける。

 

海域生態系の特徴と環境影響評価

 海域生態系は陸域生態系と比べてふたつの違いをもつが、いずれも一次生産の主
な担い手の違いに起因する。陸域生態系では樹木等の大型植物であり、海域生態系
(陸でも大きな湖沼など)では微小な植物プランクトンである。この違いは系の回転速度に大きな違いをもたらす。ここで回転速度というのは生産速度(単位面積当たり単位時間当たり一次生産量)の生物量(単位面積当たり)に対する比で、単純に考えると系が更新される速度である。図cはやや古い調査結果だが、ある林と海域(沿岸及び沖合)の生物量と一次生産量を示している。陸の林の場合、生物量に対する一次生産の比は1/9ほどで9年に1回の回転速度といえる。これに対して海域では沖合で2日に1回、沿岸で4日に1回ほどの回転速度ということになる。よく引用される地球の各生態系の生物量と一次生産の平均的な数字を用いると、表aにみられるように回転速度は陸域では0.04~0.4、平均では0.06となるのでやはり1回回転するのに10年以上かかることになる。なお、陸域でひとつだけ大きな数字12.5というのがみられるが、これは湖沼・河川という水圏生態系のものである。これに対し海域では藻場とサンゴ礁あるいは河口域で1をやや上回る値で、湧昇流海域から外洋まで25~40ほどの値で、平均は15ということになり、陸の250倍の回転速度ということになる。このことから陸はストックの系、海はフローの系と言えよう。
 海と陸の生態系のもうひとつの違いは食物連鎖で、陸ではdetritus foodchain(腐食連鎖)が卓越し、海ではgrazing foodchain(生食連鎖)が卓越することである。これも陸では大型植物から連鎖が出発するのに対し、海では微小な植物プランクトンが出発点になるという違いに由来する。ただ、海でも浅い部分で海藻などの寄与が大きい場合はdetritus foodchainの寄与が大きくなり、陸と似た性格をもつようになる。
このように陸と海の生態系は性格を異にするが、このことはアセスメントでも違いをもたらす。陸の場合ストックの系で比較的安定した植物群落に動物群集は支えられており、この植物群落を考えることによってそこの動物相のイメージが浮かんでくる。一方、海ではこのような安定した植物基盤がなく、動物の分布は物理化学的な要素に規定されることになる。開発の対象となりやすい浅海域では基質が固いか軟らかいかで分布する生物は大きく異なる。これに対象海域が外海にあるか、内海・内湾にあるかがもうひとつの要因として影響を及ぼし、この組み合わせで生物相がおおよそイメージされる。したがって基質による類型区分を行うことが海の場合は重要である。また、回転速度が大きいフローの系であるので、条件によっては系が大きく変化することもあり得る。赤潮などが起きるのはこうしたことに起因するし、貧酸素水塊の出現なども往々にして起こる。こうしたことから海の場合は、アセスメントにおいてフロー、すなわち物質循環(干潟の浄化能力なども含めて)の変化予測も求められることが多い。こうした点を十分考慮して環境影響評価を行う必要がある。

(座長代理:清水誠)

 

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3)環境影響評価の項目及び調査・予測・評価手法の選定

 以下の事項についての検討結果を「2)地域特性の把握」の結果と合わせて方法書にとりまとめ、方法書手続を通じて提出された意見を踏まえ、適切な項目・手法を選定する。

(1)評価する上で重要な類型区分の検討・選定

 項目、手法の検討にあたっては、事業による影響要因の種類と影響の及ぶ範囲・期間等を概略予想した上で、その影響が海域のどの類型に及ぶのかを想定し、評価に際して重要と考えられる類型区分を選定する。影響範囲の予測計算などを事前に実施している場合には、それらの結果も用いる。
 重要な類型の選定に際しては、直接的な影響についてはもちろん、類型内での影響の伝わり方や生物の移動などによる類型間での影響の伝わり方にも配慮することが必要である。
このような作業にあたっては、海域の類型と生物の分布を図化して検討する方法が有効であると考えられる。さらに、図示することで事業者が海域の生態系をどのように理解しているかを第三者にわかりやすく説明できるとも考えられる。図化の一例を図2-16に示す。

(2)対象とする生態系の構造・機能の概略検討

 重要と考えられる類型が選定されたら、類型を構成する非生物的環境要素と生物的環境要素、両者の関係、類型内の生物間の関係、生物の移動による類型間の関係などについて整理する。ここで重要なことは、各類型区分の生態系がどのような生物によって成り立っているかを具象化し、類型内の生物間の関係、類型間の関係などを検討することにある。そして、このような作業にあたっては、生物間の関係(主に食物連鎖の関係)を図化して検討する方法が有効であると考えられる。図化の一例を図2-17に示す。
 また、類型によっては、水質浄化機能などの物質循環上の重要な機能についても検討する。
 各類型において、生態系を検討する際に注目すべきと考えられる環境要素の例を表2-18に示す。
 上記の作業の結果から、対象地域へ及ぼす影響、特に対象地域の生息場所、生物群集や生態系の構造・機能のどこに及ぼす影響が大きいのかを検討し、生態系の環境影響評価にあたり、どのような側面への影響の評価に重点を置くべきかを検討する。

(3)注目種・群集の抽出と把握すべき環境要素の整理

 上記の概略検討の結果に基づき、重要とした類型に生息する生物の中から、「4-2 上位性・典型性・特殊性の視点から注目される種・群集の考え方」を踏まえて、対象地域の生態系への影響を予測・評価するためにふさわしい注目種・群集を選定する。この注目種・群集については、それらと環境要素の関係、それらと他の生物間の関係及びそれらの移動による類型間の関係などについて再整 理を行う。これらの整理は、調査項目や調査場所、調査時期などの調査計画を立案する際に重要なことであると考えられる。

 

 

図2-16 海域類型図例(関東周辺の太平洋岸)

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図2-17 干潟における食物連網模式図(秋山ほか、1974)

fig2-17.JPG (34045 バイト)

 

 

表2-18 生態系を検討する際に注目すべきと考えられる環境要素例

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(4)調査・予測・評価手法の選定

 調査・予測・評価手法の選定にあたっては、地域概況調査の結果、類型区分の検討結果、生態系の構造や機能に関する概略検討結果などに基づき、海域生態系の多様性や機能などをできる限り把握し、事業による影響の予測・評価がより正確にできる手法を選定する。

[1]調査手法の選定
 調査手法の選定段階では、事業計画に基づき、影響要因が海域のどの類型区分や生物に及ぶかを想定し、現況の把握及び影響の予測・評価に必要な調査項目、手法、範囲、時期などを検討する。事業計画が十分に進んでいない段階で調査計画を立案すること、また、調査を進める過程で新たな調査が必要となることもあるので、調査計画は幅広くかつ柔軟に設定するほうが良い。
 調査手法の選定段階に用いる資料と検討項目としては、以下のものが考えられる。

○調査手法の選定段階に用いる資料と検討項目の例

資料 検討項目
事業計画
地域概況調査の結果
類型区分の検討結果
海域生態系の構造や
  機能に関する検討結果
既往事例、その他
事業の特性と影響要因
海域の物理的構造と環境要素、地域特性
 (地形、基質、波、流れ、水塊構造等)
海域の化学的環境要素
 (栄養度、化学物質汚染等)
物理的化学的環境要素の季節変化・年変化
注目種・群集の現存量分布・季節変化・年変化
注目種・群集の成長・生活史・食性・再生産
注目種・群集と環境要素の関連・依存性
注目種・群集と他の生物の関係(主に食物連鎖)
生態系の機能・構造(生産力、浄化力、索餌場、生育場、栄養段階、物質循環) など

 
[2]予測手法の選定
 予測手法の選定段階では、生態系の構造や機能のどの部分を対象とするのか、どの種類・群集の生物を対象とするのかが重要となる。先に述べた手順で抽出された注目種・群集が最も主要な対象となろうが、海域では生態系の機能として重要な基礎生産量や浄化力を対象とすることが求められることも多い。それらの変化予測も含めて、予測結果の表現(アウトプット)を何にするかによって、手法は大きく変わる。予測には定性的な手法と定量的な手法があるが、評価対象にとって適切な手法であり、現在の科学水準で可能な範囲で、できる限り定量的な予測ができることを念頭に置くことが必要である。予測手法の選定にあたっては、これらのことを十分検討して手法の選定を行う必要がある。
予測手法の選定段階における資料と検討項目としては、以下のものが考えられる。


○予測手法の選定段階における資料と検討項目の例

資料 検討項目
 事業計画
 地域概況調査の結果
 負荷源・量
 モデル
 既往事例、その他
 事業の特性と影響要因
 影響を受ける環境要素の定量的な変化予測
  (地形変化、波・流れの変化、濃度変化等)
 影響の伝播経路とフラックス
 影響の継続性
 注目種・群集への生理・生態的影響予測
  (生物の生活史を考慮する)
 類型化した生態系への影響予測
 海域全体の生態系への影響予測
 シミュレーションモデルの適用とその妥当性
 物質循環への影響予測
 高次生産系の変化予測
 環境保全措置の効果・影響予測
 既往事例の活用方法 など

 予測にあたっては、必要に応じて数値モデルによるシミュレーションを行うことがある。以下に、その位置づけと使用する上での留意点等を述べる。

■数値モデルの位置づけ

 影響の予測にあたっては、できるだけ定量的に行われることが望ましい。予測の精度を向上させるためには、対象海域の生物相から想定される食物連鎖に沿った生態系モデルや注目種・群集を対象としたモデルなどを作成して適用することが理想的であろう。しかしながら、現状で適用可能なモデルは限られており、物理的化学的な環境要素の予測モデル及びそれに低次栄養段階の生物を考慮したモデルなどが実用可能な状況にあると考えられる。生物自体の挙動や生態系の変化を総体的に予測できるモデルの開発には、今後かなりの時間と労力が必要であろう。したがって現時点では、生態系の仕組みの中で、ある程度定量的な予測が可能である環境要素の変化を数値モデルを用いて定量的に予測することにより、注目種・群集や生態系への影響予測をできる限り正確に行うようにすることが現実的であると考えられる。ただし、生態系の仕組みのなかで、モデルによる予測が可能なものについては検討すべきである。さらに、類型によっては、干潟や藻場のように水質浄化機能など、物質循環上の重要な機能を有するものがみられることから、これらの点にも留意して影響予測を行うことが必要である。
 現状の技術レベルで定量的な予測が可能と考えられる環境要素の種類とその予測モデルの概要を表2-19に示す。ただし、これらのモデル等を使用する際には、生態系の仕組みのどの部分を評価するのか、また、生物の生息環境要素のどの項目を評価するのかといった点を踏まえ、モデルの特性や適用範囲の検討を十分に行う必要がある。
 なお、環境要素の予測は、海域の類型区分ごとに行うことも可能ではあるが、通常、予測対象とする範囲には複数の類型が含まれることが多く(例:海草藻場と干潟と砂浜)、モデルの対象とするスケールを考慮して、モデルの種類と予測範囲を設定する必要がある。一般には、流れや影響物質の拡散など環境要素の変化予測は海域全体について行い、生物や生態系についての予測は類型ごと、あるいは関連性の強いいくつかの類型を組み合わせて行うことが考えられる。

 

表2-19 定量的な予測が可能な環境要素の種類と予測モデルの概要

環境要素 予測項 目 対象範囲 要 因 モデルの種類 対象スケール
(格子サイズなど)
波浪 波高
周期
沿岸
内湾
外洋
波浪モデル 数10m~数100m
高潮 水位 沿岸
内湾
外洋
台風 高潮モデル <50m
津波 水位 沿岸
内湾
外洋
地震 津波モデル <50m
潮汐流
平均流
潮汐流
吹送流
密度流
海流
沿岸
内湾
外洋 
潮汐

河川水など
海流
流動モデル 数10m~数km
海浜流 沿岸流
離岸流
沿岸 波浪 海浜流モデル 数m~数10m
(波浪計算が必要)
漂砂及び地形変化 汀線変化
海底地形変化
沿岸 波浪
流動
汀線変化モデル
海底地形変化モデル
10m~数100m
(海浜流の計算が必要)
熱(温排水) 水温 沿岸 発電所等 温排水拡散モデル 数10m~数100m
(流動計算が必要)
水温・塩分 水温
塩分
沿岸
内湾
外洋
熱収支
河川水
水温拡散モデル
塩分拡散モデル
数10m~数km
SS SS 沿岸
内湾
外洋
濁り SS拡散モデル 数10m~数km
pH pH 沿岸
内湾
コンクリート pH拡散モデル 数10m~数km
水質(1) COD
T-N
T-P
沿岸
内湾
外洋
(保存系) 保存系物質拡散モデル 数10m~数km
水質(2) COD
T-N,I-N
T-P,I-P
DO
沿岸
内湾
外洋
富栄養化 富栄養化モデル
簡易生態系モデル
数10m~数km
水質(3) 植物プランクトン
動物プランクトン
栄養塩
DO
沿岸
内湾
外洋
低次生態系 低次生態系モデル 数10m~数km
大気質 SOX,NOX,CO 陸域 車両ほか プルーム・パフモデル 数m~数100m

 

■生態系が有する機能の評価

 干潟や藻場を有する浅海域は、多くの生物にとって産卵や生育・餌索などの場としての機能を有するとともに、生産性や水質浄化といった機能の高いことが知られている。可能な限りこれらの機能を検討し、場の消失等による生態系への影響を評価することが必要である。魚類の産卵・成長に伴う影響予測等については、生活史等を考慮した複雑なモデルが必要となり、現在のところ、十分な予測ができる状況にはない。しかし、基礎生産や水質浄化機能を予測できる物質循環モデルについては、かなり実用的なレベルにあり、可能な限りそれらを活用することが望まれる。
 参考として、表2-20に現状で生態系の一部の物質循環を検討することが可能と考えられる数値モデルの例を示し、その概要を図2-18、19、20に示す。

 

表2-20 生態系の評価に活用可能な物質循環モデル

モデルの種類 モデルの構成要素 算出できる物質循環の内容 備考
[1]低次生態系モデル [浮遊系]
植物プランクトン
動物プランクトン 
栄養塩(I-N,I-P) 
デトリタス
溶存態有機物
DO
植物プランクトンの基礎生産量
デトリタスの沈降量
水平方向の物質輸送量
図2-18
[2]藻場生態系モデル [浮遊系]
植物プランクトン
海藻、海草(株数、密度) 
デトリタス
栄養塩(N,P) 
DO
植物プランクトンの基礎生産量
海藻・海草の基礎生産量
水平方向の物質輸送量
藻場域の物質循環(シンク・ソース)
図2-19
[3]浅海域生態系モデル [浮遊系] 7項目
植物プランクトン  
動物プランクトン
栄養塩(NH4-N,NO3-N)
デトリタス,溶存態有機物
海藻

[底生系] 8項目
底生付着藻類
マクロベントス(懸濁物食者・ 堆積物食者),メイオベントスバクテリア
栄養塩(NH4-N,NO3-N)
デトリタス
植物プランクトンの基礎生産量
海藻・海草の基礎生産量
底生藻類の基礎生産量
水平方向の物質輸送量



干潟・藻場、浅海域の物質循環(シンク・ソース)
図2-20

 

図2-18 低次生態系モデルの概要
fig2-18.JPG (30587 バイト)

 

図2-19 藻場生態系モデルの概要(Hanne K. Bach et al., 1992)
fig2-19.JPG (27069 バイト)

 

図2-20 浅海域生態系モデルの概要(千葉県、1998、一部改)
fig2-20.JPG (77552 バイト)

 

[3]評価手法の選定
 評価手法の選定段階では、予測手法の選定段階で述べたように、生態系の構造や機能のどの部分を対象とするのか、また、どの種類・群集の生物を対象とするのかが重要となる。現状では、生態系の多様性や機能の価値を総合的に表現できる方法は確立されていない。対象海域の生態系をどのように捉え、何を指標として評価を行うか、言い換えれば、事業者がその海域をどのように判断するかを明確に示すことが評価に際して重要な点である。また、事業者が対象海域の特性を理解した上で、注目種・群集の生息・生育が損なわれないこと、生物種・群集の多様性が損なわれないことを考えることが、より良い評価につながると考えられる。評価手法の選定にあたっては、これらのことを十分検討して手法の選定を行う必要がある。
 評価手法の選定段階における資料と検討項目としては、以下のものが考えられる。

○評価手法の選定段階における資料と検討項目の例

資料 検討項目
 事業計画
 地域概況調査の結果
 法令、条例等による環境保全
   に関する基準または目標
 既往事例、その他
海域生態系の評価方法とその視点
(生物の多様性、物質循環と浄化機能、環境形成・維持の機能など)
予測範囲より広い生態系に及ぼす影響
影響の回避、低減の評価
(複数案の比較検討、実行可能なより良い技術の検討など)
環境保全措置の効果・影響の評価
環境保全に関する基準または目標との整合性など

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