(1)調査
廃棄物等については「1 2)(2)調査の考え方」で述べたように環境の状態を把握するための地域設定の必要はない。調査はシステム全体としての環境負荷低減の寄与を検討するためシステム境界(地域社会、業界等)を設定し、その範囲を検討範囲として調査を行うことができる。
その考え方としては以下の例が挙げられる。
[2]調査項目の検討
調査は、主に文献資料により地域範囲に関わる事項及び工業系や業務・商業系の開発であれば当該業種全体に関わる事項について把握する。
(ア)廃棄物等の処理・処分の状況
事業において発生した廃棄物等が処理・処分される範囲において、次の事項について調査する。
●資源化施設の概要
●中間処理施設の概要
●最終処分場の概要
国が制定している以下の計画等に基づく廃棄物減量化、リサイクル、適正処理に関する事項。
都道府県等が定める産業廃棄物及び一般廃棄物に関する減量化、リサイクル、適正処理に関する事項や産業廃棄物処理施設整備の方針に関する事項。
市町村または一部事務組合が立案している下記の計画に基づく廃棄物減量化、再資源化、適正処理に関する事項。
事業者の属する事業者団体または当該事業者が定めている廃棄物等の減量化計画等に基づく減量化、再資源化、適正処理に関する事項。事業者団体等の定めた例としては以下の事例がある。
(ウ)地域における廃棄物減量化の活動等
地域において、廃棄物の削減に寄与している活動等についてまとめる。これらの活動は事業の実施段階において、当該事業による廃棄物量削減に寄与する可能性を有している。
(エ)建設発生土の再利用の安全性
工事によって発生する建設発生土が、一般の建設発生土として再利用が可能であるか否かについて、土壌汚染調査または土地利用履歴等により確認する。
(2)影響予測
廃棄物に関する予測事項としては表4-1-6に示す項目があり、可能な限り詳細な予測が望ましい。
表4-1-6 廃棄物等の予測事項
予測事項 |
予測内容 |
廃棄物の発生量 |
全体量 |
種類別発生量 |
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環境保全措置 |
対策の内容 |
対策の実施者 |
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対策の確実性 |
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環境保全措置による削減量 |
全体量 |
種類別削減量 |
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排出後の処理・処分 |
想定される中間処理の状況 |
想定される最終処分の状況 |
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リサイクルによる削減量 |
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上記の処理の確認方法 |
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その他 |
再生資源利用促進への寄与 |
[2]廃棄物の発生量
廃棄物等発生量の予測は以下の3種類の手法がある。
基本的に(1)式により発生量を算定する。
(廃棄物等の発生量)=(事業による活動量)×(原単位) (1)
また、種類別の廃棄物量は(2)式を用いることができる。
(種類別廃棄物発生量)=(廃棄物の全体量)×(種類別の構成比) (2)
活動量としてとりまとめる項目は発生量算定に利用する原単位によって決定され、その事例は表4-1-7に示すとおりである。
表4-1-7 事業による活動量としてとりまとめる項目の例
発生源の区分 |
把握すべき活動量の指標の例 |
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家庭系廃棄物 |
戸数、人口 |
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事業系廃棄物 |
業務・商業系 |
業務床面積、従業員数、来客数 |
製造系 |
生産量、生産額、敷地面積 |
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建設副産物 |
解体廃棄物 |
解体建屋の種類別床面積 |
原単位の推計
廃棄物等の排出原単位については以下の種類のものがあり、個々のデータの事例については「技術シート(本報告書 第5章)」にとりまとめた。
●家庭系廃棄物(排出量原単位)
各市町村の一般廃棄物処理計画で推計されている。
●家庭系廃棄物(種類別構成比)
各市町村が上記の計画立案の際に調査した事例がある。当該市町村でとりまとめられていない場合は近傍の市町村の事例等が参照できる。
●事業系一般廃棄物
業種別種類別の調査事例が参考にできる。
●産業廃棄物
業種別種類別の発生量等を(環境省(旧厚生省))全国的にとりまとめた資料がある。また、都道府県においてもとりまとめられた資料があり、これらと工業統計、商業統計等の他の統計資料を用いて原単位の推計が可能である。
●建設副産物(解体廃棄物)
建屋の解体に伴う廃棄物量については種類別延べ床面積当たりの調査事例が参考にできる。
なお、家庭系廃棄物や事業系廃棄物における紙類等の原単位は経時的な変化が想定されるため、その補正を必要とする場合がある。
一般廃棄物の場合では、自治体が定期的または必要に応じて排出される廃棄物の組成調査を行っており、廃棄物組成の想定ができる。業種別データ等収集できるデータについては「技術シート(本報告書 第5章)」にとりまとめた。
(イ)個別事業場の稼働実績等による方法
製造業において既存工場の事例がある場合等は、その稼働実績から製品出荷量等の原単位を推計し、廃棄物量を算定することができる。方法は「(ア)統計資料等に基づく原単位積み上げによる方法」と同様である。しかし、この場合は、原単位における活動量の指標(原単位の分母となる単位)は、事業の種類または事業者(企業)によって相違するため、その指標にあわせた計画情報の整理が必要である。
事業計画から算定できるものとしては以下の事例がある。
[3]環境保全措置
廃棄物等の分野では環境保全措置による環境負荷削減の努力が環境影響への回避・低減の評価において欠かせない事項であるが、その対策の実施及び効果の確実性が必ずしも確保されていない場合がある。そのため、環境保全措置そのものが予測の対象と考えることができ、以下の事項について検討する。
(イ)検討事項
廃棄物等において環境負荷削減に関する検討事項としては下記の視点で行われる必要がある。
資材消費の抑制等により入力を制御して廃棄物を削減する方策や、事業者自身のオペレーティングにおいて効率的利用及び再利用等によって削減する方策。
廃棄物の排出先として再生資源化が可能な施設を選択することにより環境負荷量を削減する方策。
(c)資源化物等の利用による社会全体での削減を円滑化する事項
再生資源の利用を促すため自ら進んで再生資源の利用を行い、社会の再生資源の循環を促す方策。「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」に基づく低負荷の資材調達等もこの範疇に入る。
環境保全措置に基づき、事業全体としての削減量及び廃棄物の種類毎の削減量を算定する。
排出される廃棄物について、廃棄物の種類・性状や排出先として考えられる施設の状況等を勘案して、想定される中間処理の内容を検討する。この検討により排出する廃棄物の中間処理及び最終処分での安全性・確実性について排出者の立場において確認していることを明らかにする。
以下に中間処理から最終処分までの過程の一例を示すが、可能な限り各段階での施設の内容を把握する。
把握すべき内容としては、以下の項目がある。
ⅰ)施設の処理能力
ⅱ)施設の処理方式
ⅲ)施設の公害防止対策の内容 等
環境保全措置として中間処理段階での再資源化等を挙げ、削減量として計上している場合には、次の事項について記述する。
大規模な事業の場合、廃棄物処理施設の運用に重大な影響を及ぼす場合があるため、各施設の稼働に対する影響を予測する。その項目としては以下のとおりである。
排出された廃棄物等の各処理・処分施設での公害防止対策をとりまとめ、処理・処分による二次公害の発生の可能性について考察する。
また、予測した処理・処分が取られることの確認方法を記述する(マニフェスト制度注)等)。
注)「マニフェスト制度」
事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、処理業者に対し産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、処理終了後に処理業者から管理票の写しの送付を受けることにより、委託内容どおりに産業廃棄物が処理されたことを確認することで適正な処理を確保する制度。
廃棄物における環境影響の回避・低減に係る評価としては、複数の環境保全措置の比較及び設定したベースラインとの比較によって、予測段階において検討した環境保全措置を前提に次の事項について記述する。
(a)実現可能な範囲での最大限の回避・低減措置
前提とした回避・低減措置について以下の観点から実行可能な範囲で最大限の措置となっているかどうかを評価する。
事業目的を達成するにあたって、事業計画に盛られている計画諸元に基づく各種活動が最小の廃棄物等の排出量となるよう配慮されているか、また、排出抑制(減量化、リユース、リサイクル等)が配慮されているかを評価する。
提示した回避・低減措置が現状において採用できる先進的技術内容であるかどうかを評価する。
回避・低減措置が事業採算性の範囲において最大限の配慮であるかどうかを評価する。
設定したベースラインからの廃棄物等の削減量を評価する。なお、廃棄物等におけるベースライン設定の考え方は後述する。
事業計画において設定できる複数の環境保全措置の中で、採用案が最も廃棄物等の発生量が少ないかどうかを検証する。なお、環境保全措置は以下の事項を考慮して設定する。
事業計画の基本フレームに関する環境保全措置としては事業規模及び施設配置等について検討する必要がある。ただし、「1-2 3)(3)回避・低減に係る評価」項でも前述したように事業規模に関する複数案については、事業計画の基本フレームは、経済的な側面等により、既に最適なフレームで計画されていることが多いため、基本フレームに関する複数案の設定が難しい場合がある。この場合には、計画の各諸元が環境配慮に対してどのような調整が図られているかを記述することが望ましい。
また、施設配置に関する複数案についても検討が必要である。
(d)環境保全措置の実施と効果の確実性
事業によっては建設事業者と運用者が相違するようなケースがある。この場合、環境保全措置の実施の確実性を確保する方法について具体的に記述する。
また、環境保全措置の内容によっては、効果に不確実性がある場合や新しい技術を導入する場合等は、その不確実性の程度を記述するとともに、予測した削減量を確保する方策を記述する。
(e)廃棄物等の排出後の処理・処分における環境影響の回避・低減
廃棄物等は排出後に種々の環境影響を生じる可能性がある。事業者がこれらの影響に対して、どのように考え対処するかを記述する。
(f)各事業段階での環境影響の回避・低減措置
建設、供用及び解体廃棄の各事業段階において違った種類の廃棄物等が発生する。このため、各事業段階での回避・低減措置についてそれぞれ評価を行う必要がある。
廃棄物等の排出原単位は、経時的に一定と考えられるものと変化(一般的には増加)する傾向のあるものがある。後者として、主に家庭系廃棄物や事業系廃棄物のうち紙類等の人の活動様式により変化する一般廃棄物が挙げられる。
これらの原単位は、前述した計画等で算定されておりその数値を用いるか、過去のデータから推定することができる。
一方、産業廃棄物の多くの場合、その発生量は利用する原材料や工程・工法によって相違し、汎用的な原単位情報は一般的には存在しないため、次の考え方で原単位を設定する。
●既設の同種または類似施設での実績
システム全体で評価しようとする場合には次のような検討範囲設定の考え方がある。
●一般廃棄物
一般廃棄物は、市町村単位または一般廃棄物処理の広域化計画に基づく圏域で処理・処分を総合的に検討しており、その範囲における全体量を評価のベースラインとすることが考えられる。
●産業廃棄物
産業廃棄物は、広域的な処理・処分が行われており、地域的な範囲を設定することは難しい。
この場合、主に事業種別の全廃棄物量または個別廃棄物量の範囲を検討範囲として設定することが多い。
事業種別の廃棄物発生量をシステム境界とできる例としては下記の事例がある。
国や地方自治体において定めている廃棄物削減・処理・処分に係る計画・目標等としては以下のものが挙げられる。
以上の計画等における発生抑制、排出抑制、減量化等の目標値に対して、以下の事項について整合性を検討する。