平成13年度第1回全体会合
資料2-1

1-2 地盤環境

1)環境影響評価における地盤環境の捉え方

(1)地盤環境の捉え方

  地盤環境は、人が建設や防災等で対象とする範囲の地層の状態を表す概念であり、鉱物や有機物といった固体と水から構成されるものである。

  従来の環境影響評価では、地下水の取水に伴う地盤の圧密による地盤沈下や掘削工事等に伴う局所的な地盤変形が対象とされることが多かった。

  しかし、大深度の地下利用が行われるようになってきている現在、環境影響評価にあたっても、これまでと同じ視点の検討では十分ではないことも考えられる。

(2)地盤環境の視点

[1]地盤環境の機能

  地盤は、自然のもの、人工のものを問わず、地表面に存在する全てのものを物理的に支えているものであり、環境の観点からだけではなく、安全や防災といった観点からも、その機能の保全は重要である。

  また、地盤は、地下水を流下させたり、貯留したりする場ともなっており、水循環系の中でも重要な機能を有している。

<地盤環境の機能>

水循環における機能:貯留、流下 等

その他の機能:地表面の支持 等

[2]地盤環境の環境影響評価の考え方

  従来の環境影響評価では、地盤環境に係る項目として地下水の取水による地盤の圧密沈下や掘削工事等による地盤変形が対象とされる場合が多かった。

  地下水の取水による影響については、従来取り上げられていたように地下水位の低下に伴う圧密沈下の影響が考えられるが、その他に地盤への空気の侵入に伴う風化についても留意する必要がある。

  なお、地盤環境を構成する要素においては、地質構造等は比較的安定しているのに対し、地下水等は人為的に変化を引き起こされやすい可能性があり、水循環と地盤環境に密接な関係があることに留意する必要がある。特に、水循環の変化に伴う地盤環境の変化は、仮に水循環が元の状態に戻ったとしても、地盤環境は元に戻らないことから、その回復がきわめて難しい環境要素であるとの認識に立って考えることが重要である。

  また、近年においては、大深度において地下構造物が設置されるなど、従来にはなかったような地下の利用が行われるようになってきている。このような大深度地下の環境については、科学的知見が十分ではないものも多いが、嫌気状態にあった地盤が空気に触れることによる風化というような現象についても、留意していく必要があると考えられる。

  その他にも、地すべり、斜面崩壊等の危険度増加や液状化、地盤陥没といった地盤変動の原因となる開発行為による土地の安定性変化についても、広く環境影響評価の項目としてとらえるべきであろう。

  以上のことを考慮し、地盤の環境影響評価に当たっては、次の事項に留意する必要がある。

  なお、地盤環境は地域に固有のものであること、すでに人為的な改変を受けているものもあることを踏まえ、その成り立ちや地域性、気候に留意して考えることが重要である。

<環境影響評価にあたって留意すべき事項>

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