平成12年度第3回陸水域分科会

資料 3

陸水域生態系の環境影響評価の進め方に関するケーススタディ( たたき台 )

 この資料は、今回の検討のたたき台とするものですが、現在、作業の途上であり、今後の作業により大幅に変更する予定のものです。 よって、取扱いには十分留意いただくようお願い申し上げます。

 

目     次

今回の資料について
ケーススタディについて
1. ケーススタディによる検討のねらいと方法
1-1 検討のねらい
1-2 対象とする地域と事業の想定
1-3 ケーススタディの作業手順
河口堰版

2.ケーススタディ -河口堰を例として-

ダム版

3.ケーススタディ ―多目的ダムを例として―


今回の資料について

 今回の資料は、ケーススタディを作成するための作業例であり、成果品ではありません。公表しうるケーススタディとするまでにはまだ多くの課題、変更すべき点を残した資料となっております。よって、本資料は、ケーススタディを作成する手順等を検討いただくためのサンプルとしてご検討いただきたくお願い申し上げます。

 

 

 

ケーススタディについて

 陸水域生態系の環境影響評価を実施する際の方法書作成から調査、予測に至るまでの手順について、関係者等が容易に作業内容をイメージできるよう、具体的な作業例を示す。
 なお、本ケーススタディで検討する事業影響は、堰またはダムの存在、供用による影響とする。
 ケーススタディの対象とする事業は、

1.河口堰事業

2.ダム事業

 とする。本ケーススタディの対象とする事業は、河口堰事業、ダム事業ともにいずれも本州中部の太平洋側に流入する仮想の河川における事業とする。想定したそれぞれの事業規模は以下のとおりである。なお、これらの事業規模は、既存の河口堰、ダムを参考に設定したものである。


1.河口堰事業
堰 長:550m
堰 高:約5.0m
湛水面積:130ha
常時満水位:A.P.+4.0m
総貯水容量:5,800千m
堰の形式:可動堰
2.ダム事業
湛水面積:330ha
総貯水容量:101,000,000m
堤 高:105m
ダムの形式:ロックフィルダム
 ダム事業においては、陸域が水没すること、河口堰事業においては河川敷など、陸域の生態系への影響が考えられるが、陸域生態系については別途整理を行っており、ここでは水域の生態系のみに焦点を絞って整理した。実際の環境影響評価においては、陸域と複合した検討が必要である。

1.ケーススタディによる検討のねらいと方法

1-1 検討のねらい

 本年度は、陸水域生態系の環境影響評価を進めるにあたっての基本的な考え方や調査・予測の手法について検討した。生態系の評価に至るには、スコーピングから影響の予測・評価まで多くの項目の調査とそれらの相互関連を把握していかなければならない。
 そこで本資料では、ケーススタディによる検討を実施し、スコーピングから環境影響評価の実施段階の調査・予測までの手順を検討し、また、図表等を用いて具体的手法の例を提示することにより、作業イメージの具体化を図ることとした。
 なお、このケーススタディは、現実の情報に基づくものではなく、基盤環境、植生、動植物の分布などについて仮想の設定を行い、あくまでも考え方を整理するための一助とする目的で作成したものである。本ケーススタディで検討した環境影響や調査・予測手法は環境影響評価を行うために考慮しなければならないもののうちの一部分であり、ここで示した影響要因、手法のみにより生態系に対する影響の全体が把握できるわけではないことに留意しなければならない。
 また、このケーススタディは想定した事業の是非を検討するものではなく、あくまで事業による影響を的確に捉えるための方法について検討し、その道筋を示すことをねらいとするものである。
 実際の環境影響評価に際しては、ここに示した考え方や作業例を参考として、事業の特性や地域の環境特性に応じて、最も適した方法を個別に検討する必要がある。

 

1-2  対象とする地域と事業の想定

1)本州中部の太平洋側に流入する河川を想定する。

 

2)事業内容(図-1.1)

 河口から5.0km上流に、可動式の堰を新たに設置する。

堰   長: 約550m
堰   高: 約5.0m
湛 水 面 積: 130ha
常時満水位: A.P.+4.0m
総貯水容量: 1,200千m3
取 水 量: 最大15m3/秒

 

3)基本条件

河口から5.0kmの位置に河口堰を設置する。また、堰設置と同時に幅約300mにわたって護床を敷設する。
河口から3.0~15.0km の区間で低水護岸の設置、3.0~9.0kmの区間で河道の掘削を行う。

 

4)運用方法

水位の調節は、調節ゲートを操作することによって行う。
平常時は、上流と下流の水位差が小さくなるように、流況に応じてゲートを調節する。ゲートの高さはA.P.+1.8~+2.4mの範囲で運用する。なお、海水位は大潮最大満潮時にはA.P.+2.2mとする。
洪水時には、水流の妨げにならないように、全てのゲートを堤防より高く引き上げる。
高潮時は、下流の水位がA.P.+2.3mを超えると予測された時は、全てのゲートを堤防より高く引き上げる。なお、A.P.+2.3mを超えると予測されない場合は、塩水のそ上を防ぐためゲートは全閉する。

 

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図-1.1(1) 事業実施区域とその周辺の広域地形

 

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図-1.1(2) 河川の予測縦断模式図

 

1-3 ケーススタディの作業手順

 環境影響評価の作業手順を図-1.2に示す。

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図-1.2 ケーススタディの作業手順フロー