SEA総合研究会報告書 中間報告書
戦略的環境アセスメントに関する国内外の取組と我が国における今後の展望について(平成11年7月)

第3章 諸外国における戦略的環境アセスメントの実践事例

 本章では、諸外国における戦略的環境アセスメントの事例を通じて、具体的に、どのような案件に対して、どのように評価が行われているのかを見ていくこととする。
 欧州では、『計画・プログラム』を中心に環境アセスメントが行われており、特に、総合開発計画、交通、エネルギー、廃棄物処理等の分野別の開発計画や土地利用計画に対して実施された例が多く見られる。表3-1は、欧州委員会が、戦略的環境アセスメントの導入を図るためにとりまとめた報告書の掲載事例等を、その分野及び計画のレベルに応じて表にしたものである。本章では、この中から、交通系計画、廃棄物処理計画及び土地利用計画を代表事例として取り上げることとした。

表3-1 欧州におけるSEAの事例について
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 また、米国では、政策・計画段階での環境アセスメントとしては、特に特定地域における資源開発や水資源開発等に対するアセスメントであるプログラムアセスメントが数多く行われている。ここでは、その代表例として、カリフォルニア・ベイデルタの水資源開発に対する環境アセスメントの事例を取り上げた。
 このほか、カナダやオランダ、デンマークにおいて、法案等の『政策』に対して環境面からの評価を記載した文書を添付することを義務付ける動きが見られることから、カナダにおける西部穀物輸送法の修正案に対する環境アセスメントの事例を取り上げた。

(1)ノートラインーヴェストファーレン州道需要計画(ドイツ)

 ドイツのノートラインーヴェストファーレン州道需要計画(LSBP)は、全国自動車道路、国道に次ぐ州レベルで重要な州道に関する中期的な財政計画であり、1993年から1997年の5年間には15億ドイツマルクが計上されている。計画は、まず州政府で交通問題を担当する地域組合において、行政官及び一定の政治家により原案が作成された後、各省の意見聴取を経て議会に提出され、優先順位により予算の範囲内で決定され、残りは拒否される。
 計画には、各道路について、その目的、長さ、建設費用、潜在的な環境影響などが10ページ程度でまとめられ、交通面、環境面及び都市計画面からその影響や効果について報告がなされる。環境面からの評価は、制度的に義務付けられたものではないが、政治的に計画の環境への影響を明らかにすることが求められ、[1]問題のある地域での道路の開発を避けること、[2]議会等が各事業の採択に当たって判断材料として用いることのできるよう、州全体について比較可能な基準を用いて、全ての事業の環境影響を評価すること、[3]事業の環境への影響や環境の緩和を比較することを主たる目標として調査が行われている。なお、事業の承認段階においてもこの評価とは別途、事業の実施段階での環境アセスメントが行われる。
 評価は、提案された240の事業のそれぞれについて、以下の手順に従って行われた。

[1] 人や植物、動物、土壌、水質、大気、気候、景観それらの相互作用、文化的遺産及び建築物への影響の受けやすさを分析する。
[2] 地図情報システム(GIS)を利用して、各地域の影響の受け易さを州全体の地図に落として結果を集計し、問題の少ない地域を明らかにする。
[3] 影響を受けやすい全ての環境項目について、事業特性から環境への影響を推計するとともに、その回避の可能性を明らかにする。
[4] GISによる各地域の環境影響の受け易さ(地域特性)と事業の環境への影響(事業特性)を結びつけることにより、各事業の負の影響を評価する。
[5] 各事業の環境改善効果を推計する。
[6] 「環境への負の影響」と「環境改善効果」とを示して、比較する。なお、両者に重み付けを行い、一つの指標に統合することは、重み付けに価値判断が伴うため、行わなれていない。

図3-1 評価の手順
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 以上の評価により、より問題の少ない地域を認識することができ、影響を受けやすい地域での新たなルートの提案を避けることができることもあった。一方、より問題の少ない地域を見つけることができずに、その環境影響の大きさにも関わらず、他の政治的要因の重要性から需要計画に位置づけられた事業もある。例えば、ライン地域では26の影響が環境への影響が大きいと評価されたが、そのうち、19の事業は最終的には計画に位置づけられた。今回の評価に用いられた方法は、影響評価の結果を比較することのできる分かりやすいものであったことから、環境面からの評価の結果が、交通面や都市計画としての評価の結果と同様に、最終的な意思決定を行った政治家や行政の責任者全てから十分に考慮されたものと考えられている。
 一方、個別の事業単位では評価することが困難な以下の影響の評価についての関心も高く、今後の検討課題となっている。

地域レベル、国レベル更には国際的な環境政策の目標、例えば、二酸化炭素の削減等に今回の計画がどの程度貢献しうるかの評価
新たな交通量の発生とそれに伴う環境影響の評価
他の道路への交通の移動による環境への影響や既存のルートを廃止する可能性の評価
異なる輸送手段を含めた代替案(鉄道と道路など)の評価

(2)第1次廃棄物処理10ヶ年計画(オランダ)

 オランダでは、非有害物質系の廃棄物の最終処理技術及び最終処理能力に関する廃棄物処理計画を、住宅・国土計画・環境省、州際協議会、オランダ自治体連合の3者の協力協定に基づいて設立された廃棄物協議機構が作成し、3年ごとに改訂することとなっている。同計画は、実現すべき廃棄物容量の規模、処理能力と廃棄物発生量との関係、投棄場所を選定する際の基礎的条件等が定められることとなっているが、廃棄物の発生量の削減やリユースは、本計画では取り扱うこととはなっていない。環境面からの評価は、義務付けられているものではないが、第一次廃棄物処理10カ年計画(1992~2002)、第二次廃棄物処理10カ年計画(1995~2005)の策定に際しては、環境への影響に関する報告書が自主的に作成されている。

 計画の策定の前提となる廃棄物の最終処理量は、廃棄物発生量の抑制に関する政策が順調に実施された場合が基本的には用いられたが、併せて廃棄物発生量の管理抑制が失敗し、大量の廃棄物を最終処理しなければならない事態についても検討が行われている。 

表3-2 廃棄物の最終処理量

1990 年 2000 年
現状 抑制政策順調 抑制政策失敗
投棄された廃棄物の総量 32,235 34,769
再利用量 23,566 21,758
残存廃棄物の総量 14,370 8,669 13,011
分別されたGFT(クリーンな有機廃棄物) 280 2,634 2,151
最終処理必要量 合計  14,650 11,303 15,162

 これらの廃棄物の処理に係る環境への影響を予測・評価するため、投棄や焼却を中心とする処理方法として、以下の現行の政策に基づく「政策シナリオ」のほか、代替案が3種類設定されている。また、検討のため、事前分別を止め、廃棄物はすべて焼却することとした参考案が設定された。それぞれの処理案の内容は以下のとおりである。

[1]政策シナリオ(自然への投棄を最小限にし、焼却するケース)
・可燃性廃棄物の投棄は禁止し、すべて焼却する。
・既に立案されている分別収集は継続し、GFT廃棄物は分別処理する。
[2]代替案I(焼却処理を最小限に抑制し、投棄するケース)
・焼却容量の規模を現在のままに保ち、その他の廃棄物は投棄する。
・事前分別の容量は拡張しない。
[3]代替案II(投棄を最小限、事前分別を最大限とするケース)
・可燃性廃棄物の投棄は禁止し、RDF化して焼却する。
・事前分別を最大限実施し、有機性の残存物は酵素分解し、可燃性の残存物は焼却し、不燃性の残存物は投棄する。
[4]代替案III(焼却処理を最小限に、事前分別は最大限とするケース)
・焼却容量の規模を現在のままに保ち、その他の廃棄物は投棄する。
・事前分別を最大限実施し、有機性の残存物は酵素分解し、その他は投棄する。

表3-3 2000年度に最終処理される廃棄物の数量、単位1000ton

政策シナリオ 参考案 代替案I 代替案II 代替案III
焼却処理
混合廃棄物(有機性を含む) 3972 5117 2625 0 0
高カロリーの廃棄物(RDF) 782 0 75 3568 1825
残存廃棄物処理 361 274 0 652 0
自然への投棄
混合廃棄物(有機性を含む) 0 0 2376 0 0
不燃性の廃棄物 3698 3552 3574 4157 4157
高カロリーの廃棄物(RDF) 0 0 0 0 1743
残存廃棄物処理 398 409 548 359 896
堆肥化処理(composting)
クリーンな有機性廃棄物 1170 1170 1170 1170 1170
汚染された有機性廃棄物 901 684 703 0 0
酵素分解(バイオ処理)
クリーンな有機性廃棄物 780 780 780 780 780
汚染された有機性廃棄物 0 0 0 1628 1628
合計 残存廃棄物 8669 8669 8669 8669 8669
分別・収集
クリーンな有機性廃棄物 1950 1950 1950 1950 1950
汚染された有機性廃棄物 684 684 684 684 684
合計 最終処理 11303 11303 11303 11303 11303

 それぞれの代替案について、廃棄物処理に伴う環境負荷について予測を行った。
 表3-4の結果のとおり、各処理案には、環境負荷の低い項目と、環境負荷の高い項目がある。一般的にガイドラインでは、最小の焼却と最大の事前分別と酵素分解を組み合わせたものが環境面からよいものとされ、代替案IIIが、この方向を追求したものである。この案では、投棄すべき廃棄物の量が増大し、空間占拠の規模も拡大し、また、エネルギー回収量も減少するので二酸化炭素発生量削減効果は限定されるが、汚染物質の拡散が減少する。しかし、代替案Iと代替案IIIは現在の焼却能力が拡張されないことを前提としている点で、計画策定の基本方針とは異なっている。
 最大の事前分別/酵素分解に、最小の投棄の組み合わせを実施した場合(代替案II)では、代替案IIIと比較すると汚染物質の拡散は助長されるが、エネルギー生産は相当に促進され、空間占拠の規模はかなり減少する。代替案IIで採用している分別と酵素分解能力を拡充することは環境負荷を少なくするのに役立つものであり、代替案IIは、政策シナリオと比べて環境保護には有利と結論付けられた。
 しかし、大規模の処理施設で処理能力が十分ではないこと、技術的な経験も十分ではないことから、短期的には、予定通り、政策シナリオに基づき実施し、長期的には代替案IIが実施できるような状況を作っていくことが決定された。

表3-4 環境負荷の予測計算値の一覧

有害物質/
悪影響
単位 1990年
の現状
政策 参考案 代替I 代替II 代替III
事前分別
最少の投棄
最少の投棄 最少の焼却 事前分別最大
最少の投棄
事前分別最大
最少の焼却
拡散 -重金属(Hg+Cd) kg 5457 5445 5696 3257 4632 2463
    -PAK kg 62 3.7 3.8 3.1 3.4 2.7
    -ダイオキシン g 147 4.1 4.3 2.2 3.3 1.5
    -有機物質 ton 792 202 211 359 228 303
酸性雨 -SO2 + NOx Meq.H 222 107 111 68 99 53
生活影響 -悪臭 1012ge 17 55 43 45 9 9
気象変化 -CO2 + CH4 kton 4349 -1496 -1525 -175 -1526 -494
エネルギー Pj 6.2 20.9 21.5 11.4 20.1 -9.6
除去 -投棄残存物 kton 220 398 402 548 359 896
    - 投棄化学廃棄物 kton 118 164 164 76 165 49
    - 再利用可能残存物 kton 637 1802 1891 1316 1502 1043
空間占拠 ha 79 29 28 46 32 50

(3)ザーンスタッド住宅地域の土地利用計画(オランダ)

 アムステルダムの北に位置する北ホラント州のザーンスタッド地域では、地域内の5つの市町村が、1995年から2000年にかけて、5000戸分の住宅地を建設することについて政府と合意したため、同州は、ザーンスタッド地域の土地利用計画を改訂することとなった。このため、州政府では、約2年間かけて、当該計画の変更手続と並行して、環境管理令に基づく環境アセスメントを実施した。
 5000戸のうち、約2000戸は、高価な費用を伴う土壌の浄化を必要とするが、既成の市街地に設けることが可能であったため、3000戸から5000戸の建設を行うことのできる土地として、4つの区域が選ばれた。代替案としては、この4つの区域のうちの1箇所を用いた配置(4通り)と、2箇所を用いた配置(6通り)の計10通りの配置案が設定されたが、歴史的景観に優れた、多様な生物相を有する脆弱な地域であるため、3箇所以上を用いる案は検討されなかった。

図3-2 10通りの配置案
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 当該地域は、直径約20kmに渡る泥炭の牧草地であり、酪農が行われている。また、数世紀に渡り、国際貿易に関する産業の中心地であったため、歴史的景観の保護や、生物の多様性の保護上、脆弱な地域である。このため、環境アセスメントの実施に当たっては、特に公共交通機関以外の交通量の削減、及び生態系への負の影響を最小限のものとすることが重視されている。環境アセスメントの手続と計画策定のための手続の両者に基づいてスコーピングが行われ、景観及び考古学上の影響、土壌及び表流水への影響、生物多様性への影響、移動(交通及び輸送)に伴う影響、居住者の生活環境への影響の観点から行われることとなった。

図3-3 主な評価項目とその手法(抄)

1)風致、歴史的景観及び考古学上の影響
以下の項目について、専門家による定性的な判断が行われた。
  • 土地利用構造への影響
  • 景観への影響
  • 貴重な景観への影響(定性的)
2)土壌及び表流水に対する定性的な影響
以下の項目に係る工事中の影響及び供用後の影響についての基本的な分析が行われた。
  • 貴重な土壌の損失
  • 表流水資源への影響
  • 水質への影響 等
3)植物、動物及び生態系への影響
  • 土地占拠に伴い直接失われる貴重な生態系
  • 高い生態系上の価値を有する生態系の間接的な損失
  • 保護生息域のネットワーク地域 等
4)移動への影響
以下の指標が、運輸基盤と交通需要の基本的な分析により評価されている。具体的には、影響の予測は、市町村が有するザーンスタッド地域の交通環境地図に基づくシミュレーションモデルのコンピューター処理により行われ、適宜、州政府の交通モデルや実地調査により補足した。また、公共輸送の使用頻度を評価するため、追加的に発生するボトルネックや電車の駅からの距離、雇用地からの距離、移動回数等のより基礎的な指標を用いて他のモデルにより評価した。
  • 車の走行距離
  • 公共輸送の使用
  • 追加的な道路の建設の必要性(多い、平均的、少な目)
  • 交通システムにおけるボトルネックの起こり易さ
5)生活環境への影響
  • 騒音
  • 悪臭
  • 安全性
  • 公共機関の存在

 以上の5つの主要な項目のそれぞれについて、各項目毎にそれぞれ設けられた複数の基準に基づき、各分野の専門家により、1つのスコアが決定された。5つの主な影響項目には、40%、15%等の重み付けが行われ、最も優れた案が選出された。
 ここで、各代替案の騒音と安全性に影響を及ぼすアムステルダムのスキポール国際空港の開発が行われるか否か、1地区への新しい交通輸送機関が実現するか否かという大きな2つの不確実性があることが確認された。
 最終的に最も優れた案が選定されたが、これは、地方自治体が当初提案した地域であり、環境の価値が比較的高くない地域に建設することを予定した唯一の案であった。しかし、環境アセスメントを実施することによってこの提案が補強され、結果的として住民の指示が特に高まることとなった。

表3-5 実施された戦略的環境アセスメントの手続

1991年 3月 北ホラント州による実施計画書の公表(~5月まで意見聴取)
92年 4-5月 環境影響評価委員会による条件の勧告の公表
7月 北ホラント州による実施計画書最終版の公表(ほとんど変更なし。)
93年 3月 環境アセスメント報告書と土地利用計画改訂案の公表
7月 公聴会の開催
環境影響評価委員会によるレビュー
94年 1月 最終的な土地利用計画の決定の告示

(4)ベイデルタにおける水資源等の管理プログラム(アメリカ)

 カリフォルニア州のベイデルタは、サンホアキン川とサクラメント川がサンフランシスコ湾に流れ込む河口に位置する大きな入り江であり、750種類以上の植物、野生動物の宝庫であるとともに、カリフォルニアの工業用水、飲料水、農業用水として重要なものである。しかし、その管理及び保護の方法について数十年にわたって地域の合意が形成されず、動植物の生息地の減少、水質の劣化、沖積提の喪失が進んでいたが、1994年に州政府と連邦省庁との間でベイデルタの水資源管理を図るための枠組協定が合意され、ベイデルタの生態系の健全性の回復や水の管理の改善を図る長期的かつ包括的な計画であるCALFEDベイデルタ・プログラムが実施されることとなった。
 このプログラムの実施主体は、ベイデルタの管理に関連する州及び連邦15省庁であるが、連邦諮問委員会法に基づき、州知事及び大統領から任命された水利用者や環境団体などの利害関係者から構成される「ベイデルタ諮問委員会」が長期的な解決に向けた中心的な役割を担っている。諮問委員会はフォーラムの開催などにより、市民参加を確保する役割も担っている。

 このプログラムでは広範な合意を得るため、以下の3つの段階を経ることとされ、また、国家環境政策法及びカリフォルニア環境質法の規定に基づき、第2段階でプログラムレベルの環境レビューを、第3段階で事業レベルの環境レビューを行うこととなっている。

表3-6 ベイデルタ・プログラムの3つの段階

第1段階
 ~1996.9
ベイデルタが直面している問題の明確化、目的や要綱の決定、スコーピングや公衆の意見聴取等を経て代替案の設定を行う。
第2段階
 ~1998年
各代替案について、包括的なプログラムレベルの環境アセスメントを行う。さらに実施方針やプログラムの詳細を詰め、好ましい案を選択する。併せて、財政的な支出や担保手段を含めた実施方針を決定する。
第3段階
 1999年~
事業が開始される。地域を特定した上で事業段階での環境アセスメント、事業の許可が行われる。事業終了まで数十年を要する見込みである。

 第1段階において、プログラムの主要な要素のうち、水質保全、水の有効活用、生態系の保全、沖積提の保全、水の放出、流域管理については一定のプログラムが作成されたが、水運については3つの代替案が考案された。また、それぞれについて、貯水を新設・拡張する案が出され、計12の案が考案された。

[1]代替案1(既存の運輸システム)
  既存のデルタの水路の変更はほとんど行わず、既存の水路を活用する。

[2]代替案2(デルタ水運の改良)
  デルタの水路の様々な変更を行い、輸送の効率性を高める。

[3]代替案3(dual Delta conveyance)
  デルタの輸送を改良するとともに、デルタから離れた輸送とを結ぶ。

 第2段階の1998年3月に、SEAの環境影響評価書の案がまとめられている。重要な影響項目としては、表流水、地下水、地質・土壌、魚類・水生生態系、植生・野生動物、農業資源、都市的資、レクリエーション資源、洪水管理、発電・エネルギーが選ばれ、それぞれの項目毎に、各代替案及び何もしない代替案との比較検討が行われている。
 さらに、7つの重要な特性が選び出され、図3-7の比較表が作成されている。

 今後、代替案の最終的な選択を行う上では、最終報告書を作成するまでに、さらに諮問委員や連邦各省庁、地方公共団体、利益団体及び市民の間での対話が必要であり、また、次のような課題に応えていく必要があるとされている。 

図3-7 最も重要な特性に関する評価概括表

  デルタ内の水質 デルタ外の水質 漁業転換の最小化 水資源の
供給
操作の
柔軟性
水供給の危険最小化
南側  
代替案1
代替案2 中+ 中+
代替案3 中+ 中+

(5)西部穀物輸送法の修正(カナダ)

 1992年に、カナダ連邦農業省は、カナダの農業食品産業の競争力を高めるため、より効果的かつ効率的な輸送システムが必要であることについて州政府との合意に基づき、西部穀物輸送法(1983)に関する検討を行うこととなった。西部穀物輸送法は、鉄道に対する補助を行うことにより、カナダ西部、プレーリーの穀物をより低価格で生産し、輸出することを促すものであるが、現行の補助金の継続又は直接生産者に対する補助に切り替える案と、輸送システム全体の効率を高めるため、支線の廃止を含む簡素化により鉄道ネットワークの合理化を図り、貨物料金を再構築する案の2つの案が検討された。
 政策・計画案に対する環境影響評価を義務付ける1990年の閣議決定に基づき、農業省は、それらの案の検討を行う過程で、土地利用の変化に伴う土壌、水質及び野生生物とその生息地への影響と、鉄道の支線の廃止に伴うトラック輸送の増大に伴う燃料消費量と大気中への排出量の増大によるオゾン層の破壊、気候変動、酸性雨、光化学オキシダントへの影響についても検討を行っている。

[1]土地利用変化に伴う影響

 土地利用変化に伴う影響に関しては、経済-環境間のモデルを用いて、各選択肢の採用による土地利用の変化とそれに伴う環境への影響の定量的な分析を行っている。

図 土地利用の変化とそれに伴う環境への影響

選択肢 土地利用の変化 土壌への影響 水質・水量の変化 野生生物等への影響
選択肢A
牧畜と草地が一部の地区で増加する一方、夏に休閑する地区あり。
影響は中立的
牧畜・草地の増加で土壌浸食が減少し、土質が改善するが、休閑による土壌劣化あり。
わずかに悪影響
施肥量等の減少は、好影響だが、家畜の増加による水質汚濁のおそれがある。
好影響
草地の増加と施肥量等の減少は、好影響である。(但し、休閑は好ましくない)
選択肢B
多くの地区で草地が増加し、一部で夏に休閑する。
全体としては好影響
多くの地区で改善される。但し、一部で劣化する。
わずかに悪影響
A、Cと同様に、悪影響である。
好影響
草地が増加する地区が多く、最も望ましい案である。
選択肢C
休閑地が増大し、最大になる。
全体としては悪影響
休閑地の増大により劣化する。但し一部では改善される。
わずかに悪影響A、Cと同様に、悪影響である。 好影響
草地増加と施肥量等減少のため、好影響だが、休閑地が多くA、Cには劣る。
選択肢D 小麦、大麦の生産が増加し、家畜の生産が減少、休閑地も減少するが、その程度は僅か。 中立的又は僅かに悪影響
草地が僅かに減少する。
中立的
家畜が減少する一方施肥量等が増加する
中立的又は僅かに悪影響
施肥量等が増加し、草地が減少する。
選択肢A:
輸送効率の改善と補助金支出の生産者への切り替えを行う。
選択肢B:
輸送効率の改善と生産者への補助金の導入を行う。補助金は、耕地面積に応じて生産者に81%が、鉄道に19%を支出
選択肢C:
輸送効率の改善は行わず、補助金支出
選択肢D:
輸送効率の改善を行い、補助金の支出は変更しない。

生産者に対して直接補助し、また、輸送の効率化を図る政策が環境に与える影響は、全体としては、中立的又は好影響を与えるものである。

[2]鉄道の廃止とそれに伴うトラックの増加に伴う影響

 まず、廃止される可能性のある路線を特定するために、個々の路線についての検討を行い、高コストかつ輸送量の少ないA分類(総延長1769マイル)と、A分類に次いで廃止されるべきB分類(総延長1197マイル)に分類し、以下のシナリオを設定して分析を行った。

シナリオ1)
現状維持シナリオ(年間100マイルの廃止の継続)
シナリオ2)
A分類の廃止(効率性の導入)
シナリオ3)
A・B分類の廃止(補助金の支出方法の変更と効率性の導入)
シナリオ4)
A・B分類の廃止とトラックへの代替の保証(補助金の変更に伴い、マニトバ州から50%から100%のトラックが直接サンダーベイ又はミネアポリスに移動)

 いずれのシナリオでもトラックによる運搬は増加する。現行ではトラックが年間595百万トン、鉄道が35000百万トンであるが、各シナリオによる増加量は以下のとおり。

シナリオ1)
トラックによる輸送が毎年33百万トンの増加
シナリオ2)
トラックによる輸送が毎年58.4百万トンの増加
シナリオ3)
トラックによる輸送が毎年157.8百万トンの増加
シナリオ4)
トラックによる輸送が毎年、1200から2500百万トンの増加

 燃料消費量は、カナダでは運輸部門が21%を占めている。鉄道に比べてトラックはおおよそ3倍の燃料消費効率である。シナリオ1~3では、鉄道の支線の廃止による燃料の減少もあり、全体として燃料消費量の増加は、西部カナダ地域における鉄道による穀物輸送のための燃料消費量の0.3~0.7%と無視できる程度であるが、シナリオ4では11%に上る。NOx等の排出量についても、シナリオ1~3では1%未満の増加であり、無視できる程度であるが、シナリオ4では11%以上の増加になる。

 以上の環境面に関する検討の結果、効率性の導入や補助金支出方法の変更による土地利用の変化は22の穀物地域のうち6地域で起こるが、それらの地域の土壌や水質、野生生物への影響は中立的又は環境に好ましいものである。また、環境保全上最も望ましい案は、効率性を導入し、補助金支出の変更を行わない場合である。休閑地や家畜の増加に伴う影響が心配されるものの、適切な対策を講じることにより、環境上より望ましいものとすることが可能である。また、トラック輸送が増加することに伴う燃料の消費量やNOx等の排出量は、比較的僅かなものであると結論付けられている。
 ただし、同案は、政府としては財政赤字に対応するための修正予算が必要という状況であったため、閣議に提案されるには至らなかった。