平成13年度第1回陸水域分科会

議事概要

1.日時  平成13年5月11日(金)10:00~12:30

2.場所  経済産業省別館 827会議室

3.出席者

(検討員)大島委員、大森委員、小倉委員、小野委員、楠田委員、須藤委員、谷田委員、
       辻本委員、福嶋委員、森下委員、清水委員

(欠席:細谷委員、渡邉委員、沖野委員)

(事務局)小林課長、森谷室長、上杉調整官、川越主査ほか(環境省)
      有本研究主幹、川瀬上席研究員、畠瀬研究員、日笠研究員(自然環境研究センター)
            塚本部長、小栗主任技師、野谷主任(アジア航測)
      井上主査研究員、松尾研究員(国土環境)

4.議題 

    (1)陸水域生態系の調査・予測・評価に関する技術手法について
    (2)その他

5.検討経過

○ 小野座長により議事が進められた。

○ 議事に入る前に上杉調整官から、配布資料の確認が行われた。

○ 次に、資料1~資料4について事務局から説明され、その後、以下のような議論がなされた。

(小野座長)資料1から資料3まで一気に説明して頂きました。資料1は主な意見で、その主な意見を取り込んで資料2及び資料3が用意されたわけで、今説明して頂いた通りです。これから意見交換をさせて頂きたいと思います。資料2、資料3はいずれも今までの先生方の資料1に挙げましたような意見を取り入れて、文章の訂正ならびに資料の付け加え、もしくは撤去等をしています。いろいろな意見を同時に入れているものですから、文章的にも木に竹を接いだようなところが随分あります。それはお読み頂くとすぐ気づかれる。実は最終的な調整の時に文章の校正、修正ということはやらせて頂きます。基本的な大きな点で、大きな項目が落ちているとか、もしくは付け加えた方がいいとか、そういう点がありましたら、まずそれからご指摘頂いて議論を進めていこうと思っています。議論の進め方としましては、資料2というのが「調査、予測の考え方」というところですので、ここから入って頂くのがよろしいかと思いますがいかがでしょうか。

(小倉委員)よろしいですか。教えて頂きたいのですが。資料2に基づいて、生態系の場合に結果の評価ということが可能なのかどうか。例えば水質ですと、今、かなり精度管理、精度保証というQuality Control Assurance、QCAプログラムというのがマニュアル化されてきているのです。それで定量限界、定質限界も含めて、例えば水質のイオンバランス、陽イオンと陰イオンのバランスがとれないと、そのデータはある一定のレベルを超えると、もう棄却すると、かなり厳密にやるようになってきているのです。だからそういう考え方が、水質、例えば生態系、特に生物の種の同定だとか、要するにそういうことは考え方としてあり得るのかどうか。まだ非常に難しいのかどうか。調査者の判断に基づいて、その結果が出たら、それはもうチェック無しで「OK」と出してしまうのか。その辺、生態系として何かチェック体制があるのですか。項目の調査方法で、影響予測をする前に何か結果の評価という項目があった方がいいのではないか。まだ無理なのかもしれないのですが、何かそんな感じを持ったのです。

(小野座長)なるほど。つまり影響評価の事業をやる人たちの、その結果をどこかでチェックをするということですか。チェックのためのシステムというのは今まだ考えられていないようです。必要かもしれません。けれどそれは制度的な問題でしょうか。

(小倉委員)そうです。生態系ではかなり難しさがあると思うのです。

(小野座長)もっともそれは疑いをかけるととことんまで行きますので、本当にきりがなくなる。

(大島委員)今、小倉委員が言われたのは、非常に大事な問題だと思います。しかし、実際には、それを評価するとき、今度のアセスの中には無いです。そうすると、やはり悩みなので、「第三者にやってもらうことが必要である。」ということを技術書の中に入れておくくらいのことは、必要なのではないでしょうか。そういう形で今の指摘の件をやはり明記しておいた方がいいのかという感じはします。

(小野座長)第三者というのも、これまた非常に難しい。第三者というのは、第一者と第二者が居て、第三者が居る。一体何だということになるのです。その定義が大変難しいですね。何かいかにも客観的に見えているようですが、実は第二者でもあり得るわけでしょう。

(大島委員)だからそういう場合もあるけれども、少なくとも何らかの形でそれが出来るように。それは、このアセスをやる事業機関の誠意の問題に関わってくるのですが、やはり入れておいた方がいい。

(小野座長)どういう形で入れます。総委員長としては積極的なご提案をお願いします。

(大島委員)全体に関わります。

(森下委員)今は、影響評価の各県にある委員会で、専門家がチェックして事業者に戻すということで今機能しているのですか。

(小野座長)具体的にはそういうやり方をしています。

(森下委員)だから事業者が出してきたら、これは第一人者ですか。事業者が出したのを行政が受けて、行政の中に専門家グループを設置して、それで審査をして、もう一度フィードバックしているのですか。そしてそれが出てきた段階で、行政の意見を付け加えてそして公開をしているのですか。そして公開をして、市民がまた意見を言った分について、行政が受けて、また返事を出しているのですか。

(小野座長)常識的にはあらゆる事業についてそのような検討委員会を設置するというのは、何となく今、コモンセンスでやっているのです。ただ、それは法的に規制しているものでも何でもないのです。だからそのことをある程度明記した方がよろしいということですか。ある程度というのは、明確に書いておいた方がよろしいというのが今のご意見だろうと思います。

(小林課長)制度的にはアセスメントは、1番良く分かっているご本人にやって頂くというのをベースにしております。ただ、いわゆる信頼性を高めるということで、いろいろなチェックが入るということもあります。先例を見ますと、条例で都道府県知事が意見を言ったというのは、現実には今、全都道府県、政令市が条例を持っていまして、いずれも審査会を位置付けております。そういう意味で専門家のドキュメントのチェックは入ります。また最終的には、関係省庁がチェックをしますし、環境省もチェックを致します。環境省がどの程度専門家かというのは、いろいろ考えなければいけないところもあります。最終的には、やられているデータなど、どの程度のものかというのがあるのですが、必要に応じではクロスチェックも出来るような体制を作ろうということで今、やってはおります。今の話もそういう意味で、大きな目でチェックしていくということは体制に組み込まれていると思っているのです。多分、具体的な話ですと、もう少し具体的なデータなり、どの程度のレベルで本当に信頼性があるのかというところまで来ますと、先ほど申し上げましたように、クロスチェックまですれば、サンプル的には多少チェックは出来るのです。膨大な調査を全部調べ直すということは出来ませんので、そこは水質のような、ある程度手法に組み込まれる部分があればいいのです。そうでないと、あともう考えられるのは、こういったところは何らかの形で少し踏み込んだチェックを自主的にするか、後は具体的な調査自体はだいたい地域の専門家の人に見ててもらっています。

(上杉調整官)結局、事業者の実質する調査ということになります。調査をするサイドで客観性等、確保できるかというのが1番大事かという感じが致します。第三者がやる以前に、調査を実施する際に非常に客観的な調査が必要です。そういう意味で個々の調査をする仕方自体が、水質等であればもちろん法定の調査方法等もはっきりしているという意味で、生物の方は調査方法が必ずしもはっきりしているものではないのです。そこについては、なかなか一律に「公式としてこういうものがあるのです。」というのを示すのは難しいかもしれません。例えば調査をする人の能力というところからすれば、一定のそういう能力を持っているか、持っていないかというのを客観的に見るような方式を今後考えていくとか、そういうことはあり得るのかと思います。特に一緒にアセスをやってから、調査を誰が実施したのかについては、評価書の中に明らかにしなければいけない。そういう意味では、誰がやったのか分からないという調査ではなくて、調査を実施している人を明らかにするという、そういうところから今後その辺りで、客観性をどう確保するかという課題かと思います。

(小栗(アジア航測))現在、陸域の方で、動物と植物の調査の進め方というのが別途動いており、それもまだ全く検討中なのですが。その中で、今、関連するところで言いますと、問題になるのは動植物の同定の精度です。それが非常に全体がいい加減ではないかと捉えられるところがあるということです。例えば「標本を必ずほぼ全種採る。」とか、「専門家に必ず判断を仰ぐ。」とか、そういうようなことをそこに盛り込む、動植物の調査の進め方の中に盛り込んでいくということで今、検討中です。まだそれはオープンになっていないのです。

(谷田委員)非常に大きな分析であれば計量証明とか、生物技術に対してそういう計量証明が書けるかというと、これは書けなくはないと思うのです。ただ、これを制度化するような問題よりも、もっと大きな問題だと思うのです。各都道府県に生物でしたらアドバイザーのような方がおられますが、決して専門家ではないところの項目内容をチェックしなければならないと思います。その時に、計量証明等にその先生がサインをして頂けるかというと、それはして頂けないと思うのです。私だって水生昆虫くらいなら諦めますけれども、それ以外のところでリストが妥当なものであるというサインは出せないです。そうすると、すごくたくさんの人に見てもらわないと、生物技術の計量証明は出ないわけです。そこまでやる。ということは、事業者がやるときに、逆に言ったら、手を抜こうと思えば、いくらでも抜けるわけです。そこの辺は、何か、もう少しこの場でやるには大きすぎるような課題のような気がします。

(森下委員)それはやはり、日本全体の生物学に対する貧しさみたいなものがあって日本の国が生物屋を育てる気が無いということかと思います。だからここまで来て「さあ、やりなさい。」と言うのです。産業を育てるために専門学校をどれだけ作った、大学どれだけ作った、というのがあるもです。ところが生物屋を育てるために、この30年間、日本、何もしていないのです。それで「さあ、世の中変わったから、正確な正しいものを作りましょう。」と言っても、それは無理と思います。だからやはり問題があるところは反対をする人たちが一生懸命調べて、歯止めを効かせるというくらいのことが精一杯です。それで反対をする人が居ないところだったら、本当、無残なものです。だから、そういう現状はもう間違いなくあって、それをどういう風に打開をすればいいかというのは、やはり今日本に審査できる人がどれくらい居て、そして、というような整理から始めないといけないような気がします。今、お墨付きを、何かサインだけ貰えばいいというような問題ではなくて、もっと大きなところで、責任を持って審査をしてくれるような人という組織を作るようなつもりにならないといけない。そしてコンサルの技術者を集めてレベルアップを常にするというような事を繰り返して行かないと、相当に遅れている。

(辻本委員)それは日本が生物屋を育てなかったこともあるのかもしれない。生物の研究者が生物学をそんな風に作って来なかったということにもなる。その面におきまして、例えば化学や物理ですと、ある程度、保存則みたいなものがある。だからどこかだけが突出しているということは、明らかにおかしなデータであるということが明らかに分かる。生物も多分、そういう大きな枠組みを追求するような手法を取って来れば、すなわち生物はこういうことをやるために今までやってきたわけではなくて、多分違う目的でやって来られたのです。今、こういうアセスをやろうとしたときに、やはり総枠が何なのだというような仕組みが、どうもやりきれない。

(森下委員)だから方角的な生物学です。そういうものが必要なのでしょう。今までの日本の生物学というのは、どちらかと言うと、自然であることを良しとして、手を加えない世界の解析をすることを良しとして来たから、手を加えたところの生物学というのは、比較的成り立たないというか、そういう志向性があったからです。

(辻本委員)だから全体の枠がどんな風になるかということを、しっかり捉えるような考え方というものを少し整理したらどうかなと思うのです。先ほどモデルの話でも、数値モデルとか単位モデルとか言われたのですが、そのモデルを権威のあるガイドラインとかに書くのではなく、あるいは権威のある人に見て頂くのではなくて、そのモデルがどんな考え方に基づいているかということがもっと説得性があるのです。だから、調査の仕方とかも、その調査でそんなところで、そういうものとそういうものが一緒に存在するはずが無いとか、こういうものとこういうものがそれだけ突出しているというのは、考え方としてはあり得ないのだとか、そういう枠組みを捉えるような考え方の整理というものは出来ないものでしょうか。

(大島委員)生き物では難しい。やはり生き物というのは非常に多様で、無数の生き物が多様な機能と構造を持っているというところがあります。だからそういう両面を考えながら、もちろん、そういうこともやっていかなければならない。けれども、そういう性質を持っているのだということも、どこかで明記をしておく必要がある。

(辻本委員)それは理解した上で発言したのですが。私がそういう方角的な立場から申し上げるとそうだと思います。そうでないとどうしてもガイドラインで規定してしまうとか、あるいは権威のある人にチェックしてもらうということくらいで、いつもいつも動かざるを得ない。だからそこのところから、やはり考えていくべき道筋なのではないかなということで、申し上げたのです。

(大島委員)森下委員が言われた事はそれはそれでかなり時間がかかる。しかも、辻本委員の言われたような問題はどうしても残っていく。そうすると、それをすぐに改めてしっかりととしたものを作るのは無理だけれども、少なくともアセスをやる側にとって、それを回避しておくというのが、僕はやっぱり必要だと思う。だからそういう形でしか入らない。

(辻本委員)その問題をどこに書き込むかという問題です。

(上杉調整官)実は今回、資料4までなのですが、こちらのイメージとしまして、資料5に当たるような、生態系アセスをする上で、実は書き切れていない、根本的な課題がいろいろあると思います。情報、データ発信ですとかを含めまして、今後の課題的なものは実は一切、次回の時に出せると思っております。全部を踏まえて、まだもう少し全体を見渡して、生態系のアセスメントを進めていく上での課題というものはありませんか。

(小野座長)全体の中での位置付けということが必要ですのです。今、説明して頂いた問題で全体に共通する部分を相当省きながら説明しています。そこのところに一応、陸水域の方から投げるということにしましょうか。よろしくお願いします。

(大島委員)この中で書かれていることで、やはり全体に投げておいた方がいいということを出して頂いた方がいい。

(小野座長)そういう扱いにして下さい。それがいいと思う。

(楠田委員)確認というか、私自身がまだよく理解できていないところなのですが。今の話の関連で、新しいアセス法が出来て、各地方自治体がそれに従って実施されているのですが、その中身が、各指定されている項目が明確になって具体的に出てくれば出てくるほど、事業を実施するための、お墨付きをもらうための手立てに変わっていって、環境保全がどこかに行ってしまっている。かえって、昔よりも惨めなことに、立派なものはいっぱい出てくるのですが、どうもその後の環境保全のところまでつながっていない。調査、予測は行っているのですが、そのところがつながらないというのが、結構、実体としてあるような気がするのです。それは先ほどの資料4のところに入ってくるというふうに理解して宜しいのですか。あるいはそれは全体としてどう考えればいいのですか。

(小野座長)今後の課題の中の非常に大きなポイントだろうと思います。実際は、環境影響評価というものに対する考え方ということだろうと思うのですが。これは常に上限があります。新しい法律が出来、それについての規制が出来ると、その規制をクリアするために熱中するというのが一方であります。規制すべきもの、規制するという法の精神というものは、なかなか浸透しないというのは、ごく普通のあり方だろうと思うのです。今の楠田委員が発言された問題というのは、環境保全ということについては、やはりこの後で相当じっくり議論しておかないと進まない。項目が細かくなればなるほど、その項目をクリアすることに相当エネルギーを割きますので。それは、そのエネルギーを割くこと自体が、保全につながっている部分もあるのですが。そうではない部分というのがあって、ただ形式的にやればいいという。まあこれはしょうがない。その点は、改めて議論をするということを約束しておく必要があるのではないですか。これも全体の話なのです。陸水の問題だけではない。

(森下委員)こういうことが今起きているということをご承知おき下さい。というのは、20年とか30年前に、たくさんゴミ焼却場とか何かを作った時に、いろいろなところではアセスをしているのです。そして、その焼却炉がもう老朽化したから、次に新しい焼却炉を作るために、またアセスをしているのです。それで何が起きたかと言ったら、その前に、25年も前に絶滅をするだろうと予測をしたものが、何も絶滅していないのです。そしてその焼却場の周りに行けば、カッコウは鳴いているわ、ウグイスは鳴いているわ、そしてカエルはいるわ、ヘビはいるわというような、そういうことが起きているのです。ところが25年も30年も前にやった時には、そういうようなものは確実に居なくなるだろうという予測をしているのです。ところが動物の方は、人があまり行かなくて、毎日来るのがゴミを積んだトラックだけだから。そして、そういうところはハイキングにも来ないし、野生生物の住み場所になって、それでそういうことが起きているということは、やはり何か制度に欠陥があって、評価をある時期にしっかりとしていないことが問題で、同じように30年して焼却炉を変えるときに「こういうことはまた起こります。」と書いてあるのですが、今度作る焼却炉というのは、もっと高性能だからもう少し環境に負荷が無くなる訳です。そんなことを考えると、このアセス法のまま行くと何か怖いなと思います。「何を目的にアセスをしたらいいか。」というのをもう少しはっきりさせないといけない。例えば、「ダムを作ったらものすごく影響が出て変わる。」と言っているが、頭の中で考えている「変わる」という現象は、どれくらい変わったのかというのを追跡していないのです。ただ「変わる、変わる」と言っているだけなのです。そういうような状況の下で、こういうようなものを一人歩きさせて、ものすごくたくさんのお金を使って生物を調べている。それはいいのです。企業が潤うということは、1つの社会の流通の中での大事な要素ですから。いいのだけれども、何かもう少し整理をしておかないと、生物学的に言ったら、絶対にこれくらいのことではダメかもしれないです。社会常識的に言ったら、もう少し省いて良いものもたくさんあって、それで、例えば水生生物で言えば、多分、辻本委員が発言されたモデルを作って先の見通しをつけることと、生物でいうものとの違いの違う部分は、「どれくらいの時間が経ったら、変わっていくか。」ということの予測が1番大事で、変わらないものを見つけることではないと思います。結果を見つけることではなくて、「どういう時間の経過をして物が変わっていくか。」ということを明記することがアセスだと思うのです。

(小林課長)いずれ本格的に議論になると思いますが、やはり我々はアセスメントで、新しい哲学、それから質も高めようということで、こういう場を設けて頂いております。それは個々のところでそういうことがあるわけなのです。ここで結果的に、アセスをやった結果がいろいろなものに生きていくということ、対策に生きるということがポイントで、それが無ければ、いくら高度な事をやっても意味が無い。こういう気持ちではおります。それから今、新しいやり方が始まるところですが、過去の実績もありますし、従来のいろんな具体論も出てきますので、それがどういうことになったのかということは、全部出るのはなかなか難しいかもしれません。ポイント、ポイントで押えておくということはあるだろうし、それを生かしていくことは是非考えて行きたい。

(小野座長)こういう議論をしていたらきりが無くなる。資料2について具体的なご意見を頂きたいのですが、例えば、こういう項目は入れた方がいいということとか。今日はこれが出てこないで、全体の影響評価のグループ全体の話しか出てこないのですが、この中身はこれでいいのですか。例えば、レアイベントの扱い方はこれでよろしいのですか。

(辻本委員)レアイベントは前に、私も言ったのですが。まだもう少し気になるところがあります。それはレアという表現がやはり難しいのです。統計的に確率的に、確実にというのは何十年かの間に起こるというふうな形では期待できると、予測できるというような話と、全く希少な、めったにしか起こらないというものとは、やはり区別されるべきものではないかなというところです。難しい議論だろうと思うのですが。その辺をやって頂きたいということです。すなわち後ろの事例の研究のところでは書かれていたのですが、例えば、ダムが出来て10年に1度起こるような異常な事態がどれくらい減ったのかというような議論は、レアの現象にも現れるのです。すなわち10年とか20年に1度の洪水であるとか、渇水であるとかいうようなことが、何かの影響で変化する。それは1つ1つを見たら確かにレアはレアです。10年とか、20年とか、100年とかいう形で平均して見れば、確かにそういうことが起こることは100年に10回はあったのが、100年に3回になったのでは全然違う。この辺の書き分けをきちっとして頂かないと、せっかくレアを入れた意味がないと思う。ケーススタディはきちっとやられていたのですが。

(小野座長)ワーキンググループの議論の中でそういうことが出ました。つまり大きな攪乱というのも系の成立に関係するのではないかということが一方であるので、そのことも書き加えようという話になりました。そこはやります。訂正はやりますということです。

(谷田委員)資料2の拝見して、1-2の陸水生態系の特徴というところが、特徴を踏まえた上で、陸水域生態系の調査・予測のあり方というのが書かれているはずです。1-2が、陸水生態系の特徴です。そうしたら、いろんなことが混ざっているのは何ぜかと考えたら、特性に対応して調査・予測があるわけです。それがこれは、全然特性を書いていないのです。例えば、調査項目というのは基盤環境として何をきちんと捉えなければならないかというのを書いていればいいのですが、変動する場、連続する場というのは、これは少し性格が違う陸水生態系です。それに対応する調査・予測のあり方が書き込まれていない。チラチラ探せばあるのですが。非常に私の研究室みたいに雑然としています。

(小野座長)確かに先ほど、木に竹を接いだようなと言いましたけれども、もっとひどいのです。それはずっと整理しながらやっていく予定なのですが、そこまで到底出来ていないというのが現状です。変動性と連続性というのは非常に大事な特性ですが、これに対応する、例えば調査期間を1年とか数年とか、もっとはっきり書かなければならない。連続性ですと、あるポイントだけに限って見るのでは駄目で、流域全体を見ましょうとか、当然そういうのが出てくるという見方がある。

(小野座長)最終的には、実は班長が全部見ないといけないと思っているのです。まだ私も見て、ここは「いろいろある」と言いながらやっているところがあります。実はお願いしたいのは、先ほどから説明している資料3のケーススタディで、何かご指示頂く点がありましたら、先に頂きたい。

(辻本委員)もう1つ、その前です。フィロソフィーというか、書き方の予測の手法の考え方のところです。数値モデル等、17ページですが、例えば、予測と書いているのですが、そのモデルが、ガイドラインに書いてあるとか、それがお墨付きのあるモデルですよというのではなくて、そのモデルの背景が何かをやはりきちっと書いて予測の立場をはっきりさせる。すなわち先ほど言いましたが、化学とか物理の場合は、保存則に基づいてバランスのとれたモデルです。これは長年のデータを蓄積して経験的に出てきた式ですとか。これくらいの適用性のある式ですよとか。どういうふうな背景で出てきた式かを、やはり使う人が理解して使えるようにしておかないといけない。お墨付きだけでは説得性というのは乏しいわけです。どういう背景がある式を使ってきたのかということが、モデルを使ってきたのかということで、説得性につながると思います。それを使うべき式1つ1つに書き込むという姿勢が、やはり予測の手法のところの考え方のところです。

(小野座長)分かりました。それは昨日少し議論になりました。数値モデルを用いる手法の他、簡易な手法による計算や、既存例による手法もあるという文章自体がよくないという事で、みんな数値モデルをやれということになったら、簡易の方に逃げなさいと、そういうことははっきりしている。ということで、今、モデル自身の背景をはっきりさせるという事も書き入れるように致します。それで宜しいですか。では、そういうことに致します。たたき台の方の資料3ですが、この中で何かご注意頂く点が沢山あるとは思うのですが、骨に当たるようなところを意見をどうぞ。

(楠田委員)辻本委員がレアイベントという発言をされたのですが、もう1つは、レアではなくて、毎日頻繁に起こっているのですが、極めて小さいものでも、積年すれば結構効いているのです。その細かい部分というのが意外と見落とされているのです。そういう意味で、例えば河口の場合でも、海域側に構造物が造られて、細かい波が減ってしまい、その結果、溶存酸素の供給量が減って、全体のバランスが崩れるというような減少があって、水面の正温度とかいうのが、溶存酸素の供給量という意味で、毎日ずっと効いてくるわけです。それが極めて長期に渡ると何が起こるかというような、レアイベントで、極めて小さくて長期に続いているが、実はものすごく効いているというのが、調査・予測の資料の方にも見かけられませんし、ケーススタディの方の河口のところにも入っていない。それが気になるのです。

(小野座長)ダムを造ったら、砂が減るのと似たようなものです。それはどう扱ったらいいか。川の場合は確かに沢山あるのです。

(楠田委員)長期間、時間が経たないと、起こってこない積算の変化というものです。

(小野座長)これは全体的に非常に難しいと思うのです。例えば今騒ぎになっている、諫早湾の問題は厄介で、なぜ変化したかというのは、あれは周りの事業とアセスをやっても絶対出て来ないのです。しかし変化している。徐々に徐々にというのが、非常にかなわないのです。むしろ事後調査というのがあります。事後調査をやりますと、それはもう環境のロングタームアセスメントです。

(谷田委員)予測の部分は書かなければいけないと思います。調査はいいけのですが、予測としては書かなくてはいけない。そういうこともあり得ると書かないといけない。しかし、そういうこともあり得るが、どうあるのか分からないことを書いても意味がない。

(須藤委員)でも、それは書きようがあるのではないですか。例えば小さな変化が、こういうことが起こる。例えば楠田委員が発言されたような例でしたら、長期間だったらこうなるという事の予測というのは出来るのではないですか。

(谷田委員)ベクトルですか。

(須藤委員)そうです。そういうような評価をすれば宜しいのではないですか。評価をするときに。

(森下委員)バラバラにして予測をすると何でもないけれども、例えば4基作ってしまった時には何にも無かったけれども、5基目が出来たら途端に影響が出るっていうようなことは、実際には起こっています。

(小野座長)これはワーキンググループの宿題にしておきますか。どういう形で取り込んで書くかどうか。予測のところで、本当にサラッとしか書けないかもしれない。確かに発言されたことは良く分かる。ケーススタディにまだなかなか行かせてもらえませんが、ケーススタディの中にもそのことも関わり合いのあると思うのです。それはケーススタディのところで書いておくかどうかです。それは検討しましょう。実はケーススタディで一大欠陥があるのです。申し上げておきますけれども、機能の部分というのがスポッと抜けるのです。機能は計測のしようがない。今のところは難しい。それで言葉が落ちている部分はもちろん機能ということは補いますが、具体的に言われたら、機能をどういう評価をするのかということになると、ケースが無いのです。どうしようもないもので、今のところ落としてある。谷田委員、機能はどう紹介すればいいですか。提案は無いですか。

(谷田委員)このケーススタディを拝見すると、既存の資料にベクトルを付けてやりたい。しかし、全然的外れなところもあると思うのです。何か、逆に機能については無いのだったら、非常にリーズナブルなものを仮想的に作ったらどうですか。

(小野座長)それで機能の計算は、実際にはどうやるのですか。

(谷田委員)だからプライマリーをどれくらい出せるかというのは、あちこちからデータ持ってきて、それをどれくらいに持っていくかというのは、日本の予測データだと多分、つなぎ合わせて一気にと作ってしまわないと仕方がない。やはり抜くわけにはいかないですから。これはあくまでもケーススタディに書いてあるものは、架空のものだという断りがあるわけですから、そこはもう逆に大胆にやって頂ければいいと思います。

(上杉調整官)それをやると多分、それだけで1つのポリシーを作って、相当しっかりやらないと、それなりのものが出て来ないという恐れがあります。

(小野座長)またジェネラルマネージャーが多分心配される。これは言うは易し、行うは極端に難しいというレベルではあるのです。

(谷田委員)57ページのところを今開けていて、ヤマトシジミです。ここで少しだけ機能面が書きかけられているのです。ヤマトシジミの濾過による水性濾過機能です。これだけのものが減ると、これだけの濾過機能が落ちると、そういう言わずに、どれだけ水質が悪化するかという事でも機能の一つの切り口です。そこをもう少し表に出すような格好で書かれれば、1つのつながりが出てくる。一例ですが、そういうところを1つずつ積んでいって、ここが機能面ですということを全体のエコシステムは、たしかに一大プロジェクトです。エコシステムの1つのパーツとして、重要なパーツを上手く引き出して書けばいい。がんばって頂きたいと思います。それからアユの遡上です。これが厚かったので、少し気になったのです。遡上の問題として扱えば、アユが海からどれくらいの栄養を持ってきて、川に居る間にどれくらいの成長をするというか、餌をそこで獲る。そういうのが殆んどですから、これは計算できなくないです。データはそちらにありますか。だからそういうことを書けば機能面でのことに繋がっていくわけです。

(井上(国土環境))ただ、アユの話だと、理論的には計算出来ると思うのですが、非常に煩雑な計算になる。

(森下委員)そうでもないです。それは単位面積当りにどれくらいの生産とか、そういうことはありますが。多分、もう少し今進んでいるのは、アユが冬の間に、雑魚が居ない間に放流されたら、全く生産性が上がらない。そういう新しい知識というのがいっぱいあって、ダムの下流で起こっているアユの問題というのは、もっと複雑です。だから機能面だけで養殖場で飼うような形で生産性を見ても、多分そのことで説得性は無いと思う。

(小野座長)あるいは機能については今のような形で、出来るだけ機能を表現する格好に努力をするということです。「二枚貝の浄化機能を全部代表するのか?」なんて言われたら、大変なことです。こういう計算もありますという実例で表していくと。幾つかかき集めて、機能を出来るだけ表現するように記述を補ってということです。時間がだんだん無くなって来ておりまして。後、実は資料4についての説明が残るのですが。みなさん、紹介が悪いですけれども。

(楠田委員)ケーススタディの方ですか。河口とダムがありますが、河口のところで、中の調査項目というので、流体力学に関するところの例として、「半混合である」という表現が中にあるのですが。平均的にはそれで宜しいかと思うのですが、実は大潮と小潮で、大潮の時に半混合で、小潮の時には塩水楔になって入ってくるというようなケースがあります。例えば海から上がってくるいろんな小型の生物の場合に、塩水楔が入ってこないと上に上がって来ないというものもあります。その辺を、もう少し書いて頂けるといい。6ページです。それからダムのところですが、水温とダムの関係というか、もう少し物理的な記述が少ないように感じたのですが、いかがでしょうか。例えばダムが出来ると下流側の河川水温は少し温度がずれますし、冬は温かくなって、1番温度が高い時が1ヶ月くらいずれる可能性があります。それが全然どう影響を及ぼすかとか、それから現在の法制度では無理なのですが、運用方式によって、水温の変わる時がかなりずれますので、その辺の物理的な要素のところがあればいいなと思いました。

(森下委員)関連して、いいですか。それは多分、これロックフィルダムにしてあります。ロックフィルダムの特徴は何にも出て来ないのです。ロックフィルダムと重力式のダムとの大きな違いは、断崖があって、土を持ってきてするので、湖が出来た時に生物に起こる現象が違うのです。中の内容は全部重力式のアーチダムなのです。だから、これは上の前の表題だけがロックフィルになっていますが、ロックフィルの状況は書いていない。ロックフィルではこういうこと起きないことがいっぱい書いてあるのです。そういうようなことは、ダムを知っている人が見たら、やはりおかしいと思うから、たとえ嘘の例であっても、こんな嘘臭いことをしたらいけないなという。

(小野座長)分かりました。それは何かエクスキューズ出来ることありますか 。

(松尾(国土環境))いえ、一般的なダムというので単にロックフィルを持ってきてしまっただけで、ロックフィルに拘っているわけでもありません。

(森下委員)一般的なダムだったら、日本にはロックフィルは無い。ロックフィルですというのは、限度を上げて水を出せないから、ダムの様相としては池なのです。だからそこに出てくる生態系も違って出てくるのです。だから発電ダムなんかでロックフィルはあるのですが、それは取水等は別なところがあってやっています。これは、そういう意味では変だなというのがすごくあります。だから、もう少しダムについて、ロックフィルなのか重力なのか、淵底が高くなったらどうなるかというのを勉強した上でこのケーススタディを持って来ないといけないです。それと同じ事が、多分、生物のところ、26ページにも出てくるのです。ただ、ムカシトンボが淵の中から出てきたり、トビケラや、カゲロウや、これはちょっと何とかして下さらないといけない。ケーススタディでもおかしい。淵というのを、どういうところを淵というのか。瀬というのは、どういうところを言っているのかという、語句の説明も加えた上でやらないといけない。淵が2メートルもあるようなところだったら、ムカシトンボ出されたら困る。

(小野座長)瀬淵部分のその中に住んでいる生き物については、ご相談をしまして、それでよいかどうか、やって下さい。ワーキンググループの方で相談して、おかしいところはおかしいで、外して訂正をするという方向で動いて下さい。

(森下委員)分からなかったら、やはり聞かれた方がいいと思います。書いて出される前に。例えば水草の中でも、水草は淵に出るものではもともとありません。

(小野座長)そう。聞くは一時の恥ですから、やって下さい。

(福島委員)それに関連して。生き物の名前のことでいろいろ出てきましたが。藻類とかプランクトンに関しても、私は例えば藻類でも、ラン藻類というのがよくこの中で扱われているのですが、ダムみたいなものが出来ると問題になってくるのは、ラン藻類よりも緑藻類の方が問題になってくると思うのです。そういう細かいところも、ご検討頂ければいい。後もう1つよろしいですか。ダム版の13ページに「主要生物への影響フロー」という絵が出ていて、28ページに「事業による環境への影響フロー」という絵が出ています。これは両方とも右端の言葉が少しと違うだけで、それを外すと全く同じ絵なのかという。これは生物への影響と環境への影響とは一体どこで見るのかという問題があると思うのですが。

(小野座長)3-6の図と3-10の図の違いはあるのか、ないのか。どの点で違うのかというご質問だと思います。

(井上(国土環境))全く右側の欄が変わっただけなのです。これはスコーピング段階で、大体こういうところに生息する種に影響があるであろうという段階で13ページを示しており、28ページのものは、実際にアセスを行った上でどういう種が出てきたので、この種に影響があるであろうというので、種名まで出したフローになっています。タイトルとの整合を図ると、確かに同じなのにタイトルが違っています。28ページ目が本当に「環境への影響フロー」なのかというと、実はそうではないと思いますので。その辺は検討致します。

(小野座長)昨日私もそれ質問したのです。そうしたら、3-10の方には種類が具体的に入ってきております。3-6の方には、種類、具体的な名前はまだ入らない。入らないのはそれは段階が違うのだと言われまして、それなら同じ絵で具体的に実施したら種類が出てきたということでいいかなというように私は理解した。

(福島委員)そうすると、「生物への影響フロー」というのと、「環境への影響フロー」というのが入ってこない。

(小野座長)主要生物への影響フローは、環境に影響して、それが環境に影響するということです。ですから、そういう意味では同じです。だから言葉を2つも使い分ける必要がないのではないかという意見です。今後の課題に関わりがあるような内容ですが。保全評価、事後調査まで含めて、今説明してもらった。ご意見を伺いたい。

(大島委員)陸域と海域では、今年度はこの環境保全措置、評価、事後調査がメインです。それで陸水域は1年遅れたために、2つの事を同時にやって頂くということになっており、出来れば今年最終年ですので、同じエンドポイントで行きたいというのが、私の考え方です。陸水域もそこまで進めて頂いた方がいいという事と、それからこの間、座長が集まり、これの中の3つに跨る基本的なものを、まず総論として出して、それで総論として出してそれぞれ特徴がありますから、各論で陸域、陸水域、海域という形でまとめたい。そういうことでこの間話し合いを行いました。そういう背景がありますので、その背景をお心置き頂いて、資料の意見を頂きたいということです。

(大森委員)8ページ目の保全措置検討の観点です。これは以前にも私が言っていたのですが。生態系の状況が悪化して、下から13行目くらいですが、「既に生態系の状態が悪化しており、事業の実施に会わせてその改善・回復が望める場合には、可能な範囲でその実施についても検討されることが望ましい。」とあります。要するに、保全目標というのをどこに置くかですけれども。現状維持でいいのか。こういう文句が入っているということは、改善、回復することが望ましい目標があるはずです。それを逆に言えば、現状、現時点で何かの事業をする対象に対して、こういう理想的な状況があるということで、それに対して影響がある場合は、例えば何パーセントまでいいのかという問題です。そういう問題まで絡んでくるのです。こういう箇条書きに入っていますが。こういう書き方をすると、望ましい川というのを設定しなくてはいけなくなるのではないか。各場所、地域に応じて、それをやる気はあるのかどうかということを聞きたいのです。逆に言えば、例えば河川がもう殆んど平坦化していてそこで何か事業をやると、何をやっても影響が出ないということになれば何をやっても良いということになってしまいます。もう既に悪化したところでは何をやっても良いというのでいいのかという問題がやはり出てくるのです。この文を入れないといけない側面は絶対あるのです。そうすると非常に難しい問題が出てくる。

(小野委員)どうこれは改めたら良いですか。

(大森委員)削るか。思い切って、例えばいろんなデータベースを使って日本地図を作って、本来あるべき姿をある程度策定するか。どちらかだと思います。

(小野座長)これは今までの保全措置検討の観点からは外れているから書いておこうというのがあります。これは前にご注意頂いて、既に生態系の状況が悪くなっている場合どうするのだということを聞かれたものですからこれ書いています。書き込むのも、事例がそんなに無いから。それは検討致します。削るか付けるかは、ワーキンググループの方で検討致します。

(須藤委員)18ページのところで、これは環境保全措置の複数案を検討するということでよろしいのですか。そうなった時に、環境保全措置というのは、例えば表3を見ると、沢山、それぞれ個別にあれば挙げられるものはいくらでもあるのです。その組み合わせをいろいろ任意に考えて、その取り上げた複数案なのですか。要するに複数案の定義というのを当然やるべきだと思うのです。その辺のところが表3とただ書いてあるだけなのです。そのイメージが具体的で無かったという事が1つです。それからもう1点は、何もしなかったらというのは当然、この事業が環境に悪くて何もしなかったら、それは出てくるのです。その事業が無かったとしたら、どういうふうになるのかというのを対照と言ったらいいのでしょうか。それがやはり必要です。これからかなり多いのが環境修復事業だと思うのです。環境修復事業は、何もやらなかったら悪くなるけれども、何かやったら良くなるというのも当然あり得るのです。事業計画との関係で、その複数案をどう取り上げるかということをどう考えたらいいのかということも重要ではないかという気がします。

(小野座長)その複数案の中身のところですか。変な言い方かもしれませんが、整合性のある複数案という言い方でもいいのですが。その辺考えて、あれもこれもでは無い。そのことをはっきり書いた方がいい。そういうふうに修正でよろしいですか。

(谷田委員)河川生態系、これは陸域とか海域も同じなのですが。要するに、オンサイトだけで考えるのか。オフサイトのミティゲーションも中に取り入れるのかどうか。というのは、川の流域を考えて、上流部である作業が行われて、事業が行われるとします。A層で事業を行う。非常に良く似たB層がある。そうすると、A層でのオンサイトは諦めて、その代わりB層を入れるというのを考えるのか。それは、そういうことを考えたら、オンサイトだけす。オンサイト、自然管理だけで考えるのかというのは、かなり大きなミティゲーションの分かれ目だと思うのですが。河川の場合はある層をどうしてもつぶさなければいけないということがある。そういう場合に、B層はたくさんあると。相対評価の問題もありますが、ミティゲーションというようにも同じ問題が出てくる。結局、法で厳しい網をかけて、その代わり、ここは諦めてもらいましょうということです。

(小野座長)今のところ1番みんなが嫌がっているところです。たくさんあるから、1つぐらいつぶしてもというような論もあります。

(谷田委員)しかし、全体としての公共利益とか、コストというのがどんどん問われてくると、これはやっぱり守りましょうという従来型アセスでは対応できない事が絶対出てくる。

(小野座長)どちらかと言うと、戦略アセスに関わる問題です。これを入れていたら、きりが無くなる。話がどんどん広がっていきますから。そういうご判断もあると思います。

(辻本委員)今の話を関連するのではないのですが、オンとオフなのですが。海域とか陸域と同じようなスタンスで考えていく中で、やはり河川の場合は、今、谷田委員が発言されたように、上から下へ影響が伝わっていくこと、あるいは下から上へ影響が伝わっていくことがある部分であるのです。どこでその対処をやるか、すなわち手当てをどこでするか。その問題が起こっているところで手当てするのか。上流で手当てするのかということによって下流を救うことが出来るわけです。だから例えば表1とか表2の軸が縦と横だけではなくて、どこでやるのだという空間の軸が1つ、河川の場合出てくるのではないでしょうか。下流側がやられたら、ダムを、貯水池の方を何とかすることにより救う事が出来るし、下流側の可動自身を何とかすることによっても対処できる。その辺を上手く書き込む必要が、陸水系というか河川系では出てくるのではないかという気がします。

(小野座長)環境保全措置に関しては、流域全体を対象に考えてくださいということですか。

(辻本委員)少なくとも影響範囲ということでも結構なのです。アセスの時に考える貯水池と、上流河道と下流河道と、こういうふうに流域を含めた時に、下流河道への影響は、下流河道で対処措置なり、代償措置なり取ることも出来るだろう。ダムで、すなわちオペレーションみたいなものでやる。あるいは先ほどのダムの構造なり、ダムの放流形式とかでも出来るだろう。ダム以外の堰でも可能というような意味です。

(小野座長)何か上手い文章を考えて下さい。言いようが無いです。具体的に1つ1つ書くと、それはもう何冊あっても足らないようになってしまいますから。

(辻本委員)どこの問題をどこで処理するかということです。この表1なんかにもう1つ、これは環境の変化と、それから事業が書かれていますが、それがどこの場所で起こっている事業で、どこの場所に対する影響かというのをしっかり書いたら、代償の時にもどこの部分で何かをすることがここの部分に表れていると書き込めるのではないかと思います。表2も同じだと思います。

(小野座長)もう1本というよりも、3次元で書くわけですか。

(辻本委員)そうです。ちょっと揉んで頂ければと思います。

(小野座長)では、揉むことにしましょう。

(楠田委員)26ページのところの事後調査の結果の公表、活用のところです。(2)の5行下のところなのですが、「追加的措置が必要と判断された場合には、対処の方法が無いか、事業者の見解を公表しなければならない。」全くその通りだと思うのですが、現実を考えてみた場合に、事業者の事業は終了しているわけです。そして環境保全用の費用は、その事業者の領域でない。その時に事業者の見解を出せないのです。悪く言うと、自分がそこの環境管理の責任者じゃないからということになります。この結果、最近経験した例では、中間のレビューをやっていたのですが、全て「何も無い」、「順調だ」という言いかたの表現のものしか出てこない。たとえば生物種別とか、種数と個体数において大きな変化があるかというと、「無い」と書いてある。ところが中身はアサリから生息数が変わっているという例があるのです。そういう、項目を指定すれば指定するほど、ものすごく上手い表現でもってすり抜けるようになっていて、これは制度上、不可能に近いと思いますが。いかがでしょうか。

(上杉調整官)基本的に事後調査を何についてするかということで言えば、あくまでも調査・予測をして不確実性が高いものということに、制度上は一応なっています。ただ、そういう意味ではずっと追いかけてきて、どこがどう変わるのか。どういう仕組みなのか。それについてどういう保全措置をとって、ここはどうなるか分からないということについて追っかけるのが考え方だと思います。そういう意味では、どういう変化をするかという中に、種数だけではなくて、質の問題も当然本来は含めて予測をしているイベントで考えれば、注目種で取り上げている、例えば代表として取り上げる注目種そのものの、容易に測れるようなものであれば、それは当然反映されなければならないというようには考えます。それからここで書いていますのは、必ずしも事業が全部終わってしまったあとで全てやらなければいけないということでは当然ないと思います。今、中間段階でというお話があったと思います。事後調査自体は、工事中、供用後と、どこまで見るのが、実はそれぞれ、かなり事業の性質によっても違うと思いますし、あるいは影響を受ける環境の方の状況でも違う。ということから、どれくらいまで見ればいいのかというのはなかなか一律で書ききれていないものですから。上手く表せていなくて、非常に抽象的な書き方になってしまっている。

(谷田委員)メインのポイントは、事業者と管理者が違うということですか。そうすると、例えば管理者が駄目な場合、市町村が出てきて、あるいは県が介入することになるわけです。「事業者及び管理者」という表現にして、管理者にも責任をもってもらうのはまずいのですか。

(小野座長)いや、その費用負担の問題があります。

(谷田委員)だからダムですと、ダム事業者がその管理者になりますか。

(小野座長)それは水を使う側の人たちが、それぞれ分担しているでしょう。だから管理費というのはそこからは出てこない。今、ダムでやっているでしょう。あれは管理費というのは、公団の本体であって、道路の場合は、管理者が県で造った方は公団だったりしたら、出てこないです。

(谷田委員)事業者に遡及して、遡って責任を問うのでしょうか。

(小野座長)それは予算が取れないのです。今の論点は、そういう問題と、もう1つは非常に難しいものだったら、書かない方がいいという言い方があるのです。出来ないことは書かないということになるのです。上杉調整官が発言されました前半部分は確かにそうです。後半部分はちょっと出来ない。

(森下委員)法律を変えてしまって、ずっとその後に起こることまでを責任を持ちなさいということを書いてしまえば別です。今の法律ではそこまで追跡出来ない。

(小野座長)「公表しなければならない。」とまでは書けないのではないですか。せいぜい希望的観測をするのであれば、「公表することが望ましい。」くらいになる。こうなると全然迫力無い。

(小林課長)事後調査にしても、環境保全措置自体にしても、本人が出来る事と、出来ないけれども対策としては重要だという事とあります。よくある話なのです。本人が出来ることはもちろん、後々までもやってもらうということをまず書いて文章になっていますし、全面的には出来ないので、関係者と協力してやるというような位置付けにしているものもあります。もう明々白々、主体が変わっているという事は分かっている場合もあります。そういう場合には、後の人の責任まで持てと言うのはなかなか言えないのですが、しかるべき体制を作って、きちんと引き継ぐという事まで書き込む例もあったしします。そこもケースバイケースなのです。必ずしも、その時点の事業者が最終的にはならないのです。

(小野座長)全部出来ないことはない。

(小林課長)それから対策を考えれば、当然その人たちが出来ない事もあります。そこはある意味でのアセスメントの限界である部分であるのですが。極力やはり出来ることをやはり大切にやってもらうということで、それはそういうもので仕方がないのかという気がします。

(森下委員)許可の条件の時に、そういうものを付けて許可をするというのを、市町村では今やっています。

(小林課長)あるいは本当にポイントであって、仮に地元の自治体が責任を持つことになれば、アセスの時に約束をして頂けるということもありますし、それぞれの主体で出来ることと出来ない事がありますから。そこは出来ることは出来る、やってもらうと。

(小野座長)有難うございました。26ページのこの文章の表現では不十分であるということは、まずはっきりとしていると思います。少し許可条件の問題でありますとか、法的裏付けの問題でありますとか、そういうことも入れて、この文章を、少し修文をさせて頂くということです。

(大島委員)今のところに関連して、25ページの最後に載っています。最後の文のところです。四角囲んだところで「事後調査において、地方公共団体等が行う環境モニタリング等を活用する場合に、当該対象事業に係る施設等が他の主体に引き継がれることが明らかな場合等においては、他の主体との協力、または他の主体との要請等の方法及び内容について明らかに出来るようにすること。」という、若干の歯止めがあるということです。

(小野座長)多少、括弧が入っているのですが。それでも尚、疑問が残りますから。ちょっと検討させて頂きます。たくさんあると思うのですけれども、もう時間が来ました。それでこの事も含めまして、今日まだ積み残しになっております問題もあります。そういうことを含めて、もう1回、実は時間を取ってございますので、上杉調整官、その辺のスケジュール調整の話をどうぞ。

(上杉調整官)一応、7月13日、第一候補ということです。

(小野座長)そういうことですか。特段ご質問が無ければこれで終わります。

(大森委員)生態系の機能の振り分けなのですが。それが少し不満があるのです。例えば資料3の17ページです。表の2の4に具体的に生態系の機能について、具体的に項目を挙げてもらっているのですが、定義から言えば、生態系のつながり、3番目の物質の生産、物質の循環、エネルギーの流れとか、そういうものです。その上にある2つのものというのは、例えばハビタットの絡む問題とか、生態系の構造の方に少し絡んでいる事が大きい気がします。ただし、そういう環境を形成するとか、そういうことも非常に大事なのです。けれども学問的には少し違和感があるので、何かいい方法が無いものか。これだと少し誤解を生じます。

(谷田委員)どうでしょうか。別に広く機能を捉えていいのではないでしょうか。エコシステムと捉える。そういう議論をすると止まらないのですが。生態系という、ふわっとしたものの中での機能として捉えれば、物質でいいのではないでしょうか。

(大島委員)そういう言い方をする場合の機能というのは、生態系サービス、そのことなのです。だから生態系サービスというのは、幅が広いのです。ただ単に物質生産、循環のことだけを言っているのではない。それだけは言える。だから私はこれはこれでいいのだろうと思うのです。ただ機能が全体的に区分と対応していない。これはもうちしょうがない。その辺は生態学的議論をやらなければいけないのです。今はそのままにしておいていい。

(小野座長)それでは、どうもありがとうございました。これで終わります。


〈本件に関する問い合わせ先〉

     環境省総合環境政策局環境影響評価課 担当:川越、石原

      TEL:03(5521)8236  FAX:03(3581)2697