1.日時 平成12年11月17日(金)10:00~12:30
2.場所 環境庁第1会議室
3.出席者
(検討員)
大島委員、大森委員、小倉委員、小野委員、楠田委員、須藤委員、谷田委員、福島委員、渡邉委員、清水委員
(欠席:辻本委員、細谷委員、森下委員)
(事務局)
小林課長、森谷室長、渡辺調整官、中山補佐、ほか(環境庁)
有本研究主幹、川瀬上席研究員、戸田上席研究員、畠瀬研究員(自然環境研究センター)
塚本部長、小栗主任技師、野谷主任(アジア航測)
井上主査研究員、松尾研究員(新日本気象海洋)
4.議題
(1)陸水域生態系の調査・予測・評価に関する技術手法について
(2)その他
5.検討経過
○ 小野座長により議事が進められた。
○ 議事に入る前に渡辺調整官から、
・ 委員及びワーキンググループの紹介
・ 検討会設置要綱の確認
・ 配布資料の確認
などが行われた。
○ 次に、中山課長補佐から資料1によりこれまでの検討経緯と今後の検討の進め方について説明の後、塚本部長(アジア航測)から資料2について説明された。
その後、以下のような議論がなされた。
(小野座長)総論のところで根本的に考え方が違うという所はご指摘いただいたらありがたいのですが、ご質問やご意見等ございましたらお願いします。
(渡邉委員)陸水域、特に河川をみますと、海域に流れていくまでの間に周りの環境もいろいろ変動していくわけです。周りの環境が森林の場合は、森林、陸域という陸域を考えた場合のアセスメントがあって、そこの状況の変化が河川にどのような影響を及ぼすかというのは見ることができるのですが、だんだん周りが水田地帯や市街地になったりしますと、水田のアセスメントも市街地のアセスメントもありません。ですから、河川の土地利用状況というものを鑑みながら、河川の基盤環境も考えていった方がよいのではないかと思います。例えばヨシキリというのは周りに水田が拡がっているか、拡がっていないかでぜんぜん分布構造が違ってきますし、当然ヨシ群落の生態系の構造も違ってくるので、土地利用形態というのは基盤環境と同等の形でとらえて行くべきではないかと思います。
(小野座長)それはどの辺に書き込むべきだとお考えですか。
(渡邉委員)例えば調査項目の例で、資料2p9にありますが、調査対象として、基盤環境、植物、植生、注目種・群集、生態系の構造・機能とありますが、基盤環境の中に土地利用という項目を入れるか、それとも土地利用を別途に調査対象にいれたほうがいいのか、私はどちらでも良いと思っています。
(小野座長)書き込みにくい問題ではないかと思います。
(渡邉委員)基盤環境ともニュアンスが違うとしたら、調査対象が4項目ありますが、土地利用という別の項目を入れても良いのではないかと思います。
(小野座長)渡邉先生のおっしゃることは非常に大事なポイントであることは確かです。社会文化的な要素をどこまで取り込むかという問題があると思います。
(渡邉委員)流域をめぐる河川というのは、ランドスケープという中で考えざるを得ないと思います。そうすると、流域に沿って人間と生物とのいろいろな共存共生関係がある中でアセスメントをしていくということになると思います。ある程度はそこに入れざるをえないのではないか。
(渡辺調整官)昨年の中間報告書の中で、広域的な又は対象地域及びその周辺の地域特性を把握する項目を挙げていただきましたが、その中では利用状況や負荷の状況を設けてその中に土地利用状況あるいは利水の状況、水そのものの利用の状況を漁業やレクリエーションで例ということで、利用状況の中で土地利用という一項目を挙げています。調査・予測の段階になってきますので、例えば河川の場合、注目種として選定した種と川の土地利用状況と強くかかわるような関係であれば、当然注目種の調査の中でもそういうものを把握する形になろうかと思いますが、総論的なまとめの中でどのように示していくかというのは考えなければいけないと思います。
(小倉委員)今のお話と関連するのですが、資料2p9の調査項目の例で基盤環境の中で地下水のことがどこにも出ていないのですが、例えば都市化によって地下水が低下している、そうすると当然、動・植物相が変わってくると思うのです。地下水というのは大変大事で予測は大変難しいのですが、これからかなり大事な要因になるのではないかと思いますので、ぜひ踏み込んでいただきたい。
(小野座長)どこへ組み込みましょうか。どこの地下水かということになるともっと難しいですね。
(須藤委員)もし地下水という言葉を入れるとしたら、湧水、伏流水のところにくくりで入れることは可能です。もう一つは最終的には一体になるので、水環境は水環境として評価する場合は、そこに地下水の問題が入ってきます。それを結果としては全部で一つになるでしょうから、そこの部分をここに書き込むなら書き込むし、連結するなら連結するで先程の渡邉先生の問題についても、水環境の中のそのような川なら川の評価の中にそのような問題も入ってくると思います。
(小野座長)スコーピング部分では書いても良いでしょうが、それをどのように更に詳しく調査・予測に取り込むか、そういう視点で地下水の問題もご意見もお願いします。
(渡辺調整官)地下水に関して若干補足ですが、昨年の議論の中でもずいぶん地下水について議論をしていただいて、地下水といっても、とても深いところから浅いところまでいろいろあって、陸水域の生態系の検討の中では、特に陸水域と関連の深い、浅層の地下水にある伏流水を陸水域生態系の視点からは、予測はなかなか難しいのですが、可能な範囲で取り込んでいきましょうというようなご指摘を一つ入れていただいています。
(大島委員)資料2p5、図2で生物相の変化ということと単純化というのは意味が違うんです。だから、「生物相の変化と単純化」とした方がよろしいかと思います。
(楠田委員)調査と予測ということでご説明を頂いたのですが、予測のところで、どこまでの予測を、どのような手法で、どの程度の精度でやればいいのかという記述があまりない。それでは予測の所をどう考えれば良いのかわからない。注目種・個体群の変化と書かれているのですが、そんな簡単に予測できるとは思えないのですが。
(小野座長)これはワーキンググループの方で答えて下さい。
(渡辺調整官)まさにここはこれから書き込まなければならないところで、去年の陸域や海域の分科会のでも例えば注目種への予測ということについてどのくらい定量的にやれるのかとか、定量的な手法と定性的な手法をどう組み合わせればいいのか、その精度の問題等を議論して頂いて、それについては報告書で示しております。そのあたりは今日の資料では予測という項目を出した程度なのですが、陸水域についても陸と海にまたがるような性格の所ですから、陸水域の予測ということについてどのようなことが大事な点でどのような留意点があって、どのくらいの精度でとか、定量的にいける部分というのはどういう部分かといったことを具体的な手法を紹介しながら、総論の中でも示していきたいと思いまして、そこはこれからご意見を頂きながら、陸水系の予測にとって大事なこと、基本的な考え方、そういうものをできるだけ出していきたいと考えています。
(小野座長)どういうことを書いたほうが良いでしょうか。
(楠田委員)どれだけ具体的に書き込めるかという心配があります。それで、調査・予測・評価と並びますから、それぞれに対して必要十分な関係の情報がいるわけです。予測はどこまでできるのか難しいと思いますが、例えば保全手法という意味で、調査と評価をダイレクトにつなげていくような考えもあると思います。
(小野座長)確かにインパクトの予測というのは、比較的これは影響があるだろうとか、ある程度予測が立つと思いますが、こういう状態で安定するのではないかという安定の予測というのは非常に難しいと思います。インパクト予測の所と安定の予測、遠い未来は分からないにしても近未来に対する予測というのはやはりやらざるを得ない。
(大島委員)時間軸の予測というのはある程度必要だろうと思います。
(小野座長)時間軸の話は前回でも相当議論されたところですので、ワーキンググループでも考えがまとまっていないように思われますが。
(谷田委員)陸水域生態系の特性の議論をしましたが、そういう特性が資料2の調査・予測の基本的な考え方や調査・予測の手法のところに見えてこない。陸水域生態系の特性を踏まえた調査と予測があるわけです。わかりやすく言うと地理的隔離性というのが陸水域生態系の特性としてあげられるとしたら、どういう調査をしなければいけないか。例えば河川を考えると、A河川だけを見ていたのでは隔離性の問題はみえない。木曽川水系の共通の隔離性というものがあるのかどうか、つまり、オフサイトの部分も見なければいけないということが出てくると思うのです。それは一例ですが、他に連続性の部分でもこれが陸水ではなくて陸域であっても似たような文章になっているのではないかという印象が非常に強いのです。
(塚本(アジア航測))地理的隔離性等については、どのように書いたらよいのか難しいので。
(谷田委員)だた、渡邉先生がおっしゃったように周辺の水田との横断とか連続性の問題があるはずだから、当然書き込まれなければいけない。大きな河川の上下流のような話が入っていない。基本的な考え方として、その辺の部分が入ってこないと、陸水域の検討にはならない。
(大島委員)去年スコーピングの段階をやりましたが、スコーピングの段階で考えたところを調査・予測しろとか、もうちょっとやれというケースと、調査をやっている段階でそういう問題が出てくるケースと、二つのケースが出て来るんです。
(大森委員)問題は目標の設定をやってから始めるべきということだと思います。この場合の目標というのは評価ですから、その評価についてどういうところをどういう点で評価したいのかというのがあれば、その方法というのが比較的可能な範囲で決まってくるのではないでしょうか。それを同時に考えないと、評価で技術的にできるところまでは予測はできるかもしれないが、ある部分はあまりできないということになる。目標となる評価というものをまずきっちりと押さえれば、それはスコーピングのところで、例えば河川がどういうものかという問題からでてくると思いますが、そういうことを繰り返しやって行かないと目標が分からなくなってしまうのではないでしょうか。
(小野座長)目標はどこに置けばいいのですか。
(大森委員)予測は非常に難しいという状況がありますから、例えば河川の特殊性としての連続性、そういうものにある程度絞ってやらないときりがない。
(小野座長)水域の難しい点は、総論としては流れる水もたまった水も両方視点において考えないといけない。その辺はなかなか書き込みが難しくて、結果的に前の項目だけをさっと並べているわけです。それにどのように陸水域の特性をはめ込んでいくかというところが、今回は書き込み不十分という状態のままです。そういう点を考慮に入れながら議論をしていくということでご議論をお願いします。
(大島委員)群集の生活史というのはあるのでしょうか。ありえないと思いますが。
(小野座長)これは用語としてご注意下さい。
(大島委員)全体のこととしてお願いしたいのですが、特に今年の問題というのは正確に表現しないと誤解を生みます。ですからこの検討会でも、言葉の使い方を正確にして誤解を生まないように配慮をして頂きたい。
(小野座長)実際にこれまでの報告書で、特に昨年度のものについては、もっとわかりやすい言葉を使ってくれという要望を受けました。その点は非常に重要だと思います。注目種・群集の生活史とありますが、注目種の生活史はありますが群集の生活史というのはありえません。これは書き分けが必要です。そのような用語的な意味の間違いもありますので、その辺はご注意下さい。
(渡邉委員)先程の地理的隔離性という問題を突き詰めて考えますと、意外に調査項目の注目種・群集というところに必ずかかわってくる可能性があります。ですから、その対象となった所に固有な種がいるかどうかというのはひとつ大きなものになるのですが、それは種のみならず個体群レベルまでおりていく必要がある。種は同じだけれども遺伝的には違う場合も地理的隔離性という問題があります。あとは、データで可能な限りそこまでおりていくということになるとすれば、種ではなくて個体群の所まで可能な限りデータを集約していくというようになってくると思います。
(小野座長)それは、注目種・群集の遺伝的特性ということになるのでしょうが、そのような用語の使い方、用語自身の中身、その辺を注意して下さい。それでは総論につきましてはこれまでのご意見を踏まえて、ワーキングで更に作業を進めていくということにしたいと思います。この総論に基づきまして、ケーススタディの一つとして、今日、用意していただきましたのはいわゆる河口堰です。では資料3について説明をお願いします。
○ 次に松尾研究員から、資料3により陸水域生態系の環境影響評価の進め方(ケーススタディ)について説明された。
その後、以下のような議論がなされた。
(小野座長)ケーススタディは、中部日本のある河川ということで設定をしていますが、一つの問題は、中部日本にこんなものがいるのかということでは困りますから、その辺でご指摘が等ありましたらよろしくお願いします。もう一つはそういうケーススタディで、当てはめがうまくいっているかという問題があります。気になった点から申し上げますが、p10とp11で表が河口から上流へと、左と右が逆になっている。
(松尾(新日本気象海洋)):p11を修正して統一します。
(楠田委員)環境基盤要素という点から、河口堰を扱われる時に、一番はじめに河口堰の建設前後の流況を置かれたらどうかと。鉛直方向の混合形態の塩分濃度というのがこの中にほとんど見受けられません。これだけ見ますと、水平方向に塩分濃度が区分されていて、強混合河川のイメージだとこの通りなんですが、中部地方だと必ずしもこのパターンではない。鉛直方向の上は淡水だけれども下が海水というのがありますので、この表現は有明海の河川だとこの通りかもしれませんが、中部や東日本の付近は円錐くさび型のパターンの方が強くなるので、ケーススタディとしては冒頭で円錐くさび型なのか強混合型なのかを規定して、このケースはこれであるとしていると後で誤解がない。もう一つは洪水期の場合にはできあがった堰の操作方式によって、上流の塩分濃度がいくらでも変わりますから、はじめに操作方式をきちんと示す必要がある。また違う箇所では塩分濃度が500mg/l くらいになるように意図的にあげられるケースもありますので、操作方法によっては後の環境が大きく変わってしまう。ケーススタディの場合は、はじめに操作方法を規定した方がわかりやすいのではないでしょうか。それに伴って堰の下流側では時間変動がでてきますから、それで環境が時間で大きく変わって来ることになります。そうすると、やはり流況の規定というのを時間単位での変化で示すというのは大切ではないでしょうか。
(小野座長)大事なご指摘をいただきました。強混合型の河口か、円錐くさび形の河口かということで、この両方を書き込んでおく必要がありますから、その中でこれは強混合型の河口を想定していますとか、何か断っておかないといけません。それから、堰の操作の方針というのはどこで書くべきかというと、最初から決めて書かなければいけないので、その辺もご検討下さい。
(谷田委員)今日の議論を踏まえて、河口域をこの分科会でやるということになりますと、陸水域としては当然沿岸部分にインパクトがでるというケーススタディにしておかなければいけないということになります。作業が大変ですが。
(中山課長補佐)とりあえずこれはそうでない方で作業をしていて、海域のぶぶんについては一応影響はあるんだとしてあるのですが、海のことは書いてありません。それについてはこれから作業を進めていきたいと思っております。
(小野座長)実際には海域にも影響があると思います。
(谷田委員)潮位差はどれくらいですか。
(小野座長)潮位差は書いておかないといけない。というのは最後の方の図に、塩水の分布がありますが、例えば資料3p39で塩分の濃度が一つしか書いていない。これは一日のうちで上下しますし、渇水期と洪水期では全然位置が違って来ますから、そういう幅をつけて書いて下さい。少なくとも描くのなら塗りつぶしたような絵でも描いておいて下さい。幅を付けて書かないとおかしい。強混合河川と円錐くさび形の河川、これも違ってきますから、この辺を強混合型ならそれなりの塩分濃度の分布を出しておかないといけない。その辺を修正して下さい。
(大島委員)昨年の報告書のp252、スコーピングのところで縦断をきちんと分けています。今回の資料でも部分的にはケーススタディの中に横断的な要素も入っているのですが、これは連続性があるのでそこをもう少し明確に書いた方が良いと思います。
(小野座長)予想縦断模式図は資料3p2にありますが、これをもう少し書き直してというご指摘なんですね。
(大島委員)それに関連して塩分濃度と連続するような形で出して頂きたい。
(渡辺調整官)大島先生の今のご指摘は、昨年の報告書のp252に縦断方向と横断方向の図がありますが、どちらかというとこのケーススタディでは縦断方向で、ということですね。
(大島委員)部分的には出ているのだけれども横は難しい。
(渡辺調整官)横の視点も持てということですね。
(大島委員)両方の視点を持つことが必要です。
(小野座長)図として描くと、先程渡邉委員にご指摘頂いたように、周辺の環境も一緒に書き込んでどういう検討をやっているか図である程度分かるわけです。
(大島委員)この図があまりにも簡略化されているので。
(小野座長)資料3p10の図はそういうことで、少し書き込みを入れるということでお願いします。実例としてヤマトシジミをあげていますが、これが漁場ですと漁獲の問題が影響評価に入ってくる。生物的な影響評価なのか、漁業に対する影響評価なのかということを掲げなければいけないのか。掲げて良いのですが、生物的な影響評価にヤマトシジミを使うことが果たして大丈夫なのか。アユも入っていますが、アユなんていったら日本でまともに釣れるのはほとんどない。自然氾濫をするような場所というのはもちろんあるのですが、漁獲対象という場合と生物評価はわけるべきではないかと思います。特に漁獲の場合は金額に跳ね返ってきますから難しいでしょう。
(渡辺調整官)昨年の報告書で海域のケーススタディでもアサリを取り上げたりイシガレイを取り上げたり、海域分科会の議論ではそのような漁獲対象となっている生物種の場合に、もちろん放流や漁獲があるので、整理していかないとややこしい要素が入ってしまうわけですが、その地域にあって主要な構成種になっているようなものであれば、最初から排除しない方がよい。必要に応じて注目種として取り上げていっても良いというような議論でした。
(清水委員)アユはほとんど種苗放流でもっているようなものですから、それをどう予測するか。
(谷田委員)アユを逆に天然産として考えればどうか。放流が行われているわけですから。
(井上(新日本気象海洋))アユを取り上げる理由は、産卵をする、それで影響を受けるだろうということで典型種として上げております。
(小野座長)それならそれで産卵の場所が書いてあればそれでも良いので、これはまさに天然アユと書けばいい。
(谷田委員)p25にリストされた種は全部、調査・予測・評価をするということですか。イトミミズ科というのはいろいろ問題があると思います。イトミミズ科には非常にたくさんの種類があり、エコロジーが違うということもわかってきています。だから、科レベルで話をしてもいけないということになると思います。
(井上(新日本気象海洋))注目種から削除したいと思います。
(谷田委員)このケーススタディに挙げるのは無理がある。現場調査の時は絶対しなければいけないのですが。
(小野座長)あまり分類学的に怪しげなものは使わない方が良いと思います。中部日本でいないような種類は書いたらいけません。その点は特にご注意下さい。トビハゼはどこまで分布しているのですか。
(大森委員)東京湾では確認されされています。
(小野座長)あれは非常にレアなケースでしょう。そういうものは紀伊半島を境にぐっと減るような気がします。それから北へ行くとトビハゼというのは多かったかと今疑問に思ったのですが。
(渡邉委員)東京湾でも数ヶ所で確認されていますので、河口で特殊性というものは思いつかないかったので使っているのですが、行徳河口堰にはいます。
(小野座長)特殊性にはあげられる。
(井上(新日本気象海洋))特殊性では泥干潟を想定して、トビハゼが適当かなという判断で書かせていただきました。
(小野座長)河口干潟に泥干潟が特殊性として非常に特徴的に出るかどうかという問題ですね。一面に出てる場合が多いですから特殊性ではないかもしれない。ここは特に少なかったといえばそれは特徴かもしれませんが、皆さんがどの河川を想定しながら発言されるかにもよるんですがこの河川の形態からして、泥干潟は出るのかなと思っていまして、たくさん出るのではないかという心配もしているのですが。
(谷田委員)p24に、注目種選定のための整理とありますが、テナガエビは陸封されやすいので選定しないとなっていますね。これは典型種なので違うと思いますが、先程の隔離性の問題だと逆に、河川のそれぞれで隔離度が高い可能性があると思います。
(小野座長)これはワーキングの方からお願いします。
(井上(新日本気象海洋))おっしゃるとおりでして、このケーススタディでは地理的隔離性というのはほとんど入っていません。ですから、先生がおっしゃるのとは逆の選定となってしまっています。これは実は、地理的隔離性についてはダムの方でできないかと考えておりまして、支流がいくつか入っている河川を対象としてダムを作った場合に淡水域ができて水没するというときに、地理的隔離性がどれくらいかと考えていまして、一応、下流ということで河口堰は地理的隔離性というのははずして考えていますのでこのように書かせていただきました。
(谷田委員)何川を想定するかによってだいぶ違うと思いますが、下位個体群は勝手に混ざるわけではないので、そういう意味ではかなり隔離されています。本州はそれなりに混ざっていると思いますが、サツキマスが上がってくれば隔離性の問題で、トビハゼは逆に特殊性があるのは北限個体群に近いということになると思います。
(小野座長)多分そうです。そういうコメントがいると思います。
(大島委員)こういうことで選んだということを書いておいた方が良い。
(小野座長)これらの種類についてはこういう理由で選んだということを、一応横には描いてありますが、その中で特に今のような場合にはこういうことで選んだということを書いておいて下さい。それで、このケーススタディについては一番最初の図を全部書き直すということになります。
(福島委員)p20図1-10で、真ん中の下の方の「水質の変化」と「底質の変化」のところは基盤環境同士の関連が本当は強くあるはずなのですが、他で描いてあるのかもしれませんが、この辺の関係がここでは線がつながっていない。これに影響が出ればまたそれがこうなるという部分、それから水質の変化が右の方へ伸びていない。もう少し、いろいろなことを想定した図を考えて下さい。
(井上(新日本気象海洋))これはいずれにしてもまだ今後検討を要するので今の意見を含めて再検討したいと思います。
(須藤委員)福島先生との関連で、河口堰など単純に変化するものはそれぞれ何に影響するかというのは出ているのですが、複雑に変化するものの影響というのが出ていないように思います。例えば水質だったら河口堰を作るために富栄養化、つまり内部生産が非常に上がってDOが減少する、場合によってはアオコのようなものも出てしまうというようなことも起こってくるといった問題や、そこに底質が影響して底質から溶質化してくるとか、様々な複雑に絡む変化がアセスでは出にくい。肝心なところは良いのですが、物理化学的、あるいは生物学的なところが複雑に絡んだ所の変化が最も影響を与えるのではないかと思います。
(小野座長)お考えいただいて大変ありがたいのですが、それをこの中にどう書きましょう。
(須藤委員)例えば、水質の変化を上げれば、「水質の変化」を低層によるDOの減少とか、あるいは河口堰内のプランクトン又は内部生産性の増加とか、そのような言葉にすれば厳密になるから矢印が右に向くのではないでしょうか。全部を挙げなくても代表的なものでいいと思います。DOの減少と内部生産性の増加でしょうか。
(福島委員)確かに今のお話ですと、矢印はみんな左から右に向かっているのですが、右から左に行く現象というのも単純化してしまう。
(小野座長)そういう図を検討して下さい。水質の変化を下の方にかっこ書きでいれても良いかもしれませんが、少し工夫をして頂いて、水の変化のところは福島先生、須藤先生に図を送って検討して下さい。
(大島委員)昨年の報告書のp163にフローがありますが、往復の矢印があります。
(小野座長)往復矢印の部分は、全部往復ではありませんから充分注意して下さい。
(大島委員)注目種の選定の出し方、表の作り方のようなものは連続のものですから、昨年の報告書にならって書いて下さい。
(小野座長)その点、これまでの報告書を踏まえるよう注意して下さい。
(谷田委員)陸水生態系の特性は常に入れて下さい。
(小野座長)今ご指摘頂いたような件は直して行くということでお願いします。資料3p14の図1-7は、わかりにくいのでマトリックスの方がいいかなという気もするのですがこの辺も検討して下さい。またp2の図1-1やp32の図1-13についても検討して修正をお願いします。
(福島委員)資料2の基盤環境の調査項目の例で、河川の部分がかなり項目として採用されているのですが、湖沼の基盤環境として光条件等もあるので、河川しかないような条件でけでなく、ある程度水深の深いものと、そういう湖沼の基盤環境を合わせてここに項目が出てくるのかなという気がするのですが。いわゆる基盤環境というものをもうすこし広く考えた方がいいと思います。
(小野座長)ここは当然濁り水が出るのでしょうが、4mくらいの水深のところで考えているんですね。基盤環境については先程の地質構造のような話もありましたから、もう一度ワーキンググループで検討して下さい。
その他に何かご指摘等ございましたらお願いします。もう一度これを見ることになるわけですね。
(渡辺調整官)はい。資料3については今日ご指摘いただいた部分を含めワーキングで作業を進め、次回にもう一度見ていただきますし、ダムについても新たにケーススタディを出させていただく予定です。
(小野座長)ダムとこれの最終部分が重なって来るんですね。
(渡邉委員)一般的な考え方の中にレアイベントがおこった後の影響も鑑みながらとありましたが、その項目はケーススタディでは考えないのですか。
(谷田委員)藤前はゴカイがいなくなった。
(渡邉委員)しかし、防災関係の専門家に言わせれば、だんだんそういうものはレアと言うよりはある程度人為的なものが絡み合って出ている。どんどん都市化が進んで、都心熱が起こって、上昇気流ができて、雲の核ができて、今まで一様にあった雨雲が核に集まってくるから集中豪雨が起きやすくなる。必ずしもそれはレアとは考えられないのではないでしょうか。
(小野座長)従来100分の1とかいう計算を作っていましたが、そんなものは通らなくなるかもしれません。実際はそれは怖いことですが分かりませんから、そういうことも含めてケーススタディに入れるというのは難しいので、レアイベントとしか書きようがないと思います。
(吉田(日本自然保護協会))日本自然保護協会の吉田です。今まで私どもで長良川河口堰や吉野川河口堰の調査をいたしまして、そのモニタリング結果を今年の8月に「河口堰生態系への影響と河口域の保全」という報告書にまとめたのですが、その中に先程ご指摘がございました物理環境、化学環境、そういった所の総合的な関係や、生物への影響なども、補填的にまとめたものがございますので、もし差し支えなければ私どもから委員の先生方にご提供させていただきたいと思います。
(小野座長)よろしくお願いします。
(渡辺調整官)事務局からですが、最初の総論の所では調査・予測のポイントとして基盤環境と生物群集の関係、注目種、機能と3つ並べました。機能についての説明はなかなかとらえがたいので、すごく重要な機能でとらえられるものがあればやりましょうというような位置付けで総論は入っていまして、今回の河口堰の中ではケーススタディのフローにもあるように、作業グループの中でも議論したのですが、なかなか取り上げやすいものがないということで今は入っていません。その辺は河口域のアセスメントをするときに、今の考え方では基盤環境と生物群集の関係をひろくとらえるということと、注目種に絞ってより詳細に検討するという方針で作業をしているのですが、河口域におけるこのような事業を念頭に置いたときに調査・予測で、機能は注目種を通じて押さえる程度で良いのかどうか。昨年の報告書で海域などは浄化機能を取り上げて、別途の攻め方で機能をとらえるような調査・予測を示したのですが、河口域ではどうなのか、ご意見があればお願いします。
(大森委員)機能は大きく取り上げるべきだと思います。量的に一番大きくなるのは脱窒作用。それから、特に検討会の中で問題になっているのは、春から初夏にかけてですが、物質を一時貯留する能力が高まる。それは丁度そのまま川から海へ出ていって海の富栄養化を低減することになるのではないか。一時的な貯留というのは季節が過ぎればまた海に流れてしまうのですが、一番赤潮が出やすい時にそれを押さえるという効果がそれなりに大きいと思いますので、大きく分けると大事な機能としてその二つが挙げられると思います。
(渡邉委員)ここであげた生物種がありますね。その生物種がどのようなファンクションを主に代表しているのかということをある程度考えていく必要がある。例えばヤマトシジミ、あれは河口域の生産機能ですね。結局ヤマトシジミを注目種とすることで河口域の生産機能が高まるのかということを見ていることにもなります。選んだものがどのような機能を代表しそうなのかというのを煮詰めたら、まとまってくるのではないでしょうか。
(小野座長)典型性というのは本来機能を中心にどう考えるかですから、典型性の扱い方でうまくカバーできると思っています。
(大島委員)質問なんですが、陸域で去年、動植物・地形・地質の問題が抜けて、今年検討するということになっていましたが、陸水域でもこれを検討するのですか。
(中山課長補佐)基本的には3つの分科会ごとにそれぞれまとめるというわけではなく、最終的には動物、植物、地形・地質それぞれについてまとめることになります。ですから、陸水域分科会についてもご議論になるかと思いますが、その辺は全体の作業の進み具合を見ながら、検討して頂くことになると思います。
(小野座長)以上で今日の議論は終了とさせていただきたいと思います。
(渡辺調整官)次回の検討会は2月位を予定しておりますのでよろしくお願いいたします。
(閉会)
<本件に関する問い合わせ先>
環境庁企画調整局環境影響評価課
課長補佐:中山隆治
担 当:藤田規広
TEL:03(5521)8236
FAX:03(3581)2697