SEA総合研究会関連資料 第3回検討会(平成10年11月5日)

【資料5-1】オランダ第2次電力供給構造計画に関するSEAについて

1.電力供給構造計画について

根拠:電力法(1989)
内容:以下の決定を含むオランダの電力供給についての長期戦略
  • 出力500MWe以上の発電施設の建設候補地
  • 上記の建設候補地が燃料投入に対して有する適性
  • 燃料の種類について全国の電力生産会社が設定すべき最大発電キャパシティ
  • 220KV以上の高圧送電接続のプロジェクト
更に下記の事項に関する政策方針が明らかされている。
  • 電力生産が満たすべき環境衛生上の周辺条件
  • 電力生産キャパシティの分散配置、及び分散型と集中型の熱電供給プラントの均衡
  • 風力発電キャパシティとそのプラントの立地に関する政策

※  原子力発電キャパシティの拡張に関する決定を延期することになっているため、電力供給構造計画では新しい原子力発電プラントの建設地点については何も触れていない。したがって、環境影響報告書でも、原子力発電の環境影響については触れていない。

2.オランダのエネルギー政策と環境政策

(1) エネルギー政策
電力供給構造計画は政府の一般エネルギー政策の範囲を越えてはならない。
電力政策の主たる目的:社会に対してできるだけ安いコストで電力を確実に供給すること。
目的:輸入と価格に関するリスクを抑制し、エネルギー節約を促進するためにエネルギー媒体の多様化を図ること。エネルギーの自給自足を図ること。
(2) 環境政策
長期及び中期の政策は、国家環境計画と第2次国家環境政策計画に定められている。
主たる目的は、持続可能な発展を確保するために、環境が持つ耐久能力を持続させること。
○環境保全の主な項目
  • 気候変動対策
  • 酸性降下物対策
  • 水質保全対策
  • 廃棄物による汚染防止、再利用、保管
  • 放射能等のリスクとダストや騒音等の公害
  • エネルギーと自然保護に関する政策の国際化
(3) 自然と景観の保護政策
主な目的は自然の価値と景観の価値を持続的に保存し、修復し、発展させること。
このため、自然保護計画(1990)が策定されており、本計画では、いくつかの地域を主たる保全地域とすることにより、目的を達成することを任務としている。
(4) 土地利用政策
政府の長期的、全国的地域開発計画は「地域開発特別計画に関する第四の覚書」に定められており、地区計画と開発計画はそれにしたがって調整されている。

3.環境影響報告書における前提

(1) 燃料投入
環境影響報告書には環境への影響に関係するいくつかの政策選択肢が記載されている。
まず、2000年と2010年の両時点での電力需要が多い場合(GNP成長率 3%)と少ない場合(GNP成長率 2.5%)の2ケースを前提としている。

表1 高需要シナリオと低需要シナリオの前提

GNP成長率  電力需要の年間増加率  2010年の電力需要
高需要シナリオ
低需要シナリオ
 
    3%、       2.6%       128TWh
  2.5%        1.6%       102TWh
 

2000年の場合は、発電ユニットの大部分は、既に確定されている。

表 2 2000年におけるSO2 、NOX 、CO2 の合計排出量

バリエーション        年間排出量
低需要レベル
高需要レベル  
 SO2 トン/年     NOx トン/年    CO2キロトン/年

           中央集中型
  16691     31228      35827
  19212     35956      40955
 

2010年の場合は、需要シナリオごとに2つの燃料投入選択肢が設定されている。

・石炭 50%、天然ガス 50%
・石炭 33% LNG 67%
a.燃料投入における基本的選択肢
基本的選択肢としては、以下の6パターンが設定された。
このようにすると、下記の6つの基本選択肢に分けることができる。
  • L50P = 低い需要レベル、燃料配分 50/50、粉末石炭
  • L50K = 低い需要レベル、燃料配分 50/50、石炭気化-スチーム・ガスタービン
  • L33K = 低い需要レベル、燃料配分 33/67、石炭気化-スチーム・ガスタービン
  • H50P = 高い需要レベル、燃料配分 50/50、粉末石炭
  • H50K = 高い需要レベル、燃料配分 50/50、石炭気化-スチーム・ガスタービン
  • H33K = 高い需要レベル、燃料配分 33/67、石炭気化-スチーム・ガスタービン

このような基本選択肢によると、2010年の排出量は下記の表のようになる。

表3  2010年における基本選択肢に基づくSO2 、NOX 、CO2 の合計排出量

バリエーション*          年 間 排 出 量



  L50P
  L50K
  L33K
 SO2 トン/年    NOx トン/年    CO2キロトン/年
           中央集中型
  22453     31844     50335
  13066     33047     49888
  15272     33119     49041
  H50P
  H50K
  H33K
 
  29115     37779     65204
  14082     39853     64465
  15954     39688     61360
 
(2) 建設場所
前回の電力供給構造計画で取り上げられた候補地を選択の出発点とし、現在稼働していない場所をはずし、余熱を利用するために新たに2つを追加した。
(3) 高圧送電接続
高圧送電網の拡張は限定されており、かつ、この段階では新しい接続箇所が確定していない状況の下で検討が行われた。
(4) 風力エネルギー
風力エネルギーについての基本的な考え方は、多数の小さな領域に分散配置することとなっている。しかし、環境影響報告書では分散配置と集中配置との比較を行っている。
(5) 発電技術
  • a.タービンの種類等化石燃料による発電技術
  • b.風力、太陽光、水力等自然エネルギーによる発電技術
  • c.バイオマス又は廃棄物の焼却による発電技術
その他、コージェネレーション等も考慮されている。
(6) 環境保全技術
脱硫技術、NOx排出抑制技術、ばいじん除去技術等が考慮されている。
CO2の除去については、まだ技術がその段階には至っていないと判断されている。
その他、騒音抑制技術、土壌汚染防止技術、廃棄物処理技術等が考慮されている。

4.環境影響報告書における環境影響の予測

(1) 建設地点の検討
  • 冷却水による環境影響:冷却能力を検討し、冷却水の放出と酸素バランス、藻などの繁殖防止措置の影響を検討
  • 地表水の水質への環境影響:発電所の排水による環境影響を検討
  • 土地利用の調整、自然と景観の保護:建設地点を「地域開発特別計画に関する第四の覚書」、「自然保護政策計画」に定められた自然と土地利用に関する政策に照合して検討。
  • 外部安全性:天然ガスの搬入、脱硝の際のアンモニアの蓄積等危険物の管理についても検討。
  • 放射能:化石燃料に含まれている放射能の影響の検討。
  • 燃料と廃棄物の搬入、搬出及び保管に関する公害の検討
(2) 風力プラントの立地戦略に関する環境影響
以下の観点から大規模集合立地がよいか小規模分散立地がよいかについて検討が行われた。
  • 景観への影響
  • 鳥類等への影響
  • 騒音
  • 安全性
  • 直接的なスペース占拠
  • その他の機能との組み合わせ
  • 立地場所の利用可能性
  • コスト

表4 風力発電の大規模な立地戦略に関する最終的評価

   小規模群状設置との比較  小規模直線状設置との比較

障害 *
土地利用政策
コスト
 

     0/+
     0/-
      +
 

       -
      0/-
       +
 

 * 障害には土地スペースの占拠、騒音障害、景観、鳥類への影響、安全性、その他の機能との組み合わせが含まれる。

** 0/+:中立的~プラス 0/-:中立的~マイナス

(3) 燃料投入の選択
基本的な選択肢に加え、以下の選択肢が検討された。
○「環境にやさしい選択肢」
以下の3ケースについて計算が行われた。
  • 2000年の時点で既に稼働を開始している粉末石炭を燃料とするユニットでの硫黄含有率が0.5 %の石炭の燃焼(S 0.5)
  • 2000年の後には新規の石炭キャパシティ(GNK) は使わない。その分の電力生産はガスを燃料とするスチーム・ガスタービンに代替させる。
  • 新規のガス・キャパシティの大部分に余熱利用装置を設置する。(熱・計画・エキストラ、WPE)
さらに、排出削減装置を使ってNOX とCO2 の排出を減らす以下の3ケースについても検討された。
  • 今日以後に稼働を開始するすべてのユニットに触媒により選択的にNOX を減らす技術(SCR)を適用するケース。この装置は比較的簡単に取り付けられる(例えば、ユニットの建設段階でも、この装置の事後設置が可能) 。(SCR 1)
  • 触媒利用の選択的NOX 削減技術の適用。ここに挙げたユニットだけではなく、ボルスセーレとマース平野にある石炭使用ユニットに改造されるユニット、ヴェルセンにある高炉ガス使用ユニットにも適用できる。(SCR 2)
  • 2000年以後に稼働開始するすべてのガス使用ユニット、および石炭/石油を使用するすべてのユニット(この場合は気化技術を適用)にCO2 除去装置を設置設置するケース。(CO2)
○「環境に最もやさしい選択肢」
以下の組み合わせが検討された。
  • 触媒利用の選択的NOX 削減技術を新しいユニット(SCR 1)に適用する。(Combi1)
  • 石炭使用ユニットに改造される既設プラントおよび高炉ガス使用ユニット(SCR 2)にSCR 技術を適用する。(Combi2)
  • CO2 除去技術を適用する。(Combi3)
また、需要が低い場合よりもさらに15%少ない場合を想定した選択肢についても検討された。(LL)
様々な選択肢に関する計算結果は別紙のとおり。
検討の結果、環境に最もやさしい選択肢とされたのは、以下の組み合わせである。
石炭の硫黄含有率を低下、触媒利用の選択的NOx削減技術を適用、コージェネレーションの導入、新規石炭火力発電所は建設しない。CO2 は除去する。この前提によると、それぞれの排出量は以下のとおり。
: SO2 は6~9 kt/年、 NOX は15~19 kt /年、 CO2 は25~27 Mt /年
(4) 高圧送電網の接続
それぞれの送電線が、自然保護計画に定められた保全地域と交差し、または、「地域開発特別計画に関する第四の覚書」に記載された発電所設置に不適切な大河川流域を横切った場合の環境影響について検討されている。
(5) その他のエネルギー源の環境影響
1) 廃棄物の燃焼
廃棄物燃焼による発電については、廃棄物の投棄を避け、化石燃料の使用を減少させ、SOx、NOx、CO2の排出を削減し、残存物質の拡散を防ぐと評価されている。
2) 恒久的なエネルギー源
基本的には、化石燃料の使用を削減できると評価されているが、以下のようなマイナス面も有していると評価されている。
  • 太陽光発電:高コスト、システムは大量の材料を必要とし、広い土地スペースを占拠する。また、装置に重金属等有害物質が使用されていること。
  • 水力発電:魚類への影響
  • バイオマスの生産:大量のエネルギー消費、農作物の栽培スペースの占拠、水の大量消費、残滓の発生

5.知識と評価プログラムで欠けている部分

建設が認められたプラントと各種の選択肢が環境に及ぼす影響について調査が行われた際に、電力生産と環境保全に関する知識と情報にまだ欠けている部分が相当にあることが確認されたが、環境影響報告書 にはそれらの部分がまとめて示されている。また、この分野において発生しつつある環境公害に関して、知識と情報が欠けている点も示されている。

(例)

(別紙) 2010年の時点で集合的な発電方式が環境に及ぼす影響と燃料の投与との関係


選択肢/
ヴァリ
エー
ション

 排 出 量
  kt/年
SO2  NOx
 

酸性
降下物
mol/
 ha.a

CO2
排出量
Mt/a
 

残存物質の蓄積(2010)
flyash 石膏 石炭
       sludge
       (max)

外部費用
ct/Kwh NLG/年

 

基本
選択肢
L50P
L50K
L33K
H50P
H50K
H33K



22.5 31.8
13.1 33.0
15.3 33.1
29.1 37.8
14.1 39.8
16.0 39.7



 45
 30
 35
 55
 35
 35



50.3
49.9
49.0
65.2
64.5
61.4



0~2.5  1.1  1.5
  -   -   5.0
  -   -   3.0
0~5.0  2.5  1.5
  -   -   7.5
  -   -   4.5




n.v.t n.v.t



 

環境に
やさしい
選択肢


S 0.5
 






B.Alt-5.4
 






=B.Alt
 






B.Alt-
5~10





   0.6(L50P)
=B.Alt    =B.Alt
   1.9(H50P)






 n.b. n.b.
 

SCR1
L50P
L50K
L33K
H50P
H50K
H33K


    24.8
    21.8
≒B.Alt 21.8
    29.8
    24.9
    24.8




B.Alt
  -5

 




≒B.Alt


 




≒B.Alt ≒B.Alt ≒B.Alt


 


    115
    190
0.3  190
~0.4 135
    255
    255

SCR2
L50P
L50K
L33K
H50P
H50K
H33K


    17.2
    14.2
≒B.Alt 14.2
    22.2
    17.3
    17.2




B.Alt-
5~10

 




≒B.Alt


 




≒B.Alt ≒B.Alt ≒B.Alt


 



0.3  SCR1に
~0.4 おける
+n.b. コスト
    +n.b.
 

CO2
L50P
L50K
L33K
H50P
H50K
 



≒B.Alt
   ≒B.Alt


 




≒B.Alt


 


44.0
26.8
26.7
56.9
28.4
 




≒B.Alt ≒B.Alt ≒B.Alt


 


   610- 910
   1560-2340
4~6 1570-2360
   850-1280
   2430-3650
 

選択肢/
ヴァリ
エー
ション

排 出 量
  kt/年
SO2  NOx
 

酸性
降下物
mol/
 ha.a

CO2
排出量
Mt/a
 

残存物質の蓄積(2010)
flyash 石膏 石炭
       sludge
       (max)

外 部 費 用
ct/Kwh NLG/年

 

H33K

GNK
L50P enK
L33K
H50P enK
H33K

WPE


最も
環境に
優しい
選択肢
Combi 1


Combi 2
L50P enK
L33K
H50P enK
H33K

Combi 3
L50P enK
L33K
H50P enK
H33K

需要
レベル
が特に
低いシ
ナリオ
 




11.5 32.4
14.6 32.9
11.5 38.8
14.6 39.2

=B.Alt
   ≒B.Alt





≒S0.5 ≒SCR2
=B.Alt-5.4


 6.2 14.1
 9.0 14.2
 6.2 17.0
 9.0 17.1


 6.2 15.4
 9.5 15.2
 6.2 19.0
 9.5 18.9



11.5 19.6


 




 30
 35
 30
 35

≒B.Alt






B.Alt
  -15


 15
 20
 15
 20


 15
 20
 15
 20



 25


 

28.0


40.0
45.1
48.1
53.0

≒B.Alt






≒B.Alt




≒GNK




26.0
26.4
27.0
27.4



34.7


 




  -   -  1.5
  -   -  1.5
  -   -  1.5
  -   -  1.5

≒B.Alt    ≒B.Alt
    ≒B.Alt





=S0.5 =S0.5 =S0.5




 =GNK  =GNK  =GNK





 =GNK  =GNK  =GNK





 =GNK  =GNK  =GNK


 

   2430-3640



n.v.t  n.v.t



n.v.t  n.v.t






=SCR2  SO.5
+コスト



=Combi 1





=SCR2
+コスト S0.5
+コスト CO2



=SCR1


 

 ※  B.Alt = 基本的選択肢
 n.b. = 不明
 n.v.t = 計算できず