一般廃棄物処理計画策定における 戦略的環境アセスメント試行ガイドライン

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Ⅰ.試行ガイドライン

一般廃棄物処理計画策定における戦略的環境アセスメント試行ガイドライン

平成15年11月

環境省総合環境政策局

第1 戦略的環境アセスメント(SEA)について
 持続可能な社会の構築のため、国際的に戦略的環境アセスメント(Strategic Environ-mental Impact Assessement)の導入が大きな流れとなっている。既に米国では、30年前から国家環境政策法(NEPA)において、事業実施段階の環境アセスメントとともに戦略的環境アセスメントの要素が取り込まれ、また、EUにおいても平成16年7月までに計画・プログラムに対する戦略的環境アセスメントの法制化を加盟各国に求めるところとなっている。
 戦略的環境アセスメントとは、政策、計画、プログラムを対象とする環境アセスメントであり、事業に先立つ上位計画や政策などの段階で、環境への配慮を意思決定に統合(意思決定のグリーン化)するための仕組みである。
 戦略的環境アセスメントについては、環境影響評価法(平成9年公布)制定の際の中央環境審議会における議論や国会での審議、委員会の附帯決議においても課題とされており、環境基本計画(平成12年12月閣議決定)においては、政府として、上位計画や政策における環境配慮のあり方について、現状での課題の整理や内容・手法などを具体的に検討すること、国や地方公共団体における取組の実例を積み重ねること、環境配慮のあり方に関するガイドラインの作成を図ること、さらに必要に応じて制度化の検討を進めることとされている。
 環境省では、これまで、学識者等からなる戦略的環境アセスメント総合研究会を開催し、国内外の戦略的環境アセスメントの制度や事例等を調査し、それらを踏まえて、わが国での戦略的環境アセスメントの導入に当たっての基本的な考え方や今後の方向についての提言などを内容とする報告書をとりまとめた(平成12年8月)。
 引き続き、戦略的環境アセスメントの具体的な取組を促進するため、個別分野として廃棄物分野における戦略的環境アセスメントのあり方や廃棄物処理に係る計画類型ごとの導入可能性に関する検討を行い、平成13年9月に「廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの考え方」をとりまとめた。さらに平成14年度からは、廃棄物処理計画の策定を想定して具体的な進め方や考え方の検討を進め、市町村の一般廃棄物処理計画を対象にケーススタディを実施し、その結果を取りまとめた。本ガイドラインは、その過程で明らかになった戦略的環境アセスメントを試行するに当たっての重点事項や留意事項等を抽出し、一般廃棄物処理計画策定における戦略的環境アセスメント試行のためのガイドラインとして整理したものである。



第2 本ガイドラインの目的
 戦略的環境アセスメントについては、わが国においては、一部の地方公共団体において制度化への取組が進められているところであるが、具体的な実施事例はごく少数にとどまっているのが現状である。当面はできるところから取り組み、具体的事例を積み重ねることが求められている。
 本ガイドラインは、環境省が平成13年9月に廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの基本的考え方や進め方の例についてとりまとめたことを受けて、特に大都市を想定した上で実際に市町村が一般廃棄物処理計画を策定する際に、戦略的環境アセスメントを実施するに当たっての具体的な進め方や留意事項を提示することを通じて、こうした先進的な取組を促し、戦略的環境アセスメントの実施事例を積み重ねていくことを目的としている。本ガイドラインが活用され、一般廃棄物処理計画の策定における戦略的環境アセスメントの取り組みが進められることを期待するものである。
 なお、一般廃棄物処理計画の策定に際し戦略的環境アセスメントをすべての市町村において実施することは現状では困難と思われる。このため、戦略的環境アセスメントを実施するか否かについては、まず計画策定者である市町村の自主性が尊重されることが必要である。また、実施する場合には、本ガイドラインに示した考え方や留意事項等を活用しつつ、個々の計画の策定手続や内容、地域の特性等に応じた工夫が柔軟に行われる必要がある。


第3 対象とする計画
 本ガイドラインの対象とするのは、計画・プログラムの段階に当たる、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条第1項の一般廃棄物処理計画のうち、ごみ処理に係る部分である。


第4 戦略的環境アセスメント導入の意義
1 ごみ処理システム全体の環境負荷の低減
  ごみ処理については、収集・運搬・処理・処分など様々な過程があり、排出抑制、適正な循環利用、適正処分の観点からの環境配慮に加えて、ダイオキシン類や地球温暖化など様々な環境要素の観点からの環境負荷の低減が求められている。その際、様々な環境要素のトレードオフ関係も視野に入れた環境影響の総合的な評価が必要である。
  一般廃棄物処理計画の策定に当たって戦略的環境アセスメントを導入することにより、ごみ処理システム全体から生じる環境影響について総合的に評価し、システム全体の環境負荷の低減が進むことが期待される。
2 客観性、信頼性の向上
  循環型社会の形成に向けた様々な施策を進めていくためには、ごみ問題やごみ処理に係る環境問題に対する住民等の関心は極めて高く、環境配慮について十分な説明が求められることが多い。また、これらの施策を推進するためには、廃棄物の排出者であり、対策の担い手でもある住民や事業者などの幅広い主体の理解と協力のもとに施策を進めていく必要がある。このため、施策の立案検討の段階など、より早期の段階から施策の必要性や環境配慮について情報が提供され、住民等の参画を図っていくことを通じて、環境保全の観点からより良い計画決定を行っていくことが求められている。
  また、このことにより、住民等との情報交流を通じて、計画内容の意思決定過程における環境配慮について、透明性・客観性の向上が図られ、ひいては計画等の信頼性、社会的支持の向上につながることが期待される。


第5 本ガイドラインの構成
本ガイドラインは、環境省が一般廃棄物処理計画策定における戦略的環境アセスメントのケーススタディの検討を進める過程で明らかになった戦略的環境アセスメントを試行する上での実施方法、重点事項及び留意事項等をとりまとめたものである。
 なお、本ガイドラインは、別添のケーススタディを併せて参照することで戦略的環境アセスメントのより具体的な内容を確認できるようにしており、第6の文中に(CS・ )として参照すべきケーススタディの章番号を記している。

第6 SEA試行の進め方

1.計画の策定開始とSEA実施体制の整備(CS・1)

計画策定の本体業務として行う事項 SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

・廃棄物担当組織において、市町村一般廃棄物処理計画(以下、「計画」という。)を策定することを決定する。

 

・計画策定に当たり、廃棄物担当組織内にSEAを行う体制(以下「SEAチーム」という。)を構築する。

・環境アセスメント担当や環境基本計画作成担当等環境全般を担当する組織(以下「環境担当組織」という。)とSEAの実施全般にわたって、緊密な連携が図られるようにする必要がある。 

・計画策定に当たってSEAを行うこと及びその中でどのような意見募集を行う予定であるかについて、公表することが望ましい。

・SEAの実施に関し、ホームページなどを通じ、SEAの実施期間全体にわたって、状況の報告を行うとともに、常時意見を受け付けることが望ましい。

・環境保全に関係や関心のある団体に意見を聴くなど、関係や関心のある人がSEAの実施に積極的に関われるよう措置することが望ましい。



2.環境配慮方針の策定(CS・2,3,4)
計画策定の本体業務として行う事項   SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

・廃棄物の発生量削減や再資源化推進など、計画の目的や地域の特性等から抽出される前提条件等を明らかにする。

計画の目的・前提条件等

・地域の環境の状況、環境基本計画等既存の環境関連計画等から、環境保全上着目すべき事項や環境保全上の目標を整理する。その際、既存文献の調査に加え、環境に関する専門家や環境担当組織の意見を聴取する。

・少人数の説明会やワークショップの開催、アンケートなどにより、地域住民等広く一般の意識、意見を調査することが望ましい。環境保全に関係や関心のある団体のヒアリングを行うことも考えられる。

・計画の目的がSEAチームから提示された環境配慮方針に沿っているか否かを確認し、必要があれば修正する。

環境配慮方針

・環境保全上着目すべき事項、環境保全上の目標をもとに、計画策定に当たり、一般廃棄物処理について環境保全に関し重視すべき事項を明らかにした環境配慮方針を策定する。

・環境配慮方針の策定に当たっては、計画策定自体のプロセスと十分調整しつつ策定することが望ましい。



3.複数案設定の方針の策定(CS・5)
計画策定の本体業務として行う事項 共同して方針策定

SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAと共同して設定する。)

・環境配慮方針に示された環境保全に関して重視すべき事項や計画策定上の課題を踏まえ、複数案設定の観点を抽出し、複数案設定の方針として策定する。

 

・複数案設定の方針を検討する際には、現行計画を継続した場合の将来の状況をベースラインとして示すため、現行計画を継続する案(No 
Action案)を含ませることが必要である。

 



4.複数案の設定(CS・8)
計画策定の本体業務として行う事項 共同して
複数案設定
SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAと共同して設定する。)

・複数案設定の方針に基づき、環境配慮方針、計画の目的、前提条件等を踏まえつつ、技術的に実現可能性があり、比較検討する意味がある複数案を設定する。

・複数案を検討する際には、現行計画を継続した場合の将来の状況をベースラインとして示すため、現行計画を継続する案(No Action案)を含ませることが必要である。
・必要に応じ、計画として取り得る選択の幅を示す観点から、多様な選択肢を示す案を検討する。
・ただし、複数案の数が多過ぎると、かえって分かりにくく比較が困難になるほか、SEAの実施に係る負



5.調査・予測・評価の項目及び手法の選定(CS・9)
計画策定の本体業務として行う事項 SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAとしての作業のみ)

 

・複数案について、環境配慮方針を踏まえてどのような項目について、どのような内容の調査、予測、評価を行うか(以下、「評価手法等」という。)を検討する。

・評価手法等を選定する際には、[1]地域住民等一般がその評価書類を読んで内容を理解し、必要な意見を述べることができるようにすること、[2]計画決定権者(市町村長)がその評価書類を読んで最終決定に活かす情報を得やすいようにすること、の2点を考慮に入れる必要がある。
・複数案を比較評価するために必要な範囲で調査、予測を行う。基本的には既存の資料等に基づいて調査、予測を行うこととし、必ずしも詳細な調査に基づく定量的な分析を行う必要はない。ただし、複数案の比較評価にとって重要な論点に関して必要があるような場合は、新たな調査を行うことを検討する。



6.複数案設定の方針、複数案及び評価手法等の公表及び意見の募集と対応(CS・6,7)
計画策定の本体業務として行う事項  

 

SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAと共同して作業を行う。)

意見

・環境配慮方針を策定した後、実際に調査・予測・評価を開始するまでの間に、環境配慮方針、複数案設定の方針、複数案及び評価手法等について、その公表の段階に応じて、地域住民等広く一般に公表して一定の期間意見を求める。この場合、計画の目的や地域特性等の前提条件等についても明らかにして検討過程を示す必要がある。

・一般的に意見を求めるだけでなく、説明会などを通じて関係者の意見を積極的に集める工夫をすることが望ましい。この場合も、環境保全に関係や関心のある団体のヒアリングを行うことが考えられる。

 

共同して
検討
・地域住民等一般の意見を踏まえて、環境配慮方針、複数案設定の方針、複数案及び評価手法等に検討を加え、必要がある場合には、環境配慮方針の修正、複数案設定の方針の修正、複数案の追加や変更、評価手法等の追加・変更等を行う。  
    ・環境配慮方針、複数案設定の方針、複数案及び評価手法等については、調査・予測・評価を開始する前までに公表することが望ましい。この際には、提出された意見について、どのように扱ったかを明らかにする必要がある。


7.調査・予測・評価の実施(CS・10,11)
計画策定の本体業務として行う事項   SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAとしての作業のみ)

・決定した内容に従って、調査・予測・評価を行う。

・評価に当たっては、環境分野の審議会等に意見を求めるなど専門家の参画を求めることが望ましい。
・評価に当たっては、不確実性のある点については、その内容と理由を明示し、不確実である旨を明らかにする必要がある。
・将来の地域の人口予測など外部要因によって予測結果に差が生じるものについては、幅のある評価を行うことが望ましい。
・今後、計画を構成する個別施設の整備についての環境アセスメントが行われる場合に重視すべき点がある場合は、その点を記述しておくこととする。



8.調査・予測・評価結果の公表及び意見の募集と対応(CS・12,13)
計画策定の本体業務として行う事項



SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

(SEAとしての作業のみ)

・調査・予測・評価結果を取りまとめ、地域住民等広く一般に公表し、一定の期間意見を求めるとともに、環境担当組織に提出して意見を求める。

 

・調査・予測・評価結果の取りまとめに当たっては、必要な意見が得られるよう、地域住民等広く一般にわかりやすくする必要がある。また、計画決定権者に判断材料としての情報を伝えるための書類という側面もあるため、概要版と詳細版を分けるなどの工夫が必要である。生データや分析手法等の分析根拠を参考資料として添付することなどの工夫がなされることも望まれる。
・一般的に意見を募集するだけでなく、説明会の開催等を通じて関係者の意見を積極的に集める工夫を行うことが望ましい。この場合も、環境保全に関係や関心のある団体のヒアリングを行うことが考えられる。
・6.の段階で提出された意見について、どのように扱ったかを明らかにする必要がある。

報告書

・提出された意見を踏まえて、調査・予測・評価結果に検討を加え、必要な修正等を行うとともに、提出された意見の取扱いについて書き加え報告書を作成し、地域住民等広く一般に公表するとともに、環境担当組織に提出する。

・報告書の作成に際しては、環境分野の審議会等専門家の意見を聴く機会を設けることが望ましい。



9.計画の決定(CS・14)
計画策定の本体業務として行う事項   SEAとして行う事項
SEAとして行うべき事項 配慮事項・行うことが望ましい事項

・SEAの結果を踏まえ、計画作成チームが社会的、経済的な評価等も加えて総合的に判断して計画を策定し、計画決定権者が最終決定して公表する。また併せて環境担当組織に提出する。
・決定した計画を公表する際には、SEAの結果をどのように反映したかについて、できるだけ具体的に明らかにする。

  

・SEAにおける複数案は環境影響の差異を比較することによって環境面からの情報を計画決定権者に伝えるために設定するものであり、必ずしも複数案のどれかがそのまま最終的な計画になるわけではないことに留意する。

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