3.今後の課題
今後の環境影響評価を実施していく中で、より良い運営と技術の向上を目指していくという観点において、以下の点を今後の課題として掲げる。
●他分野との関連性への配慮
水環境は、生態系の基礎をなす重要な基盤的要素となっているほか、水辺における人と自然との触れ合い活動の場などの環境要素との関わりが深いことから、他の環境要素との相互関係に留意した環境保全措置、評価及び事後調査の考え方についての検討を進める必要がある。
●生物の活動に関わる変動等を対象とした事後調査の考え方
富栄養化した湖沼や海域の水質は、生物の活動による変動が大きく、また、水底への懸濁物の堆積などによる底質性状の変化というような長期的な変化が考えられる場合もある。
このような生物の活動や底質性状の変化などの長期的な変化を対象として、事業実施による影響を把握し評価するための事後調査方法の考え方については、現段階では知見が十分ではなく、今後の調査・研究が望まれる。
●公表された事後調査データの集積・整理方法
事後調査データは、不確実性を伴う予測技術や知見が不十分な環境保全措置に関する予測精度や環境保全措置の効果に関して重要な情報源となりうるものである。
また、事業実施による影響の有無に関わらず、自然にあるいは人為的な影響を受け、変動している環境を対象に、事業実施による影響を適切に評価できるような事後調査方法を確立していく上でも重要な情報となる。
将来の環境影響評価技術の向上を考える上で、公表された事後調査結果に期待される役割は大きく、積極的に公表されることが重要であるが、事業者の自主的な公表に頼っているだけでは、情報が分散し、その調査結果が十分に活用できない可能性も考えられることから、公表された事後調査結果を集積・整理し、誰でも利用できるような仕組みを作っていく必要があると考えられる。
●水循環系の環境影響評価手法についての調査・研究
本検討においては、水循環的視点にも留意した検討を行ったが、水循環系そのものを対象とした環境保全措置、評価及び事後調査の手法は現状では確立されているとはいえない状況にあることから、水循環系を対象にした環境影響評価手法について、調査・研究を進めていく必要がある。