表3-1 植物群ごとの留意点(1/7)
維管束植物(陸生植物) |
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-特性 ・ここでとりあげた陸生植物は陸上で生活する維管束植物である。ただし、湿地や湿原に生 育する種を含む。 -調査手法 -調査時期・頻度 ・生育量や生長量を測定する場合、落葉性の種は季節ごとに大幅な差があるため、被度の測 定には夏期、年間生長量の測定には秋期など、目的に応じた調査時期を設定する。 ・種により観察、同定可能な季節が異なるため、年間を通じて必要な時期に調査できるよう 時期の設定に注意する。 -留意すべき影響要因 ・湿地は特定の地形・地質によって維持される複雑な水循環によって成立していることが多 いので、直接的な破壊がなくても水循環が妨げられることが大きく影響する場合がある。 ・田畑などの人為的な土地利用や、二次林の下草刈りなどの人為的管理に依存して生育する 種もあるので、事業に伴って周辺での管理が放棄されることによる影響を受ける場合がある。 ・河川上流域では細粒土砂の堆積地が広がることは稀で、礫の堆積地や岩上、岩隙が植物の 主な生育立地となる。そのため、流入土砂の減少やアーマー化よりもむしろ、水流の減少に よる堆砂の影響が大きい。 ・河原植生は土壌が薄く貧栄養な砂礫地に分布することが多いため、土壌の富栄養化が進む と競争に強い外来種の侵入を招くことがある。 ・砂浜海岸は安定帯、半安定帯、不安定帯に分けられ、安定帯ではクロマツなど木本植物が 優占し、不安定帯では植物は定着しない。砂浜に特有の植物種は半安定帯に生育するものが 多い。そのため、海岸浸食で砂浜が減少することによっても砂浜海岸性の種の生育立地は減 少する。 ・砂浜海岸性の植物にとっては、人の侵入による踏みつけの影響が大きいため、工事中、供 用後の踏圧にも注意が必要である。 -予測・評価手法 -保全方針検討の観点 ・移植が行なわれることが多いが、移植先において自生地と同じ環境を確保することが難し いなど様々な問題が伴うため、まず既存の生育地の保全を検討すべきである。移植を行なわ ざるを得ない場合には3-23ページで述べた点に十分留意する。 ・花粉媒介昆虫や種子散布動物など、保護する種の生活史に関わる他の生物の生息環境や移 動能力等も考慮して対策を考える必要がある。 -事後調査手法 ・二次林では遷移や管理方法の変化等によって、上層に大きな変化がなくても下層の群落構 造や種組成が変化することがあるため、林床性の種については、種そのものだけでなく、群 落構造を対象とした調査を行う必要がある。 -事後調査期間 |