環境影響評価法の概要

2.環境影響評価法の概要

2-1 法律の概要

(2) 概要

1.目的(第1条)

 環境基本法第20条は、環境影響評価を推進するために国が必要な措置を講ずることを求めている。これを受けて、本法は、国の制度として、環境影響評価の具体的な手続等を規定。
 本法では、目的として、次の点を明らかにしている。

[閣議アセスからの変更点]

   閣議アセスは、行政指導ベースのものであり、その遵守はそれぞれの主体の任意の協力に期待するもの。法律による制度として定めることにより、権威と信頼あるルールの下、手続が確実に遵守され、円滑な実施が図られることになる。

2.定義(第2条)

ア)「環境影響評価」(第2条第1項)
本法において「環境影響評価」とは、
事業実施の環境影響について環境の構成要素に係る項目ごとに調査、予測及び評価、
その過程における事業に係る環境の保全のための措置の検討、
その措置が講じられた場合における環境影響の総合的な評価
という事業者内部において行われる行為を指すもの。
 なお、地方公共団体や住民等といった外部の者の意見提出や、許認可等への反映など外部手続については、この定義に含まれず、「環境影響評価その他の手続」の「その他の手続」に該当するもの。また、「環境影響」には、事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定されている事業活動その他の人の活動が当該事業の目的に含まれている場合には、これらの活動に伴って生ずる影響が含まれる。


イ)対象事業関係
  (「第一種事業」:第2条第2項、「第二種事業」:第2条第3項、「対象事業」:第2条第4項)
 本法の対象とする事業については、規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれがあり、かつ、国が実施し、又は許認可等を行う事業を選定。
 必ず環境影響評価を行わしめる一定規模以上の事業(「第一種事業」)を定めるとともに、第一種事業に準ずる規模を有する事業(「第二種事業」)を定め、個別の事業や地域の違いを踏まえ環境影響評価の実施の必要性を個別に判定する仕組み(スクリーニング)を導入。なお、第一種事業及び第二種事業の具体的な事業種や規模については、政令で規定。
 本法における「対象事業」とは、第5条(方法書の作成)以降の手続が義務づけられる事業であり、第一種事業及び環境影響評価の実施が必要と判定された第二種事業を指すもの。また、「第二種事業」は、スクリーニングの判定が行われる前の事業を指し、スクリーニングの判定が行われた後は第二種事業とは概念されない。

 [閣議アセスからの変更点]

   法律では、対象となる事業種として発電所を加え、また、政令においては、在来鉄道、大規模林道を追加し、対象事業を拡大。
 第二種事業について、個別の事業や地域の違いを踏まえ環境影響評価の実施の必要性を個別に判断する仕組み(スクリーニング)を導入。
  ウ) 「事業者」(第2条第5項)
本法における「事業者」とは、「対象事業を実施しようとする者」と定義。

図 対象事業者に係る概念図

3.国等の責務(第3条)


4.環境影響評価の手続
ア)スクリーニング:第二種事業についての判定(第4条)

 イ)スコーピング:環境影響評価方法書の手続(第5~10条)

[閣議アセスからの変更点]

 方法書に係る手続は、早い段階からアセス手続が開始されるよう、調査の方法について意見を求める仕組み(スコーピング)であり、本法で新たに導入されたもの。


ウ)環境影響評価の実施(第11~13条)

[閣議アセスからの変更点]

 スコーピング手続を導入したことに伴い、環境影響評価の項目及び手法の選定という行為を法律上、明示。また、事業者が必要に応じ主務大臣の技術的助言を求めることができる旨規定。
 指針は環境基本法第14条各号に掲げる事項の確保を旨として定められることとされ、評価の対象となる環境の保全の範囲は「公害の防止及び自然環境の保全」に限定されず、環境基本法での環境保全施策の対象が広く評価対象となる。

 エ)環境影響準備書の手続(第14~20条)

事業者は、ウ)の結果について、環境影響評価準備書(準備書)を作成し、関係地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に送付するとともに、公告・縦覧し、説明会を開催。
  環境の保全の見地からの意見を有する者は、環境保全上の意見を提出(縦覧期間は1月間。意見提出期間は、縦覧期間+2週間)。意見の概要及びこれに対する事業者の見解は、関係都道府県知事及び市町村長に送付。
 都道府県知事は、市町村長の意見を聴いた上で、事業者に対し、環境保全上の意見を提出。(知事の意見提出期間は120日。)

[閣議アセスからの変更点]

 準備書の記載事項として、環境保全対策の検討経過(第14条第7号ロ)、事業着手後の調査(同号ハ)等を新たに追加。これにより、必要に応じ「代替案」の検討、フォローアップが実施される。
 閣議アセスで意見提出者を関係地域の住民に限定していたのを撤廃し、イ)の方法書段階とあわせ意見提出の機会を2回設けることにより住民参加の機会を拡大。

 オ)環境影響評価書の手続(第21~27条)

 事業者は、エ)の手続を踏まえて、環境影響評価書(「評価書」)を作成し、許認可等権者へ送付。
 評価書について、環境大臣は必要に応じ許認可等権者に対し環境の保全上の意見を提出し、許認可等権者は、当該意見を踏まえて、事業者に環境保全上の意見を提出。
 事業者は、環境大臣の意見や許認可等権者の意見を受けて、評価書を再検討し、必要に応じ追加調査等を行った上で評価書を補正。
 事業者は、最終的な評価書を公告・縦覧(縦覧期間は1月間)。


  [閣議アセスからの変更点]
 閣議アセスでは、環境庁長官は主務大臣から意見を求められたときしか意見を述べられなかったが、本法では環境大臣が必要に応じて意見を述べることが可能。
 閣議アセスでは、環境庁長官や主務大臣の意見が求められる時期が、評価書の公告後であったが、本法では公告前になり、国の機関の意見を踏まえ評価書の補正ができることとなった。


 カ)対象事業の内容の修正等(第28~30条)


 キ)対象事業の実施の制限(第31条)


 ク)評価書の公告後における環境影響評価の再実施(第32条)

 [閣議アセスからの変更点]
 本法による環境影響評価が既に行われた事業について、長期間にわたって未着工であり環境の状況が大きく変化している等の事情の場合に、手続を再実施できる旨の規定を新たに設けたもの。


 ケ)許認可等における環境保全の審査(第33~37条)

 [閣議アセスからの変更点]
 許認可等に係る個別法の審査基準に環境の保全の視点が含められていない場合にあっても、アセスメントの結果に応じて、許認可等を与えないことや条件を付することができることとなった。

コ)事業者の環境保全上の配慮(第38条)

 事業者は、評価書に記載されているところにより、環境の保全について適正な配慮をして事業を実施することが義務づけられる。

5.地方公共団体の条例との関係(第61条、第62条)

 第二種事業(スクリーニングの判定前のもの)にも対象事業にも該当しない事業についての一連の環境影響評価手続、第二種事業や対象事業に係る環境影響評価 についての当該地方公共団体における手続(*)に関する事項を条例で定めることは妨げられない。
 *例えば首長意見の形成のために地方公共団体が公聴会や審査会を開催することなど。

6.施行期日(附則第1条)

 本法は、法律の公布日(平成9年6月13日)から起算して2年以内(平成11年6月12日)に施行される。
 ただし、目的、定義(第一種事業、第二種事業等の規模要件を定める政令を含む。)、環境庁長官(当時)が定める基本的事項は、 法律の公布日から起算して6ヶ月以内(平成9年12月12日)に施行される。また、主務官庁が定める各種指針(スクリーニングの判定・項目の選定・環境の保全のための措置)、 方法書の手続に係る総理府令・主務省令、経過措置に係る相当書類(次項参照)の指定・公表の規定、法律の施行前に方法書の手続を行うことができる旨の規定は、公布日から起算して1年以内(平成10年6月12日)に施行される。

7.経過措置(附則第2~5条)

 条例や行政指導などに従い、この法律により作成されるべき各種書類に相当する書類が、法律の施行前に既に作成されている事業については、この法律における該当書類が既に作成されたものとみなして、中途からこの法律の手続を開始することができる。
 条例や行政指導等の手続におけるどの書類が、この法律のどの書類に相当するかについては、公布日から起算して1年以内(平成10年6月12日)に指定され、公表される。
 法律の施行前に、免許等が与えられている事業などは、この法律の手続の適用を受けない。ただし、長期間未着工の場合などについて、事業者が自主的にこの法律の手続を実施することができる。
 法律の施行後に事業者となるべき者は、法律の施行前に自主的に方法書の手続を開始することができる(前項参照)。


図 環境影響評価法の手続の流れ(GIF 29kB)