環境影響評価法の概要

1.環境影響評価法の制定の経緯

1-4 中央環境審議会における審議

 中央環境審議会に対する諮問は、平成8年6月28日に行われた。諮問文の内容は次のとおりである。諮問は、内閣総理大臣(当時橋本総理が海外出張中のため、臨時代理の梶山官房長官名となっている。)から行われた。環境基本法第41条には、中央環境審議会の事務として、「内閣総理大臣の諮問に応じ、環境の保全に関する基本的事項を調査審議すること」とされているが、今後の環境影響評価制度の在り方については、環境の保全に関する基本的事項とみなされ、内閣総理大臣からの諮問とされたものである。諮問は、中央環境審議会企画政策部会(部会長:森嶌昭夫上智大学教授、部会長代理:清水汪農林中金総合研究所理事長)に付議され、審議は同部会において行われた。
 また、中央環境審議会の諮問に併せて、関係省庁の局長クラスからなる幹事会が審議会委員を補佐するために設けられた。幹事会参加省庁は、公害等調整委員会、北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、沖縄開発庁、国土庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省及び自治省の18行政機関である。さらに、平成8年7月1日付けで、環境影響評価制度推進室が環境庁内に設置され、同室が審議会の事務局を務めた。

 企画政策部会における審議の経緯は、表2のとおりである。同部会においては、まず、国民各界各層の意見を幅広く審議に反映させるため、ヒアリング及び一般意見の受付を実施した。ヒアリングは、部会ヒアリングを8月1日、8月8日及び9月17日の3回にわけて、関係省庁、各種団体(経済団体、環境関係NGO等で全国的に活動を行っている団体)及び公募に応じた団体について実施したほか、地方公共団体、地域的な活動を行う団体及び個人について公募等によるブロック別ヒアリングを地域のブロック毎に6カ所(開催県の県庁所在地)で実施した。さらに、今後の環境影響評価制度はいかに在るべきかについての意見を、郵送、FAX又は電子メールを通じて、9月10日締切で受け付けた。また、ヒアリング会場においても、一般意見を受け付けた。
 ヒアリングで出された意見や一般意見受付を通じて集められた意見は、事務局において「今後の環境影響評価制度の在り方に関する国民各界各層の意見の概要」として取りまとめられ、10月1日に、企画政策部会に報告された。意見提出者の総数は517人(団体を含む:部会ヒアリング23、ブロック別ヒアリング89、一般意見405)であり、カテゴリー別に意見を分類した結果、「意見の概要」に掲載された意見は延べ4596件であった。
 企画政策部会では、意見のとりまとめを受けて、10月から11月にかけて、12の課題毎に自由討議を行った。12の課題は以下のとおりである。

  1.  早期段階での環境配慮と環境影響評価の実施時期
  2.  対象事業
  3.  評価対象
  4.  評価の実施
  5.  住民の関与
  6.  評価の審査
  7.  許認可等への反映
  8.  評価後の手続
  9.  国と地方の関係
  10.  環境影響評価を支える基盤の整備
  11.  その他の事項
  12.  総論的事項
 

項目別の自由討議までは、審議は公開で行われた。自由討議を踏まえ、議論の集約のためのたたき台を作成するため、小委員会(委員長:清水汪部会長代理)が設けられ、11月に3回にわたり小委員会における審議が行われた。小委員会で作成された「議論の集約のためのたたき台」は、12月に部会に報告され、たたき台について、部会において2回にわたり審議が行われた。この審議を踏まえて、平成9年1月に、小委員会において答申案の起草が行われた。起草された答申案は、公開の部会において2回にわたり審議され、一部修正された上、2月10日に審議会として法制化に向けた答申を公表した。
 なお、平成8年9月25日から26日にかけて、「環境影響評価制度に関する国際シンポジウム」が環境庁の主催、国際影響評価学会(IAIA)及び(財)地球・人間環境フォーラムの共催により、海外から5名の専門家を招いて東京にて開催された。

表2 中央環境審議会における審議経緯

年  月  日 審 議 経 緯
平成8年6月28日 内閣総理大臣より中央環境審議会に対し「今後の環境影響評価制度の在り方について」諮問、企画政策部会に付議
「今後の環境影響評価制度はいかに在るべきか」についての意見の募集(~9月10日まで)(郵送、ファックス、電子メール、パソコン通信(EICネット)による)
7月26日 環境影響評価制度総合研究会報告書等について
8月 1日 部会ヒアリング(関係省庁、各種団体(経済団体、環境NGO等で全国的に活動を行っている団体))
8月 8日 部会ヒアリング(公募に応じた団体)
8月20日 ブロック別ヒアリング(関東ブロック:開催地 東京都)
8月22日 ブロック別ヒアリング(中国・四国ブロック:開催地 広島市)
8月27日 ブロック別ヒアリング(北海道・東北ブロック:開催地 仙台市)
8月29日 ブロック別ヒアリング(近畿ブロック:開催地 大阪市)
9月 5日 ブロック別ヒアリング(中部・北陸ブロック:開催地 名古屋市)
9月10日 ブロック別ヒアリング(九州・沖縄ブロック:開催地 福岡市)
9月17日 部会ヒアリング(関係省庁、各種団体(経済団体、環境NGO等で全国的に活動を行っている団体))
10月 1日 項目別審議
10月11日 項目別審議
10月31日 項目別審議
11月11日 項目別審議
11月19日 議論の集約のためのたたき台の作成(環境影響評価制度小委員会)
11月25日 議論の集約のためのたたき台の作成(環境影響評価制度小委員会)
12月 6日 議論の集約のためのたたき台の作成(環境影響評価制度小委員会)
12月12日 議論の集約のためのたたき台の審議
12月25日 議論の集約のためのたたき台の審議
平成9年1月17日 答申案の起草(環境影響評価制度小委員会)
2月 3日 答申案の審議
2月10日 答申の取りまとめ、同日内閣総理大臣へ提出、公表