環境影響評価法の概要

1.環境影響評価法の制定の経緯

1-2 閣議決定要綱に基づく環境影響評価制度

 「環境影響評価の実施について」の閣議決定は、その趣旨等を述べた前文、環境影響評価の対象事業、手続等を定めた環境影響評価実施要綱(以下「閣議決定要綱」という。)及び環境影響評価実施推進会議の構成等を定めた別紙から構成されていた。
 閣議決定要綱は、旧法案の要綱を基本として定められたものであり、対象事業、手続及び免許等の行政への反映が規定されていた。対象事業については、国が実施し、又は免許等で関与する事業で、規模が大きく、環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるものとして、表1に示す道路、ダム、飛行場等11種類の事業が定められていた。

 事業者が行う手続等は図1に示すとおりであり、事業者は指針に従って事前に調査、予測及び評価を行って環境影響評価準備書を作成し、これを関係地域を管轄する都道府県知事等に送付するとともに、公告・縦覧、説明会の開催等の住民に対する周知の措置を行い、関係住民の意見、関係都道府県知事の意見を聴いて環境影響評価書を作成し、これを関係都道府県知事等に送付するとともに、公告・縦覧を行うべきことが定められていた。
 さらに、対象事業の免許等を行う者は、免許等に際し、当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて、環境影響評価書の結果に配慮することとされていた。その際、環境庁長官の意見(主務大臣は、環境への影響について特に配慮する必要があると認められる事項があるときに環境庁長官の意見を求めることとされている。)が述べられているときは、その意見に配意して審査等を行うこととされていた。

 閣議決定要綱においては、国の行政機関(主務省庁)が環境庁と協議して各事業ごとの具体的な技術指針の策定等を行い、事業者に対し環境影響評価を行うよう行政指導することとされていた。このため、「環境影響評価実施要綱に基づく手続等に必要な共通的事項」及び主務大臣が調査等の指針を定める際に考慮すべき「環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための基本的事項」が、昭和59年11月にそれぞれ環境影響評価実施推進会議(内閣官房副長官を議長に関係省庁の局長クラスで構成)及び環境庁長官によって決定され、各主務省庁が定めるべき対象事業の具体的な規模要件等や技術指針については、昭和60年12月1日に公害防止事業団(現:環境事業団)事業環境影響評価技術指針が施行されたのを始めとして、順次技術指針が施行された。

<閣議決定要綱の対象事業一覧>

(1)道路の新設など
  ・ 高速自動車国道
  ・ 一般国道(4車線10km以上のもの)
  ・ 首都高速道路、阪神高速道路、指定都市高速道路(4車線以上のもの)
(2)ダムの新築その他河川工事
  ・ ダム(湛水面積が200ha以上で一級河川に係るもの)
  ・ 堰(湛水面積が100ha以上で新築及び改築後の湛水面積が100ha以上となる新築)
  ・ 湖沼開発、放水路(土地改変面積100ha以上のもの)
(3)鉄道の建設など
  ・ 新幹線鉄道
(4)飛行場の設置など
  ・ 滑走路2500m以上のもの
(5)埋立・干拓(廃棄物最終処分場を含む)
  ・ 面積が50haを超えるもの
  ・ 廃棄物最終処分場については、面積が30ha以上のもの
(6)土地区画整理事業
  ・ 面積が100ha以上のもの
(7)新住宅市街地開発事業
  ・ 面積が100ha以上のもの
(8)工業団地造成事業
  ・ 面積が100ha以上のもの
(9)新都市基盤整備事業
  ・ 面積が100ha以上のもの
(10)流通業務団地造成事業
  ・ 面積が100ha以上のもの
(11) 特別の法律により設立された法人によって行われる土地の造成(住宅・都市整備公団、地域振興整備公団、環境事業団、農用地整備公団の事業)
    ・ 面積が100ha以上のもの
    ・ 農用地については、面積が500ha以上のもの
(12) (1)~(11)に準ずるもの(現在、定められた事業はない。)

 閣議決定要綱に基づく環境影響評価は、昭和61年8月に評価書が公告された淀川左岸線(道路)を最初に、平成8年3月末現在までに304件の事業が要綱の手続を終えている。このうち、事業所管大臣から環境庁長官の意見を求められたのは、計21件でいずれも道路事業となっている。