環境影響評価法第7章第1節の都市計画に定められる対象事業等に関する特例の施行について

[改定]
平成11年6月11日 環企評224・建設省都計発

(環境庁企画調整局長・建設省都市局長から各都道府県知事あて)
 環境影響評価法(平成9年法律第81号。以下「法」という。)の施行については、平成10年1月23日付け環企評第19号をもって環境事務次官から通知したところであるが、その詳細のうち、法第7章第1節の都市計画に定められる対象事業等に関する特例(以下「対象事業等特例」という。)の施行については、下記のとおりであるので、貴職におかれても十分御留意の上、格段の御協力をお願いするとともに、貴管下市町村にも周知方お願いいたしたい。
 なお、本通知は、法に係る事項についてのものであり、現時点において未だ制定されていない政令事項及び省令事項に係るものについては、当該事項に係る政令及び省令が制定された後に改めて通知する旨申し添える。
 記
第1 対象事業等特例の基本的考え方
 1 対象事業等特例の概要
   第二種事業若しくは対象事業が市街地開発事業として都市計画法(昭和43年法律第100号)の規定により都市計画に定められる場合における当該第二種事業若しくは対象事業又は第二種事業若しくは対象事業に係る施設が都市施設として同法の規定により都市計画に定められる場合における当該都市施設に係る第二種事業又は対象事業については、当該都市計画を定める都道府県知事又は市町村(二都府県にまたがる都市計画にあっては、建設大臣又は市町村。以下「都市計画決定権者」という。)が、事業者に代わるものとして、第二種事業又は対象事業についての環境影響評価その他の手続を行うこととした。
   また、対象事業については、当該対象事業又は対象事業に係る施設(以下「対象事業等」という。)に関する都市計画の決定又は変更をする手続と併せて法の規定による環境影響評価その他の手続を行うこととした。
 2 対象事業等特例の必要性
  (1) 都市計画決定権者が事業者に代わるものとして環境影響評価その他の手続を行う理由
    都市施設又は市街地開発事業について都市計画決定がなされた場合には、当該都市計画の区域内においては建築物の建築等について許可が必要となるなどの権利制限が課せられることにかんがみれば、都市計画決定の際に環境影響評価その他の手続が行われていない場合には、事後の環境影響評価その他の手続によって当該都市計画を修正すべきとの判断が行われる可能性が残されることとなるので、都市計画の法的安定性を大きく阻害することとなる。一方、事業者が環境影響評価その他の手続を行っていない限り都市計画決定権者が都市計画決定できないとするのは、まちづくりの基本的な権能を著しく減殺することとなる。
    環境影響評価その他の手続は、事業計画の熟度を高めていく過程において十分な環境情報のもとに適正な環境保全上の配慮を行っていくことをその本質とするものであり、環境影響評価その他の手続により得られた情報を事業計画に相当する都市計画の内容の検討に生かせるような仕組みとすることが適当である。
    したがって、対象事業等が都市計画に定められる場合には、都市計画決定権者が事業者に代わるものとして環境影響評価その他の手続を行うこととした。
  (2) 環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続と併せて行う理由
    環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続とは、双方とも、国民に対して正確な情報を提供して広範な意見を集め、公平中立的な判断を行うことを手続の基本的な考え方としている。このため、これらの手続については、環境影響評価その他の手続においては環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告・縦覧及び意見書の提出、都市計画においては都市計画の案の公告・縦覧及び意見書の提出という類似した手続が設けられている。
    また、準備書は、都市計画に定められる事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保するために、その事業が環境に与える影響を評価するための図書であるが、都市計画決定の手続においては、環境面から都市計画の案の合理性・妥当性を判断する際の図書である。
    このように、双方の手続は密接な関連を有していることから、都市計画決定権者が双方の手続を行うに当たっては、これらを併せて行うこととしたものである。
第2 特例の具体的内容
 1 都市計画に定められる第二種事業等
  (1) 第二種事業に係る判定手続については、都市計画が都市計画の認可又は承認(以下「都市計画認可」という。)を要するものである場合には、都市計画決定権者が、事業者に代わるものとして、事業の免許等を行う者等と都市計画認可を行う建設大臣又は都道府県知事(以下「都市計画認可権者」という。)の双方に届出を行わなければならないものとし、事業の免許等を行う者等及び都市計画認可権者は、それぞれ、当該第二種事業が実施されるべき区域を管轄する都道府県知事の意見等を求めた上で、第二種事業に係る判定を行うこととした(法第39条)。
    なお、都市計画が都市計画認可を要しないものである場合には、当該都市計画に係る都市計画決定権者は届出事項を記載した書面を作成し、事業の免許等を行う者等及び当該都市計画決定権者が上記の第二種事業に係る判定を行うこととなる。
  (2) 法において、事業の免許等を行う者等と並び都市計画認可権者が判定を行うこととしたのは、都市計画認可権者は都市計画認可に環境影響評価の結果を反映させるものであり、都市計画に定められる事業について環境影響評価その他の手続が必要であるか否かという事業所管とは異なる観点から判定をする必要があるためである。
    このような仕組みとする結果、対象事業等が都市計画に定められる場合には、判定を行う者が複数になるが、本則の免許等を行う者等が複数になる場合と同様、事業の免許等を行う者等と都市計画認可権者の両者により第4条第3項第2号の手続を要しない旨の通知がなされるまでは事業への着手制限が課せられることとなり、両者のいずれかにより手続を要する旨の判定がなされれば、当該事業を都市計画に定めようとする都市計画決定権者は環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)の作成以降の手続を行わなければならない。
    なお、判定の基準となるべき事項は、事業の免許等の事務を所掌する主任の大臣と建設大臣の共同省令により定められる。
 2 都市計画に定められる対象事業等
   対象事業が都市計画に定められる場合又は対象事業に係る施設が都市計画に定められる場合には、都市計画決定権者が、事業者に代わるものとして、方法書の作成以降の手続を行うこととした(法第40条)。
  (1) 評価書に対する意見
    都市計画が都市計画認可を要するものである場合には、都市計画決定権者が環境影響評価書(以下「評価書」という。)を作成したときは、事業の免許等を行う者等と併せて都市計画認可権者にも評価書が送付され、両者がそれぞれ都市計画決定権者に意見を述べることができる仕組みとした。
    法では、都市計画認可に環境影響評価の結果を反映する(法第42条第3項等)こととしており、事業の免許等を行う者等が免許等に先立ち事業者に意見を述べることと同様の関係が都市計画認可権者と都市計画決定権者との間にあることから、都市計画認可権者が都市計画決定権者に対し評価書について意見を述べることができる仕組みとしたものである。この場合において、事業の免許等を行う者等は、都市計画認可権者を経由して都市計画決定権者に意見を述べ、都市計画認可権者は事業の免許等を行う者等の意見を勘案して自らの意見を述べることとしているが、これは、都市計画認可権者が事業の免許等を行う者等の意見を認識して自らの意見を述べる必要があるためである。
  (2) 都市計画地方審議会
    都市計画法第18条第1項等においては、都道府県知事又は建設大臣が都市計画決定をしようとするときは都市計画地方審議会の議を経なければならないこととされており、これにより都市計画決定における専門的、技術的かつ中立的な判断を担保している。都市計画地方審議会においては、環境を含めた多様な公益を総合的に判断することが不可欠であり、都市計画の案とともに評価書について審議することにより、その結果を都市計画の内容に反映させるとともに、評価書の内容にも反映させる必要がある。したがって、評価書について都市計画地方審議会の議を経ることとしたものである。
    なお、都市計画地方審議会は最終的に都市計画に反映されるべき環境影響評価の結果を審議するものであることから、都市計画地方審議会への付議は、評価書について関係行政機関の長の意見が述べられ、これらの意見を勘案して評価書の検討及び補正がなされた後に行われるものとした。
  (3) 主務大臣の技術的助言
    法第40条第2項の規定により読み替えて適用される法第11条第2項の規定は、都市計画決定権者が、当該規定によらず都市計画法を所管する立場としての建設大臣に対し、一般的な技術的助言その他の一般的な支援を求めることを排除する趣旨ではない。
 3 都市計画に係る手続との調整
   都市計画決定手続及び環境影響評価その他の手続は、同時期に、両者の整合性を確保しつつ、かつ住民等による参加の便宜を図る形で実施されることが適切である。このため、対象事業等特例においては、公告、縦覧、意見書の提出等対象事業に係る環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続を併せて行うこととしており、これにより、両手続が整合を図りながらそれぞれ円滑に行われることとした(法第41条)。
  (1) 公告
    準備書の公告と都市計画の案の公告を併せて行うこととするとともに、評価書の公告と都市計画の告示も同様とした(法第41条第1項)。
  (2) 縦覧
    準備書の縦覧と都市計画の案の縦覧を併せて行うこととした(法第41条第2項及び第3項)。
  (3) 意見書
    環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続の趣旨はそれぞれ異なるものであるが、準備書と都市計画の案については、相互に密接に関係するものであることから、これらに対して提出された意見書が準備書の内容についてのものか、都市計画の案についてのものか、区別することが難しい場合が想定される。また、環境影響評価その他の手続における意見書の提出先と都市計画決定手続における意見書の提出先は、ともに都市計画決定権者となるものであり、形式的にも両者を区別することは難しい。
    このような理由から、実際に提出されてきた意見書が、準備書についての意見書か、都市計画の案についての意見書か判別できないときは、いずれでもあるとみなすこととし、その旨を法律上も明記することとした(法第41条第4項)。
  (4) 都市計画地方審議会への付議
    2の(3)で述べたように、評価書について都市計画地方審議会の議を経ることとしているが、評価書の付議を都市計画法に基づく都市計画の案の付議と併せて行うことを明らかにすることにより(法第41条第5項)、実質的にも評価書と都市計画の案とが一体的に審議されることを確保している。
 4 対象事業等を定める都市計画に係る手続に関する都市計画法の特例
   環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続とを併せて行うことに伴う都市計画法の特例を定めた(法第42条)。
  (1) 縦覧期間等の一致
    法においては、準備書の縦覧期間を公告から1月間、これについての意見提出期間を同じく公告から縦覧期間終了後2週間以内としている。一方、都市計画法においては、都市計画の案の縦覧期間を公告から2週間、これについての意見書提出期間を縦覧期間内としている。
    対象事業等特例においては、すでに述べたとおり、準備書の縦覧と都市計画の案の縦覧を併せて行うこととしており、そのためには縦覧の場所及び意見提出の方法だけでなく、その期間も一致させることが必要であることから、都市計画法の縦覧期間等を延長することとした(法第42条第1項)。
  (2) 環境影響評価の結果の都市計画決定への反映
    本特例により行った環境影響評価の結果を都市計画決定に反映できるよう、都市計画決定権者は、対象事業等を都市計画に定めようとするときは、都市計画に係る対象事業の実施による環境への影響について配慮し、環境の保全が図られるようにすることとするとともに、都市計画が都市計画認可を要するものである場合には、都市計画認可権者においても、都市計画認可に当たって、都市計画について環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない旨の都市計画法の特例を定めた(法第42条第2項及び第3項)。
 5 対象事業の内容の変更を伴う都市計画の変更の場合の再実施
   評価書の公告後において都市計画の変更を行う場合についても、都市計画決定権者が事業者に代わるものとして、環境影響評価その他の手続と都市計画の変更手続を併せて行うこととした(法第43条)。
 6 事業者の行う環境影響評価との調整
   都市計画決定権者が対象事業等を都市計画に定めようとするときに、既に事業者が環境影響評価その他の手続を開始している場合があり得るが、このような場合において、事業者が行った手続を無効にし、改めて都市計画決定権者が方法書の作成(第二種事業であれば判定に係る届出)から行わなければならないとするのは不合理である。このため、事業者が既に行った手続を都市計画決定権者が行ったものとみなすなど、手続の引継ぎが可能な仕組みとした(法第44条)。
  (1) 手続を引き継ぐ上で必要な手続
    対象事業等を都市計画に定めるかどうかは、都市計画決定権者の判断によるものであることから、既に環境影響評価その他の手続を行っている事業者に対し、都市計画決定権者が当該事業者に係る事業を都市計画に定める旨を、事業者とそれまでに手続に関係してきた者に通知することとした。なお、通知を受けた事業者は、その段階に応じて、方法書、準備書又は評価書を都市計画決定権者に送付しなければならない。
  (2) 手続を引き継ぐ時点
    環境影響評価その他の手続は、一連のものとして行われて初めて有効に機能するものである。したがって、事業者の手続が引き継がれる場合には、住民等に混乱をもたらさないよう、また、事業者の検討行為等が分断されることのないようにしなければならない。このような観点から、事業者から都市計画決定権者への引継ぎの時点は、各段階の成果物(方法書、準備書)が作成済みであり、かつ、次の段階の手続に入っていない時点で行うこととしている。また、分割できない手続の過程にある場合には、その一体として行われるべき手続の成果物の作成後に引継ぎが可能な仕組みとしている。具体的には、方法書の作成後で公告縦覧の開始前の時点、準備書の作成後で公告縦覧の開始前の時点で引き継ぐことができることとした(法第44条第1項から第4項まで)。
    事業者が準備書の公告を行ってから評価書の公告を行う間において、都市計画の案の公告がなされた場合については、準備書に係る手続から評価書の完成という一体的な手続を異なる主体が分割して行うことは適切でないことから、事業者が引き続き当該都市計画に係る対象事業についての環境影響評価その他の手続を行うこととし、都市計画決定権者は手続を行うことを要しないこととした。なお、この場合において、当該事業者が行った環境影響評価の結果を都市計画決定に反映できるよう、評価書の公告後にこれを都市計画決定権者に送付することとした(法第44条第5項)。
 7 事業者が環境影響評価を行う場合の都市計画法の特例
   法第44条第5項の規定により、事業者が評価書を作成した後、これを都市計画決定権者に送付した場合に、環境影響評価の結果を都市計画決定に反映することができるよう都市計画法の特例を定めた(法第45条)。
 8 事業者の協力
   対象事業等特例の適用がある場合には、事業を行う者に代わるものとして都市計画決定権者が一連の手続を行うこととなるが、個々の事業ごとに異なる事情もあり、事業を行う者の協力がなければ、都市計画決定権者としても事業の環境の保全についての適正な配慮ができないことが想定され、また、事業者が相応の負担をすべきとの考え方もあることから、都市計画決定権者が事業者に必要な協力を求めることができることとした(法第46条第1項)。
   また、国の行政機関の長、特殊法人等は、これらの者と都市計画決定権者との関係を考慮すると、一般の事業者以上に都市計画決定権者が行う環境影響評価その他の手続に協力すべきと考えられる。このため、都市計画決定権者から要請があった場合には、必要な環境影響評価を行わなければならないこととした(法第46条第2項)。
   法第46条第2項に規定する政令で定めるものは、国の行政機関(地方支分部局を含む。)の長及び法第2条第2項第2号ハに規定する法人(特別の法律により設立された法人(国が出資しているものに限る。))とした(環境影響評価法施行令(平成9年政令第346号)第16条)。
   なお、都市計画決定権者が法第46条の規定により事業者に協力を求め、環境影響評価その他の手続を実施しようとする場合においては、都市計画決定権者はあらかじめ事業者と協議すべきものであること。また、事業者が既に法第16条の規定による公告を行っている場合にあっては、法第44条第5項の規定により適切に対処されたい。
 9 対象事業等特例に係る手続及び都市計画決定手続を行う際の留意点について
   対象事業等特例に係る環境影響評価その他の手続と都市計画決定手続とは併せて行われることとなるが、両手続の実施に当たっては以下の点に留意されたい。
  (1) 方法書手続の段階における都市計画の対応
    方法書に対象事業の内容を記載して外部に示すことは、対象事業等を定める都市計画のその段階における案が明らかになることでもある。したがって、その後の都市計画決定手続が円滑に進むよう、方法書の段階において、計画内容についても関係住民への説明、関係市町村との調整等の措置をとることが望ましい。
  (2) 準備書の説明会における都市計画の案の説明
    法第17条第1項の規定による説明会は、準備書の記載事項を周知させるためのものであるが、準備書には都市計画の案に相当する事業の内容が記載されていることから、当該説明会においては、都市計画の案についても併せて説明することが望ましい。
  (3) 評価書の都市計画地方審議会への付議
    法第40条第2項の規定により読み替えて適用される法第25条第3項及び法第41条第5項の規定により、評価書が都市計画案と併せて都市計画地方審議会へ付議することとされており、都市計画地方審議会において環境を含めて多様な公益を総合的に判断することとなっていることから、この判断が公正・中立になされるよう必要な措置を講じることが望ましい。
  (4) 市町村意見の聴取期間の一致
    都道府県知事が都市計画決定権者である場合、都市計画法第18条に基づく市町村意見の聴取の時期は、法律上明示されておらず、地方公共団体ごとに、案の公告・縦覧の前の場合と後の場合が併存している。しかし、法の対象事業を計画決定する場合は、市町村は都市計画案と準備書の内容を総合的に判断してそれぞれに対しての意見を述べることが望ましいことから、都市計画法第18条の規定による市町村意見の聴取については、法第40条第2項の規定により読み替えて適用される法第20条第2項の規定により関係市町村に意見を求める時期に併せて行うことが望ましい。
第3 地方公共団体の施策における対象事業等特例の趣旨の尊重
  法第61条は、地方公共団体が環境影響評価に関し必要な施策を講ずる場合においては、この法律の趣旨を尊重して行うことを定めている。
  法第61条の内容には、都市計画に定められる都市施設又は市街地開発事業についての環境影響評価に関し必要な施策を講ずる場合において、都市計画決定権者による環境影響評価の実施、環境影響評価手続と都市計画決定手続との整合、都市計画地方審議会への付議、評価書の都市計画決定への反映等を内容とする対象事業等特例の趣旨を尊重することも含まれる。
  したがって、地方公共団体が環境影響評価に関し必要な施策を講ずる場合においては、第1の2の内容が法対象外の事業についても当てはまることを踏まえ、第2の趣旨を尊重して行うべきである。