環境影響評価法案について

環境庁は、中央環境審議会答申「今後の環境影響評価制度の在り方について」を受けて、環境影響評価法案の立案作業を行ってきたが、今般、政府部内の調整が整い、3月28日(金)に閣議決定されることとなった。

1.経緯
 
 環境影響評価(環境アセスメント)は、大規模な開発事業等の実施前に、事業者自らが環境影響について評価を行い、環境保全に配慮する仕組みであり、環境アセスメントの推進は、環境悪化を未然に防止し、持続可能な社会を構築していくための極めて重要な施策である。
 わが国では昭和50年代に「環境影響評価法」の制定に向けた努力がなされ、昭和56年に法案が国会に提出されたが、昭和58年衆議院解散に伴い廃案となった。法案の廃案後、当面実効ある措置を講ずるべく、昭和59年、法案要綱をベースに、「環境影響評価実施要綱」が閣議決定(閣議アセス)され、このほか、公有水面埋立法等の個別法、発電所の立地に関する通産省省議決定等の行政指導、地方公共団体の条例・要綱等に基づき環境アセスメントを実施してきた。
 その後、平成5年の環境基本法の国会審議や環境基本計画で示された政府方針を踏まえ、平成6年7月から8年6月にかけ、関係省庁一体となって内外の環境影響評価制度の実施状況等に関する総合的な調査研究を実施し、その結果を受けて、平成8年6月28日、内閣総理大臣から中央環境審議会(中環審)に対し、「今後の環境影響評価制度の在り方について」諮問を行った。
 中央環境審議会では、国民各界各層からの意見聴取を行い、本年2月10日に法制化に向けた答申を公表した。環境庁では、中央環境審議会の答申で示された基本原則を受けて、政府部内の調整を行い、3月28日(金)に「環境影響評価法案」を閣議決定する予定となった。

2.法案の要点

 環境影響評価法案は、これまでの閣議アセスをベースとしつつ、中央環境審議会において示された基本原則をすべて盛り込む形で立案されている。具体的に、新しく盛り込まれた点は次のとおりである。
 

 発電所(法律レベル)、在来鉄道(政令レベル)、大規模林道(政令レベル)などについて新たに対象事業とし、対象事業を拡大する。(第二条第二項)
 必ず環境影響評価を行う事業規模に満たない事業であっても一定規模以上のものについては、環境影響評価の実施の必要性を個別に判定する仕組み(スクリーニング)を導入する。(第二条第三項、第四条)
 早い段階から手続が開始されるよう、調査の方法について意見を求める仕組み(スコーピング)を導入する。(第五条〜第十条)
 意見提出者の地域限定を撤廃し、意見提出機会を方法書段階と準備書段階の二回設けるなど、住民参加の機会を拡大する。(第八条、第十八条)
 不確実性に関連する記述、環境の保全のための措置の検討の状況の記述、委託先の名称の記述など、準備書の記載事項を充実する。(第十四条)
 閣議アセスでは環境庁長官は主務大臣から意見を求められたときしか意見を言えなかったが、法案では環境庁長官が必要に応じて意見を言えることとする。(第二十三条)
 環境庁長官の意見や免許等を行う者等の意見を受けて、事業者が評価書を再検討することとする。(第二十五条)
 準備書に事後調査に係る記述を記載することとし、環境影響評価制度に事後の調査を位置づける。(第十四条第一項第七号ハ)
 評価書が公告された事業や法案施行前に免許等を受けた事業でも、事業者が環境影響評価を再実施することができることとする。(第三十二条、附則第四条)
 手続の各段階で地方公共団体の意見提出の機会を設けるとともに、対象事業・第二種事業以外はもとより、対象事業・第二種事業に係る地方公共団体における手続についても、この法律の規定に反しない限りで、条例で必要な規定を定めることができることとする。(第六十条)
 
 また、法案においては、次の特例を規定した。
 
 都市計画に定められる事業に関する特例(都市計画決定権者が事業者に代わって環境影響評価を行う。公告のタイミング・縦覧期間を合わせるなどの措置を講ずる。)
 港湾計画に関する特例(上位計画段階でのアセスメントを住民参加のもとに行う。)
 
 さらに、発電所については、国が早い段階から関与する特例を設けることとし、所要の特例を電気事業法に規定した。

3.法案の概要
 
(1) 対象事業 道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所等規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれが
あり、かつ、国が実施し、又は許認可等を行う事業
{1} 「第一種事業」=必ず環境影響評価を行わしめる一定規模以上の事業
{2} 「第二種事業」=第一種事業に準ずる規模を有し、環境影響評価を行うかどうかを個別に判定する事業
(2) 環境影響評価の手続
{1} 第二種事業についての判定
 第二種事業については、当該事業の許認可等を行う行政機関が、都道府県知事に意見を聞いて、事業内容、地域特性に応じて環境影響評価を行わしめるかどうかの判定を行う。
{2} 環境影響評価方法書の手続
 対象事業を実施しようとする者(事業者)は、環境影響評価の項目及び調査等の手法について環境影響評価方法書を作成して、都道府県知事・市町村長・住民等の意見を聞き、具体的な環境影響評価の方法を定める。
{3} 環境影響評価準備書の手続
 事業者は、事業の実施前に、環境影響の調査、予測及び評価並びに環境保全対策の検討を行って環境影響評価準備書を作成し、都道府県知事・市町村長・住民等の環境保全上の意見を聞く。
{4} 環境影響評価書の手続
 事業者は、{3}を踏まえて、環境影響評価書を作成する。
 環境影響評価書について、環境庁長官は、必要に応じ許認可等を行う行政機関に対し環境の保全上の意見を提出し、許認可等を行う行政機関は、当該意見を踏まえて、事業者に環境保全上の意見を提出する。
 事業者は、これらの意見を踏まえて、環境影響評価書を補正する。
(3) 準備書・評価書等の内容(現行制度との主たる相違点)
 調査等の対象となる環境は、環境基本法の環境一般(公害の防止等に限定しない)
 環境保全対策の検討経過、事業着手後の調査等を準備書等の記載事項とする。
(4) 許認可等における環境保全の審査
 許認可等を行う行政機関は、対象事業の許認可等の審査に当たり、環境影響評価書に基づき、対象事業が環境保全に適正に配慮されているかどうかの審査を行う。
(5) その他
   発電所については、この法律に定めるほか電気事業法に特例を設ける。
 
 
      対象事業種一覧

 以下の事業種から政令で具体的に規模等を規定  上記の他、個別事業についての環境影響評価とは別に、港湾計画につき環境影響評価を行う。
 
 現行閣議決定要綱に発電所(法律レベル)、大規模林道及び在来線鉄道(政令レベル)を追加することとなる。
 
 
 (参考)
環境影響評価法案及び電気事業法改正案における発電所の取扱について

1.概要
 
 発電所を環境影響評価法案の対象事業とし、環境影響評価法案の一般的規定は発電所に適用されることとした。
 発電所の特殊性にかんがみ、手続きの各段階における国の関与の仕組みを設けることとし、環境影響評価の結果を認可要件とするなど所要の特例を電気事業法に規定すること。
 
2.発電所の特例の内容

 環境影響評価法案の手続きに、次の手続きを加えるとともに、環境影響評価書に従っているものであることを工事計画の認可要件化した。
 
 環境影響評価の項目や手法の選定の手続き(環境影響評価方法書の手続き)における通産省の勧告
 
 環境影響評価準備書に対する通産省の勧告
 環境影響評価書に対する通産省の変更命令
 各種書類の記載事項の追加
 第二種事業の判定に係る届出書類に、簡易な環境影響評価の結果を添付
 環境影響評価方法書に詳細な環境影響評価の手法を記載
   環境影響評価準備書・環境影響評価書に勧告・命令の内容を記載
 
 
*手続きの流れ等は添付ファイル(no1.gif、no2.gif)を参照。

詳細については、以下をご参照下さい。
 
・環境影響評価法案
今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)
・環境影響評価制度について


添付資料