公害防止事業団に係る環境影響評価の実施について

[改定]
昭和63年7月23日 環企企303号

(公害防止事業団理事長あて環境庁長官通知)
 事業の実施前に環境影響評価を行うことが公害の防止及び自然環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、昭和五九年八月二八日に「環境影響評価の実施について」が閣議決定され、国が関与する大規模な事業について環境影響評価を行政運用により統一的に実施するため、「環境影響評価実施要綱」(以下「実施要綱」という。)が定められるとともに、国の行政機関は、これに基づき、事業者に対する指導等の行政措置を早急に講ずることとされたところである。
 このため、貴事業団が行う実施要綱の対象事業に係る環境影響評価に関する手続その他の行為(以下「手続等」という。)の実施のための「公害防止事業団事業に係る環境影響評価実施要領」を左記のとおり定め、昭和六〇年一二月一日(以下「施行日」という。)から施行することとしたので、貴職におかれても、前記閣議決定の趣旨に十分御留意の上、実施要領に基づく環境影響評価の実施について格段の御理解と御協力を願いたく通知する。

   公害防止事業団に係る環境影響評価実施要領
第一 対象事業等
  公害防止事業団(以下「事業団」という。)は、次に掲げる事業(以下「対象事業」という。)を実施しようとするときは、この要領に定める手続等に基づいて環境影響評価を行うこと。この場合、環境影響評価は、当該事業について公害防止事業団法(以下「法」という。)第二一条の認可を申請するときまでに行うこと。
 ① 法第一八条第一項第一号に規定する業務(同法第三五条第一項に規定する中小企業構造高度化業務に係る業務を除く。中小企業構造高度化業務以外の集団設置建物事業をいう。)のために事業団が行う土地の造成で、その施行区域の面積が一〇〇ヘクタール以上のもの
 ② 法附則第一八条に規定する業務(工場移転用地事業をいう。)として事業団が行う土地の造成で、その施行区域の面積が一〇〇ヘクタール以上のもの
第二 環境影響評価に関する手続等
 一 環境影響評価準備書の作成
   事業団は、対象事業を実施しようとするときは、対象事業の実施が環境に及ぼす影響(対象事業の実施後の土地(当該対象事業以外の事業で実施要綱に基づく措置により環境影響評価が行われる事業(以下「他の対象事業」という。)の用に供するものを除く。)又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる影響を含むものとし、対象事業の実施のために行う埋立又は干拓により生ずる影響を含まないものとする。)について、実施要綱第二の一(二)に基づき別に定める指針に従つて調査、予測及び評価(以下「調査等」という。)を行い、次に掲げる事項を記載した環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)を作成すること。
  ① 事業団の名称、事務所の所在地及び代表者の氏名
  ② 対象事業の目的及び内容
  ③ 調査の結果の概要
  ④ 対象事業の実施による影響の内容及び程度並びに公害の防止及び自然環境の保全(以下「公害の防止等」という。)のための措置
  ⑤ 対象事業の実施による影響の評価
 二 準備書に関する周知
  (一)
   ① 事業団は、準備書を作成したときは、関係地域(対象事業の実施が環境に影響を及ぼす地域であつて当該地域の住民に対し準備書の内容を周知することが適当と認められる地域をいう。以下同じ。)を管轄する都道府県知事及び市町村長(以下それぞれ「関係都道府県知事」及び「関係市町村長」という。)に準備書を送付すること。
   ② 事業団は、当該関係都道府県知事及び関係市町村長の協力を得て、関係地域内において、準備書を作成した旨等を公告するとともに、準備書を公告の日から一月間縦覧に供すること。
  (二) 事業団は、準備書の縦覧期間内に、関係地域内において、準備書の説明会を開催すること。この場合において、事業団は、その責めに帰することのできない理由で説明会を開催することができない場合には、当該説明会を開催することを要せず、他の方法により周知に努めること。
 三 準備書に関する意見
  (一) 事業団は、準備書について関係地域内に住所を有する者(以下「関係住民」という。)の公害の防止等の見地からの意見(準備書の縦覧期間及びその後二週間の間に文書により述べられたものに限る。)の把握に努めること。
  (二) 事業団は、(一)で把握した関係住民の意見の概要をとりまとめ、これを記載した書面を関係都道府県知事及び関係市町村長に送付するとともに、関係都道府県知事に対し、当該書面の送付を受けた日から三月間内に、準備書についての公害の防止等の見地からの意見を、関係市町村長の意見を聴いた上で述べるよう求めること。
 四 環境影響評価書の作成等
  (一) 事業団は、準備書に関する関係都道府県知事の意見が述べられた後又は三(二)の期間を経過した日以後、準備書の記載事項について検討を加え、次に掲げる事項を記載した環境影響評価書(以下「評価書」という。)を作成すること。
   ① 一の①から⑤までに掲げる事項
   ② 関係住民の意見の概要
   ③ 関係都道府県知事の意見
   ④ ②及び③の意見についての事業者の見解
  (二) 事業団は、関係都道府県知事及び関係市町村長に評価書を送付するとともに、当該関係都道府県知事及び関係市町村長の協力を得て、評価書を作成した旨等を公告し、評価書を公告の日から一月間縦覧に供すること。
第三 公害の防止等についての行政への反映
 一 評価書の環境庁への送付
   事業団は、第二の四(二)の公告の日以後、速やかに環境庁長官に評価書を送付すること。
 二 環境庁長官の意見等
   環境庁長官は、送付を受けた評価書について、公害の防止等の見地からの環境庁長官の意見を求めるとともに、法第二一条第一項の認可に際し、法の規定に反しない限りにおいて、この意見に配意しつつ、評価書の記載事項につき、当該対象事業の実施において公害の防止等についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査し、その結果に配慮すること。
 三 事業団の公害の防止等の配慮
   事業団は、評価書に記載されているところにより、対象事業の実施による影響につき考慮し、公害の防止等についての適正な配慮をして当該対象事業を実施すること。
第四 手続等の実施に関するその他の事項
 一 複数の事業及び事業者に係る手続等の併合
  (一) 事業団が相互に関連する二以上の対象事業又は他の対象事業と相互に関連する対象事業を実施しようとするときは、これらの相互に関連する二以上の対象事業又は他の対象事業と相互に関連する対象事業について、併せて、第二の一による調査等及び他の対象事業に係る調査等を行い、第二の一の準備書及び他の対象事業に係る準備書を作成することができること。
  (二) 事業団が、事業団以外の事業者が実施しようとする他の対象事業と相互に関連する対象事業を実施しようとする場合において、事業団及び当該他の対象事業の事業者のうちから代表する者を定めたときは、その代表する者が当該対象事業及び当該他の対象事業について、併せて、第二の一の調査等及び他の対象事業に係る調査等を行い、第二の一の準備書及び他の対象事業に係る準備書を作成するものとすること。この場合、第二の二から四まで(三(一)を除く。)及び第三の一並びに他の対象事業に係る実施要綱に基づく措置(実施要綱第二の二から四まで(三(一)を除く。)及び第三の一に相当する部分に限る。)において事業団及び当該他の対象事業の事業者が行うこととされている手続についても当該代表する者が行うものとすること。
 二 説明会等の委託
   事業団は、関係都道府県等と協議の上、説明会の開催等を関係都道府県に委託することができること。
 三 地方公共団体との連絡等
  (一) 事業団は、この要領に従つて調査等その他の手続等を行おうとするときは、関係都道府県及び関係市町村と密接に連絡をとること。
  (二) 対象事業が条例又は関係都道府県若しくは関係市町村の長が定めた措置の対象となる場合には、環境影響評価の円滑な実施を図るため、閣議決定の趣旨を尊重し、実施要綱を基本として手続等の一本化の調整が図られるよう要請されていることを踏まえ、関係都道府県及び関係市町村とあらかじめ十分連絡をとること。
第五 経過措置
 一 施行日前に認可された事業の取り扱い
  (一) この要領の施行の際、対象事業に該当する事業で、その実施につき施行日前に法第二一条第一項の認可が与えられ、施行日以後その内容を変更せずに実施されるもの(軽微な変更を行つて実施されるものを含む。)については、この要領は適用しないこと。
  (二) この要領の施行の際、対象事業に該当していない事業でその実施につき、施行日前に法第二一条第一項の認可が与えられ、施行日以後内容の変更(公害の防止等に支障がないものに限る。)を行つて対象事業となつたものについては、この要領は適用しないこと。
 二 相当手続等が行われている事業の取り扱い
  (一) この要領の施行の際、対象事業(一(一)又は(二)によりこの要領が適用されないものを除く。)について別に掲げる条例又は地方公共団体の長が定めた措置(以下「条例等」という。)の定めるところに従つて、この要領の手続等に相当する環境影響評価に関する手続その他の行為(以下「相当手続等」という。)が行われている場合には、この要領の第二及び第四にかかわらず、施行日以降も引き続き当該条例等の定めるところに従つて相当手続等を行うことができること。
  (二) (一)により相当手続等が行われた対象事業(施行日前に相当手続等の全部が行われたものを含む。)については、この要領の第三は適用しないこと。
第六 その他
  この要領に基づく環境影響評価の手続等の実施に関し必要な事項は別に定めること。


別表
   相当手続等に係る条例等
 川崎市環境影響評価に関する条例(昭和五一年川崎市条例第四一号)
 北海道環境影響評価条例(昭和五三年北海道条例第二九号)
 神戸市環境影響評価要綱(昭和五三年神戸市告示第六〇号)
 環境保全に関する環境影響評価指導要綱(昭和五三年岡山県告示第一〇二三号)
 名古屋市環境影響評価指導要綱(昭和五四年名古屋市告示第四七号)
 開発整備事業等に係る環境影響評価の手続に関する要綱(昭和五四年兵庫県告示第四七九の三号)
 環境影響評価の実施に関する指導要綱(昭和五四年三重県告示第一〇七四二号)
 横浜市環境影響評価指導指針(横浜市環境影響評価に関する手続要領)(昭和五五年一月一四日)
 長崎県環境影響評価事務指導要綱(昭和五五年七月一日)
 東京都環境影響評価条例(昭和五五年東京都条例第九六号)
 神奈川県環境影響評価条例(昭和五五年神奈川県条例第三六号)
 千葉県環境影響評価の実施に関する指導要綱(昭和五五年千葉県告示第一〇〇七号)
 埼玉県環境影響評価に関する指導要綱(昭和五六年埼玉県告示第一六九号)
 滋賀県環境影響評価に関する要綱(昭和五六年滋賀県告示第一一二号)
 広島県環境影響評価の実施に関する指導要綱(昭和五七年広島県告示第一三五三号)
 茨城県環境影響評価要綱(昭和五八年茨城県告示第五九一号)
 香川県環境影響評価実施要綱(昭和五八年香川県告示第七一七号)
 長野県環境影響評価指導要綱(昭和五九年長野県告示第五号)
 大阪府環境影響評価要綱(昭和五九年大阪府公告第九号)