生物の多様性分野の環境影響評価技術検討会
環境影響評価シンポジウム~生態系と環境アセスメント~の記録

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5 当日配布レジュメ1

基調講演(1)陸域の生態系と環境アセスメント

九州大学名誉教授 小野 勇一

インパクト・アセスメントとは

ヒトが住めばそこに何らかの環境影響を与えることは事実である。動物でも植物にとっては被食以外にも巣穴ほりや踏みつけなどの効果がある。それがヒトの場合とどのように違い、それをどのように評価すべきか、がポイントである。

話の前提として以下のことが考えられる。

1)

与える側と受ける側。受ける側のことがよく分かっていない

よく分かっていないままにヒトの都合だけで自然に手を加えたり、あるいはそれを根本から破壊したりして私たちの今日の文化生活は成り立っている。受ける側は無機的なサイドと有機的なサイドがある。有機的サイドはヒトも含めたものであるが、ここでは生物サイドだけをとりあげる。

2)

時間のスケール

生物の時間はゆっくりしたものである。植物の一日をとっても朝露を吸って、光合成をおこない、その成果を蓄^え、時期に当たれば花を咲かせ、実を結びしているが、その時間は長くともシーズンを単位としている。それよりも短いサイクルは動物のものである。しかし、動物の一日も繁殖期以外は単純である。大抵の草食獣は草を食うか寝るか、であるし、肉食獣にしても狩るか、食べるか、寝るかである。社会構造の発達した動物は個体間の何らかの行動を示すが、それは単発的であり、時間も短い。要するに生物の時間はゆっくりと流れている。私たち人間の一日のサイクルを考えてみよう。それは忙しいものである。その忙しさは人間の社会生活から来ているものである。その忙しさの中で環境に対して何らかの働きかけをしようとする場合には、やはり忙しいものにならざるを得ない。ヒトの道具が未発達で、ヒト自らも道具の一部として働かざるを得ない場合にはヒトの動物としての行動の限界があり、時間もそれほど速くはやれなかった。これが、昔の農業であり、もっこと鍬による土木工事であった。この生物的時間の流れとヒトの働きかけの速度の違いが今日の環境破壊の元凶である。生態系管理とか順応的管理とはこの違いから出てきた考え方であろう。

炭焼きとカモシカ

3)

ヒトは長い時間をかけて自然を改変してきた

地球上のあらゆる自然はヒトの影響下にある。Terra Incongria はもうない。速度のところで述べたように、ヒトが自然を改変してきた歴史を自然のあらゆる面で考え、歴史記録としておくべきであろう。川は天然のものはない。海岸もそうである。では、昔はどうであったか、そのデータベースは残っているか。稲作が自然を変えてきた歴史は日本の里山の歴史ではなかったか。環境影響評価というとき、このことを念頭に置くべきではないか。ホーリズム的評価も必要。James R.KarrのEcological Integrityの発想。

以下、生態系とはどのようなものか、その中からの特徴の取り出し方

1)

生活形の考え方

生活形はギルドに裏付けられた面があるが、同時にハビタットと結びつく。ハビタットスケールによる生活形ピラミッドを考える。

2)

生物群集の特性とは何か

生物の共生の姿。生態系管理は保守的か?

絶えず変化するものが生態系の姿。それをあえて改変せずにその変化を見守るタイドが生態系管理ではないか。

その基準としてもち出されたのが上位性、典型性、特殊性であろう。

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